一章:魔法使い、町に行く
他のメンバーと無事に合流出来ました。戻ってきたら何かしら採取してる面々が多かったのだけれども。
ミルキィが合流して、ロヴェルに勧められて水を飲んでいたら、採取のために少し離れていたところにいた面々も戻ってきた。
各チームの持っている籠の中には、青い果物やカラフルなキノコ、薬草や花が入っている。カラフルなキノコは毒性大丈夫なのか尋ねたいほどカラフルである。蛍光色の紫色は毒キノコでは…?しかし、〈鑑定〉結果的には、とても良い出汁が取れるとの事。毒性もなし。そのうちスープにしてみようか、と料理担当が呟いていたが…果たして何色のスープになってしまうのか。
青い果実もがっつり青い。りんごのような形をしたその果実は、ウルトラマリンブルー色である。草木染めに使えそうですね?一つ試しに割ってみれば、のぞくのはやや透明感のあるホライズンブルー。種はインディゴと、全体を見るとコントラストがパリッとしている。食べてみると食感はぷにぷにとしていて、ほのかに甘い。そして何より水々しい。水分補給にちょうど良いですわね、とはアヤナの感想だ。
「この果実…スラバだっけ?この果実の木の場所を把握しておけば、手持ちの水の消費を抑えれるねぇ。この甘さなら、そんなに苦手な人いない、はず…。」
「粗く刻んで、高熱を出した人の水分補給にも使えそうだね。」
とは課長とキュウヤの言葉。
トゥエラによると、実際にキュウヤの言うような形で利用されていると事。冒険者ギルドで収穫依頼も出ている果物との事で、冒険者登録が終わった後に納品予定だ。
エデュライナからも、カラフルなキノコの中にも収穫依頼が出やすいものがあるから、冒険者ギルドで依頼を確認してみたらどうか、という提案があったので、そちらも確認する予定。気が付けば、冒険者ギルドに行ってからの予定がどんどん増えていく。
いやぁ、冒険者登録が楽しみになってきたなぁ。
寄り道をしながら歩き続け、予定時間よりもいくらか過ぎた夕暮れ時。
森の木々がまばらになり、そろそろ森を抜ける事ができそうだ、という位置にまで来て。先を尖らせた木を組んで作られた魔獣対策の防護柵が見えてきた。柵の周囲には堀なのだろう、地面が見えない箇所がある。
上を見上げると、ゆらゆらと立ち昇る煙が、昼と夜の境界で揺れる茜空に消えていく。
「…あれ、なんか、おかしくね?」
こちらに来てからはじめての人里を観察していたら、アトラの困惑した声が聞こえる。
「門のところ、人が多い…何かあった?」
エデュライナの平坦な声の中に、動揺の響きが微かに混ざる。
森に面していない方向にある村の門には、武器を手に持ち、防具に身を包んだ人々…おそらく冒険者か衛兵かが十数人ひとかたまりになって、なにやら話している様子。ある程度離れているのにも関わらず、こちらの方にまで声が聞こえてくる。
すると、集団の一人がこちら…というか、〈森の輪〉の面々を見て、手を振ってきた。
「おい、〈森の輪〉が帰ってきたぞ!」
「それにしちゃあ、人数多くねぇ!?」
〈森の輪〉4人に旅行者11人の大所帯である。確かに多い。
アトラが小走りで門の前の集団に駆け寄り、ただいま!と元気な挨拶をする。
そんなアトラに、無事だったか、よかった、と顔色の悪いおじさんが安堵の息をついた。
「こんなところにいるなんてさ、なんかあったのか?」
「ああ、幾つも問題だらけだ。まず、森で新種の魔獣の蛇に噛まれたやつがいる。」
思わず課長の方を振り返る。森の中で収穫した薬草とかきのことかは彼女が〈収納〉している。
一つ頷き返されて、即座に手持ちの薬草を籠に入れ始めた。
「どんな蛇!?解毒薬は!?」
「同じパーティーがその蛇を討伐し、ギルドで〈鑑定〉してもらったんだが、〈砂哭蛇〉という魔獣だ。この辺りじゃ見た事ない蛇で、いつもの解毒薬を使ったが、効果は半減してる。今のところ小康状態だが、完全に解毒できてないからいつまた悪化するかわからねぇ。」
…その蛇、何匹も〈収納〉してますね?
蛇の名前を聞いた瞬間に、アトラがミルキィの方を振り向いた。
「ティグレさん、解毒薬の材料はわかりますか?」
「薬師のババとギルドマスターが調べて、足りない素材は蛇の血液と月影草、ナーシャ草だ。持ち込まれた〈砂哭蛇〉は使えなかった。探しに行きてぇのに、こっちまで噛まれたら事だ、とギルドが支援品を準備するまで許可が許可が降りねぇ!」
トゥエラの問いかけに答えたおじさん…ティグレが吠えるように叫ぶ。完全治療できる解毒薬がないのに毒蛇討伐に向かうのは、二次被害を考えると許可が降りにくいのはわからなくもない。
課長にアイコンタクトを送ると、力強い頷きが返ってきた。そして渡される二種類の薬草の入った籠。一緒に〈砂哭蛇〉も三匹入れてしまおう。
「トゥエラ。その材料、どこに届ければいい?」
「え、あ、薬師のおババ様のところに…って、まさか。」
「あるよ、足りない材料全部。」
「うおっ!?ねーちゃんちょっとマジか!?…マジだ…。」
後で素材を十二分に使えるよう、全部丁寧に狩っておいてよかったよ!
唐突に見知らぬ人物に声をかけられて困惑しながらもティグレは勢い良く、持っているカゴを覗き込んで、安堵の息をつく。
「見知らぬねーちゃんよ、ありがたいんだが手続きをしてからじゃねぇと村には入れねぇんだわ…。おい、ライン、ベルタ、ねーちゃんからこの籠預かって薬師のばーさんとこに持ってってくれ!グロムとエデュライナもついていって、緊急素材買取の依頼の為の監督よろしくな!」
知らない人を緊急時でも村に入れない。門番なのかな?職務に忠実なので、好感が持てます。
預かります、と言うエデュライナに籠を渡し、四人を見送る。蛇に噛まれた人がこれで回復すると良い。と思っていたらぼろっぼろに泣いている美丈夫から握手を求められた。周りの女子二人も泣き腫らした顔。
「これでうちの仲間が助かるよ!ありがとう!!」
どうやら、蛇に噛まれた人の仲間の様子。よかったです。
「ティグレさん、他の問題も教えてもらえますか?」
「おう。見た事もないくらいでかい〈魔猪豚〉を見かけたやつらが多いから、被害が出る前に討伐しないとまずいのが一点。見た事ない魔獣の目撃情報や討伐事例がここ最近増えているから、森の探索しないといけないのが一点。夕方だし〈砂哭蛇〉対策もできてねぇけど、森に行くかどうかで話し合ってたところだったんだよ。」
「ティグレ、せめて蛇に噛まれるリスクを軽減する為の装備を身に付けてくれ。そして夜に森を移動するのは危険だ。
ああ、だがしかし、森に探索に出たパーティーは君達が帰ってきてくれた事で全チーム帰還を確認できた。無事に戻ってきてくれてよかった…!」
制服を着た男性がティグレにつっこみつつ、アトラをハグする。この男性は冒険者ギルドの職員だろうか。そして、森の危険度評価が上がっている気配を察知。したけども…。
ああうん、ごめん。話題のでっかい〈魔猪豚〉、首切り飛ばした記憶がですね…?一撃必殺かました記憶がですね…?
実は、ダンジョンもある場所をほぼ絞り込んでましてね…?
旅行者一同、思わず視線を逸らしていた。
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




