《議題1》狸議員による狸のための政治活動についての報告と展望
全日本狸連盟会長 坂東太郎狸禧八郎
「ええー、昨今の社会情勢を見ますに、我々は生息圏の拡大を続ける人間とますます共存関係を余儀なくされる事態となっております。戦後、法整備を進め、我々狸にとってより良い社会を実現するため、人間の政治活動への参入を開始しましたことは周知の事実かと存じます。そして先日行われました参議院議員選挙において、一名の狸議員が当選いたしましたことをここに祝します」
ここでパチパチと拍手が巻き起こった。
「ありがとうございます。ご投票、ご協力していただいた諸兄諸姉へ、本人に代わり御礼申し上げます。参議院議員に選出されました但馬博一君こと但馬史郎狸二郎三郎君は、より良き社会のために日夜励んでおられます。さて、まず彼が喫緊の課題としておりますのは、道路整備にございます。人間社会に自動車が普及して以降、狸の交通事故死亡件数は鰻登りとなっており......うん?鰻登りは不適切......?失礼、不適切な発言をいたしました。申し訳ございません。ゴホン、狸の交通事故死亡件数は例年上昇傾向にあります。但馬博一君は、狸のための狸歩道の整備、狸の交通事故を減らすためのこの先人間の飛び出し注意の標識の設置、交通事故で家族を亡くした遺族の方々への支援措置等の法整備を政策に掲げております。今後も期待したいところでございます」
司会進行役
狸ヶ淵権八郎狸久右衛門
「それでは続きまして、狸による政治活動に関する要望、質疑応答の時間へ参ります。前もって質問申告書をご提出いただいた方、ご準備をお願いいたします。」
毎分毎秒狸新聞 政治部門所属
関ヶ原小四郎狸梅乃
「それでは質問を初めさせていただきます。昨今、人間社会において、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標) 、いわゆるSDGsが国際目標と定められ、国や地方自治体に限らず、企業も持続可能な社会を目指して邁進しております。この国際目標を参考にし、我々狸社会も持続可能な社会の実現を目指す必要性があるかと思料いたします。理由としましては、人間の里山開発による狸の定住地域の減少、化け学並びに変化術の多様性の枯渇化、人間社会への流出に伴う狸口の流動化、それに伴う少子化、晩婚化。交通事故の件に限らず憂慮するべき種はそこらじゅうに芽生えています。交通事故の減少にとどまらず、長期的かつ包括的に狸社会の持続可能性を実現させるべく、よりいっそう政治活動の必要性が今後も増すかと考えられますが、そのあたりはどのようにお考えでしょうか」
日狸守党(日本の狸を守る党)党首 筑紫平八郎狸孫次郎
「ご指摘いただいた件につきましては、我々も課題とするところでございます。里山開発における狸の定住地域の減少につきましては、より一層狸議員を人間の政治界へ参入させ、人と狸のより良い共存社会を実現させる人と狸のスマートシティ計画の発案を行ってゆく所存です。また、化け学における多様性の枯渇化と狸口の流動化、少子化、晩婚化は密接に繋がっております。古来より我々は人間に限らずあらゆる動植物や器物への変化を学び、実践してきましたが、人間社会における娯楽性の増加に伴い、若年狸の変化術は人への変化を主題とし、その技巧の向上によって、里山を離れ人間社会へと生活の拠点を移す者も増えております。かといって、その意思を抑え込むことは、狸権の著しい侵害であります。そこで我々はまず外堀から埋める必要があると考え、狸学並びに化け学の教育カリキュラムの徹底した見直し、人間以外への変化の術を学ぶ専門的な科目コースの創設を行うことを検討しております。この教育改革により、若年層へ人間社会への定住以外の魅力的選択肢を提示することこそ、我々の成すべきことと心得ております。」
関ヶ原小四郎狸梅乃
「ご回答ありがとうございました」