転校生ちゃんとよだか君
その日、俺はやる気も、段も、信頼も、も、何もかもを失った。
だが、ある出会いが俺の中の「熱」を復活させた。
…………………………
鷹峯正道は友人の石森翔太、遠藤涼悟、蜂須賀 寿が政道と会話していた。
「なんか盛り上がってるな。なんか知ってる?」
「ああ、転校生が来るらしいよ」
「春は出会いの季節と言いますからなぁ」
「ふーん」
青のように見える黒髪のストレートヘアをたなびかせた美少女が教室に入ってきた。
「どこの学校から来たの?」
「かわいいー!」
「美人じゃん」
彼女が教壇に立った。そして、鈴を転がした様な可憐な声で自己紹介を始める。
「城崎礼花と申します。桜華女学園から転校してきました。これからよろしくお願いいたします」
彼女のすらすらとした自己紹介を聞いた生徒たちは拍手喝采を贈る。少し恥ずかしそうにしていた彼女を見かねてなのか、教師が礼花の席を指し示す。
「鷹峯さんの隣が空いてますね。そこに座ってください」
「はい。」
「よろしくお願いしますね、鷹峯さん」
「おう、よろしくな。あ、教科書、まだ持ってないなら俺の使ってよ」
「いいんですか…?」
「おう。」
放課後…
「んで、ここが大講堂。ふざけて「でぇ講堂」って呼んでるやつもいるな。…校長の声が色々特徴的だからさ。独特の訛り?ってのがあって」
「そうなんですね…?」
「ここで一旦休憩しようか。手洗いは突き当たりな」
「ありがとうございます。行ってきます」
用を済ませて戻ろうとすると、複数人の男子生徒が現れ道を塞いだ。
いずれもガラの悪そうな雰囲気で礼花は思わず数歩ほど後ずさってしまった。
「キミが噂よ転校生ちゃん?俺たちのクラスでも話題になってるよ」
「あの…なんですか?」
突然複数人に囲まれ怯える礼花。男子生徒たちは下卑た笑みを浮かべながら続ける。
「インキャのヨダカくんならやめといた方がいいぜ」
「インキャだし空手部退部なってたし」
「マネージャーに手を出して、止めに来た先輩殴ったんだと」
「そしたら返り討ちのボコボコよぉ。退学にならないだけありがたいと思うべきだよな」
「身の程をわきまえないからこうなるんだよアハハ」
男たちの嘲笑を聞いた礼花は震えていたが,それは怯えではない。いつのまにか怯えから怒りに転じていた。
「やめてください」
「え?」
「鷹峯くんは先生に頼まれてもないのに学校を案内してくれた優しい人なんです!そんなことするわけないっ!悪く言わないでくださいっ!」
礼花は勇気を出して男たちに自分の意見をぶつけた。だが、
「…美人だから下手に出てやれば…分からせてやった方が良さそうだなぁ!?」
男の1人が手を振り上げる。礼花はびくりと体を震わせ顔を青ざめさせる。
その拳が当たることはなく、男の腕は何者かに掴まれ止まっていた。
「鷹峯くん」
「その手、どーするつもりだ?」
正道だ。正道はがっしりと男の腕を掴み、握り潰さんばかりの勢いで圧する。
「ぎゃあああ!?」
「ゲゲッ!?ヨダカ!?」
「むしろ鷹じゃねえか」
「マジギレしてる…!」
鋭い眼光で今にも骨が砕けそうになるくらい力を込め、男子生徒達に問う。
「どうする?この子から手を引くか、全員手を握り潰されるか」
「は、はいい!手を引きます!おい、行くぞ!」
男子生徒たちは慌てて走って行った。
「…フン」
「…あ、あのさっきの男子の言っていたことなのですが…」
礼花が先程のことを聞こうとするが、正道はまるで何かを誤魔化すように
「後で話すよ」
と答えた。その時、コワモテの中年教師が現れて正道を怒鳴りつける。
「鷹峯正道!生徒指導室に来い!」
「うへぇ…めんどいのに見つかった」
正道は露骨に嫌な顔をして教師についていく。礼花も慌てて後を追うのだった。




