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ダンジョンの受付嬢最強説  作者: 蜜柑缶


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96 飲み過ぎ

 泣き止みはしたもののエリンは私から手を離さず、一緒にテーブルについた。

 

「本当に心配したんだ。最ダンに騎士団の人がいっぱい来て、受付けが二人が居なくなったって誰かが話してるのを聞いて、ユキだってすぐ分かった」

 

 私達が魔法陣で飛ばされた事は『所在発信用魔石』が地図上から消えた事でマルコに異常は伝わっただろう。まさか私とライアンが同時に死ぬなんてありえない、すぐに駆けつけたモーガンと一緒に捜索しただろうがきっと冒険者たちもどこかへ転送し、捕まらなかったらしい。

 

「ライアンが一緒だったから大丈夫だったよ」

 

 エリンを安心させる為に笑って言った。

 

「何言ってるんだ、アイツはユキを置いてきぼりにしたじゃないか。オレはまだ許して無いからな」

 

 隣で大きな肉と奮闘しているドマニが不満げに言う。

 

「置いてきぼりって?」


「ちょっと離れ離れになっただけだよ、すぐに……来てくれたし」

 

 川に流された時の事を思い出しまた涙目になってしまう。

 

 あの時は本当に怖かった、二人共死んだかもと思っていた時は生きた心地がしなかった。

 

「ユキを泣かすなんて許さない!」

 

 エリンまで怒り出しドマニと意気投合してる。

 

「お前いいやつだな、オレはドマニだ。しばらくユキのとこにいるから宜しくな」


「この子か……」

 

 いつの間にかエリンの夫のジェイクが私達の側に立っていてドマニを見ていた。

 顔色は悪く、やつれた感じだ。

 

「ユキさん、帰ってきたんですね。無事で良かった、エリンが心配して食事もあまりしなくて困ってたんです」


「すみません、ご迷惑をおかけしました」


「いえ、あなたのせいではありませんから。それより明日にでもこの子を役所に連れてきて下さい。未成年の子はすぐに登録して置かなければいけませんから」

 

 私達が飛ばされた事は役所でも騒ぎになっていたようで、ジェイクもここ数日大変だったらしい。

 

 彼に席を勧め一緒に食事を取った。

 エリンがやっとまともに食事を取っているのを見てジェイクが顔をほころばせている。それを見て幸せな気持ちになる。

 

 誰かが誰かの幸せを喜ぶ姿はとても愛情を感じる。

 

「ジェイクさんは今回の事、何かご存知ですか?」

 

 貴族の家族間の話がどれほど伝わっているかわからない。まして今回は騎士団長を勤める高位の貴族だ。醜聞は出来るだけ避けたいだろう。

 

「えぇ……残念ですが時折似たような事が置きますから。今回は狙われたほうが無事だったレアケースですが」

 

 当主が優秀な方の子供を跡継ぎにしたがる。正妻の子が優秀なら問題無いが逆の場合は事が起きやすい。

 引き取った平民の子は大体正妻の子の側近ないし護衛などにつける事が通例だが、ライアンは優秀過ぎた。次期勇者と言われる我が子を跡継ぎに考えるのは自然だろう。

 

 正妻はライアンがそこまで強い事を知らなかったのかも知れない。だが簡単には殺せないと感じ他国の優秀な魔術師に依頼したのかも。

 

「貴族の間の事は詳しくはおりてきませんが噂ですと、どなたか高位の方が投獄されているとか。あくまで噂ですが」

 

 きっとモーガンの母親は捕まったんだろう。母親がそんな事をしでかした息子ってどうなるんだろう。

 

「企みを知らなかった関係者はどうなるんでしょうか?」

 

 モーガンが加担していたとは思えない。むしろライアンの優秀さを認めていた気がする。

 

「詳しく知らなくても協力していれば下位の関係者は捕まり何か処分が下されるでしょう。上位なら少しは助命されるかも知れませんが」

 

 ジェイクは首を振りこれ以上聞くなと言う感じで立ち上がった。

 

「では私はこれで、エリンもあまり寝てないんだから早く休んで」

 

 愛しい者を見る優しい目で彼女に微笑み店の奥へ消えて行った。

 

「確かに、ユキの顔見て安心したら急に眠くなってきた。でもお店の手伝いがあるし」

 

 そう言って店を見回すとドマニがお客に料理を出していた。

 

「お待たせしました。熱いので気をつけて下さい」

 

 なんだかちゃんとしてる。

 

 呆気に取られているとエリンの父親がニッコリいい顔をした。

 

「この子結構使えるぞ、エリン今日はもういいから上がれ。こいつに手伝ってもらうよ、今夜はうちで面倒見るからユキちゃんも帰りな。ゆっくりするといい」

 

 ドマニもこっくり頷き私に帰るように言った。

 

 確かにひとりでゆっくりしたいかも。

 

「じゃ、ドマニを宜しくお願いします。エリンもジェイクのところに行って、私はもう少し飲んでから帰るよ」

 

 少しドマニの様子を見てから帰ろうと思いビールを注文した。

 

 

 



「ホントにひとりで大丈夫か?」

 

 こいつ……子供のクセに大人の私の心配してるよ。

 

「大丈夫に決まってるじゃない!全然平気、おっと」

 

 何故か地面が揺れているらしく、じっと立ってられない。

 

「疲れてるのに調子にのるからだ。オレは店の手伝いがあるんだから気をつけて帰れよ」

 

 生意気なドマニに見送られエリンの店を出た。

 

 夜の冷たい風が気持ちいい。ちょっと飲み過ぎたかも知れない。

 

 エリンはすぐにジェイクの所に行かせたし、ドマニは忙しい店の手伝いで相手をしてもらえず。迂闊にもひとり飲みが進んでしまった。

 

 いつもより酔がまわるのも早く眠気もある。道端で寝ちゃわないように急いで帰らなきゃ。

 

 揺れる地面を必死に歩いて店の横の路地へ入りなんとか階段を上り建物の中へ入った。

 

「あれ?何してんの?」

 

 ライアンが私の部屋の前に立っていた。

 

「お前、出掛けてたのか?」


「エリンのとこ。ドマニが……ふわぁ……店手伝ってる」

 

 もう眠くてたまらない。

 

 大きくアクビをしながら部屋のドアを開けた。

 ライアンはジッと私を見て何故かそこを動こうとしない。

 

「何かあった?」


「いや、別に……」

 

 視線をそらしてなんだか煮え切らない態度だ。

 

 いつもの自信満々な奴はどこに行ったんだ。

 

「もう、何があったか知らないけど、まぁ、ちょっとは知ってるけど。しっかりしなさい、ほら、元気出して!」

  

 そう言って背中をバンバン叩いてやる。

 

「お前だいぶ酔ってるな」

 

 苦虫を噛み潰したよう顔のライアンの腕を掴んだ。

 

「もう!いいから入って、つまんない悩みなんて寝て忘れちゃえばいいのよ!」

 

 ライアンには罪がない、親同士の揉め事に巻き込まれて泣いてる子供と一緒だ。

 一晩ぐっすり寝て元気になればいい。

 

 彼を部屋に入れドアを閉めた。

 

「お、おい何、するんだ」

 

 何焦ってんの?こっちはもう眠いっていうのに。

 

「こっちに来て、あぁ靴脱いで。私の部屋は土足禁止だから」

 

 ベットに彼を座らせて靴をもぎ取り、自分も靴を脱いで彼をベットに押し倒すと隣に潜り込み腕を抱きまくらに寝た。

 

 

 

 

 

 

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