一章:魔法使い、〈森の輪〉の話を聞く。
「たくさん購入ありがとうございますー。」
ほくほく顔で、ロサがミルキィの支払った硬貨を数えて、ミルキィ達にお礼を伝える。
銅貨2枚はこの辺りだと家を数ヶ月借りれるほどの金額なので結構高額だ、とアトラがこっそり教えてくれた。
魔道具って結構高いんだねぇ。…最初の報酬が小銀貨だったのは、割と貨幣価値感を狂わせているかもしれない。
それじゃあ、ありがとうな、とトゥエラがロサと挨拶を交わし、旅人達もお世話になりました、と口々に感謝を述べる。
「冒険に出たり、旅に出る時に、何か必要なものがあったら、また来てねぇ。
色々取り揃えてるから、任せといてよぉ。」
にこにこと。そろばん片手に、ロサは店を出ていく旅人達に声をかけた。
「ありがとう。何かあればまた寄らせてもらうね。」
ミルキィは一度振り返り、手を振った。
雑貨店〈丸壺〉を出て、それなりにいい時間となったので、屋台でお昼ご飯を買う事に。お腹すいたぁ、とルビナがこぼしていたのもある。
コッペパン型の全粒粉のパンに切り込みを入れて、葉物野菜と焼いたベーコンにタレを絡めたものを挟んだ惣菜系のパンと、木のお椀に入った、野菜がメインの薄いコンソメ色のスープが本日のお昼のお供である。なお、木のお椀は後で屋台に返却するシステムでした。
アトラとルビナが、商店が並んでいる通りの近くの公園にベンチがあるとのことで、そちらで食べる事に。屋台でお昼ご飯を買って、公園で食べる人は多いそうな。
よく知ってるねぇ、とスノゥが言うと、アトラとルビナはノルキスタ出身であるとの事。
「昔っからいるから、町の中をさ、色々冒険したんだよなぁ。」
「大森林でいろんな素材が取れるからー、って、昔から冒険者の人が他の地域からも来てたんだよ。その人達に道案内頼まれたりしたなー。」
「そうそう。街道側からだとさ、微妙にわかりにくいところにあるんだよな、冒険者ギルド。メイン道路進んで冒険者ギルドがない!って言ってた人、何度も見たぞ。」
「わかるー!道案内頼まれるの、冒険者ギルド多かったんだよねー!」
にこにことアトラとルビナが、昔語りを口々に喋って盛り上がっている。反対にトゥエラとエデュライナは静かだ。
それと、微妙に違和感を感じるのだが。
「あれ、アトラとルビナは昔からの知り合い、ってわけじゃ…?」
「違うよー。」
「違うんだぜー。幼馴染ってんなら、〈森の宿屋〉の食堂で働いてるクロナがそうだな。」
ゆるっと手を振りながら否定されてしまった。アトラの幼馴染のクロナとは、元気に配膳してた彼女だろうか。
「アトラとは冒険者の人の案内中とかにすれ違った事はあるけど。ちゃんと話したことがあるのは、冒険者になるための試験中だったかな?」
「そうそう。冒険者の人の案内してたヤツが、冒険者になるための試験受けてんじゃん。一緒じゃんか、ってなってさ。思わず話しかけちゃったんだよなー。」
「それで思わず話が盛り上がっちゃってねー。冒険者になれたら一緒にパーティー組もうぜ!って誘われて、合格できたから、まず二人でパーティー組んだの。」
「数ヶ月は二人で薬草採取したり、Eランクの…冒険者になりたてでも、なんとか倒せる魔獣相手に戦ってたんだよなー。」
にこにこと、楽しそうに。アトラとルビナは話し続ける。
「で、二人だけだと次のランク目指すのはしんどくないかー?ってなったの。」
「正直、剣だけで倒すのが難しいやつとかいて、でもそいつ倒さないと次のランクへの昇格は難しい、って受付の人にも言われたんだよなー。」
「どうしよっか、ってアトラと話してたら、トゥエラに出会ったんだよねぇ。」
「あの頃割とぼろっぼろだったよな、トゥエラ。目つきも険しかったし。」
今のトゥエラの表情は穏やかである。当時のトゥエラに何があったのか。
トゥエラの方を見ると、苦笑しているけれど、穏やかな表情である。
「あの頃はなぁ。何もかも放り投げて、ノルキスタに来た時だったからなぁ。
あー…元々他の街で冒険者登録してたんですけど。登録時に幼馴染のパーティーに強制的に参加させられたんですが、まぁ無茶苦茶だったんですよ。
依頼達成のための準備を全部投げられ、準備をしたらお礼も言わない、むしろ何々が足りないと文句を言ったり、依頼報告とか細々した事をしないからそうったことのしたりしてたんですが、そうしたら負担がとんでも無いことになりまして…アイツら冒険できたらそれで良くて、あとはしらねぇ、って奴らばっかだったんですよ。金遣いは荒いし、酒癖も悪い。その後始末もさせられたりで。
最終的に、もう知るか!ってなって、パーティー脱退してノルキスタに来たんですよ。」
まさかのトゥエラの過去話である。その幼馴染方、控えめに言ってダメダメでは…?
「あの頃のトゥエラがあんまりにも荒んでたから、どうしたんだろうってなってさ。」
「アトラと一緒に付き纏ったんだよね。どうしたんですか、大丈夫ですか、って。」
「一人で依頼とか受けてたら、案内します、とか、一人だと大変じゃ無いですか、とか、気が付いたら三人で行動してたんですよね。」
「一緒に行動してたらさ、なんだかんだと色々教えてくれたんだよな。あれは助かったー。」
「うんうん。おかげで二人で魔獣討伐してた時よりも動き良くなったよね。」
「こちらとしても、ちゃんと言う事は聞いてくれるし、お礼も言う。問題行動も起こさない。あいつらとは違うってなって、気が付いたら絆されてましたよね。」
「で、三人でよく行動してたら、受付の人にパーティーは組まないんですか?って聞かれてね。三人顔見合わせて、よろしくお願いします、って言い合ったんだー。」
ふふっ、とルビナが笑って、空を見上げた。あの頃を思い出しているのだろうか。
「エデュライナは、冒険者ギルドの紹介で出会ったんだよな。」
「いろんな街を渡り歩いて、ノルキスタの町に出会ったから。ここで暮らしたいと思った。神殿所属ではないから、冒険者として暮らそうと考えた。だから、冒険者ギルドに、所属できそうなパーティーの仲介を頼んだ。紹介されたのが、アトラ達のパーティーだった。」
アトラの言葉に、エデュライナがこくんと頷いて、語る。
「トラおじじにどうかの?って打診されたんだよな。」
「そうそう。で話し合って、今の〈森の輪〉になったの。」
にこにこにこ、と、アトラとルビナは、笑顔である。
つられてエデュライナも表情も柔らかく。トゥエラもまた、微笑んでいた。
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