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終わるものと終わらないもの。

 リンダさんに久しぶりに手紙が来た。

 幼馴染の彼からの手紙に私が喜ぶ内容が書いてあることはまず無い。既に私で無い人が傍に居るのだから。


 読み終えたリンダさんが、私に教えてくれた。


「子供が出来たそうよ」


 更に彼が遠のいた。頭の中が冷たくなっていく。倒れてしまいたい。

 それでも平静を装い、言うべきことは言う。


「おめでとうございます」


「有り難う、籍を入れるそうだから、一度会いに行ってくるわ。なに持って行こうかしら。楽しみね」


 私の子と違い、正真正銘の自分の孫だ。ただの居候の自分、苦しくなる。

 更に言葉は続く。

「もし良かったら、むこうで一緒に暮らさないかと書いてあったわ」



 リンダさん、居なくならないで・・・・胸が更に苦しくなる。リンダさんはかけがえのない私の居場所。縋ってはいけないのに・・・・


 泣きそうだ。

 喋ったら本当に泣いてしまう。


 絶望。


 泣きそうな私をリンダさんが、抱き締める。慰めてくれるの?申し訳ない。リンダさんは優しいから。


 おめでとう、リンダさん。前から欲しがってた孫だよ。


「でもね」


 リンダさん、喋り続ける。


「私は貴方達とここで暮らすわ。なにかそれが私の幸せな気がするの。愛情が沸いちゃったのかしらね。素敵な子が一杯居て私は幸せだと思うわ」



 私は堪えきれずわんわん泣いた!

 理不尽や不幸で泣いてばかりの人生だったが、リンダさんの暖かさに涙が止まらなかった。

 こんな私のために申し訳ない、息子さんを裏切ってしまった女なのに申し訳ない。

 大声で泣く私の頭をリンダさんは抱き締めて撫でてくれた。


「懐かしいわね。昔もこんな風に頭撫でたこと有ったわね。あの頃はちっちゃかったのにこんなに大きくなって、お母さんになって」


 駄目だ、泣き止まらない。

 私は完全敗北した。





 リンダさん、有り難う。





 ーーーーーーーーーー





 あの日、あの不思議な女の子をトイレに連れていった日、あの子は私の夢を叶えると言った。

 私は別にいいと言った。子供は授かり物。無理して手に入れるものじゃないから。

 私の願いなんていいから、その分誰かに優しくしてあげてと。


 あの不思議な女の子は去って行ったが、今私はわりと幸せだと思う。

 あの子の仕業なんだろうか?


 考えても仕方ないので夕飯の準備に掛かることにした。前と違って調理場に二人で立つのが楽しい。

 嫁でもなく、娘でもないがこの娘はここにいるべきだと思う。

 私が仕事から帰ると家で待ってる娘と子供が居る。帰って暗い家に明かりをつける寂しさはもうない。


 息子に会いに行ったら、帰りに玩具を買ってこようか。都会のお店は楽しみだ。





END

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