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「伊吹くん……。ほんとに、いいの?」

「う、うん。よもぎ先輩こそ、いい? 大丈夫そう?」

「こんなの、初めてだからいいのか、ダメなのか、わかんない」

「ほんと言うと、僕も。……ひょっとして、怖い?」

「怖くはないけど、痛いのは嫌だな」

「痛くないよ。たぶん」

「たぶんじゃダメ。……痛かったら蹴るからね」

「もし痛くても一瞬だけだよ。後は天にも昇る気持ちになるって」

「……痛くしないでよ」

「努力するよ。じゃあ、行くよ」

 僕の首に回されたよもぎ先輩の腕にきゅっと力が入る。

「やっぱりダメ! 怖いっ!」

「あ、暴れたら、落ちっ!」

 よもぎ先輩は僕の首にぎゅうっと抱きつき、大人しく揃えていた脚をバタバタとさせた。

 この瞬間、僕は二つのことを知った。モデルのように痩せているよもぎ先輩だけど、僕の右手に当たる胸の感触がすごく柔らかいってことと、彼女は高いところが苦手だってことだ。

 よもぎ先輩をお姫様だっこしていた僕は、背筋に力を込めてなんとか踏ん張ろうとしたが、ああ、暴れるよもぎ先輩のせいでバランスを崩し、もう、前つんのめりに倒れそうになって、だめだ、転んでしまう。もうこのまま行くしかない!

 ハイペリオンが教会の尖った屋根の天辺にあった丸窓に巨大な腕を突っ込んだ。パッと見、黄金の毛並みの腕よりも、ステンドグラスの丸窓の方が小さい。まあ、それでも人間二人が余裕で飛び込める大きさだけど。

 ハイペリオンの腕は丸窓にぶち当たると、ぎゅっと凝縮されて見る見るうちに窓を押し退けて侵入していった。

 肘、肩、首、そして頭。ハイペリオンは小さな丸窓にズルズルと吸い込まれるよう巨体を押し込み、ついにはちゅるんって全身が消えていった。さあ、僕らの番だ。未だにジタバタ暴れてるよもぎ先輩を抱いたまま、ぽっかりと空いた窓枠に身を踊らせる。

 ここは教会の屋根の天辺。ビルの五階に相当する高さからよもぎ先輩を抱いたままダイブだ。

「いやああああっ!」

 よもぎ先輩の悲鳴とともにふわっとした浮遊感。しかしすぐに身体の中身だけが上に引っ張られ、内臓が胸辺りに圧縮されて空っぽになった下腹らへんがきゅーってなって落ちて行く。

 ニット帽からはみ出たよもぎ先輩の黒髪がわさわさと暴れて僕の顔を埋めるが、目をつぶる訳にはいかない。うまくハイペリオンの背中に着地しなければ、ハイペリオンフィールドに弾かれてどっちに飛ばされるかわかったものじゃない。

 ハイペリオンが教会の床に到達。音も立てずに少しだけ埃を舞い上がらせ、前のめりに倒れこむように四つん這いになる。僕は見事にその平らになった背中に着地出来た。

「よもぎ先輩! 着いたよ!」

 素早く周囲を見廻して状況確認。

 ここは教会の礼拝堂ど真ん中。両脇に長いベンチがきれいに整列してて、そこかしこにボウガンを持った兵士達が外へと通じる扉を狙っていた。

 やっぱり待ち伏せだ。気に入らないな、高校生相手にそんな手を使うなんて。もう遠慮なく暴れてやる。

 僕は抱いていたよもぎ先輩をハイペリオンの背中に下ろした。よもぎ先輩の身体はハイペリオンの黄金の背中からわずかに浮いて、ズルズルと滑るようにずり落ちていく。

「わ、立てないって」

 尻餅をついたような格好のまま僕に手を伸ばすよもぎ先輩。

「伊吹くん、手!」

 それって、何か飼い犬にお手を仕込んでいるように聞こえるぞ。とりあえず今は忙しいから放置プレイだ。

 僕は後からぴょーんと着いてきたガールブラストからコントラバスを受け取ると、静かに低く響く音を奏でた。まるで獣の唸り声のように。ハイペリオンはそれに合わせて、口を開いて長い犬歯をぎらつかせて低く喉を鳴らし、ボウガン兵を威嚇する。

「よもぎ先輩、早くギターを」

「わかってるって」

 ボウガン兵が四人。ハイペリオンのいる礼拝堂の赤絨毯をセンターとすると両翼に二人ずつだ。くるり、背後をチェック。赤絨毯の行き着く先に、一段高くなっているステージ状のところにフェルドラとミックスジュースお姉さんの姿を見つけた。

「いたな、フェルドラさん」

 フェルドラ以外に剣と盾を装備しただけの間に合わせの兵士が三人。それと、一人だけ黒いローブを身につけた白髪の老人がいた。たぶん、あのおっさんがパルテスタ教導団の、過激派リーダーか。

巨大黄金ゴリラが天井からつるりとゼリーみたいに湧き出てきた衝撃からようやく立ち直った四人のボウガン兵が一斉に僕達を狙った。でも遅い。遅すぎる。僕はすでに攻撃を開始しているんだ。

 弦の上をゆっくりと滑らせていた弓に少しずつ力を込め、遠くから轟いてくる地鳴りのように音を大きくする。ハイペリオンの金色のモヒカンと、それに連なるたてがみがわさわさとざわめき立つ。

「ごめんよ」

 弓を最後まで引き抜く。音楽は急に風が止んだように静かになったが、空気はびりびりと震えたままだった。その空気の振動が目に見えるくらいに大きくなり、ついに音の津波となってハイペリオンの両腕とともに左右に爆発した。

 赤絨毯の両脇に整然と並んだベンチが音の波にさらわれて、ひと塊になってボウガン兵達に襲いかかった。ボウガン兵達は矢を撃つことも逃げることも悲鳴を上げることも出来ずにベンチの塊に飲み込まれて、そのまま団子になって両脇の壁を駆け上った。

 教会の壁をびりびりと震わせて、天井近くまで巻き上げられたベンチと兵士達がぼたぼたと大粒の雨みたいに落ちてくる。だけど安心しな、ボウガン兵。未だハイペリオンフィールドの中にいるんだ。降り注ぐベンチにも硬い石造りの床にも激突することなく落ちてこれるよ。

「フェルドラさん、やっと再会できたな」

 湖面に揺れる木の葉みたいに床の上を漂っている兵士やベンチを横目に、赤絨毯の先、フェルドラとその他の面々をハイペリオンの上から見下ろす。

「やあ。ここまで追いかけてきてくれるなんて光栄だね」

 余裕なのか、見栄っ張りな性格なのか、フェルドラはゆっくり腕を組んで落ち着いた口調で話し出した。

「もう一人の奏者、ヨモギだったっけ? 二人仲良くとんでもない場所からやってくるもんだな。君らの世界では玄関は屋根の上にあるのか?」

「派手な登場シーンが好きでね。びっくりしたでしょ?」

 フェルドラは軽く笑って肩をすくめた。

「とりあえず、さっきのスカウトの答えをまだ最後まで伝えてなかったから、ここまで来てやったんだよ」

「ほう。それはそれは。では、答えを聞こうか。いい返事を期待するが、この様子だと、どうだか」

 と、今までハイペリオンの背中でうずくまったままギターを抱いていたよもぎ先輩が、ようやく立ち上がった。

「そこのあんた!」

 びしっ。フェルドラを指差す。

「あんた、なんか、うざい!」

 なんだそりゃ。

 よもぎ先輩はふわふわと安定しないハイペリオンの背の上で、片膝立ちの状態でギターを縦に構えて弦の上で指を踊らせた。

 ハイペリオンの側でつまんなそうにハイヒールのつま先で床をほじくっていたガールブラストがびくんっと震えて、嬉々とした笑顔を見せて地を這うような低い姿勢でフェルドラ達に猛スピードで突っ込んでいった。

「ちょっ、よもぎ先輩!」

 止めたところでよもぎ先輩が言うこと聞くとは思えないが、僕自身の良心のために一応叫んでおこう。

「ほどほどに!」

 聞いてか聞かずか、よもぎ先輩のギターの曲調が変化した。ギターソロのようにメロディを重視して低く唸る。

 飛び込んだガールブラストは三人の兵士達の前に立ちはだかり、右袖を大きく振り上げて、彼等を挑発するようにニヤッと笑った。

「ガールブラストって、よもぎ先輩とよく似てるよね」

 ついつぶやいてしまう。

「うるさい。じゃあ伊吹くんはゴリラか。モヒカンゴリラか」

 うーむ、それはちょっとパス。

 兵士の一人が声を張り上げてガールブラストに切りかかった。大きく踏み込み、長方形の盾を前に突き出して大きく振りかぶって剣を叩きつける。

 でもやっぱりガールブラストの右袖は何でも飲み込んでしまう。右腕と剣とが触れ合った瞬間、剣は勢いを失って軽く跳ね返された。ガールブラストは膨らんだ右袖を振り子のようにして反動を付けて上半身を捻り、そのままミニスカートからすらっと伸びる黒タイツの長い脚で回し蹴りを放った。

 紙風船が破裂するような音がしてあり得ないくらい兵士が吹っ飛んでいく。

「よもぎ先輩、やり過ぎ!」

 蹴りを入れられた兵士は教会を斜めに横切るように飛んでいき、壁に当たるとそのままの勢いで天井に向かって跳ねていった。

 よもぎ先輩のギターサウンドとともにガールブラストの回転は止まらない。ガールブラストは回し蹴りの回転力を腰に溜め込み、いつの間にか膨れ上がった左袖を鞭のようにしならせてもう一人の兵士に打ち付けた。

「な、何っ!」

 するとその兵士は急に動きを止めてしまい、がくっと膝を落とし、生まれたての子馬のようにプルプルと震えて床に這いつくばってしまった。

「重さをチャージアンドディスチャージしてみたよ」

 ニコッと笑うよもぎ先輩。蹴られた兵士は風船みたいにふわふわ浮きっぱなしで、床にへばりついた兵士は何とか起き上がろうと力を振り絞っているが、身体は少しも動かせないようだ。

「あいつの重さを奪ってこいつの重さに上乗せしてやった。ちょろいもんよ」

「ガールブラストって、打撃だけじゃなくって重さまでチャージできる

の?」

「他にもいろいろね」

 残る兵力は一人きり。僕はハイペリオンを立ち上がらせ、よもぎ先輩はガールブラストをさらに一歩前に踏み出させた。

「見事だ」

 不意に黒ローブの司祭風のおっさんが喋り出した。そういやこのリーダー格のおっさんのこと忘れてた。

「これが奏者というものか。恐れ入る。まことに恐れ入るよ」

 司祭風のおっさんは祭壇から僕らに歩み寄ってきた。背後にいたフェルドラとミックスジュースお姉さんも司祭風おっさんに習って近付いてくる。

「しかしながら、非常に残念だ。君達の素晴らしい力が小さな兄弟国同士の些細な問題解決のためだけに使われるのは、まことに残念でならない」

 どうして、こう、純真な子供を大人の事情でねじ伏せる時みたいな態度で接してくるんだろう。この司祭風おっさんと言い、フェルドラと言い。パルテスタ教導団の信徒獲得マニュアルに載っているのか、僕らをお子様扱いするのはいい加減ムカつく。そりゃあ、この世界の顔付からすれば、日本人の僕もよもぎ先輩も全然お子様に見えるだろうけどさ。

「……うっさいなあ」

 よもぎ先輩もそう感じているのか、つまんなそうに眉間にしわを寄せて右手の爪を見つめて小声でつぶやいた。ガールブラストも同じようにつまんなそうな顔して右袖を覗き込んでいるし。

「世界はとても大きい。それはもう大きいのだ。この我々の小さな国の中だけを見つめて……」

 不意に司祭風おっさんの言葉が途切れた。僕もいい加減飽きてきた頃合だったからちょうどいいけど、見ると、司祭風おっさんの口だけは達者にパクパクと動いている。でも音声は伝わってこない。

 異常に気付いた司祭風おっさんはさらに大きく口を開け放ったが無音状態は変わらず。フェルドラとミックスジュースお姉さんも何か言おうと口を開いたが声は聞こえてこなかった。

「あっ」

「うっ」

 僕と最後の兵士が同時に原因に気付いたようだ。

 ガールブラストだ。彼女が、ニヤニヤした意地悪な笑顔で右袖を司祭風おっさん達に向けていたのだ。その右腕はぐんぐんと音をチャージしているようで、ガールブラストの胸がぐんぐん膨らんでいく。

 ちらっとよもぎ先輩を見ると、片目をきつく瞑って両耳をしっかりと塞いでいた。まるでバラエティ番組でお馴染みの巨大風船爆発寸前の図だ。

 ガールブラストのバストサイズがどんどん大きくなっていく。もう何カップだとか問題じゃないくらい膨らんでいく。元々よもぎ先輩みたいに非常にスレンダーでソリッドでタイトなスタイルだったのに、今じゃホルスタインかジャージー牛か。どっちも牛か。でもこれって、ひょっとしてよもぎ先輩のささやかな願望も含まれていたりして。

 乳牛化したガールブラストが左腕を上げた。よもぎ先輩も首を縮こませて両耳を完全にガード。僕も慌てて耳を塞ぐ。

 司祭風おっさんもフェルドラもようやく現状を把握したか、口があっと叫ぶような形になった。でも、時すでに遅し。

『ゥヴワァッ!』

 ガールブラストの左腕から撃ち出された轟音は、司祭風おっさん、フェルドラ、ミックスジュースお姉さん、最後の兵士、みんなまとめて紙屑みたいに吹き飛ばしてしまった。

 しっかり耳を塞いでいたつもりなのに、僕までキーンと耳鳴りがしてる。ガールブラストって音までチャージしちゃうのかよ。

「よもぎ先輩、暴れ過ぎだって」

「いいじゃん。死んでないし」

 まあ、確かに死んでない。ものすごい音の衝撃波に吹き飛ばされてみんな伸びてしまっただけだ。起きてもしばらく耳鳴りは消えないだろう。

「これで私達の勝ち。さ、帰ろ」

「いや、まだ完全に心をへし折ってないよ」

 僕はガールブラストの犠牲者達がだらーんと伸びきっている祭壇の向こう側、壁に施されたレリーフに目をやった。背中に翼がある聖者、アルテア・パルテスタだったか。

 壁に刻まれていた人影は、僕が想像していたものと少し違っていた。白い羽毛の翼を持った天使のようなイメージだったが、アルテア・パルテスタの背中には四枚の羽。まるで昆虫のような羽だ。手足は二本ずつだが、その顔付もカマキリに似て大きくサイドに口が開いていた。聖者のレリーフと言うよりも、むしろガーゴイル像みたいだ。


「で、どうやってあいつらを完全にへこますの?」

 教会の外。戦闘自体があっと言う間だったので、まだグラン少佐も街の衛兵達を連れて来ていないようだ。まだ教導団の兵士達も気を失って倒れたままだし。街の人達がハイペリオンを見かけて恐る恐る覗き込んでくるくらいで、まだまだ大騒ぎにもなっていない。

「こうするの」

 僕はハイペリオンを教会の建物そのものに向けさせた。ぶるんぶるんと腕を振るう黄金の巨大ゴリラ。

 曲は何にしようか。ふと、よもぎ先輩が僕を覗き込んで来て目が合った。

「よもぎ先輩、適当に合わせてギター弾いてくれる?」

「いいけど、何する気?」

「完全勝利」

 曲はベートーヴェン。やっぱ『皇帝』だな。あの力強いオープニングはいつ聴いても心が震える。

 イメージ。僕はフルオーケストラに参加しているんだ。コントラバスは後ろの方だけど、指揮者の側にピアノがいる。あのピアノの音を一段と冴え渡らせるのが僕の役目だ。さあ、力強く、弓を引け。

 ハイペリオンが教会に手をかけた。実際は触れることができないが、三階部分にモヒカンの頭を押し付け、地面をがっしりと踏みつける。

「…………け」

 駆け上がるように奏でられるピアノ。それを追いかける弦楽器。コントラバスは低音だ。腹に響くサウンドだ。低く、低く、底からすべてを持ち上げるように音を練り上げる。

「……ごけ」

 僕の意図を理解してくれたよもぎ先輩がギターでサポートしてくれる。音に厚みが増す。繰り返し繰り返し力のこもった小節を奏でる。ハイペリオンの背中がさらに盛り上がり。教会全体が細かく震えだす。

「……うごけ」

 ずずっと教会が大きくずれた。ハイペリオンが吠える。僕も叫ぶ。

「動けええっ!」

 建物の基礎とか、土台とか、石畳とか、そんなのは関係ない。ハイペリオンは何者にも触ることができない。それは固定された建物だって同じだ。ハイペリオンに触ることはできない。つまり、ハイペリオンと同座標に存在することは何者にもできないんだ。それが固定されているものだろうとなんだろうと、一切関係ない。それがハイペリオンの能力だ。

「いっけえええっ!」

 教会が一気に動いた。ハイペリオンが一歩足を進めた分だけビル5階分くらいありそうな大きな建築物がずずっと土煙を上げて移動する。ハイペリオンの背中の筋肉がぐいと盛り上がり、一歩、また一歩と足を前に進める。教会は音も立てずにずるずると押されていった。

 一度動き出せば、後は氷の上を滑らせるように簡単だった。敷地の壁に押し付けられると、壁ごと湾曲してさらに押される。

「まだまだあああっ!」

 僕は叫ぶ。ハイペリオンが吠える。僕のコントラバスは唸り、よもぎ先輩のギターが弾ける。教会が隣の建物までずれると、磁石の同極を押し付けたみたいにその建物までずるっと動き、教会の行く手を遮ることなく道を開けた。さらに奥の建物、そしてその隣の建物まで連鎖的に動いていく。

 街全体がぎしぎしと不規則に動き出した。教会が街の僻地に追いやられ、その通り道の建物、家々が強い磁力で弾かれるように避けて道を作っていく。巨大な黄金のゴリラが街全体を一本に貫く道を作っていった。

 ハイペリオンが通った後は石畳だけが残され、教会は街の端っこまで追いやられ、この街にたったいまメインストリートが誕生した。

 僕はコントラバスから弓を離し、ふうと深く息をつく。どうだ。フェルドラ達が目を覚ました時、自分達パルテスタ教導団の教会が街の隅に押し出され、街そのものの形が変わっているんだ。これこそ、完全勝利だ。彼らの心はへし折れ、二度と僕に関わろうなんて考えなくなるはずだ。

「どう、よもぎ先輩。これで奴らを完全にへこませたでしょ?」

「……すっごいわ」

 ぽかんと口を開けたままよもぎ先輩が答えた。

「さ、帰ろう。広い道もできたし、これでもう迷子になんないぞ」


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