一章:魔法使い、雑貨店に行く。
2/13 トゥエラのセリフを一部変更しました。
「あの、後学のために聞きたいんですけども。どうやって倒したんです…?アトラが再現できるかどうか全くわからないですけども。」
「トゥエラトゥエラ、無理じゃね?」
「無理だとしても、討伐の一例として、知っておく事は無駄じゃないからな?」
〈森の輪〉の男子がわちゃわちゃしている。
そうだねぇ、と実際に討伐したスノゥが少し視線を上に向けながら、その時の記憶を掘り返している。
「まず、でっかい武器を用意します。」
「スノゥさんの武器、そういや、でっかい鎌だったよな。」
「そう。で、そのでっかい武器で、まず足を切り落とします。」
こんな感じで、とエアー大鎌で横薙ぎしつつ、スノゥが話す。スノゥの武器は、死神の大鎌が一番イメージに近いだろうか。
自身の身長より大きな大鎌をぶん回すのが、基本的なスノゥの戦闘スタイルである。たまに蹴りも入れたりしているが。
「足…?」
「生えてるじゃん、根っこみたいな足。」
「それ、反対では…?」
アトラが首を傾げ、スノゥの言葉にルディも首を傾げた。ちなみに、〈歩行樹〉が移動の際に用いる部位は、根っこを束ねた感じの足っぽい部位である。
あの部位の呼び名は足なんだか根なんだか、冒険者ギルドで尋ねてみればわかるだろうか。こういうの学者の人が好きそうな話題な気がするのだが。
「それはさておき。足を全部切り落としたら、上の方、魔石のある位置の下の方で輪切りにします。以上。」
「…魔石ある位置…?」
「幹の上の方に魔石ある事多かったから、幹の先端部分から手のひら二つ分ぐらい下を輪切りにしたらいいよ。それぐらいで大体、魔石に傷もつけずに討伐できるよ?」
あっさりと、スノゥは告げる。スノゥの言葉を聞いたアトラは、無理無理無理無理!!とすごい勢いで首を横に振っているのだが。
スノゥが言っているのは、直径80センチから1メートル程の幹を、すぱんと一撃で輪切りにすると倒せるよ、である。そんな長い武器を振り回しているだろう冒険者はそんなにいないだろう。
トゥエラはスノゥの言葉を聞いて、にこやかである。
「ありがとうございます、スノゥさん。学びになりました。」
「参考になるならよかったよー。」
「魔獣に対する学びを深めるのはやはり大事ですね。パーティー全員がその知識を持っていれば、戦闘時に連携しやすくなるし、怪我をしにくくなるかもしれない。
…そんなわけで、アトラもルビナも、勉強しような?」
にこやかに。結論を出したトゥエラが〈森の輪〉前衛コンビに笑顔の圧をかけていた。うっ、とアトラが言葉に詰まっており、ルビナは小声で頑張りまぁす、と答えていた。
日々また精進なり。と、表情を変えずにエデュライナがぼそりと呟く。
実際、事前に魔獣の魔石の位置やら臓器の位置とか、行動特性や弱点をしっかり調べてから魔獣討伐に向かった方が、どうやって接敵するか、どう戦ったら怪我することなく有利に戦えるか、と効率的に動くことが出来るだろう。また、不意をつかれた攻撃を受けることも回避できるかも知れない。学ぶ方は重要なのである。
そんなこんなで、話しながらやってきました、〈森の輪〉行きつけの冒険に関するものが様々に取り揃えられている雑貨店。〈丸壺〉とゆるーい字体で書かれた看板がトレードマークのお店である。扉や窓から漏れてくる店内の明かりはあまり光量も無く、今お店やってますか…?と聞きたくなる人気の無さである。
ここですか?とルディがアトラに尋ねたと同時に、トゥエラが雑貨店の扉を開き、店内へと足を踏み入れていく。慌ててトゥエラについて店内に入ると、店番の人用のカウンターにつっぷせて寝ている男性が一人。
トゥエラは迷うことなくその男性の方に近づいて行き、肩を揺らす。
「ロサー、寝てるところ悪いんだが、客だぞ。」
「…おやぁ、トゥエラじゃあないかー。」
ゆさゆさと揺らされて、ゆっくりと起き上がった男性が寝ぼけ眼でトゥエラの顔を見た。
うん?男性というには背が低いし、耳の先が尖ってる…?
「今日はねぇ、明けの刻から昼の刻にかけて、たーくさんの冒険者がきてくれたからねぇ…忙しかったんだよぉ。」
「なるほど。それで、ついつい寝てたと?」
「そうそうー。」
ゆるっとした口調で、ロサと呼ばれた人物がトゥエラに答える。
もしかすると、ダンジョン調査に向かう冒険者がもう決まり、調査のための準備をする為に早い時間から来ていたのだろうか。そうならば、トラおじじ達、仕事がとてもはやい。
「紹介します。彼は雑貨店〈丸壺〉の店主のロサです。」
「ご紹介に預かりましたー。雑貨店〈丸壺〉の店主、ロサ・ヴェテ・イラハです。冒険の役にたちそうなもの、色々取り揃えてますので、どうぞ今後ともご贔屓にぃ。」
ゆるっとした笑顔を浮かべて、ロサはこちらにお辞儀をした。
これはこれはご丁寧に…と口々に挨拶を返す。
「さて、皆様はなにをお探しですかぁ?」
「ひとまず、色々見せてもらってもいいかな?」
「もちろんですともぉ。」
そろばん片手に、ロサはゆるっとした笑顔を浮かべたままである。しょ、商売人…!
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




