岸
そうしてキング一行は都市シーサイドへと辿り着いた
しかし、昔のような活気は無く、人の気配はするものの外には誰一人としていなかった
「うーん?おかしいな?生きてる人はいると思うんだけど…誰も見当たらないね」
「そうだな、前に来た時はあんなに人で溢れかえっていたのに…どこか…あの一番大きな家を訪ねてみるか」
その大きな家の前まで行き、扉を叩いた
「おい、誰かいないか?いるだろ?開けてくれ」
「キングお前さ言葉選べねーの?って…開いた?」
扉がひとりでに開く
「なんだ?開いたけど暗闇じゃねーか、どうする二人共」
「まぁ…開いたんだし入ってこいってことでしょ。とりあえず入ってみよ」
ステラが足を踏み入れた瞬間、暗闇から拳がステラめがけて飛んできた
「ステラどけ!危ない!」
拳を剣で寸前に防いだ
「な、なんだどうした!何が起きた!?」
「わからん…だが誰かが明確な殺意を持って襲ってきたのは確かだ。用心しろ」
その時、扉の向こう側から筋骨隆々の中年の男が出てきた
「なんやあんたら魔物なんか連れて、危ないでぇ?せっかく殺してやろうと思ってたんに、人の善意を踏みにじるとかアカンわ〜」
「なんだお前?言っとくけどステラちゃんは悪い子じゃねぇぞ?そっちこそ落ち着いて話をしよう…ぜぇぇ!!」
不意打ちで魔力を高出力で出す『森羅万象消滅砲』を撃ち、地面が焦げた匂いが辺りに漂った
「ちょ、ルド君何してるの!?殺しちゃ駄目でしょ!まだ話し合いで解決できたんじゃないの!?」
「安心しな、今のは威嚇だ。どうせ生きてるぜ」
「だろうな。来るぞ」
キングがそう言った瞬間に後ろにいた男が殴りかかってきた
「!?っ!ごはっ!」
「お、今度は直撃したやろ、ワシの拳骨は痛いやろ。アンタらまとめて潰したる。かかってこいや」
「う…ぐぅ…よし、生きてるな、ステラ!ルド!こいつをまず気絶させる!話はそれから聞く!それでいいか?」
「わかった、仲間に手を出されたら黙ってられないしね」
「先にやったのはあっちだからな、魔王の力でぶっ飛ばしてやる!」
「決まったな、行くぞ」
キング一行が攻撃をしかけた瞬間
「あー!ストップストップ!降参や!」
「…は?どういうことだ?」
「喰らえ!森羅万象消滅砲!」
「止まれ!ルド!」
「えぇ!?何でだよ!」
「だから降参や言うとるやろ、家の中案内するから入ってくれや、罠は仕掛けとらんで」
「大丈夫…なの?」
「入ってみよう。ルド、一応反撃の魔法を準備しておけ。」
「もうずっと前からしてるよ。これでも一応英知の国出身なんでね」
「何しとるんや!早く入らんかい!」
急かされ、警戒しながらも家の中に入ると、その中に片目を眼帯で隠した少年と神官の服を着た男、大きな鎧を着た女と隅で縮んで座ってる男がいた。
「また誰か来たのかよ〜早く帰ってくれねぇかな?」
「失礼ですよカム君。初対面なんですから、気をつけてください」
「…………この人たちは誰だ?市長。」
「えっと…よろしくお願いします…仲良くしてください…気持ち悪いですよね!?すみません!」
「アンタら一回自分の部屋に戻っとってくれ。この人達と話があるんや」
「オレらは話あるから帰ってくれ、特にそこのガキ」
「はあ!?俺様にはカム=オルカっていう名前があんだよ!それにガキじゃねえ!もう今年で18だ!」
「ガキじゃねーか、俺は22だ敬語使え」
「うるせー、もう忙しい!どっか行け」
「話終わったんならこっち来て座ってもろてええか?」
「ルド、早く座れよ」
「ルド君22だったんだ…」
「それは置いといて、話を聞かせてもらおうか」
ゴールドキャノンが椅子に腰をかける
「ほな話始めるな?まず、ワシはシーサイドの市長スパーク=ホウェイルっちゅうもんや、よろしくな。」
自己紹介すると、血のついた布を何枚か出した
「実は今シーサイドではおかしな事件が起きとる。これは既に犠牲になった奴らの服の一部や、毎晩毎晩誰か一人づつ殺されててな、その死体には決まって獣が噛み付いたような跡が首筋に残ってるんや。犯人…魔物が来たかと思って最初は殺しに行ったけど、人違いやったな、すまん」
「犯人は魔物じゃなくて獣なんじゃないか?夜に見張って獣を倒せば良い」
「それはやったことがある。一晩中見張っとったけど効果なしやった、その日も被害者が出た」
ゴールドキャノンが口を開く
「少し話は変わるけどよ、さっきまでいた奴らはなんなんだ?シーサイドの市民か?」
「あー、ちゃうちゃう。カム以外は皆どっかから来た奴らや」
「ふーん、でももうわかってる事はあるんじゃねーの?」
「何がだルド?」
「決まってんだろ、連続殺人鬼がこの中にいんだよ」
この場の空気が変わる
「…やっぱそーなるんか。いや、そーよなぁ…」
「んで、条件次第でその犯人を暴いてやってもいい」
「…なんや?何が望みや?」
「この家の部屋を1つ貸してほしい。あと飯と風呂。さすがにオレら不衛生だからな」
「私ぜんぜん話に入れてないけど…そんなに要求して大丈夫なの?」
小声でステラがゴールドキャノンに囁く
「まあ見とけ」
そして、黙っていたスパークが口を開ける
「本当に見つけてくれるんやな?」
「あぁ、もちろん」
「………ええわ、一番奥の部屋を貸してちゃる。風呂と食料庫は勝手に入りゃええ、だから、必ず…必ず殺人鬼を見つけ出してくれ!ワシの息子と妻が笑って成仏できるように!!」
「…家族の絆ってのはオレ良くわかんねーけどよ、あんたの顔見てたら軽いもんじゃねーってわかるよ」
「ありがとう…ありがとう…本当に」
「ま、任せとけよ、このオレたちにな!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
部屋でステラが口を開く
「しかし、よくこんなに上手くいったね、すごい!」
「まーな、アイツのかけてたペンダントに子どもと女性の写真が入ってた。家族なんだろーと思ったらやっぱりそうだった。あとはオレの話術でなんとかって感じだな」
「凄い!ルド君こんな頭良いと思ってなかったよ!ホント凄い!」
「バカにしてるよなーそれ…」
「ルド!お前、よくやった。期待通りだよ」
「ありがとよ、でもこれで一件落着じゃねー、早いとこ犯人を見つけないとダメだ」
しばらく沈黙が続いた後、扉がノックされる
「誰だ、鍵閉まってないから開けていいぞ」
「キング!?犯人だったらどうすんだよ!」
扉を開けて入ってきたのは一人の男だった
「先程お会いしましたね。話はスパークさんから聞きましたよ、僕の名前はシグナル=ホークです。よろしくお願いします」
「シグナルか、有名な大神官の家系じゃないか、どうしてこんなところに?」
「気になりますか?では続きは一緒にお風呂にでも入りながら話しましょうか。」
「そうだな、ルド一緒に行こう。ステラも入ってきたらどうだ」
「そうだね、じゃあ行ってきます」
ステラが出た後に武器を持って部屋を出ようとすると、後ろからカムがゴールドキャノンの服をつついた
「なんだガキ…じゃなくてカムだったっけ、なんか用か?」
目が合った瞬間カムが眼帯を外し目に刻まれた神傷跡を見せた
『精神交換』
突如、ゴールドキャノンの雰囲気が変わった
「ルド…?何された?大丈夫か?」
ゴールドキャノンが喋りだす
「バカめ!かかったな!?これが俺様の神に授けられた特殊能力『交の傷跡』!今こいつと精神を交換したんだよ!」
「ひ、卑怯だぞお前、体かえせ!おい!ふざけんな!」
「まだ返さねーよアホ!よく俺様をコケにしてくれたな!?この体で覗きをしてや」
その瞬間ゴールドキャノンの体をキングが床に叩きつける
「やめろ、俺が皆とそれをしようとした時普通にバレて全員解雇されそうになった」
「何してるんですか貴方も…」
「ていうかそれオレの体な?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「今の音…何?なんかあったのかな…」
ステラが温泉に入ってリラックスしていると、突然扉が開き、鎧を着た女が入ってきた
「それ…お風呂入る時もつけてるの?」
「外したほうがいいのか?今まで私一人だったから考えたこともなかったが」
「なんかキングみたいなの来ちゃったなぁ…」
第七話 終