二章:きみとあなたと、こんにちはを。3
「挨拶をありがとうのぅ。
わしは、ルオル君の派遣先となる冒険者ギルドノルキスタ支部のギルドマスターをやっておるトラッカ・ベル・ノスターヴェという者じゃ。気軽にトラおじじと呼んでくれたらええぞー。」
「冒険者ギルドノルキスタ支部副ギルドマスターのドレグ・アルヴァーノです。現在ダンジョンや冒険者ギルドルビナリオ支部のあれこれで、一時的に処理しないといけない案件が増えておりまして…一緒に捌いていただけるとありがたいです。」
にこにこと好々爺の顔でトラおじじが。微笑みつつどこか苦労してる感が滲み出ているドレグが。
それぞれ三人に向かって挨拶をし。
「で。おれらがグラシャが一時的に加入する〈森の輪〉なっ。おれはリーダーのアトラ・クロンだ。よろしくな!」
「ルビナ・レストだよー!一緒に頑張ろうねっ。」
「トゥエラ・ハルパです。何かわからないことがあったら、気軽に聞いて欲しいな。」
「エデュライナ・トワ・レスト。よろしく。一緒に活動するの、楽しみ。」
にっこりにこにこと満面の笑みを浮かべたアトラとルビナが。穏やかな微笑みを浮かべたトゥエラが。表情は変わらないものの、楽しそうな光を浮かべながら目を細めるエデュライナが。
三人に名乗りをあげ、歓迎する。
…何気に年下扱いされてるルオルとグラシャであるが、多分〈隣空族〉の大体の人よりは年上だと思う。オートラナ全体で見ると新人寄りだけど。〈隣森族〉は寿命とかわからないけど、エルフと生態が似通っているのであるならば、〈隣空族〉よりもずっと長生きで歳の取り方も緩やかなのだろう。エデュライナに聞くのはなぁ。女性に歳の話をもちかけるもんじゃない。
それに、反対に歳を聞かれたら旅人達は歳の話をはぐらかしにかかるしかないので…そんな状況にも持って行きたくないので、心で思うだけにしてお口はチャックである。
「ご丁寧にありがとうございます、皆様方。
ルオルとグラシャは明日、冒険者証を受け取りました時刻より皆様方の元に派遣開始となる想定でございます。
ルディ様より冒険者の初心者講義で教えてもらえる内容、及びその際に配布される冊子の内容はオートラナ全員熟知致しましたので、すぐに動けるかとは思います。」
「…準備万端じゃのう…。」
エルフェンテの言葉に、感心した様なトラおじじの言葉がぽつりと溢れる。
情報の共有はルディの管轄であるのだが、すでに色々お仕事している様子。データベースに色々情報が増えていっていることでしょう。素晴らしい。
真面目な表情を崩さないままのエルフェンテの話は続く。…そういえばロッテ三兄妹は注意すべき事がありましたね?
「ルオルとグラシャ、二人を派遣するにあたって、皆様方にはお願いしたい事がございます。」
エルフェンテが伝えながら、一度綺麗なお辞儀をする。エルフェンテさん、と驚いた声をルオルとグラシャが上がるが、反対に旅人達から溢れたのは納得の声である。
そんな注意事項ある様なオートラナを派遣していいのかと言われそうだが、この二人は少なくとも求められている能力的に相性が最適なのだ。注意事項も周りにとんでもないご迷惑をおかけする様なものではないし。ストッパーが必要なだけで。
商売人気質の強い関西弁もどき姉妹やら気が付いたら背後に立っていたりする気配の薄すぎる三兄弟とかよりは癖強くないよ。多分。…明日会ってもらって反応見なければ。
「こちらの二人、好きな事はいくらでも集中して実行する気質です。ええ、寝食を忘れていくらでも。
恐らく、皆様方に派遣したとしてもその気質は変わりませんので、誠に申し訳ございませんが、時折声をかけていただけるとありがたく思います。」
「…ええと、そのまま放っておいたらいけない…?」
「好きなものに囲まれる派遣先でありますので、確実に。
例えばルオルなら、声掛けがなければ間違いなく就業時間を超え次の日皆様が出勤してきましても同じ様に嬉々として書類業務をこなしている事でしょう。
我々オートラナは〈隣空族〉といった種族とはまた異なる存在。休養も食事も必須ではありませんので、この二人は放っておいたらいつまでも作業をする可能性しかありません。」
「えー…寝るのもご飯食べるのも大事だよ…?」
純粋な瞳でルビナが、ルオルとグラシャを見つめている。若干居心地悪そうにしている二人であるが、甘んじてその視線を受け取るといいと思うよ。これを機にもうちょっと自制できる様になるといい。
ちなみに、ルオルについては引きこもって寝食なしで一年間ほどぶっ続けで本を読み漁って資料纏めていた前例があるので…全く大袈裟な話でもないという。その一件で曖昧だったロッテ三兄妹の気質が一気に知れ渡ったんだけどね。まさかここまでとは、という。ウィルフェアが、声掛けや対策が不十分でした…!と後でとっても嘆いていた。
今回は他の事情を知らない誰かとも一緒に働く事も想定されるので、二人には是非ともヒトらしく振る舞って欲しい所存。
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




