一章:魔法使い、付与について。
ふふっと笑って、〈収納〉から残り二振りの長剣も取り出し、ローテーブルの上に置いてから、ルディは告げる。
「まぁ、魔剣は自分達の手で修復したいんですけどね。核は無事だけど、回路は複数箇所で途切れていて、更に刃はかけ錆が浮いている状態ですね。」
「…普通、修復できない判定だねー。これだと、研究用に核だけ取って後は廃棄かなー。」
ええー、と残念そうな声を上げるヘルロット。
そうそう、これもあるんですよ、とルディは朗らかな声で〈収納〉から取り出した箱も、ごとりとローテーブルの上にのせた。
「…どこから取り出したかさー、ちょっと後でお話し聞きたいとこなんだけどさー。先にお仕事の話しようかぁー。
《切れ味上昇》と《貫通力増強》の付与は、最悪核を埋め込む剣を新しく用意すれば使えるかなー?
んーと、君らはさぁ、付与についてはわかるー?」
「すっごく大雑把な知識なら?」
ヘルロットの問いに、こてんと小首を傾げてルディが告げる。ワンテンポ遅れてポニーテールにしている髪が揺れた。
今のミルキィ達の情報源は基本、〈森の輪〉に話を聞くか、〈鑑定〉や〈解析〉といった情報系スキル使用の二択である。
「うーん。あんまり知らない、と判断して話させてもらうねぇー。
付与っていうのは、まず2種類に分けられるんだよー。魔石を使うか付与かぁ、魔石を使わない付与か、ってねー。」
「つまり、この剣三振りは魔石使用の付与、こっちの箱は魔石使用していない側の付与ですね。」
「そうー。付与するために回路を書かないといけないんだけどー、そのために使うのが、トロパ鉱石ー。面白いんだよ、マナを流したら溶けるしー、溶けたのにマナを更に流したら固まってー、回路が成立してるとマナを流しても溶けなくなるんだよー。」
人差し指を振りながら、ヘルロットは説明を続ける。
「魔石使用型の付与は、魔石自体に回路を書き込まなきゃいけないんだー。書き込める余白もいるしー、なにより付与の核としてある程度のマナ量はいるからさー、2級以上の魔石しか使えないんだー。
でもね、魔石に回路を書き込んで、核にするためにはたくさんのマナが必要になるから、結構大変なんだよー。
わたし、2級の魔石しか魔石使用型付与できないんだー。でも、優秀な付与師でもさー、1級の魔石までしかつかえないんだよー。付与師によっては魔石使用型付与できなかったりするからー、わたしそこそこできる付与師なんだよー。えへん。」
「自分でえへんと言うでない。まぁ、このあたりの武器屋は割とヘルロットに世話になっとるんだ。こんなんだが。」
「こんなん言うなー!」
はっはっは、と笑うテオラルテの程よく脂肪と筋肉ののった腹部に軽いジャブを繰り出すヘルロット。仲良いですね?
「つまり。魔石型付与をする際には、1級の魔石までしか使えない、ということです?
1段以上の魔石が使われているものは、人の手で作りえたものではない、と。」
「それで間違ってないよー。1段以上は基本、ダンジョンから出て来たもの、って認識でいいかなー。
更に言うとー、付与型武具はつくれるけどー、魔剣はつくれない。だから魔剣が壊れたらー、もったいないけど研究資料行きだねー。」
「なるほど。魔剣が作れない理由は、魔石1段以上が必須の上、書き込んだ回路が刀身を鍛える際に他の金属と混ざったり、回路自体が熱で溶け出して、回路を維持できないため…といったところかな?」
ヘルロットの言葉を受けて、キュウヤが推察を口にした。ぴくり、とヘルロットの眉が動く。
3振りの剣を〈解析〉、〈鑑定〉も駆使して見てみると、《火》の魔剣と他2本では回路の書かれ方が違うのだ。後者の方では、核から伸びる回路が刀身の上の部分にほんの少し触れただけで、更に表面に書かれている。
しかし、《火》の魔剣では、回路が綺麗な紋様を描き、刀身の中に…金属の内に書き込まれているのだ。トロパ鉱の融点は不明だが、鍛える時に熱した際、刀身を形成する素材と融解しあったり、熱で回路自体を維持できない、といった問題もあるが、何より、金属の内にどうやって回路を書き込むか、の問題の方が大きいだろう。
強度がいくばくか不安定となるが、刀身を二枚重ねにし、合わせる面に回路を書き込む…という手もあるが、その場合も回路の維持についての問題は残る。
「うぬぅ、間違ってはないけどー。」
若干悔しそうな声を上げながら、ヘルロットが声を上げ、キュウヤはそれを聞いて一つ頷いて。
方針を固め始めた。
「問題点が回路の保護一点だけなら、修復できない事はないだろうね。…シルト、剣を鍛える作業中、熱と他素材から回路を保護する事は可能?」
「マナで保護する方向性なのだ?回路自体に干渉しないように気を付ければやれないこともないのだ。」
「回路の書き込みについては、実際の作業を見て見ないとわからないけれど。少なくとも、どんな回路図にするか、も考えないとね。どんな長剣にするか、素材は…っていうところまで考えないと。」
「強度については、まず芯材2枚用意して、そのうち1枚に回路書いて、回路を合わせ面にして一本の芯材にする。で、更に芯材の上から包むように他の金属で覆って刃を形成させる…ってやり方もありじゃない?」
「待ってー、待って待ってー、なにそれどゆことー?」
キュウヤ、シルト、ミルキィ、スノゥが口々に魔剣修復の算段をしていると、困惑しているのだろう、ヘルロットが声を上げる。〈森の輪〉はまた何かとんでもない事始めようとしてる…と呆れているし、テオラルテはまた固まった。
「大雑把に言うと、付与剣の修復過程見れば魔剣作れそうだねぇ、っていう話だね。」
「…はいー?」
何言ってんだこいつら。そんな感じの表情でヘルロットはこちらを見て来た。
視線、視線が刺さる!!
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




