ドラゴンと生贄の娘
ワシ、ドラゴン。
ふもとの村を守護し恵みをもたらす対価として100年に1度、村から「生贄」を受け取る契約になっとん。
「あっあの、今回の竜神さまへの供物としてやってまいりました!宜しくお願い致します!」
あぁもうそんな時期?
えー、なんや細い子きたなぁ今回。
「あの、私が村で一番美人だから竜さまも喜ぶだろうって」
いや鱗ない子の美人とか言われてもようわからんのよなぁ…お嬢ちゃんも色男でもハゲはあかんやろ?
「髭があればいけます!むしろアリです!」
おおっとおぉ!?嬢ちゃんそういう趣味の子か。
「というか、食べるんじゃないんですか?生贄。」
飽きた。
「えっ?」
いやね、むかーしはね?珍味やーって食ってたけど、珍味て飽きるやん?
毎日ホヤのヒモノとか食ってられんやん?
「私は好きですけどねぇアレ、お酒が進むんですよー」
嬢ちゃんアレやんな。のんべぇやな?
「いや、私の晩酌の酒量はいいんですよ、じゃぁなんで生贄を?」
晩酌しとるんか…いやな、飯や、飯。
「やっぱり、食べられるんですね」
ちゃうねん、作ってほしいねんて。
ワシ竜やから飢え死にとかないけど、腹減るし味覚もあるから、うまいもん食いたいんよ。
「ちょ、聞いてない」
伝達ミスやねぇ。
「どういうことですか!伝統的に一番村で美人の娘を生贄にすることになってるって聞いたから私が選ばれたのに!」
あー、それちゃうねん。
「えっ」
昔は、ウマイ飯作れた子がモテたんよ、せやから一番人気の子でお願いちゅーたんよ。
「じゃぁあの村を挙げてのミスコンは……」
そんなんやってたんか今!?
「そっかー料理かー」
あー嬢ちゃん料理あかん子か…?ワシ100年に一度のこれだけが楽しみなんやが。
「いえ!料理は出来ます!」
ホンマか!せやったら材料と道具!奥にあるからなんかつくってや!
過去の貢ぎ物魔法で保存した奴やから鮮度ばつぐん、種類も豊富やで。
「じゃぁカキのオイル煮とベーコンのマスタード煮と……あっコレ良い鶏!唐揚げとピリ辛蒸し鶏と軟骨入り肉団子作りますね!!」
それ全部酒のつまみや!!
……エラい手際ええな嬢ちゃん、ほう、実家が酒場兼宿屋。
「できました!どうですか」
うん、メッチャうまいわ。
「やった!」
せやけどやっぱコレ酒が欲しくなるヤツやな……。
「お酒はないんですか?」
いや、あるで?秘蔵の竜酒が。
「出しましょう!それ出しましょう!!」
うわぁ……嬢ちゃん、わかりやすいなぁ。
「なんのことですか?」
涎、出とるで。
「これが噂に聞いた竜の秘蔵酒」
なんや、生贄の割に悲壮感ないとおもたらこれが目当てか。
「はい!そりゃもう絶品だと聞いて!
食べられる前に一口でも飲めたら!もう、死んでもいいとおもって!」
なんというか、残念な子やんな。
「ひどい!?」
不満は大ジョッキで飲むのやめたら聞くわ。
はやいはやいペースが速い、ちゃんと水も飲みや。
「どりゃごんしゃーん」
光の速さでベロンベロンやな。
「よってませんよーぅ!イェーイ!!」
酔っぱらいはみんなそういうんや、竜酒は普通のよりキッツいからの。
「でも、おいしいからどんどんのんじゃいますねぇ~」
せやから!茶碗で飲むのやめや!
女の子がそんな酒の飲み方したらあかん!!
「どうせ私は…嫁の貰い手がいませんよ!!」
いや、あのな、そういうつもりちゃうねんて、落ち着いて、な?
「本当に人気者の美人だったらそりゃ生贄になんてなりませんよきょうびー。
私だってわかってるんですよぅ、嫁の貰い手がないからここに来たって」
なんやその、ごめんな、ほんま。
「ところでドラゴンさん、お歳は」
なんや急に。
あー詳しくは忘れたけどここに着た生贄も嬢ちゃんで20人は超えるなぁ。
「100年に1人ですから、2000年ですか」
せやなーワシももうおじいちゃんや。
「おじいちゃんですねぇ」
なんや、嬢ちゃんの視線がこわいんやけど。
「ドラゴンさんの子孫だって人がですね!里の方に!」
あーーー4人目か5人目のときやなぁ、あのときは若かった。
「つまり人間もイケるんですよね!ドラゴンさんもハゲがイケる口ですよね!!」
まって、ちょおまってや!な!おちつこう!座ろう!な!
「ほら!ドラゴンさん髭あるし!」
あーあーあー、あんな、おちつこう?な?
若い娘さんなんやから、自分を大事にやな。
「いけにえになった時点で他に選択肢ないじゃないですか!責任とってください!」
それ言われるとなんも言えんなワシ……。
「末永く宜しくお願いしますねー、とりあえずお代わりを一杯……」
二人で呑んでるのに手酌はやめーや、ついだるから。