一章:魔法使い、やっと冒険者になる。
森の中で頼んだ依頼とトラおじじの指導依頼は内容がバッティングしそうなので、後でトラおじじも交えて話し合うことになった。いや、トゥエラは唐突にとびこんできた昇格の話に目を白黒させていて、愕然としている状態なので、もしかしたら話半分で聞いている可能性がある。後で念押しをせねば。
「ふぉっふぉっふぉっ。冒険者登録を進めていこうかのう。皆様方、代筆は必要ですかの?」
「大丈夫なのだ。看板読めてるから書けるはずなのだ。」
「おおお、それは素晴らしい。」
豊かなふっさふさとしたお髭を揺らしながら、トラおじじが尋ねてくる。
異世界から来たのであれば、普通は現地の言葉は話せない読めない書けない状態であろう。だがしかし、〈森の輪〉に異世界人であると伝えた際に現地の言葉が喋れることを驚かれていないので、推定勇者も魔法使いも何かしらの要因で現地の言葉を話せるようになるのだろう。しかし、代筆を聞かれたので、読み書きができるか否かは個々人によるのだろう。
では、ミルキィ達はどうなのか。スキルの力で話す事も読み書きも可能である。どんな言語でもどんとこいな状態である。
「ではドレグ、皆様方に冒険者登録用の用紙を配ってくれるかの?」
「わかりました。こちらです。」
がさり。ドレグはテーブルの下から木の板に固定した紙と万年筆を取り出し、ミルキィ達に一枚と一本ずつ渡していく。
用紙を見ると、名前だったり、性別だったり、使用する武器や特技などの記入項目がある。かなりシンプルだ。
「名前のところは愛称などを入れていただいてもかまいません。年齢の項目は14歳以下の、受諾可能な依頼が町の中のみに限定される見習い冒険者の子達が対象になりますので、空白でもかまいません。」
「名前以外はの、わからんことがあったら空白でもかまわんのじゃ。じゃが、色々書いといてもらえるとギルドから依頼の声掛けしやすいのう。」
ドレグとトラおじじからの補足。
なるほどなるほど。年齢を書かなくてもいいのはラッキーである。出身地も書かなくていいだろう。異世界の地名を書いたら見た人が混乱する。
「トラおじじ、トラおじじ、特技のところに魔法って書いても良いのだ?」
「ふむ。皆様方が魔法使いである、というのをおおっぴらにするかどうか、にかかってくるのう。」
トラおじじにシルトが問う。
「まず、皆様方が魔法使いである事は、冒険者ギルド間で情報を共有せねばならんのは、了承してほしいのですじゃ。勇者や魔法使いが出現したら他の冒険者ギルドにも伝えねばならない決まりですのじゃ。」
「それは問題ないですよ。」
魔法使いなんてそうほいほいやってくるもんじゃないからねぇ。それが一気に11人。
…なんか、勇者とか魔法使いに対する取り扱いの仕方のマニュアルでもありそうですね?後で確認せねば。
「皆様方にお渡しする冒険者ギルドのカードには、他のものにはない、魔法使いであることを示す特殊な印が付きますのぅ。」
「どれが勇者、あるいは魔法使いを示すマークなのかは各地の冒険者ギルドのギルドマスターか副ギルドマスター、また本部の上層部のみしか知りません。」
「受付嬢は何かしらのマークが付いている冒険者が来たら、すぐにギルドマスターに報告するよう定めされておる。ギルドマスターに会うか会わないか聞かれると思うが、皆様方の自由にしてもええんじゃぞ?でもわしとはちょこちょこあってほしいのぅ。お話ししたいのぅ。」
「面会不要の印もつけれますので、ご希望であれば声をかけてください。こちらは受付嬢も知っている印になります。」
丁寧にトラおじじとドレグが説明してくれる。
この町にいる間は、ちょこちょこおやつ持ってトラおじじに会いに来ようかな。
「後から魔法を特技に加える事は可能なのだ?」
「可能ですじゃ。少々お金はかかりますけどのー。」
「それなら、少なくとも見習い冒険者期間は魔法は書かないでおこうか。変な絡まれ方したくないからね。」
シルトとトラおじじのやりとりを聞いて、キュウヤが結論を出す。確かに、見習い期間で魔法使えるよ!って書いたら良いも悪いも関わってきそうではある。
パワーで回避できそうではあるが、回避できそうなら回避するべきだろう。お金かかるけどどうにかなるはず。それか大勢のいる前で魔法含め実力を示せば、変な絡まれもどうにかできるだろう。きっと。
無難に〈索敵〉、〈収納〉ができる事でも書いておこう。〈鑑定〉はやめておこう。このスキルの立ち位置がわからなさすぎる。
悩みながら11人、何とか申請用紙が記入できたのでドレグに万年筆と一緒に渡す。ありがとうございます、とまとめて11枚の板を机の端にまとめて置いて。
今度は窓辺の棚からそれなりに大きい水晶玉のついた厚みのある印刷機のようなものを取り出し、ソファーの間に置いてある机の上に置いた。写真が出てきてもおかしくないような取り出し口もある。
「こちら、ギルド証を作成し、冒険者ギルドの一員として登録する為の魔道具になります。お一人ずつ名前を呼びますので、名前を呼ばれた方はこちらの水晶を両手で包んでください。合図するまで手を離さないようにしてください。」
おお?なかなかにハイテク…?
ドレグが説明している横で、トラおじじが下の方のギルド員の書き込み欄に色々記入してから、板から紙を取り外す。ドレグはその紙を一枚持つと、名前を確認し、魔道具の水晶のない側の上の部分から蓋を外し、記入した側を下にして紙を透明な板の上に置いて、蓋を元に戻す。印刷機を使うような置き方ですね?
そしてキュウヤの名前を呼び、水晶に手を当てるよう指示をする。その通りに水晶に手を当てると、指の隙間から水晶が仄白く淡く光る。
そのままお待ちください、と言われ、待つ事1分から2分ほど。
かたん、と取り出し口に手のひらサイズのプレートが落ちる。もう手を離していただいて良いですよ、とドレグ。
鈍く光るプレートをトラおじじが取り、キュウヤに渡す。
「これが冒険者ギルドに登録した証、ギルド証じゃの。個人登録しておりますので、他の人がギルド証は使えないようになっておりますの。
そうそう、ランクが上がったら色も変わりますでな。目指せSSSランクじゃぞっ。」
…まさかの英字である。勇者か魔法使いかわからないけど誰だ、持ち込んだの!?
この後、無事に全員登録しました。




