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夢双勇者  作者: 美宙秋夜
3/6

第三話

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」


爆炎に押し上げられ、俺は宙を舞った。


遡ること5時間前─


俺は朝ご飯を食べてるときに、クーニャに訓練に行くように言われた。


「私の先生である、「グラッド・ベリール」という方がいます。その方に魔法について、特訓してきてください」


「先生か…。怖い?」


「いえいえ、全然怖くない方ですよ。むしろ、もっと威厳を持ったほうがいいくらいに。すぐに馴染めると思いますよ」


それなら一安心だと意気込み、俺は昨日買ったローブを羽織ってクーニャに教えてもらった場所に向かった。「これ、先生の好物なので渡してあげてください」と袋を手渡された。中をちらっと覗くと、それはなにかの珍味っぽかったけど、何かはわからなかった。


俺は地図を手渡され、地図通りに進んでいくとそこには木造の建物があった。お金持ちそうな門構えに、中学の体育館10個ぐらいの広大な敷地と家。玄関の前には呼び鈴のようなボタンがあり、それを押すと中からドタドタと足音が近づいてきた。


ガラッと玄関が開くと、そこには40〜50歳ほどの男性が現れた。


「君は…どなた?」


「あ、僕は夢見燈真っていいます。先日この世界に転生してきた…」


すると男性の顔がぱっと明るくなり、


「あぁ!燈真くんか!クーニャから話は聞いているよ。今日から訓練だっけ?」


「あっはい!よろしくお願いします!」


「じゃあ中に入って。訓練場に案内するよ!」


中に入ると長い廊下があり、その廊下の右奥に黒光りの扉がある。廊下を歩いている途中にクーニャからの届け物を渡すと、「おっ!俺の好物のカラトバガエルの醤油漬けじゃねぇか!クーニャ、わかってんねぇ」とニヤニヤしていた。


(カラトバガエルの醤油漬け…?)


ゲテモノのような香りがしたが、先生(クーニャに習って先生呼びにした)によると、お酒がグビグビすすむおつまみらしい


「さ、ここが訓練場だ」


そう言って開けた重々しいドアの向こう側は外だった。学校のグラウンドぐらいある。そして、いたるところに人形が立ってある。


「さ、早速始めようか」


そう言うと先生は俺の斜め前に立ち、


「燈真は炎特化型だろ?」


「そう聞いてます」


「おっけ。じゃあ、左手を前に出して」


言われた通り手を突き出す。


「そうだなぁ、魔法は8割感覚論だからな…紋章を意識して、自分の中の「気」みたいなものを紋章に集めるイメージをしてみ」


イメージ…なんとなく左手が熱くなってきた気がする。


「おっけー?そしたら、それを前に放つかんじで!これしか言えないからな…」


(漫画で見た感じに…右手とか添えとくか)


左手をそれっぽい形にし、右手を二の腕に添える。


(一気に…放つ!)


イメージ通りに力を込めると…結果は微妙だった。俺の手の中で薄く赤い靄が出て、消えた。


「あれっ?終わり?」


「うーん、理解はできてるんだろうけど…魔力が足りないのかな」


渋い顔で先生は言う。すると思いがけない質問をしてきた。


「燈真、もしかして前の世界では魔力、少ない方だった?」


「へっ?」


(俺に魔力がある前提かよ?)


「いや、分からないです。俺がいた世界は魔法とかなかったんで」


「へっ?」


さっきの俺と同じように目をまんまるにして驚く先生。


「魔法がないって…そんな世界があるの?」


「俺のところでは…魔法とかは完全にフィクション。創作の話なんです。漫画とかの創作作品の中で登場して、年頃の男子が憧れる存在だけど、撃てるわけがない。そんなものです」


「えぇ…完全に誤算だったな。そんな世界があるなんて…」


顎に手を当てて考える先生。ブツブツ言ってると、なにか思いついたようだ。


「そうだ、カテリアンを使うか」


「カテリアン?」


「カテリアン鉱石。魔力を増幅させる鉱石だ。これを使えば燈真も魔法、使えるかもしれん」


魔力増幅…なんかあっちの世界の漫画で似たようなものを聞いたことがあるな…何だっけ…


「ちょっと待ってな。持ってくる」


そう言うと先生はどっかに行ってしまった。その間に俺はもう一回魔法を撃つ練習をした。


「魔力を紋章に集める…それを放つ…今!」


左手に力を込めるも、また淡い赤色の靄が出るだけだった。


「感覚はいいんだけどなぁ。やっぱ魔力がないのはどうしようもないか」


すると、先生が戻ってきた。


「持ってきたぞー。棚の奥にあって見つけるのに時間がかかったわ」


そう掲げる手には、緑と青が複雑に混ざりあったマーブル柄の石が握られていた。


「そうだなぁ、これを、ズボンのポケットに入れて同じようにやってみて」


「は、はい」


言われたとおりに、さっきと同じようにやってみる。目をつぶって精神を整える。


(左手の紋章を意識…)


先ほどとは明らかに違う、なにかモゾモゾとした感覚があった。


(魔力を…放つ!)


目をカッと見開き、左手をこわばらせる。その時、紋章が目に入った。


さっきまで真っ黒だった紋章が、赤く、鮮明に光を放った。


眼の前が真っ赤な光りに包まれた。その直後、


「うわぁぁぁぁぁぁ!!」


爆炎に押し上げられ、俺は宙を舞った。


「ぬおぉぉぉぉぉぉ!?」


先生にも爆炎が襲いかかり、咄嗟に受け身を取った。


一方俺は、重力のままに地面へと叩きつけられた。


「ぐはっ!」


爆発の閃光と爆音で意識が朦朧とする。


「おい、燈真、大丈夫か?」


「あ、先生…今、何が…?」


「魔力の調整ができてなかったんだな。魔力を込めすぎたんだろう」


そう言いながら俺の手を引っ張って起こしてくれる。あたりを見渡すと、地面がえぐれ、人形も吹っ飛んでいた。


「すいません、ココ、ぶち壊しちゃって…」


「あぁ、それならすぐに直せるから大丈夫だ。それより怪我は?」


「大丈夫です。そこまでひどくありません」


耳鳴りも収まってきた。だが、まだ少しフラフラする。


「今日は一回やめよう。家に帰ってクーニャに治療してもらえ。大丈夫、あいつ、回復魔法が得意だから」


「わかりました…失礼します…」


こうして俺の初日の特訓は、派手な爆発で締めくくられてしまった。


先生の家を出て、クーニャの家へと向かった。


…その後ろから、一つの影が燈真のことを睨んでいた。


─────


「あ、おかえりなさ…って、燈真さん!?どうしたんですかその怪我!?」


「あぁ、実は…」


俺はクーニャに、魔力がなかったのでカテリアン鉱石を貸してもらったこと。そしたら逆に魔力が調整できなくなって爆発したことをざっくりと話した。


「そうですか…よし、治療なら任せてください」


そういってクーニャは俺の胸に手をかざし、『ヒール』と唱える。すると、じわじわと体中の痛みがなくなっていくのを感じた。


「それが、回復魔法?」


「はい。ヒールといって、初歩的なものですが汎用性が高いのでよく使うんです」


「俺も使えたり…?」


「まぁ、魔法に慣れたら可能だと思いますよ」


「そうなんだ、ありがとう」


「…あまり無理はしないでくださいね?」


「わかってるよ。おやすみ」


「はい、おやすみなさい」


そして俺は自室に行き、速攻ベッドに潜り込んだ。特訓の疲れもあってか、俺はすぐに睡魔に飲み込まれた。

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