一章:魔法使い、武器屋を出る。
一日半の描写で、30話ほど書いている事に気付きました。
まだまだ8日目は続くんじゃよ…。
ヘルロットからの熱い要望により、修復作業及び魔石への付与加工の見学は、明日、新緑の月、葉の週、日曜日の昼の刻1時からとなった。〈森の輪〉と一緒に〈テオのふいご〉集合である。
ヘルロット的にはこの後すぐからでも修復作業をしたいとの事だったが、テオラルテの作業所の都合もつかず、ミルキィ達も昼の刻6時から冒険者ギルドで講義があるので、今日は出来ないという判断である。講義終わった後にでも…とヘルロット的には諦めきれていなかった様子だが、その後にも細々とした用事があるので、とトゥエラが断りを入れる。色々と買い取ってもらわなければならないのだ。
明日の日曜日は一般的には休息日である。〈テオのふいご〉、〈レテの弓〉もまた、お店の方は休みである。徒弟の人も働いているのだが、明日はお休みでそこまで作業場にいないだろう、とテオラルテの言葉。腕を磨くために休みでも剣を打つ徒弟がいるから、全くの無人状態にはならないとの事。
「むー、今日今すぐにでも見たかったー。でも用事あるなら仕方ないー。けどもももももー。」
「ヘルロット、諦めい。明日来てくれるんだからえかろうに。」
「うううー、今のわたしは、待てをされた犬のようだよー…。」
しょんもりしながら、ローテーブルの上につっぷせるヘルロット。ローテーブルの上に置いていた短剣などは既にルディが〈収納〉済みである。
諸々の話も決まり、本来の価格調査もキュウヤ達と〈森の輪〉の面々が見てくれているので、そろそろお暇しようという話になったのだ。
使っていた椅子をキュウヤが〈収納〉しており、他方ルディがしゃがみながらヘルロットに声を掛ける。
「ヘルロットさん。明日の魔石への付与加工はどんな種類の付与をするんです?」
「んんー?最近ちょこちょこ売れてるからー、結界の魔道具の核にしようかなー、と考えてるよー。」
「なるほど。明日、見学させてもらえるの楽しみにしてますね。」
「まってるからねぇぇぇぇぇー。」
ローテーブルにつっぷせたまま顔だけルディの方に向けて、ヘルロットが答え、それを聞いてルディがふんわりと微笑んだ。よろしくお願いしますね、と声をかけて、立ち上がる。
最後の一脚を〈収納〉に片付け終わり、旅人達はテオラルテとヘルロットの方に向いて。
「今日はありがとうございました。」
「明日はよろしくお願いしますねー!」
口々に言葉を述べてから、応接室を出て行く。〈森の輪〉の面々も、じゃあまた!と声をかけて退室していった。
「いつまで、つっぷせとるつもりなんだ?」
「んー?…そうだねー、皆いなくなっちゃったしー、明日の準備もしなきゃだねー。」
よっと、と声を上げながら、ヘルロットは上体を起こす。
「ヘルロットよ。…かのお客人方が言っておった魔剣の作成方法、意味わかったか?」
「何言ってんだろー、って思ったよー。マナで保護とかどうやるんだろー、って。」
けどさぁー、とヘルロットは穏やかな微笑みを浮かべてソファーから立ち上がる。
「きっとさぁー、あの人達つくっちゃうんだろねぇー。」
「それは同感だの。魔剣の核から拵えるかもしれんぞ?」
「わぁ、想像できるなぁー。なんなんだろうねー、この、あの人達ならやりそう感ー。」
「うむ、不思議だのー。」
それじゃー、と、応接室の扉前に立ち、ヘルロットはテオラルテの方を振り向いて、手を振って。
「また明日よろしくねー。あぁー、魔剣の修復、楽しみだなぁー。」
「ああ、また明日よろしく頼む。」
ヘルロットも、部屋を出る。少しだけ、背をまっすぐ伸ばして。
レディトラスと受付にいた徒弟さんに声をかけて、〈テオのふいご〉と〈レテの弓〉を出る。現在時刻、昼の刻4時よりいくばくか前。
まだお昼ご飯にははやいとの事で、雑談しつつ商店街を見て回る事に。
そういえば、とスノゥが早速口を開く。
「新品の武器はそれなりにお高かったわねー。」
「〈テオのふいご〉は、平均的なお値段だよー?でも、武器のお値段高めなのはそうかも。」
「冒険者駆け出しには割と厳しいお値段に見えちゃうのよね。」
スノゥの言葉に、ルビナが相槌を打つ。
「おいくらだったの。」
「銅の短剣一本、小銅貨1枚前後。
鉄の短剣は銅貨1枚、鋼の短剣が大銅貨1枚ぐらいだったわね。店頭には並んでなかったけど、銀やミスリル、グロン鋼っていう鉱物の武器もあるみたい。」
「おお…。」
それは十分にお高めであるだろう。例えば、〈森の宿屋〉の朝夕食付き一泊の11人分で大鉄貨4枚と鉄貨1枚である。銅の短剣だと、二泊分ほどである。
一人だと半月分は泊まれる計算である。
店頭に並べてない武器は、下手すると新築の家一軒分並みにお高い可能性もありそうである。
「そうだなー、駆け出しの冒険者だと、だいたい家族から貰ったっていう銅の武器使ってる事が多いと思う。」
「武器を持ってなくても、ノルキスタの冒険者ギルドは武器の貸し出しもやってるんだよ。
ランクEの間だけだけど、よその街から来た新人さんとか、ギルドに感謝してるの見かけるんだー。」
「武器の貸し出しはノルキスタの冒険者ギルドが独自にしている取り組みなんです。一日小鉄貨2枚で借りれるので、駆け出しでもそこまで負担にならないですし。
破損したり、紛失したらギルドへの借金になって、依頼外の魔獣買取費や依頼達成の報酬から天引きされるようになるので、武器を借りている新人達を見かけたらそれとなく忠告するのが、ノルキスタの先輩冒険者達のお約束みたいになってるんです。」
「ノルキスタは冒険者の新人育成に力を入れてる。」
口々に〈森の輪〉が教えてくれるのは、新人の武器事情と、ノルキスタ冒険者ギルドの新人支援の一環。
ああ、だからなのか。ノルキスタで出会う冒険者達がノリが良かったり、気が良い人達が多いのは。冒険者という一つ括りの中、皆が皆、助け合う仲間である、という事なのだろう。
素敵な冒険者ギルドだね、とキュウヤが言うと。〈森の輪〉の面々は照れくさそうに、誇らしそうに笑った。
「いいとこでしょ!」
まだ、滞在して一日も経っていないけれど。本当に。
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




