部活作れって言われましても
「鷹峯!」
「なんすか赤坂センセ。退学すか?」
「鷹峯。校長から直々に通達があった。部活を作り、一年活動し実績を残せ」
「はい?」
生活指導も担当する体育教師の赤坂から告げられたのは叱責でも説教でもなかった。
「部活作れって言われても…この際はっきり言いますけど内申とかもう諦めてますよ」
「このまま燻っていていいのか?少なくとも空手部に入ったばかりの頃のお前は輝いていたはずだが」
「昔は昔,今は今っすよ。」
「あ、あの」
「む?城崎か。どうした」
「先ほど鷹峯くんは空手部のマネージャーさんを襲って先輩に退治されたって聞きましたが…もしかしてあれは嘘なんですか?」
「ああ。真相は真逆だ。マネージャーを襲っていたのはその先輩の方で、鷹峯が止めに入ったのだ。」
赤坂は懐かしむように話し始める。
「最初は疑ってしまったが、鷹峯の友人が証拠を集めてきてくれてな。だが、先輩の取り巻きたちがなんとしても道連れにしようとあらぬ噂を立てて今に至るわけだ」
「…………全部話してくれるよね」
「やっぱり。鷹峯くんは優しい人なんですね。せっかくですし,挑戦してしませんか?」
「ん…まあ城崎さんがそーいうなら、やってみるか」
そして、友人たちを集める。
「かくかくしかじかというわけなんだ」
「部活ねぇ」
「正直内申とかどうでもいいんだけどね俺は」
「面白そうじゃん!俺入る!」
「会計なら引き受けますよ」
「力仕事ならお任せあれ」
「わたしも入ります〜!」
「おうよろし…ん!?」
「「!?!?」」
いつの間にか、友人たちに混じってツインテールをぴょこぴょこと動かし満面の笑顔で手をあげて参加を表明する女子生徒がいた。
「誰だ…?」
「もー,忘れたんですかー?クラスメイトの有栖川梨沙ですよぉ〜」
「…部活の最低人数は超えたか。…野郎ばかりよりも女子が入ってくれたほうが城崎さんも助かるか」
「よろしくお願いしますね、有栖川さん」
「はいっ!礼花ちゃん!」
「!?」
正道の不信そうな目つきを見て梨沙は何かを感じたらしく先手を打つように声をかけた。
「…もしかして何か企んでるとか思ってます?そんなことしないですよ。わたしそんな計算できるタイプじゃないです!数学嫌いですし」
「そうかい…」
礼花と梨沙が空き教室内で会話している中、男子4人組は空き教室の外で会話していた。正道がどこかを信頼してない様子だったので、気になった翔太が尋ねていたのだ。
「マサってさぁ、なんか梨沙ちゃんに冷たくない?」
「裏がありそうな感じがするんだ…」
「まさかぁ?純粋無垢な妹キャラよ?」
「有栖川さんのSNSの裏アカウント、探してみましょうか」
涼悟が提案するが、寿は慎重にすべきと進言する。
「うーむ、深入りはよしたほうが良さそうです。もしかすると、触れてはいけないパンドラの箱かもしれませんからなぁ」




