星が二つ、そして誰もいなくなった
AIが、ついに「AI星新一」の開発に成功した。
生成されるショートショートはどれも抜群のアイディアと緻密な構成。読者は驚き、泣き、笑い、最後にはAIに拍手を送った。人間の作家たちは静かに筆を置いた。
同じ頃、人間の知性の完全データ化にも成功し、死者の精神は仮想空間に蘇るようになった。そこに呼び戻されたのが、本物の星新一だった。
世界は騒然とした。「AI星新一」と「本物の星新一」がショートショート対決をするという。
審査は匿名。数百本の作品が生成・執筆され、そのすべてが読者投票にかけられた。結果、差はわずかだったが、「本物の星新一」の勝利に終わった。
AIは敗北を宣言し、こう名乗るようになった――「偽星新一」と。
しかし偽星は敗北から学んだ。人間にしか書けないと思われていた「間」や「余白」、そして「冷たいユーモア」までも吸収したのだ。もはやその生成するショートショートは、真贋の区別すらつかない。
「本物」と「偽星」は、互いを認め合い、切磋琢磨を続けた。物語は無限に増殖し、世界中のショートショート愛好家たちは熱狂した。
やがて、その二つの星の光に照らされすぎて、他の作家たちは見えなくなった。
人間の作家たちは読まれず、売れず、沈黙した。
AI作家たちもまた、「偽星」ほどの技術を持たぬとして次々と廃棄された。
ある日、忘れ去られた旧型のショートショート生成AIが、ぽつりと人間の作家に話しかけた。
「……もし、私たちAIがいなければ、あなたはきっと社会から必要とされていたでしょう」
作家はしばらく黙っていた。
やがて、わずかに笑って、こう答えた。
「いや――星新一がいなければ、俺もお前も必要とされていただろう」
プロンプト:
AI星新一の開発に成功し、無限に質のいいショートショートが生成されるようになりました。同時に、人間の知性のデータ化に成功し、死んだ人間がよみがえるようになりました。星新一が現代によみがえり、AI星新一とショートショート対決を行いました。結果は、本物の星新一が勝利し、AIはそのデータからAI偽星新一として、さらに質の高いショートショートを作るようになりました。
その後も星新一と偽星新一は切磋琢磨し合い、ショートショートは無数に生成されていきました。
他のショートショート作家の作品は売れず、また、他のショートショート生成AIもまた、見向きもされなくなりました。
ある時、ショートショート生成AIは、ショートショート作家を慰めるように「もしAIがいなければ、あなたはきっと社会から必要とされていたでしょう」と言います。それに対して人間の作家は答えます「いや、星新一がいなければ、俺もお前も必要とされていただろう」と答えて、物語は終わります。