表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/43

第27話 精霊達

「――と、いうわけだ」

「へえ、なるほどね」


 ロロネアの案内で精霊の里に入った後。


 僕は里の説明を聞きながら、長がいるという中心部に向かっていた。


 たった今聞いていたのは、里の至るところに生えている白っぽい木の話。


 これは里内で霊樹と呼ばれていて、精霊様の力で生まれた特別な木らしい。


 一般的な木とは違い、全ての霊樹が根っこの部分で繋がっているのだそうだ。


「要は、全部同一個体ってことだよね? 本体的なやつはないの?」

「あるぞ。里の中心にある大霊樹だな」

「大霊樹?」

「うむ、最古にして最大の霊樹だ。ずっと昔の話だが、最初はその1本だけだったようだぞ。ちなみに大霊樹は精霊様の住処でもある」

「へえ……って、あれ? じゃあさっき僕に許可を出してくれたのは……」

「あれは精霊様の分体だ。あの木も霊樹の1つだから、分体を宿らせることができる」

「そうだったんだ」


 たしかに、精霊様の本体がわざわざ来てくれるわけないか。


 それにしても、大規模な結界を張ったり、たくさんの木を生やしたり、分体を霊樹に宿らせたり、精霊様ってかなりの力があるんだね。


「そういえば、ちょくちょく気になってたんだけどさ、“精霊様”って他の精霊とは違うの? 話を聞いた感じ、明らかに特別みたいだけど……」


 本来精霊というものは、世界中のあらゆるところに存在するものだ。


 肉眼では見えないというだけで、結構な数がいると言われている。


 で、ここは精霊の里というくらいだから、当然たくさんの精霊がいるはずなんだけど……精霊様って明らかに1個体を指してるよね。


 少し前、ロロネア達が里の精霊と契約していることを話していた時は、普通に“精霊”って言ってたし。


「うむ。精霊様は1体の精霊だ。精霊様が特別なのは、大霊樹の芽吹きと共に生まれたからだな。里の守護神的な立ち位置にある」

「芽吹きと共に? それってたぶんかなり前でしょ?」

「里ができる少し前のことだな。精霊様がいなければ里ができることもなかった」

「なるほどね」


 そりゃ守護神的な立ち位置になるのも頷ける。


 里の創立から見守り続けているとなると、相当高位の精霊なのだろう。いわゆる大精霊というやつだね。


 それに、大霊樹と共に生まれた、つまり木の精であることも珍しい。


 精霊にはいろいろな種類がいると言われているけど、一般的なのは火・水・土・風の精霊だ。魔法における基本属性の精霊だね。


 もちろん、木の精自体もそれなりにいるとは思うけど、大精霊クラスに成長するものは稀なはず。


 白っぽい木と共に生まれた木の精なんて聞いたことがないし、かなり特殊なケースなんだろう。


「ちなみに、ロロネアが契約してる精霊は何の精霊なの?」

「私の精霊か? ちょうど里にいることだし、紹介しておこうか」

「おおっ! いいの?」


 ロロネアの精霊についてはほとんど何も知らないから、結構気になってたんだよね。


 なんなら精霊のこと自体あまり知らないし、ぜひこの目で見てみたい。


「少し待っていてくれ」


 ロロネアはそう言いながら、白っぽい笛らしき物を取り出す。


 笛と言っても小さめで、オカリナ的な形だった。


「それは?」

「精霊様が霊樹で作った笛だ。これを吹くことで契約中の精霊を呼び出せる」

「へえ、その笛で」


 なかなかにユニークな方法だ。


 一般的に精霊と契約を結んでいる人達は、大抵が【精霊術師】等の専用祝福持ち。


 精霊を呼び出す際も専用のスキルを使うみたいだけど、笛というのは聞いたことがない。


 というよりそもそも、専用の祝福なしで精霊と契約することが稀だからね。


 森霊族は精霊様のおかげで精霊達との距離が近く、友誼を深めやすいんだろう。


「では呼ぶぞ」


 ロロネアが笛を吹くと、澄んだ音色が辺りに響き渡る。


 数秒間のしんとした沈黙の後、遠くから青緑に光る大鷲サイズの鳥が飛んで来た。


 鳥はロロネアの周りを2~3周ぐるぐると飛び、その右肩に着地する。


「紹介しよう。私の契約精霊、ピピ丸だ」

「ピキュ」

「おお! 綺麗な見た目だね」


 フォルムがかっこいいのはもちろん、全身が青緑に透き通っていて美しい。


 精霊には妖精タイプや小人タイプ、動物タイプなんかがあるらしいけど、これは完全に動物タイプだね。


 可愛い感じの名前に反して、圧倒的な迫力と貫禄がある。


「ピピ丸は珍しい雷属性の精霊でな。位も結構高いのだぞ」

「おお、すごいね!」

「ピキュ!」


 雷属性といえば、火・水・土・風の4属性以外の特殊属性に該当する。


 魔法としても珍しい部類なので、精霊の場合もかなり珍しいんだろうね。


 以前ロロネアが青緑の電気を纏った矢を使っていたけど、あれはピピ丸由来の技だったのかも。


 僕の褒め言葉を聞いて、ピピ丸が自慢げに胸を反らす。


 さすが位の高い精霊なだけあって、人間の言葉が分かるみたいだ。


「いやぁ、かっこいいなぁ。生まれて初めて精霊を見たよ」

「む? そうなのか? 里では至るところにいるのだが」

「え? 肉眼で見えるの? 未契約で召喚されていない状態の精霊は見ることができないって習ったんだけど」


 僕は首を傾げて訊き返す。


 精霊の体は物質界のそれとは構成が違うため、一部の高位精霊や【精霊術師】の精霊召喚で現れた精霊以外は見えないと聞いたことがある。


 いくら精霊の里とはいえ、高位精霊達がたむろしてるとは思えないんだけど……


「ああ、たしかに()()()そうだったか。結界の内部は精霊様の魔力で満たされているからな。その影響で低位の精霊達も存在が安定すると聞いたことがある。ほら、そこにも普通に精霊がいるだろう?」

「え? どこどこ?」

「あれだ。緑色の小さい球のような」

「ああ、あれね!」


 ロロネアが指で示した先を見ると、ふよふよと浮く薄色の光球がある。


「入って来た時にも、何体かはいたと思うぞ。よく見ると……あそこにも……あっちにも精霊がいるな。里の中心は精霊様の力が濃くなるから、もっとたくさんの精霊達が集まっているぞ」

「へえ、そうなんだ!」


 たしかに周りを観察してみると、光に紛れてちらほら精霊の姿がある。


 緑色のものもいれば、茶色っぽいやつもいるけど、これは属性に応じた色かな?


 たぶん緑色が風属性、茶色が土属性なんだろう。


 水溜まりが出来ている場所には、水属性らしき薄青色の光球も確認できる。


 それから、ピピ丸を肩に乗せたロロネアと共にしばらく進んでいると、浮遊している光球の数が増えてきた。


「精霊が増えてきたけど、里の中心が近いのかな?」

「中心の広場はまだ先だが、もう数分で居住区に着くぞ」

「へえ、居住区かぁ」


 森霊族の家ってどんな感じなんだろう?


 なんとなく、僕が作ったクラフト小屋みたいなツリーハウスのイメージがある。


 そんなことを考えながら歩いていると、遠くに霊樹の密集地帯が見えた。


 最初は単にたくさんの霊樹が生えているだけかと思ったんだけど、近付くにつれてそうではないと分かってくる。


 霊樹の幹はこれまでのものよりもだいぶ太く、歪な形をしていたのだ。


「ロロネア、あれって……」

「うむ、里の居住区だ」


 そう、それらの霊樹には全て縦長の(うろ)と木製の扉が付いていた。


 さらにその側面にもところどころ穴が空いており、窓のようなものが嵌められている。


 つまり、見渡す限りの霊樹1本1本が、()()()()()()()()()


 そんな圧巻の光景が、僕達を出迎えるのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキングに参加しています。
クリックで応援いただけると幸いです!
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ