一章:魔法使い、提起す
この世界には神様がいる。例えば、勇者召喚の際には神様の力が必要である。神官は仕える神々に祈りを捧げ、マナを捧げ、治癒や結界などの御技を行使する。
生活にも密接的な存在である。国ごとに守護する神様がいて、神に祈り感謝するお祭りがある。食事を食べる前に神々に祈りを捧げる。
さて、祈りを捧げる、という行為の一点において見ると、老若男女身分問わず誰でもおこなっている。この際、微量にマナを放出し、神々への供物となっているのは割と知られていない現象である。ミルキィが気付いたのも、〈森の輪〉の面々が食事前の祈りを捧げた時に、マナが放出され、すぐに何処かへと消えていったからだ。
祈りの対象に、マナを捧げている。人員問わず。…これ、大地に祈ったら、マナ捧げれないのだろうか。
そんな事を実験検証している面々に近付いて提案すると、トラおじじとドレグは顔を見合わせ、薬師のおばば様は腕を組んで悩みはじめた。
「祈りでマナが放出されとるとはのぅ…ううーむ、知らなかったのう。ドレグは知っとったか?」
「いえ、知りませんでした。」
「マナは見えんからのう。感じ取る事ができる人もそこまでおらんだろう。一般の人でも負荷のない放出量であるならば、本当に微量なのじゃろうな。となると、なかなか感じ取るのは困難じゃて。」
難しい顔をするトラおじじ。
「それなら実際に検証するのは難しくないかい?」
「その辺りの検証にはうちが付き合うのだ。マナの流れも見えるし、空気中のマナ量の計測も出来るのだ。というか、空気中のマナ量の計測器的なものはないのだ?」
薬師のおばば様も難しい顔をしている。見えないものを指標にするのは難しいからね。だがしかし、今ならそういうのも観測できるミルキィ達がいる。シルトも任せろといわんばかりに名乗りをあげた。
空気中のマナ量の計測器、確かにあればこの検証もだいぶ楽なものとなるだろう。
シルトの問いに、再びトラおじじとドレグが顔を見合わせた。
「そういえば、倉庫に物質のマナ量を観測できる計測器がありましたよね?」
「あったのう。それで土の現在のマナ量と注ぎ込んだ後のマナ量を比較してもええのか。
明日朝一番で計測器を探して、土のマナ量を計測し、職員に土に祈って貰ったのち、再びマナ量を計測すると色々わかるんじゃろうな。」
「明日、ダンジョンの探索隊についても考えないといけないんですよね…。」
「仕事がいっぱいじゃのう…。」
解決の糸口が掴めて一瞬笑顔になるが、ドレグが思い出した明日のタスクの量に、少しくたびれているドレグとトラおじじ。
はふり、と息をついて。トラおじじは苦笑する。
「まあ、じゃが、色々前進しとる気はするのう。皆様方が来られたおかげかのう。」
ここまでの情報を纏めるという、トラおじじ、ドレグ、薬師のおばば様に記録係の職員さんと別れ、キュウヤ、シルト、フォードと共に渡り廊下を戻り、ギルド本館に戻る。
他の面々と合流すると、〈森の輪〉も全員集合していた。アトラとルビナが元気がない様な見えるのだが、恐らくギルドマスター室で決まった昇格の絡んだ依頼の話を聞いたからだろう。お世話になります。
エデュライナが、こちら、解毒薬の材料の納品依頼の依頼書です。と、静かな声で一枚の紙を渡してくれる。門の時のだね。こちら、〈砂哭蛇〉の買取だけです、とエデュライナ。薬草分は課長がすでに受け取っているのだろう。
換金しておいでよ、との課長の言葉を受け、ノートと一緒にカウンターに行く。
カウンターで挨拶をしつつ、テーブルの上にギルドカードと依頼書、解体部屋で受け取った買取カードを置く。
「はい、こちらお預かりしますね。お支払いはギルドカード内に貯めておかれますか?全て現金でお支払いしましょうか?」
どうやら、ギルドカード自体に口座が紐付けられている様子。冒険者ギルドに銀行機能もあるのか。
今回は、全額現金で受け取って一部を細かい金種でもらえるかと尋ねたところ、大丈夫との事だったので、お願いした。
依頼書には依頼達成時にギルドで受け取れる金額が書いてあり、今回は銅貨1枚もらえる様子。
カウンターの下の方に何やらおいてあり、そこにギルドカードを置いたり、買取カードをスキャンしたりしている様子。そして、何かを見てギルドの職員が固まった。
もしかして、大金になる魔石がとれる魔獣は、皮と骨までやばかった…?皮は防具として使うなら優秀だったよね…?
「どうしたんです…?」
思わずノートも職員に声をかけていた。すぐにすみません、大丈夫ですとこちらに微笑み返してきたが。
「持ち込まれた魔獣の買取金額ですが、〈砂哭蛇〉5体分で銅貨1枚と小銅貨2枚となります。」
職員が、ごくりと息を呑んで、続きを言う。
「…巨大な〈魔猪豚〉の皮と骨は、小銀貨1枚と大銅貨3枚での買取となります。解体手数料として今回は小銅貨2枚を引き、残りの金額からギルド税として1割…大銅貨1枚、銅貨3枚、小銅貨2枚お預かりします。
ですので、ミルキィさんには小銀貨1枚、大銅貨1枚、銅貨6枚、小銅貨6枚のお支払いとなります。
細かい金種もご希望でしたので、小銅貨2枚分を、大鉄貨16枚、鉄貨16枚、小鉄貨16枚、石貨20枚お渡ししますね。」
準備します、と言われて少し待ち。
ずしゃり。カウンターに袋入りで大小様々な種類の硬貨が置かれた。
細かい、細かいよ…!とりあえず袋は〈収納〉しておこう。




