一章:魔法使い、話す。
ランクについての説明や冒険者についての心得など、冒険者になったら必ず受ける講義があるとの事。
今日の分はすでに終了しているので、明日また受ける事に。講義を受ける前でも、手持ちの薬草や魔獣素材を解体してもらったり納品したりしても良い、との事だったので、一部メンバーを残してどんな依頼があるのかを確認したり、解体や納品をしに行くことに。手持ちがね…ないからね…。
何かするにもお金は大事である。ああ、金銭事情も確認せねばならないのだが、トゥエラはこの部屋に残るメンバーである。まだ若干意識がこっちに戻ってきてない気配があるが。アトラやルビナがギルドに来てないだろうか。
「じゃ、こっちは任せるね。」
「任されました。そっちもよろしくね。」
キュウヤと言葉を交わして、ミルキィ達はギルドマスター室を後にした。
ギルドマスター室に残った面々はソファーに座り直したり、席を移動したり。
ドレグはギルドマスター室の横の給湯室のようなところでお茶を注ぎ、各人の前に配膳していく。ほわり、蒸気がのぼり、ふわりとハーブの香りが鼻をくすぐる。
「して、わしらに伝えねばならぬ話とはなんですかのう?」
少し首を傾げながら、トラッカ冒険者ギルドノルキスタ支部ギルドマスターがキュウヤ達に問う。ドレグ冒険者ギルドノルキスタ支部副ギルドマスターは書記役を担うために板に紙を取り付けたものと万年筆を膝の上に置いて準備万端だ。
キュウヤは赤い瞳をトラッカに向け、口を開いた。
「冒険者ギルドに来たのは、冒険者に登録するためだけではなく、情報提供するためでもありました。内容は大きく分けて二つ。
まず一つ目は、森の中のダンジョン。実際に確認した事はないですが、魔獣の動き、〈探索〉を用いた情報精査などでダンジョンのある位置はほぼ推定出来ています。…フォード、地図を。」
「ああ。」
キュウヤは淡々と告げる。トラッカは眉毛の下のいつもなら隠れているまんまるな瞳が見えるほど、驚きで目を見開く。ドレグもまた、驚きに満ちた表情でキュウヤを見ていた。
フォードはポーチから折り畳まれた紙を取り出し、それを机の上、ティーカップの置かれている間に広げた。それは、彼らがこの世界に来てはじめに滞在していた森の地図。
フォードはすっ、と地図の一端、南西方向の描写範囲の端を指差し口を開く。
「こちらがこの町、トルキスタのある場所。」
そして、今度は対角線上と言ってもいいだろう。北東方向の角の内側部分を示し、告げる。
「この周辺に、ダンジョンがあると推測している。」
その言葉に、トラッカ、ドレグの両名が息を呑んだ。
「恐らく、この町からだと一日がかりの移動になるだろう。
そこで一つ追加を。我々が宿代わりに使用していた洞窟がここにある。」
今度は地図の中央寄りの南西部に広がる山裾の一角である場所を指差して、フォードが告げる。
フォード達が暮らしていた、あの洞窟だ。
「この町からおおよそ5時間程度の移動距離にある洞窟だ。我々が作り、使用してきたものだがある程度の家具も残している。更に洞窟前に畑も作ってある。
ダンジョンに移動する際や、森を移動する際の仮宿として使用できる程度には整えておいた。」
「仮宿として整える前に、獣の住処にはなっていなかったので、獣の縄張りの範疇外の可能性がありますね。」
「…推定ダンジョン位置から離れている為、拠点として用いる事は難しいが、中間の休息地点としては良条件かと。」
フォードとキュウヤの言葉に、ドレグは悩みながら思考を巡らす。
「ダンジョンから魔獣が出てきている。その状態からこれ以上先の段階に進ませるわけにはいきません。
至急、ダンジョン探索のための一団を編成し、派遣せねば。」
「うむ。物資を確保せねばならんし、ダンジョンが確認できたら近隣のギルドにも応援を頼まなければの。」
ノルキスタ冒険者ギルドの最高権力者二人が互いにアイコンタクトを取り、次にするべき事を決めていく。
二人の脳裏にあるのはダンジョンが起こす最大の脅威。それを回避する為に何をせねばならないか。どうするべきなのか。まだ余裕はあるだろうが、情報があるなら行動は早い方が良い。
視線は地図に、思考は巡る。
「こちらの地図はうつさせていただいても?」
「提出する。使ってくれ。」
「ありがたくいただきます。」
フォードに渡された地図を受け取り、ダンジョン対策の為の指示のために立ちあがろうとした時、シルトが待ったをかける。
「二つ目も聞いていって欲しいのだ。こっちの話だって指示を出すと思うのだ。」
「ふむ、シルト君や。わしらに話したいということはなんじゃ?」
シルトの言葉にトラッカが視線を向ける。
シルトは一つ頷いて声を上げた。
「食料増産方法と薬草の栽培に成功した話なのだ。」
「…は…?」
ノルキスタ冒険者ギルドの最高権力者二人の時が止まる、ほどの衝撃。
原因不明の作物の収穫量減少。それを、解決する手段を見つけたというのだから。
「とはいうものの、まだ一箇所でしか試してないから確定条件ではないのだ。
冒険者ギルド側でも実際に試して欲しいのだ。」
そう言ってシルトは微笑んだ。
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




