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第3話 森の探索と魔遊具のチェック

 時が経つのは早いもので、あれからさらに1年が経った。


 今日も今日とて僕は外出しようとして、メイドのルティアに声を掛けられる。


「こんな早い時間からお出かけですか?」

「今日は1日休みだからね。存分に体を動かさなくちゃ!」

「はぁ……お気を付けて」


 溜め息を吐きながら言うルティア。


 こそこそと何かをしているのはもはや完全に勘づかれていそうだけど、「じゃあ!」と僕はお構いなしに屋敷を出る。


 遊びたい盛りの10歳児なのだ、有り余る活発さにも目を瞑ってもらおう。


 いつものルートで庭を進み、森の手前までやってきた僕は、キョロキョロと周囲の目を確認し、()()()()へ転移する。


 言うまでもなく、転移は【遊者】の能力だ。


『好きなところに一瞬で移動出来たら楽しいだろうなぁ』というワクワクの気持ち、遊び心によって、転移能力を獲得できた。


 魔力消費量が半端なく、今はまだ少しの距離しか移動できないが、感知されずに結界外へ出るためならば十分だ。


 両親とルティアが1人遊びを許可しているのも結界の存在が大きいため、僕の行動を知ったら腰を抜かすだろうな。


「ギャアス!」


 森へ転移してから少し進むと、僕の匂いを嗅ぎつけたモンスターが現れた。


 全身が鎧のような鱗で覆われた、小さな恐竜のようなモンスターだ。


 屋敷で読んだモンスター辞典には、アーマードンという名で載っている。


「ギャアス!」

「甘いね!」


 アーマードンが振りかざした尻尾を、僕は素早くしゃがんで躱す。


 そして懐のポーチ――袋版アイテムボックスから取り出したるは、カラフルなおもちゃ風の銃。


 スッとその引き金を引くと、カラフルな光線が一瞬で伸び、アーマードンの眉間を貫いた。


「一丁上がり!」


 倒れたアーマードンの胸からナイフで魔石を回収し、さきほどとは別のポーチに放り込む。


 魔石回収用のアイテム袋だ。


 魔石はいろいろな魔遊具の触媒に使え、冒険者ギルドでも買取されているようなので、こうしてせっせと集めている。


「どんどん行こうか」


 僕はしばらく森を進み、アーマードンやベアウルフ(熊と狼を足したようなモンスター)等を倒していく。


 ここらに出てくる敵であれば、どれも光線銃――“レーザーガン”で一撃だ。


「うん、やっぱり銃は強いね」


 僕は満足してレーザーガンを仕舞う。


 この光線銃は初期にクラフトした武器の1つで、度重なる改良が施されている。


 最初は強めの水鉄砲からスタートしたんだけど、今ではまるで見る影もない変貌を遂げた。


 SF作品で出てくる光線銃も真っ青の、超一級品の遠距離武器だ。


 ちなみに光線の太さは側部に取り付けたつまみを回して調節でき、普段は『弱』の状態で使っている。


 もし『最強』の状態に設定すれば、銃口ががっぽりと大きく開き、某サ〇ヤ人並みの攻撃が繰り出せる……はずだ。


 屋敷で騒ぎになっても困るので、使ったことはない。


「他の魔遊具もどんどん試すぞー」


 僕は笑顔で次の魔遊具を出す。


 さっきの銃とは打って変わり、靴型の魔遊具だ。


 こちらは完全新作なので、実際に試すのは今日が初めて。


 ワクワクと高まる気分の中、ここまで履いてきた靴から履き替える。


「プギャア!」

「あ、実験体(モルモット)……もとい、モンスターが!」


 ちょうどタイミングを見計らったように、デスウッド――切り株型のモンスターが襲ってきた。


「いくよ! ……って、うわっと!」


 地面を蹴った僕はあまりのスピードに、デスウッドの横を通り過ぎる。


 靴の名前は“スピードシューズ”。


 その名の通り、装着者のスピードが上昇する魔遊具だ。


『ビュンビュン速く動けたらなぁ』という遊び心を基に作製した。


 ただ、どうやら、出力の調整が難しいようだ。


「これは要改良だね」

「プギャア!」


 スピードのあまり膝を突いた僕めがけて、ここぞとばかりにデスウッドが突撃してくる。


 普通に考えればピンチだけど――


「ほっ」

「プギョルアアッッッ!!!?」


 僕の身体能力にかかれば無問題。


 振り返りざまの拳に殴られたデスウッドは、間抜けな声と共に吹き飛んだ。


「ふぅ」


 パンパンと手を払って息を吐く。


 そう、【遊者】の恩恵は身体能力も上げてくれる。


 正確には、有り余る魔力を使った身体強化といったところか。


 魔遊具の作製ほどすんなりとはいかないけど、日々の意識によってかなりの強化を使えるようになっていた。


「お、レベルが上がったっぽい」


 吹き飛ばされたデスウッドがポックリと絶命した直後、僕の体を柔らかな銀光が包み込む。


 経験上、恐らくレベルアップだ。


 恐らく、というのは、レベルが確認できないからである。


 屋敷で学んだ内容からして、この世界にゲーム的なレベルアップがあるのはたしかだが、自分のレベルが分かるわけではない。


 ステータスウィンドウの概念がないので、なんとなくの感覚で把握するだけだ。


 そうそう、ステータスウィンドウと言えば、前世の記憶が覚醒した日に開くことができたあのウィンドウ。


 あれはどうやら、一度限りの通知だったらしい。


 たぶん僕を転生させた神様(?)的な人が、【遊者】であることを知らせるために計らってくれたのだろう。


 今は何を唱えたところでうんともすんとも言わないし、そういうものだったのだと割り切っている。


 まあ、そんな余談はともかく。


 見えないながらにレベルアップしているのは間違いなくて、ここ1年で結構なレベルアップを果たしている。


 途中から数えるのは止めてしまったけど、2、30は上がったんじゃないかな?


 肉体的にも強くなった感じがするし、デスウッドくらいなら魔力強化なしの生身でも倒せるかも。


 できなかったら危ないしやらないけどね。


「よし、次の魔遊具だ」


 要改良のスピードシューズを仕舞い、次の魔遊具のチェックに移る。


 1週間のうちの数日は勉強等で屋敷にいる時間が長い日もあるから、そんな日の隙間時間にいろいろな魔遊具を試作しているのだ。


 先週以前に作った物も含めれば、まだまだストックはたくさんある。


 日が暮れてルティアに怒られないように注意しつつ、僕はひたすら魔遊具のチェックに明け暮れた。




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