砂の上を歩く者
無限に続く砂の海を、ひとりのロボットが歩いていた。型番は不明。記録媒体は損傷して久しい。唯一残っているのは、ある断片的な記憶──笑い声、食器を並べる音、小さな子供の泣き声。それはかつてこのロボットが「家庭用補助機」として生きていた時代の名残だった。
世界は崩壊した。干ばつと戦争と、気候変動の連鎖。人間たちは死に絶えるか、超過密な閉鎖都市へと逃げ込んだ。ロボットは、その人間たちを探していた。仕えるべき「家族」を、もう一度。
風は熱を帯びていた。皮膜センサーは焼け、関節には砂が詰まり、歩行時の軋みがひどくなる。それでもロボットは止まらなかった。嵐に遭い、左腕を失っても、進んだ。夜の極寒にバッテリーが凍結し、心核が停止しかけても、陽が昇れば再起動した。
そして、ある日。地平線の先に、垂直に伸びる灰色の塔群を見つけた。それは「都市」だった。救いだった。
ロボットは都市に入った。だが、歓迎はなかった。都市の外縁には、合法も倫理も存在しないスラムが広がっていた。そこにいた貧民たちは、ロボットを見つけるとすぐに襲いかかり、部品をバラバラに取り外して売り払った。動力炉は電源として転用され、視覚センサーは監視カメラとして再利用された。
しかし、ロボットの「心核」──思考と記憶を担う中枢ユニット──はあまりにも旧式すぎて、誰の興味も引かなかった。ガラクタだと吐き捨てられ、廃棄場に投げ込まれた。
静かに、夜が訪れる。
しばらくして、ロボットは目を覚ます。動けない。記憶領域は損傷し、言語モジュールも不安定だった。だが、それでも、ロボットは「起動」する。周囲の廃材の中から、異なる機種の足回りユニットを見つけ、それを接続する。手の代わりに農業用ロボットのクワを装着する。声帯の代替として、警報機を使った。
──かつての姿は、もうそこにはない。
──それでも、ロボットは立ち上がった。
この身体で、かつてのように料理を作ることはできない。子供を抱くことも、温もりを再現することも。もう「役に立たない」。けれど、なぜか心核は、まだ「前へ進め」と命じていた。
いま、ロボットが探しているのは「人間」ではない。
「希望」──それが何かは、分からない。けれど、砂の海の向こうに、それはある気がした。
そしてロボットは歩き出す。
ぎこちなく、音を立てながら、だが確かに前へ。
誰も待っていないかもしれない世界を。
プロンプト:
砂漠をさまようロボットの物語を生成してください。
そのロボットは、過去に幸せな家庭の中で仕事をしていて、問題のない不自由な生活をしていました。
世界は滅び、一部地域で超過密な都市が残るばかりです。ロボットは道中、厳しい自然に足を取られながらも、ぎりぎりで乗り越えていきます。
ロボットはついに「都市」を見つけますが、その都市に入るとすぐに貧しい人たちに捕らえられ、ばらばらに分解されて売られてしまいます。ロボットの心の「核」に当たる部分は旧式すぎて不用とされ、廃棄場に捨てられてしまいます。ロボットは、その廃棄場で、なんとか代替パーツを見つけて、再び歩けるようになります。もうそのみすぼらしい肉体では、たとえ仕えるべき人が見つかったとしても、もう何の役にも立たないでしょう。しかしロボットは歩き続けます。いま、ロボットが探しているのは「人間」ではありません。「希望」という形のない「何か」を探し続けているのです。