一章:魔法使い、一泊め。
8進数です。
お風呂屋さんは銭湯でした。利用料は一人鉄貨1枚。
宿泊費よりも安いけれど、それなりのお値段。食事代よりも高い。やはり水を温めるための燃料…魔石代がそれなりに嵩むと、番頭さんが言ってたんだぜー、と入浴後にノートが話していた。いつの間にそんな話をしていたのか。
〈収納〉から出したタオルと着替え、お風呂セットをそれぞれ手持ちの袋に入れて持って行き、男女に別れて脱衣所へ。ほどほどに人がおり、浴室では隅の方で木でできた容器に入れたお風呂セットを広げたのだが、陶器に入ったシャンプー、リンス、香りの良い石鹸が置いてあった。…もしかして、昔の勇者か魔法使いが頑張ったのだろうか…?
お風呂はなかなかに良い温度だった。気持ちよかったです。
入浴後のお楽しみである瓶入りのフルーツ牛乳やコーヒー牛乳は置いていなかったが、果汁入りの水が売られていた。お値段、一杯小鉄貨1枚。購入して飲んでみると、ほんのり塩気も感じる。汗をかいた時にちょうど良い飲み物の気配を感じる。
いいお風呂だったねと、全員ほこほこのまま、〈森の宿屋〉に戻る。預けていた鍵を貰い、それぞれ宿泊する部屋に。ベッドで寝るスタイルなのだが、虫もおらず、布団にシミもついておらず、ふかふかである。…ここ連泊でいいのでは?
同室のスノゥとセイカに確認すると賛成をもらえたので、明日他のメンバーにも確認する予定。
それでは、おやすみなさい。
翌朝の、新緑の月、葉の週、水曜日。現在時刻は明けの刻、6時。
起きて、身支度をして、軽く〈浄化〉をかけて、食堂に向かう。嵩張る荷物は〈収納〉の中に入れて、小銭とエチケット用品をポーチに入れて身につけている。そのまま出かけれるように比較的小型な武器持ちの面々は武器も装備しておく。シルトのハリセンはすれ違う人が二度見したりしている。ツッコミ文化が無かったら、得体の知れない武器になるのか…。大きな武器持ちは〈収納〉持ち設定にしているので、手ぶらである。キュウヤの大剣とかスノゥの大鎌とか、普段持ち歩くには大きすぎるからね。ちなみに、同室面子は全員〈収納〉持ち設定である。
部屋を出て、階段降りて全員集合し、食堂へと向かう。食堂へ行く途中で、このまま〈森の宿屋〉に泊まるかどうか確認すると、布団の状態も良いし、お風呂屋さんも近いし…と口々に上がり、このまま連泊する事に。とりあえず、〈森の輪〉に色々習う依頼を出している期間である一週間…8泊は連泊する事に。
一泊で大鉄貨4枚と鉄貨1枚だから…8泊だと小銅貨4枚と鉄貨4枚になるのか。握り拳よりも小ぶりな5級の魔石おおよそ4個分である、と考えると安いのか高いのか。
本日の朝食は全粒粉のパンとベーコンとガバン芋と葉っぱ中心のサラダでした。ガバン芋とパンにチーズがかかっていたので、近場に畜産やってる村でもあるのだろうか。新鮮な牛乳が入ってくるだけでも、いろんな料理が出てくる可能性が増えるから、期待である。
エントランスに行くと、カウンターに女将さんがいた。おはようございます、と挨拶しあって、いざ本題。
「女将さん、10泊ほど今の部屋で連泊可能です?」
「あらあらあらあら、嬉しいわ。13名様、5部屋で連泊ね。ちょっと確認するね。」
数字を言う時は、脳内で確認して口にしないと間違えそうになる。8進数…。
ミルキィの言葉に嬉しそうに声が弾み、ほわほわと微笑みながら、女将さんは何かの台帳を確認する。はて、宿の予約ってどうやってやるんだろう、と思ったが。この宿をノルキスタにいる間の定宿にしている冒険者パーティーがいて、一定期間だけノルキスタを離れているのであれば、帰ってきた時にまた泊まろうと、予約を入れていてもおかしくはないか。知らない連絡方法があるのかもしれないし。
ページをめくったり、文字を追って確認して、女将さんは台帳を閉じた。
「連泊大丈夫よ。お代は先に貰っても大丈夫かしら?」
「大丈夫です。13人10泊分で、朝と夕ご飯付き希望で…小銅貨4枚と鉄貨4枚ですね。」
腰につけたポーチからきっちりお釣りがいらないように、ミルキィが代表して小さめの銅貨と鉄貨をカウンター上の支払い用お盆の上に置く。枚数を確認して、はい、確かに、と女将さんはお金を受け取った。
「今日はお出かけされるかしら?」
「昼の刻1時からアトラ達と市場に行きます。あ、これが食べたい、って食堂への食材持ち込みは可能ですか?」
昨日から確認したかった事である。野菜をもっと食べたかったのもあるが、巨体の〈魔猪豚〉のお肉でステーキとかも食べてみたくてですね…?
シルト達の検証実験で、野菜の在庫があるし、昨日のうちにシルトに確認して、いくらかなら食材持ち込みしてもいいだろう、という話になったのだ。なんなら、〈収納〉の中でまた野菜を育てているし。在庫はまだ増えます。
「持ち込みの食材と、メニューによるわね。時間帯によってはお断りするかも知れないわ。ちなみに、何を差し入れてくれる予定なのかしら?」
「〈魔猪豚〉のお肉と野菜、ですかね。」
「〈魔猪豚〉のお肉なら大丈夫ね。早めに渡してくれたら大丈夫よ。でも、野菜は食堂と要相談かしら。」
「わかりました。また持ってくる前に相談しますね。」
レシピによって、野菜の合う合わないがあるからね。後でまたシルトも交えて食堂の人と相談せねば。
野菜、今値段高いけどいいの?と困り眉で女将さんが聞いてくるが、大丈夫ですよー、とミルキィは答える。たくさん育てたし、育ててますからね…。
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




