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一章:魔法使い、解体部屋に行く。

扉を開けて、渡り廊下を歩いて、別棟になっている解体部屋にやってきました。まぁ、解体は匂いが出たりするから。解体部屋のある別棟の周り、中庭や花壇、洗い場が見えてギルド以外の建物とは離れているのは、そういう事だろう。

さて。解体部屋の出入り口のドアは全開になっているので、ノックせずにこんばんはー、と中に声をかけながら入る。お邪魔しまーす、とノート。


「おう、新人さんか?」

「ねーちゃん遅かったな。」


中にいたのは筋肉ムキムキの背の低めの男性と、門にいたティグレでした。…なんでいる?


「ほー、ティグレが言うとったやべぇ大きさの〈魔猪豚〉の頭を持っとるっちゅーお人か。ここにきたっちゅー事は解体させてくれるんか?」


〈収納術〉の中かなんか?まぁ、ここに出してけれー、と筋肉ムキムキのおっちゃんはマイペースに出入り口よりも奥のスペースを指差す。

そんなおっちゃんの、左耳の後ろ側から生えているラピスラズリも気になる。エデュライナも花が咲いていたし、現地種族の特徴なのだろうか。教えてもらわねば。

いや、その前に。


「いやいやいや、待て待て待て待て、なんで門にいた人がここにいるんだよ。」

「門番の仕事終わったし、ねーちゃんの狩った〈魔猪豚〉のでかさが気になってなー。」


ノートのツッコミにこちらも自分のペースを崩さず、ティグレが答える。瞳は真剣さを帯びており、恐らく実際に交戦した場合の事を考えての確認なのだろう。

でかいでかいと連呼されて解体部屋にいる他の冒険者と対応していた職員もざわめき始めたので、出さないと言う選択肢が消えた気配がする。

おっちゃんが示した範囲に行き、周辺確認。問題なく出せるだろう。出しますよー、とミルキィは周囲に声をかけて、まずは頭をどん。うお、でっか…と誰かの声が上がる。さもありなん。他の〈魔猪豚〉の頭と比べても4、5倍は大きいと思う。

頭の大きさだけでも、目をキラキラさせているおっちゃん。体の方も出しますよー、と身体もどん。

常識はずれの巨大さに、周囲の言葉が消えた。が、すぐに解体部屋の職員達が動き出す。〈魔猪豚〉の大きさを確認してすぐに仕事に戻っていったよ。


「なんじゃこのでかさ!?ここで長年解体しとるが、こーんなでかさははじめて見たでなっ。しかも状態がええ!断面もええ!おおお、血が滾るでなー!!」


一人テンションあげあげ状態であった、筋肉ムキムキのおっちゃん。解体するど、ええよな!?とうっきうきで解体道具を取りに行くおっちゃん。親方、その前に決める事決めないとー!と、紙付きの板を片手に、一人の細マッチョな男性がこっちに来た。


「ギルドカードの提示をお願いします…確認できました、ありがとうございます。こちらの〈魔猪豚〉の素材なんですが、買取か返却かを教えてください。」

「お肉と魔石は全て返却、残りの素材は買取で。」

「わかりました。…親方、肉、魔石以外は買取ー!頭剥製にできますー!」


ミルキィに確認をとって、細マッチョの男性は親方の方へとまた移動していった。…買取値段高いといいな。

あ。後で他の職員に〈砂哭蛇〉の買取お願いせねば…!

そうミルキィが考えている後方で、ティグレの表情が完全に固まっていた。


「…は?

あのデカさ、普通にやり合ったらこっちが負ける。体当たりを喰らえば、それだけで命がヤバい。デカいからこそ俊敏性はそこまででもないだろうが、接近戦は不利。遠距離で体当たりを喰らわないよう立ち回りながら攻撃を続けるか、攻撃を加えて即離脱を繰り返すか。だが、その戦法をとれば普通細かい傷が身体中に出来る。

それを傷無しで討伐したと。しかも断面にささくれが無い。何度も衝撃を与えたわけでは無い、一気に首を切り落とした…?…は?」

「冷静に考えるとやべーやつだったんだなぁ、あれ…。」


表情固まったまま、ティグレがつらつらと考察を呟き続け、その横でノートが苦笑いしていた。さっくり踏み込んで一撃で首飛ばしたから…。

うんまぁ、体重もあるし、身体も大きいので、まともに盾で体当たりを受けたら腕が持っていかれるどころではなさそうだし、体勢崩したところに踏まれて体重かけられたら骨折れるどころではないだろうから、やばいやつだったんだろう。多分きっと。

ティグレの呟きを聞いた冒険者の顔もひきつっていた。

そんな中、きゃっきゃと解体部屋の職員達は〈魔猪豚〉の解体に取り組んでいた。いつの間にか人数増えてる。


「ねーちゃん…とんでもねぇ奴だったんだな…?」

「高ランクの冒険者ならおんなじ事が出来るんじゃ…?」

「こんな田舎じゃあそうほいほい高ランクなんていねぇし来ねぇよ…。」


なんだか、ティグレがしおしおになっていた。が、大きく息を吐いて、しゃきんと背筋を伸ばして、ティグレはミルキィの方を向く。


「いや…ねーちゃんがあれを狩っててくれてよかったのかもしれんなぁ…。うちの町でどうにかしようとすると、被害がやばい事になってただろうからな…。」

「あー…お役に立てたなら幸い…?」


多分あれだけ大きくなったのは、一過性の、ダンジョン発生の影響の気配を感じるので、今後はここまで巨大化した〈魔猪豚〉や他の魔獣は出てこないだろう。

ティグレとミルキィが互いに顔を合わせて、苦笑い。その横にいたノートが解体部屋の職員に向かって声を上げる。


「あ、更にお役に立ちたいんで、誰か〈砂哭蛇〉も解体して欲しいんだけど、誰かー!」


あ、今回の本題。

ノートの声掛けに、手の空いていた解体部屋の職員が来てくれた。解毒薬の材料として使って貰うのでまるまる買い取って貰う事に。20匹預けようとしたらこんなに一度に処理できない、との事だったのでひとまず5匹預ける事に。残りはまた明日。亀とか他にもまだ買取希望の素材があるからね…。

まだあったのか、とティグレの呟き。流石に門のところでうじゃうじゃと蛇を出せんよ…。

読了ありがとうございます!

また次話お会いできると嬉しいですっ。

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