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ダンジョンの受付嬢最強説  作者: 蜜柑缶


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95/133

95 黒幕

明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願い致します。


ブクマありがとうございます。

「今回はオレが払っておく」

 

 崩れ落ちた私に手を貸してくれながらライアンが言った。

 

「は?」

 

 今なんだか払ってくれるって聞こえたような……

 

「えらく気前がいいじゃないか」

 

 カトリーヌも珍しい物を見たような顔で彼を見てる。

 

「巻き込んだうえに置き去りにした。これぐらい払わせてくれ」


「え?でも……ミスリル製って凄く高いんじゃ……」

 

 カトリーヌの顔を見るとフンと鼻をならす。

 

「男が払うって言ったものの値段をバラすほど野暮じゃないよ。だが安くは無いとだけは言っておく。お前にはそれだけ払わせる価値があるってことだ。黙って受け取ってやんな」

 

 美しいメイスとライアンとを見比べなんと言ったらいいのかわからなかった。

 

「あの、ありがとう……ございます。……大切にします」

 

 頬が熱くなるのを感じながら彼の方を見た。

 

「いや、オレの方こそ迷惑かけたな」

 

 ライアンがちょっと元気が無いように見える。私の為に大金を使ったせいじゃ無いと思うけど。

 

 カトリーヌの部屋につき、三人で暖炉の前のソファにそれぞれ座った。

 

「今回はダンジョンに入り込んだネズミどもに引っ掻き回された。最初はライアンを狙った事だと思っていたがイグナツィが絡んでる。つまり嫌がらせは私も狙っての事だったようだ」

 

 カトリーヌは余裕の顔でニタリと笑う。

 

 ダンジョンで事が起きればその後しばらく利用できなくなったり、悪ければ潰される。なのに笑うなんて、かなりお怒りって事?

 

「イグナツィって何者ですか?凄い魔術師だって事はわかりましたが」

 

 カトリーヌに匹敵する位の火球を飛ばして来たしジジイの割に身軽で残虐。

 

「あいつは私の遠縁に当たる。昔、婚約してた事もあったが、破棄してやったら恥をかかせたといって恨んでるらしい」

 

 一体何十年前の話だよ、聞けないけど。

 

「その根暗なジジイが何故今頃急にこんな事しでかしたんでしょうか?」


「国内でライアンの存在を嫌がる奴と利害とタイミングが一致したんだろうね」

 

 カトリーヌが彼の方をチラッと見た。

 

「ライアンて命を狙われるほど何かしたの?」

 

 ため息をつきダルそうに頭をかきながら彼は立ち上がった。

 

「こっから先はオレの問題だ。ユキはもう帰れ、最ダンもいつ再開するか未定だ。少しゆっくりしろ」

 

 そう言って部屋から出て行った。何だか思い詰めているようで追いかけようかと思ったが立ち上がった所でカトリーヌに止められた。

 

「ほっといてやりな。身内の話だ」


「身内って、母親は亡くなったって言ってたから。まさか父親?ライアンを引き取りたいって言ってたんじゃないんですか?今も諦めてないって」

 

 可愛がっていたはずじゃないの?

 

「だからさ、正妻がやらかしたんだ。あの馬鹿な父親がライアンに後を継がせたいって言い出したらしい。母親としては、というより正式な妻としては許せないだろうねぇ。半分平民の愛人の子を跡継ぎなんて」


「そんな、それじゃライアンに責任は無いじゃないですか!」

 

 カトリーヌは軽く肩をすぼめた。

 

「いつだって誰かのせいで嫌な事が起きる。それがたまたま今回はライアンだったんだろ。自分以外の人間の考える事なんて完全には理解出来ないさ、まして相手は貴族だ。プライドも利権も絡んだドロドロの世界だ。ただの平民は関わるだけ損をするのさ」

 

 ただの平民には全く見えないカトリーヌでも貴族に関わるのは慎重なようだ。

 もっと詳しく聞きたかったがもう用は済んだとばかりに追い払われ部屋を出た。

 せっかく無事に帰ってきたのに重い気持ちになりながら中庭の横を通るとドマニが私を見つけ駆け寄ってきた。

 

「ユキ、用は済んだか?」

 

 キラキラした目で見上げられると貴族のドロドロを払拭してくれるよ。

 

「済んだよ、ところでドマニはどこに住んでるの?」

 

 私が帰るのを魔法陣の側で待っていたんだからカトリーヌの屋敷に滞在する事を許されているのかな?

 

「ユキが帰るまでならここに居ていいってあの婆ちゃんが言ったんだ。あ、婆ちゃんは駄目だ。カトリーヌ様が言ったんだ」

 

 一瞬顔をこわばらせて言い直した。相当脅されたようだ。

 

「凄いじゃないあの師匠にそんな許しをもらうなんて」

 

 やっぱりカトリーヌは優しいところがあるよね。

 

「そりゃコイツを渡したからに決まってるだろ。ユキは甘いなぁ」

 

 ドマニはポケットからいくつか美しい石を取り出して言った。

 

「カトリーヌ様ってかなり業つくでさ、ここに居たいなら一日一個宝石を渡せって言って来たんだ。オレはユキが心配だったから仕方なくここに居たけどもういいだろ、行こうぜ」


「……え?行くってどこへ?」


「とりあえずお前んとこでいいよ。金はあるからいずれ家を買うけど、しばらくは働いて計画を立てて生活を安定させていかないとな。ムダ遣いはしたくないしユキには大金がかかったんだ、少しは面倒みろよ」

 

 手をつながれ呆然とした私をカトリーヌの屋敷から引っ張り出し最ダンへ向かって歩き出した。

 

「ここらの探検は終わってる。もうユキより詳しいぜ」

 

 嬉しそうに手を引くドマニの事を振り切る事なんて出来っこない。だけど子供の面倒なんて見た事ないんだけど、しかも他人と暮らした事も無いのに。

 すぐに最ダンの二階にある私の部屋についた。中に入るとドマニが眉間にシワを寄せた。

 

「何だよここ、何にもないな」

 

 家具を揃える暇もお金もない私の部屋にはベットとサイドテーブルがあるだけだ。

 

「私もここに来たばかりなの」


「仕方ないな、明日買い物に付き合えよ。それより腹減ったな、どうせ食い物も無いんだろ。どこか食べに行こうぜ」

 

 ちょっと強引な彼氏ばりに手を引かれまた最ダンの前まで来た。

 

「どこに行く?」


「私の友達のとこへ行こう。お店やってるから」

 

 疲れた時はエリンの顔が見たい。

 店につくと開店には少し早かったがもうエリンがいて私を見るなり駆け寄ってきた。

 

「ユキ!無事だったのね」

 

 そう言ったきり私を抱きしめ泣き出した。私も涙が溢れエリンの背中をさすりながら帰ってきた事を実感した。

 

「心配かけちゃったね。ごめんね」


「いいの、無事ならそれでいいの」

 

 二人してなかなか泣き止まず、やっと落ち着いた時ドマニは既にテーブルにつきエリンの父親に食事を用意してもらい食べていた。

 

「二人共泣き虫だな、先に食べてるぞ」

 

 チビの割によく食べるドマニがまた何か追加しながら言った。そう言えばちょっと顔の色艶がいい。カトリーヌの屋敷でもちゃんと食事が取れていたようだ。

 

「ここの店は何食べても美味いな。婆ちゃん……カトリーヌ様のとこじゃ訳わかんない物ばっかりで食べた気がしなかったんだ」

 

 知らない土地で知らない人に囲まれ緊張もあっただろう。そこで出された高級な食事なんて味がわからなかったようだ。

 

「そう言えばフリオはどうしてるの?」

 

 すっかり忘れていたがもう一人いたんだった。

 

「アイツは持ってたありったけの宝石はたいてカトリーヌ様に弟子にしてくれって頼んでたけど断られて、今は弟子予備軍だってさ。仮の弟子契約だけされてこき使われてるよ。オレからすればあれもう奴隷だな。宝石も全部取り上げられてたし」

 

 ドマニは悪い顔で笑いながら骨付きチキンのような物にかぶりついた。

 

 ま、本人がいいならそれでいいか。カトリーヌもきっとちゃんと調べて側に置いてるんだろ。

 

 

 

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