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災いのピエロ

作者: 筋肉シロクマ

金曜日のある日仕事の帰り道。

車でいつもとは違う帰り道で帰っていると新規オープンと垂れ幕がかかったお店があった。

気になったので車を止めて入ってみるとリサイクルショップらしい。

しばらく店内を見ていると目についた商品があった。

それは加湿器だった。

ただの普通の加湿器がこんなに気になったには不思議だったが俺は無意識に手に取っていた。


「それおすすめですよ」


後ろから声がしたので振り向くとそこに立っていたのは背の高いピエロの格好をした店員だった。

普通にびっくりするからやめてほしい。


「何がオススメなんですか?」


「その加湿器は私がリサイクルに出したんです。新しいのを買ったので置いてみました」


どうやらこの店員さんが使っていたものらしい。


「加湿器か〜。持ったことないんですよね」


「この加湿器は普通の加湿器と違うんです!使ってみたら分かりますよ!」


凄い目力で迫ってきた。ピエロの格好をしてるものだから怖い怖い。


「分かりました!買います買います。いくらですか」


俺は店員さんの圧に負けてしまった。てか買わないで帰ったら後ろから追いかけられそうな勢いだったから仕方ないまである。


「それなら商品ではないので持って帰って頂いて大丈夫ですよ」


「え?さすがに無料でもらうのは悪いですよ」


「いいんです。では良かったら使った感想を聞かせに来てくれませんか?」


「まぁそれくらいなら...じゃあもらって帰りますね」


俺は申し訳ない気持ちを抱きながら加湿器を抱えて店を出た。


「...いい夢を...」


見送りをしてくれた店員さんが凄く怖く見えたけどピエロの見た目だからだと思いたい。

決して泥棒したわけではありませんので!


それから俺は家に帰りさっそく加湿器を使うことにした。

使い方が分からなかったので調べると水を入れてスイッチを押すだけでいいらしい。

スイッチを入れると白い気体が空中に噴き出てきた。心なしか少しいい匂いもする。

なるほど、この気体が部屋を保湿してくれる感じなのかな?

あまり加湿器のことを知らない俺はそんなことを考えながらベットに向かう。

時間はまだ11時だが今日は早めに寝よう。明日は休みだしゆっくり起きることにしよう。


疲れが溜まってたのか横になった俺はすぐに意識を失った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ふと目を開けると知らない部屋の中にいた。

見慣れない部屋を見てすぐに夢だと気付いた。

一応頬をつねってみるが痛みはない。寒さも暑さも感じないので夢で間違いないだろう。


視界の上に数字が2つあった。

ひとつは1/3。もう一つはLIFE2。

なんか良く分からないがゲームっぽい。


まずは部屋の中を調べてみる。

部屋の中は普通に人が住んでるような感じで生活感のある家だった。

変わったことと言えば部屋を何度移動しても違う部屋が出現するくらいだろう。

色んな物が置いてあったので触ってみたが触感は感じられない。まぁ夢だから当然か。


色々探索してみたが特に気になるものも無かったので外に出ようとした。

しかし外に出るための扉がどれだけ進んでも見つからない。


不思議な夢だと思いながら移動を続けているといつもとは異なる部屋が現れた。

その部屋には物は何もなくただ二つの扉があった。

二つの扉の間には看板が立っていた。


近づき看板に書いてある文字を読んでみるとこう書いてあった。


【1+1】


ん?なんて簡単な問題なんだ。

答えは2に決まっているじゃないか。


次に扉を確認してみる。

扉にも数字が書いてあった。

左側の扉には0。右側には2と書いてある。


俺は迷うことなく右側の扉のドアノブを掴み開ける。

扉の先は真っ暗で先が見えなかったが気にせず一歩踏み出した。


周りは何も見えなかったが地面はしっかりあり問題なく歩ける。

少し進むとまた扉があったので躊躇なく開いた。


扉を開くと最初にいた部屋と全く同じ空間が現れた。

変わったことと言えば数字が2/3に変わったことか。


なるほど。先に進んでったらクリアする系の夢なんだな。

問題が簡単すぎたので拍子抜けだったので次の問題はもう少し難しいと嬉しい。


俺はさっきと同じように部屋を何度も移動してみる。

前と同じように進んでいったら同じように扉が2つででくるだろう。


しかし何度移動しても全く同じ部屋が出てくるだけだった。

置いてある物の配置も変わらず同じ部屋をループしているようにしか思えない。


俺は思考を変えて部屋に置いてある物を見ていく。

いかにも怪しそうな本棚があったので、そこに置いてある本を一冊手に取った。


表紙には文字が書いてあった。


【災いのピエロ】


どういう意味なんだろうか。

そんなことを思いながら本の中身を確認してみる。


中身には目を背けたくなる内容が書いてあった。


【昔々あるところに人々を幸福にするピエロがいた。そのピエロは出会った人に色々なものをプレゼントしてくれる。しかしピエロの中にはもう一つの人格が存在していた。その人格の時にプレゼントをもらってしまうと不幸な出来事に巻き込まれてしまうという。不思議な空間で君の命を狙ってくるだろう。逃れる方法はプレゼントを断るしかない。もしプレゼントをもらってしまったら…】


…まさかね。自分の現在の状況に似ており危機感を覚える。

不思議な空間ではなく夢の中だから本の内容とは違うと思いたい。


不安な気持ちを誤魔化しつつ次の本を手に取った。

手に取った本は不自然な赤色に染まっていた。


【何が正解かさっぱり分からない。俺はピエロに殺されるのだろう。もし俺以外にもこの空間に閉じ込められた奴がいれば赤色は信用し青色は信用するな。常に全方向に意識を向けろ】


どうやら同じ状況になって人が過去にいたらしい。夢なのに殺されるとはどういうことなんだろうか...アドバイスの頭の片隅にしまうことにした。


それから他の本や置いている物を調べてみたが特に変わったことはなかった。


何度か部屋を移動すると見覚えのある部屋が現れた。


さて次の問題はどんなやつかな。


【1+1】


また同じ問題だった。

しかも前と違う所がひとつあった。


左の扉は青文字で2。右の扉は赤文字で1と書いてあった。


…どう考えても答えは左なんだけどあの本に書いてた内容を信じるなら右なんだよなぁ。


本の内容を信じるのか普通に答えるのか悩んだ結果、左の扉に進むことにした。

まぁ何回か間違えても問題ないだろ。


俺は左の部屋に進んだ。

中は1部屋目と同じで真っ暗だった。

そのまま少し歩くと扉が現れる。

ドアノブを引っ張り部屋に入ると同じ部屋に戻された。

しかし表示が変わっていた。


1/3 LIFE1と表示されていた。

これはさっきの問題を間違えてしまったためLIFEが減り最初からやり直しになったのだろう。

どうやら正解は右の部屋だったらしい。


まぁまだ一回間違えただけだ。

次は赤色の答えを選んだら問題ないだろう。


俺は作業のように部屋を進んでいく。

1部屋内容は同じだったので普通にクリアしてすぐに2つ目の問題の部屋に戻ってきた。


2部屋目も問題内容は全く同じだった。

ぱっと見た感じ問題も答えも一緒だったので今回は本の内容に従うことにしよう。

今度は迷わず答えは違うけど赤い色の答えを選ぼう。


俺は赤文字で1と書いている部屋に入った。

部屋の中はまた暗闇で目を凝らしながら歩く。

いつもと同じように進むと扉が現れたので部屋に入る。


入った部屋はいつもと違う感じがした。

部屋の中身は一緒なんだが...

表示を確認すると1/3 LIFE0と書いてある。


LIFE0ってことはゲームオーバーってことか。

なら早く夢終わって欲しいんだけど...


そんな事を考えていると肩をポンと叩かれた感覚があった。

...誰だ?


後ろを振り返ると扉があった場所に店であったピエロが立っていた。

顔がめちゃめちゃ笑顔で気味が悪い。


「あの時会った方ですよね?」


俺の言葉をスルーしてピエロが顔を近づけてきた。

顔がくっつきそうな距離だったので思わず仰反る。


「話聞いてます?」


次の瞬間腹部に痛みを感じた。

痛みのする場所を見るとナイフが突き刺さって血が出ていた。


「いてぇ!何すんだよ!」


警察早く逮捕しろこいつ!てか何で夢の中で痛い…?

色々な事が起きすぎてパニックになる。

とりあえず逃げなければ。


すぐに走り出し部屋から逃げようとする。

しかし足がもつれてこけてしまった。緊張で思うように脚が動かなかった。

早く起きあがらなければ殺されてしまう。


しかし思いとは逆に立ち上がることが出来ない。

言うことを聞かない脚を叩き喝を入れる。

だが俺の拳は地面を叩いた。


そこで気付いてしまった。俺の足が付いていないことに。

パニックになって気付いて無かったがピエロの足元に俺の右足が落ちていた。


既に付いていない脚があった部分から痛みが思い出したかのように込み上げてくる。


ピエロはそれを見て愉快そうに笑った。

そのまま上機嫌で俺に近づいてくる。


「やめろ!来るんじゃねぇ!」


叫びも虚しくピエロは腰を落とし俺の顔をまじまじと見つめた。

恐怖で震えることしか出来ない俺にピエロが初めて口を開く。


「ボーイ。残念だね」


一言だけ残し俺の左脚にかみつく。

てんでもない噛力で俺の身体は悲鳴を上げる。

もはや痛すぎて声すら出なくなっていた。

必死に抵抗しようと頭を叩くが離れる気配がない。


少ししてブチッと嫌な音が聞こえ俺の身体から脚が離れた。


大量出血のせいで全身の感覚が既にない。

これが死ぬ時の感覚なのか。

意識も少しずつ遠のいていく。


横たわる俺をピエロは真上から見下ろした。

口から大量の血を垂らしながら悪魔のような顔で顔を覗き込む。


「チャンスはあと一回だ」


口を大きく開け俺の顔を食おうとしていた。

口の中は化け物みたいになっており恐怖しか感じなかった。


その後グチャと音を聞いたのを最後に俺の意識は完全に消えた。


———————————————————-


「なんだ夢か…」


目を開けるといつもの天井があった。

痛みまでリアルな夢を見たもんだ。


俺は身体を起こし時間を確認する。

時計を見ると針が11時を指していた。


確か俺が寝る前に確認した時も11時だった気がするんだが。

丸一日も寝ていたらしい。何だが損した気分だ。


とりあえず携帯でもいじってゆっくりするか。

携帯の電源を入れると不思議なことが起きた。


金曜日の11時から変わっていないのだ。

しかも電波も入ってなくロックすら開くことが出来ない。


謎の現象が続き不安になる。

まさか夢が終わってないのか?


プルルルルルルプルルルルル。


いきなりの電話に驚き身体が動く。

携帯の画面を見ると電話番号名前もない。

しかし画面には『電話に出る』という文字が画面いっぱいに広がっていた。


怖くなり無視しようと携帯を投げるがどれだけ時間がたっても着信が止むことがない。


俺は覚悟を決めて画面を押した。


「…もしもし」


「やぁ目覚めはどうかな?」


あのピエロの声だ。


「何で俺の番号を知ってるんだよ…それよりもあの加湿器どうなってるんだ。早く返したいんだけど」


「だめだよ。まだゲームは終わってないんだから」


「ゲーム?何のことだ?」


「分かってるくせに〜。まぁ次はないから頑張ってね」


電話を切られてしまった。


「なんだよゲームって…馬鹿らしい」


デカイため息を付いてから気持ちを落ち着かせる。

気持ちを切り替えてから現状を確認する。


まず異常だらけだ。時間も進まなければ携帯も動かない。

外に出ようとしてみたが謎の力で外に出ることすらできない。

外の景色は普段と変わらない状態であり通行人もいる。

助けを呼ぶために叫んだり手を振ってみたが俺が見えてないかのように反応がない。


…1番気になるのは視界の端にLIFE1って見えることだ。

まさかだが夢の途中なのか?それとも今は現実で夢の中で死んだら現実でも死ぬってことなのか…


最悪の事態を想像して身震いしてしまう。

状況を整理したら俺がするべきことは1つしかない気がする。


ゲームをクリアする。


ピエロも言っていたしそれしかないだろう。

また夢の中に入るしかないのか。


俺は半泣きになりながら布団にまた潜った。

目を閉じて寝る体制に入る。

加湿器の効果なのか冴えている状況にも関わらず俺の意識は夢の中に行った。


---------------------------


「やっぱり戻ってくるよな…」


トラウマがある部屋に戻ってきた。

変わったことはLIFEが1になっていることだ。1ミス即死の絶望的な状況である。


1つ目は難なくクリアして2つ目の部屋に入る。

ミスの許されない状況なので情報収集に徹することにした。


まず部屋の中を確認する。

読んだ本のヒントは嘘が書かれていたとは思えない。

2択で違う答えを1回ずつ答えたのに正解はなかった。

ということは最後の1文が鍵を握ってるはずだ。


【何が正解かさっぱり分からない。俺はピエロに殺されるのだろう。もし俺以外にもこの空間に閉じ込められた奴がいれば赤色は信用し青色は信用するな。常に全方向に意識を向けろ】


常に全方向に意識を向けろ。この文章の意味を理解しなければ俺は死ぬしかない。


部屋の中に異変がないか隈なく探す。

何度も部屋を移動して確認しても異変はなかった。

そして何度目か分からない移動をした時2択の部屋が現れた。


泣きそうになりながら問題を見る。


【1+1】


変わることなく何度もみた問題だった。

2つの扉も答えは同じだった。


絶望した俺だが急に自分でも信じられない位冷静になった。


…この部屋は何も調べていない。


俺は部屋の中を見渡すことにした。

床や天井。問題が書いてある看板や扉も触ってみた。

だがどれも異変は感じられ無い。


俺はやけくそになって適当にどっちかの扉に飛び込もうとしたが脚がもつれてこけてしまった。

まだ間違ってもないのに脚を切られた??


恐る恐る脚を見たがしっかりとついていた。

俺は視界の端に違和感を覚える。

違和感の方向。俺がこの部屋に入ってきた扉が目についた。


俺は自分の直感を信じて扉に近づく。

すると扉には赤文字で2と書いてあった。


まさか自分が通ってきた扉に正解が書いてあったとは…

問題に意識が引っ張られ後ろを振り向くという選択肢は確かに無かった。

2択と勝手に思い込んでいた俺はその時点でクリア出来なかったのだ。


あのヒントを書いてくれた人ありがとう…おかげで死なずに済みそうです。


そんなことを考えながら扉を開ける。

開けた先は今までと違い白い空間が広がる部屋だった。


正解の部屋だと思いそのまま進む。

部屋に入ると表示は3/3になった。

しかし夢が覚めることもなければピエロが現れることもない。

やることもないので少し歩くことにした。

歩いてる間も全方向の警戒を緩めることはしない。


少しするとカツンカツンと歩く音が聞こえた。

音の方向を見るとピエロがいた。


正解したのに殺されるのかよ!


「おめでとう!君はゲームをクリアしました」


クラッカーがピエロの手元に現れ俺を祝うように鳴らされた。

いきなりのことで俺は固まる。

俺のことは気にせずピエロは言葉を続けた。


「これで君は解放されます!これからは知らない人に物もらっちゃだめだよ」


それだけ言い残しピエロは突如消えた。

色々起きすぎてわけが分からなかったが急に意識が遠のく。


頼むから普通に日常に戻ってくれよ…


俺は祈りながら意識を失った。


-----------------


はいまた見慣れた天井です。


冷静に現状を確認する。

まずは携帯の確認。時刻は8時。しっかり時間は動いている。

もらった加湿器が家中探しても見当たらないが気にしないことにした。

外にも問題なく出ることができた。


「俺生きてる…」


何もないことに感動を覚えた。

何もない日常がこんなにも幸せだったとは。


俺は太陽の光を浴びながら幸せをしばらく堪能した後に家に戻る。


とりあえず文句言いにあの店に行こう。

俺は準備をした後車でリサイクルショップに向かった。


しかし店があった場所は更地になっていた。

つい昨日の店があったのにそんなことあるのか?


ちょうど男性通行人がいたので声をかけた。


「すみません。昨日ここにリサイクルショップありませんでした?」


「ここはずっと何もないよ?場所間違えてるんじゃない?」


「この加湿器昨日ここにあったお店で買ったんです。何もないわけないですよ」


俺の加湿器を見て男性は顔をしかめた。


「もしかしてピエロからもらったのか?」


「そうです!まさか何かご存知なんですか!」


「俺の友達がこの辺でピエロから加湿器もらったと喜んだ次の日に亡くなった事件があったんだ。死因は不明で警察も捜査を打ち切りました」


...もしかしてあのヒントを残してくれた人なのかもしれない。

もし間違った答えを選んでいたら俺も帰らぬ人になっていたのか。


俺が今回の事で学んだのは2つ

1.タダほど怪しい話はない

2.どんな状況でも冷静に立ち回る


これを胸にこれからは生きていこう


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