二章:ルビナリオからやってきた彼は、1
「前から言っているけど、本当なら何も難しいことはないのよ。
就業時間は守る。休憩時間はしっかり休む。ちゃんとご飯を食べて、夜はしっかり寝たらいいの。
今回は事情を知らない人と周りにいるんだから、ちゃんとしよう。」
「きちんと守れる様頑張ります…。」
ついでにミルキィからも、念には念を入れて。にこやかに告げたらグラシャがしょんぼりとしながらも前向きな返答を返す。
ルオルが明後日の方向を向いているだが。個人指名して守ろうね?と、ミルキィは更なるツッコミを入れておく。
「トラおじじ達と〈森の輪〉の皆にお願いがあるんだけど。この二人が寝なかったり休まずに書類整理してたり採取物の整理とかしてたら教えて欲しいな。」
「万が一、守っていないという連絡がありましたら。派遣終了後に私自ら再度の講義を行います。
…宜しいですね?」
ミルキィがお願い事を告げると、エルフェンテがずももももと、主にルオルに圧をかけていた。
ルオルがぴるぴるしつつ、最善を尽くします…!と告げている。言質取られてますね?違反報告来たらペナルティ大変だと思うが頑張れ。
「お願い事は任されるが…大丈夫なのかの?」
「書式の違う書類だろうがなんだろうが、見ただけで即座にどうしたらいいかわかる人材なんだよねぇ…。」
「…即戦力になりうる人物、という事ですか。その能力は確かに魅力的ですね…。」
トラおじじ達が若干人選がどうなのか心配になっている様子。キュウヤが人選理由を伝えると納得していた。
アトラも、問題ないぜー、との事。まぁ、〈森の輪〉はルビナリオ行ってからも一緒に行動する事もあるだろうし。直接ウィルフェアやエルフェンテの指導が入りやすい環境ではあるからまぁ…大丈夫か。
完全放置の環境になるからこそ、ルオルに容赦なく釘を刺していくエルフェンテとウィルフェアの二人である。
「それと、ルオルには個人情報ののっている資料は取り扱わせない方向でお願いしたいかな。
期間限定の新人だからね、外部に漏れたら良くない情報は触らない方が安全かな、と。」
「それもそうじゃの。基本的にダンジョン関連の書類とルビナリオ周りで増えた書類を任せようかのー。」
キュウヤとトラおじじの間で、ルオルに任せる書類の範疇が決まっていく。
実は、個人情報の載っている書類については裏話もあって。ルオルに見せない事で、オートラナの情報網に情報が流出しないようにするのも、一つの理由である。個人情報保護大事。念には念を入れたいのである。
そんなやりとりをしていると。…誰かが、階段を上がりそうな気配を察知。同じ気配を察知したキュウヤが、即座に指示を飛ばす。
「オートラナ総員帰還!」
キュウヤの指示を聞いた四人は短く了承の意を伝え、即座に空間に開いた真っ暗な穴の中へと体を潜らせていく。
四人全員帰還した後、しゅるんと空間に開いた真っ暗な穴を閉じれば、そこには何もない空間があるのみ。
あまりにも素早い撤収劇に、トラおじじもドレグも、〈森の輪〉も驚きの表情を浮かべている。
え、どしたの…?とルビナが呟いたその時。
こんこん、と、ギルドマスター室の扉を、誰かがノックした。
「トラッカギルドマスター、お忙しい中すみません。
〈曙光の戸〉のクランリーダー、エファリオ・ルテン氏が来訪され、面会を希望されているのですが。お時間のご都合はいかがでしょうか。」
穏やかな女性の声が、扉の向こうから聞こえてくるのだが。果たしてこれをミルキィ達と〈森の輪〉も聞いていていいものか。
「どちら様?」
「ルビナリオからやって来たAランククランのクランリーダーの方です。」
こそり。小声でのキュウヤとドレグのやりとり。
ふーむ。…ルビナリオのクランの人なら、協力者として引き込めばいいだけの話か。それならこちらとしても、あちらとしても部外者じゃなくなるだろう。
読了ありがとうございます!
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