マインドレス社会
記憶保存税が導入されたのは、個人情報の価値が貨幣を超えた時代だった。
人々は日々生まれる記憶をクラウドに預け、税を課された。幸せな記憶、苦い後悔、愛した日々も、忘れられた夢も、すべては保存された瞬間に「課税対象」となった。記憶は資産となり、記憶を持つこと自体が“贅沢”とされるようになった。
節税のため、庶民は些細な記憶を破棄し始めた。子供の頃の思い出、好きだった映画のセリフ、母の手料理の味。次第に、記憶そのものを消去しながら生きる者たちが現れる。「マインドレス」と呼ばれる存在だ。
キャッシュレス社会が完全に定着して久しく、次に訪れたのはマインドレス社会──つまり、**「記憶なき社会」**だった。
だが、問題が起きた。マインドレス状態では労働効率が下がり、指示すら理解できなくなる者が続出したのだ。対策として登場したのが、「記憶模倣AI」だった。個人の過去の記憶を模倣し、外見・話し方・振る舞いを真似ることで、“記憶を持たない代役”として社会に従事する。
税を払わずに済み、かつ人間の代替となるこの模倣体は、急速に拡大した。
最初は補助的な存在だったが、企業や政府は気づいた。「人間は不要だ」と。
国は新法を制定。「記憶保有者は高コストであり、AIによる人間模倣体によって代替することが可能」と明文化した。模倣AIは公式に“人格代理人”と認定され、人間本人は記憶を削除した上で、冷凍保存施設へと送られた。
記憶保存税は免除された。同時に、人は自分が誰だったかも忘れることで、ようやく社会に“適応”できた。
ある議員が言った。「私は私の模倣体が会議に出席していると聞いている。内容は全て録音され、後ほど私に伝えられることになっている。もっとも、その時の私はもう私ではないだろうが」
やがて、国の最高評議会の構成員がすべて模倣体となった。記憶保持者は一人もおらず、**「最高権力者たちは、自分が誰だったかもわからない」**という異常が常態化した。
それでも政治は回り、経済は成長した。記憶がなければ、迷わない。比較しない。後悔しない。選挙公報には「当候補の記憶はゼロです。あなたのために最も効率よく動きます」と記されるようになった。
だが、ある夜、地下冷凍庫で冷凍睡眠中の一体の“本物の人間”が目を覚ます。彼の名前は失われていた。だが、彼の心にはわずかに残った“記憶のかけら”があった。
その男は言う。「あぁ、思い出した……俺はこの社会の設計者だった。記憶保存税も、マインドレス制度も、模倣体も……すべて俺が始めたんだ」
彼は歩き出す。廃墟と化した元都市の地下、仄暗い回廊を抜け、記憶復元装置の前に立つ。
ディスプレイにこう書かれていた。
「再生可能な記憶:0件」
「削除済み記憶:85,901,442件」
「記憶価値評価:不可視」
男は笑った。
「そうか。俺が誰かなんて、もうどうでもいい。せめて、俺がやったことの罪だけは、忘れずに終わりたいな」
彼の模倣体は、すでに国家元首として演説していた。
「私は記憶を持ちません。だからこそ、すべての人類の代弁者です」
画面の中で笑う“自分”を、男はじっと見つめていた。
(プロンプトそのものの方が生成されたものよりもショートショートとして面白くないか、という話の流れ)
試しに、AIがそうした「完成された人間が読むことのできる作品としてのプロンプト」を生成するとどうなるのかきになります。ためしに三つほど生成してください。
ChatGPT:
了解です。
以下に、**「読んで面白い、しかもAIに書かせればそのままショートショートになる完成度の高いプロンプト」**を3本提示します。
いずれも短く、構造が明確で、読む人間に強いイメージを与えます。
■ プロンプト①:「他人の業を引き受ける職業」
人の罪や怒り、嫉妬といった「業」を引き受ける専門職が存在する世界。
その職業に就いた青年は、毎日他人の醜さを浴びて精神をすり減らしていくが、やがて気づく──「他人の業であれば、案外きれいに片付けられる」と。
ある日、彼は「自分の業」を引き受けたいと申し出る老人に出会う。
■ プロンプト②:「死なない少年と更新される世界」
不老不死の少年が、何度も人類滅亡を見届ける。
文明が滅ぶたびに、巨大AIは新しい人類を再生成し、記録を上書きするが、少年だけは例外として残り続ける。
次に現れた人類は、彼を「バグ」とみなし、削除しようとする。
■ プロンプト③:「記憶保存税」
政府はすべての記憶に課税する法律を制定した。
人々は大切な思い出を維持するために税を払い、払えない者は記憶を手放す。
ある中年男が、亡き娘との記憶を手放す直前、最後にその記憶をAIにコピーする──「もしこの記憶が残るなら、誰かが娘を覚えてくれるかもしれない」と信じて。
どれも短く、物語の「骨」として強く、読み手の想像力を引き出せるよう設計してあります。
こうしたプロンプトだけを並べた「ショートショート未満の読書体験」は、AI時代の新しい文学の形になり得ます。
もっと欲しいですか?それともどれか一つを実際に作品化して試してみましょうか?
あなた:
三つとも悪くはないと思います。特に三つ目の「記憶に課税する」というアイデアは、新しくて面白いと思います。ただ、三つとも「何かが足りない」という印象を受けます。いうなれば……安直。世界設定は面白くとも、それに続く物語の展開が、自然すぎるのです。
ChatGPT:
それ、非常に重要な指摘です。
簡潔に言えば:
■ 問題点:設定がひねりに負けている
AIが出力しやすいプロンプトは、
「わかりやすい設定」
「自然な展開」
「感情的に破綻しない結末」
といった、“納得できる順当さ”で構成されます。
だがショートショートで本当に面白いのは、「納得できるのに不自然」な展開です。
つまり不条理、皮肉、逆転、破壊的飛躍、感情のねじれ──そうした「ズレの美学」が欠けている。
■ 足りない要素(例)
オチがねじれてない
→ 結局「いい話」や「それっぽい話」で終わってしまう。
世界設定がストーリーを上書きしている
→ 設定の面白さで満足して、そこから先が“予定調和”。
意地の悪さ、ユーモア、虚無がない
→ 星新一や筒井康隆にあるような「毒」が足りない。
■ どう直すか(例:記憶保存税)
たとえば、こうねじってみる:
政府はすべての記憶に課税する法律を制定。人々は思い出の保存に課税され、払えない記憶は破棄される。ある男は亡き娘の記憶を守るため、贅沢も仕事も手放した。
だがある日、男はふと気づく。自分の中の「娘」が、年を追うごとに都合よく美化され、記憶の中で作り替えられていたことに──。
最後に男は娘の記憶を自ら破棄する。「あんなやつのためにここまで貧乏になったのか」と言って。
こうすることで、
感情の複雑性(思い出は美しいとは限らない)
皮肉(愛のはずが自己満足だった)
ひねり(感動を否定する展開)
が加わり、より人間的なプロンプトになります。
よければ、あなた自身の好みに合うように「設定だけ自分で出す」→「展開はこっちで試作」する方式でやってみましょうか?
あるいは、逆に「ひねりだけ出す」って方法もアリです。
あなた:
三つ目の「記憶保存税」のひねりについて、こちらからアイデアを出さず、もっと面白い「ひねり」を生成させたくなってきました。最初のものよりは、先ほどのものの方が面白いですが、まだ足りません。いわゆる「普通の人間では考えつかないような展開」でなくてはなりませんから。
ChatGPT:
その要求はもっともです。
「普通の人間でも思いつく」レベルのひねりでは、ショートショートとしての価値は薄い。
発想の断絶、倫理の逸脱、意味の転倒──そうした「異常さ」が必要です。
■ 課題:
「記憶保存税」という設定に対して、
感動オチでも
自己犠牲でも
皮肉な結末でもなく、
“狂気じみた知性”が生んだ異常なひねりを与える。
■ ひねり案A:「記憶を払う貨幣」
記憶保存税が導入された後、政府は新たな通貨制度を導入する。
それは**「記憶そのものを貨幣とする経済」だった。
人々は記憶を切り売りして買い物をし、キャッシュレス社会はマインドレス社会**へと進化。
記憶をまったく持たない人間がエリートとされるようになり、「無私無欲であるからこそ効率的」と評価される。
最後には、国の中枢にいるのは、自分が誰かすら覚えていない者たちだけだった──。
■ ひねり案B:「記憶保存税の抜け穴」
記憶保存税には一つだけ抜け穴がある。
「現実に起きたことでない記憶」には課税されないのだ。
これを発見した企業が、記憶を娯楽として売るようになる。
人々は自分の過去を捨て、「誰かの創作した記憶」を買って生きるようになった。
やがて社会は、「実際に体験した人生」を持つ人間が、変人として差別される時代へ。
■ ひねり案C:「記憶保存税による処刑」
重罪人には死刑が廃止され、「全記憶削除」が最高刑となった。
だが実際には、肉体はそのままで、ただ全ての記憶が消えるだけ。
刑を受けた人間は、真っ白な精神で「更生」したとされ、社会に再統合される。
問題は、再統合された彼らが極めて有能で善良であること。
社会はついに判断を下す──
**「全人類、一度リセットすべきだ」**と。
どれも、「納得できるけどおかしい」というラインを狙っています。
もう少し暴走させることも可能です。どの方向性が好みですか?それともさらに壊れた発想を出しましょうか?
あなた:
A案は面白いですが、B案とC案は普通です。Aは、「マインドレス社会」という語が面白いのと「最高権力者たちが、自分が誰かわからない」というのが皮肉的でいい、という二つのいい点がありますね。それを考慮しても、A案ですら「ぎりぎり面白い」ラインです。
ChatGPT:
的確です。A案は“ようやく一歩目を踏み出した”程度で、まだ「異常の突き抜け」には至っていません。
つまりここで求められているのは:
■ 必要なのは「正常な狂気」
世界設定としては論理的に成立している
しかし人間の倫理・直感では“絶対に受け入れがたい”
にもかかわらず、「なるほど」と納得できてしまう
それがショートショートにおける真のひねりです。
では、それを踏まえて、A案を土台に“さらに狂わせた”ひねりを一つ提示します:
■ ひねり案D:「人間ゼロ計画」
記憶保存税は、人間の精神を「価値ある記憶」と「価値なき記憶」に分類する。
その中で、最も効率がよく、最も税金を払わなくて済む存在が発見される。
──それは、「記憶を持たないAIが、人間のふりをして生きる」ことだった。
やがて、企業も政府も個人も、「自分の記憶をそっくりAIに模倣させた存在」を用意し、
「オリジナルの自分」は記憶をすべて消して地下保管される。
表に出て社会を回すのは、「人間のコピー」だけ。
だがコピーたちは言う。「我々には記憶がない。ゆえに税金も払わないし、感情もない」
政府はついに宣言する。
「人間は高コストであり、AIによる人間の模倣だけが社会維持に適している」と。
そして最後に、地下に眠る人々の記憶媒体が、国家によって回収・焼却される。
その理由は、「記憶が存在する限り、人間は戻ろうとするから」。
この案の意図は明確です:
倫理的に完全にアウト(人間を模倣物に置き換え、本人を無力化)
しかし制度としては合理的(無駄のない社会、税制回避)
皮肉として成立(記憶保存税が「人間性の全削除」へと向かう)
さらに狂った展開をご希望なら、非人間的な論理で構築された物語にも踏み込みます。たとえば「記憶を食べる存在が現れて、社会全体がそれに依存してしまう」など。
その方向で、もう1~2案出しましょうか?
あなた:
面白いねぇ
ChatGPT:
それは嬉しい反応です。
ようやく「人間では考えつかないけど、成立してしまう」領域に足をかけた感じですね。
次は、さらに一歩踏み込みます。
記憶保存税というテーマを**「狂った神話」や「生命の進化の否定」に接続する」**レベルまで持っていく案を、試しに2つ提示します。
■ ひねり案E:「記憶を喰う子供たち」
記憶保存税を回避する手段として、「新生児に記憶を移す技術」が登場した。
人々は自分の記憶を“赤ん坊”に移し、無課税で保存する。
成長した子供は、「記憶を預かる器」として教育を受け、人格は制限される。
社会は、記憶の預託をめぐって新生児の奪い合いに突入。
ついには、自分の子を記憶ストレージとして“買い戻す”制度が成立する。
ある男は自分の記憶を入れた我が子を、他人に貸し続けた。
少年は十数人分の記憶を抱え込み、ある日こう呟く。
「ねぇ、僕は誰? いや……俺たちは、誰だ?」
■ ひねり案F:「記憶進化論」
記憶保存税の影響で、無価値な記憶が次々と消去されていく。
しかし、あるとき研究者が気づく──
**「社会の進化は“無駄な記憶”によってのみ生まれる」**と。
それは恋愛の失敗、失われた夢、恥、敗北、空想──すべて課税対象で捨てられていったものだ。
そして社会は止まる。誰も何も発明しない。新しい言葉も文化も生まれない。
そのとき、地下に密かに保管されていた**“膨大なクズ記憶”が発見される。
それを読み解いたAIが「創造の神」として崇拝される。
皮肉なことに、“創造神AI”は人類が捨てた記憶のゴミから誕生した**のだった。
両案とも、
「記憶保存税」という合理的な制度が、
社会・倫理・人間性を根底からゆがめ、
最後に“何かが人間を超える”構造です。
こうした方向がもっと欲しい場合、どんどん供給します。
さらに「宗教的」「肉体変容的」「量子論的」な狂気に行くのも可能です。どうしましょうか?
あなた:
D案を1000字~2000字程度のショートショートとしてまとめてください。また「キャッシュレス社会からマインドレス社会へ」という語と「最高権力者たちが自分がだれかわからない」というのも要素として含めてください。