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ダンジョンの受付嬢最強説  作者: 蜜柑缶


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94 帰宅

 しばらくしてケイとレブが戻って来たが、私はまだ不満気にライアンに引っ付いていた。

 

「ここではこれ以上進展も無いのでそろそろご帰宅なさって下さい」


「帰宅?」

 

 また目が腫れて開きにくいがレブを見た。

 

「レブがまだ足りない感じなんだけど」

 

 ライアンに回していた手を離しレブに向けて伸ばし、来い来いと手招きした。それを見たレブはピクッと頬を引きつらせると首を横に振る。

 

「私はもう結構です」


「じゃあ勝手に死なないと約束して」


「実行可能かどうかは別として要求は命令して下さればいいのです」


「命令じゃなくて自分の意思で私と約束して!」

 

 訳がわからないって顔のレブをケイが笑って見てた。

 

「ケイもよ、約束して」

 

 他人事だと思って見ていたケイが驚いた顔をした。

 

「私もですか?」


「当たり前じゃない、もう……誰も勝手に死なないで、お願い……」

 

 壊れた蛇口のようにまた涙があふれる。

  

「あぁまた……早く約束しろ、このままじゃ干からびる」

 

 ライアンが苛立った声を出して二人を急かす。

 

「します、勝手に死にません」


「私も、勝手に死にません」

 

 ケイが笑って答えてくれ、レブが諦めたように答えた。

 

「ではあちらへ、魔法陣をご用意いたしましたから」

 

 さっきイグナツィの奴隷を連れて行った方へ行く為に仕方なくライアンから離れ立ち上がった。

 

 やっと開放されたって顔してんじゃないよ。

 

 首をぐるっと回し伸びをした後、私の背から外された鞘に剣をおさめた。

 

「これをお前が持ってたなんてな。驚きを通り越して鳥肌がたった。だが助かった、ありがとう」

 

 ライアンにお礼を言われるなんて、変な感じだ。気持ち悪い。

 

 大切な物が返ってきた満足そうな顔でそれを腰のベルトに差し込んだ。剣を見つけてくれたのがベトだと説明しながらまた目をポーションで治し、レブの後をついて行くと地面に魔法陣が用意されている所へついた。

 

「あれなに?」

 

 魔法陣から少し離れた所に布が被せてある何かがあって何だか焦げ臭い。

 

「イグナツィの奴隷だ」

 

 ライアンが私からそれが見えない様に体で視線を遮った。

 

「殺したの?」


「違う、勝手に死んだ。契約でそうなってんだろ、話の最中に急に苦しんでアッという間に火がついた」


「そんな事……」

 

 私は寒気がして思わずケイとレブを見た。

 

「可能ですよ、我々にもいつでも同じ様に扱うことができます。呼吸を止めて自分で焼け死ねって命令すればいい」


「師匠はそんな事しないわ」


「するしないでは無く出来るということです……私も(あるじ)がそうしないと思って……おります」

 

 最後は煮え切らない感じで締めくくるレブの気持はよく分かるが、カトリーヌはそんな事しないと言い切れ……るよ、多分。大丈夫!

 

「そうだ、これ」

 

 ライアンがケイから受け取った美しく輝くメイスを私にくれた。それは見た目で想像したより軽く私に丁度いい重量感で前のより少し長め。尖端は刃の様に薄く尖りトランプのスペードのような形のなかにスノウドロップの模様が施されていた。

 

「綺麗ね……これって……」


「カトリーヌが作ってくれいていたらしい。ミスリル製だ、丈夫で軽いのが特徴。オレには軽すぎる」

 

 全体的にも小さなスノウドロップや蔦のような装飾がされておりまるで芸術品のようだ。くるくるとバトンの様に回し軽さを確認し改めて持ち手のあたりにあるスノウドロップにそっと触れた。

 

「ここら辺でも花言葉ってあるのかな?私のいた所ではスノウドロップの花言葉は『希望』っていうの」

 

 ニッコリ笑って三人を振り返るとライアンが黒い笑顔でこっちを見てる。

 

「あぁ、知ってる。もう一つあるがな」


「そうですね。『あなたの死を望む』というのがあります。武器に相応しい印章ですね」

 

 レブが続けて言った。

 

「何それ!?初めて聞いた!怖い、何でそんなの……あぁ、ライアン!それであの時これを選んだのね」

 

 エリンが私の印章を決める時にライアンの意見を取り入れたはず。

 

「オレはエリンが選んできた中から選んだだけだ」

 

 クゥー、なんか腹立つ。でもこれカワイイ……

 

 怒っていいのか喜んでいいのか複雑な気分になっていると、ケイが私とライアンを魔法陣へ導いた。

 

「ではこちらへどうぞ」

 

 レブが一緒に並ばず私達を見送る様に下がって行く。

 

「一緒に帰らないの?」


「えぇ、魔法陣の始末もありますし、ケイが戻った後、この国で少し調べ物をしなければいけません」

 

 どうやらカトリーヌからの指示があるようだ。

 

「そうか、気をつけてね。約束忘れないで」

 

 私の言葉に苦笑いするレブが頭を下げると足元が光り、あっという間にカトリーヌの屋敷地下についた。

 

「来た!!」

 

 すぐにドマニの叫ぶ声が聞こえた。

 見上げると階段を滑るように下りてくるなり飛びつかれた。

 

「ユキ!お帰り」

 

 ギュッと抱きしめられ思わずじわっと涙が浮かぶ。

 

「ただいま、ドマニ。心配かけてごめんね」

 

 髪をワシワシ撫で回し頬ずりした。

 

「うわ、やり過ぎだよユキ。はしたない奴だな」


「何言ってんの、抱きついてきたくせに」

 

 クイッと持ち上げ更に抱きしめた。

 

「止めろよ!子供じゃねぇんだから」

 

 暴れているが今の私から逃れられると思うなよ。

 

 スキル全開で暴れるドマニを軽く抱き上げたまま階段を上っていった。

 

「ライアン助けろ!」

 

 後ろから付いてくる彼に助けを求めたようだが軽く断られてた。

 

「諦めろ……オレも散々やられた」

 

 流石にライアンを持ち上げたりはしないがドマニは丁度いい。お気に入りのぬいぐるみの様に抱っこしながら上の階につくとカトリーヌが出迎えてくれた。

 

「早かったじゃないか、二日かかるのところを一日かい。誰かさんが一睡もさせてくれなかったってケイが溢してた」

 

 どうやら私達が抱き合ってる間……いやいやいや再会を喜んでいる間に、ケイが一度ここに戻り報告していたようだ。

 

 待てよ、冷静に考えたらちょっと恥ずかしい感じだったの?

 

 諦めて今は大人しく私に抱っこされてるドマニで熱い頬を隠した。

 廊下の向こうからバタバタとファウロスとイーサンが走って来る。先を行くイーサンを押し退けファウロスが前に出た。

 

「ユキ!無事か?早かったではないか、もう二、三日かかるかと思っていた」

 

 私に駆け寄り両手を広げた所でピタッと止まった。

 

「ドマニ、そこをどけ」

 

 ドマニのおかげで抱きしめられずに済んだようだ。

 

「無理だ、ユキが離してくれねぇ」

 

 さっきまで嫌がってたはずがギュッと抱きしめてくる。

 

「ご心配おかけしました。もう大丈夫ですから」

 

 出来るだけ他人行儀に挨拶をした。コイツはすぐつけ上がるから厄介だ。

 

「本当に、心配したぞ。勇者エクトルも自ら助けに行こうとするくらい心配しておったぞ」


「エクトルが?」

 

 イーサンがホッとしたような顔で教えてくれた。

 

 勇者が勝手に国を出る事は不味いんじゃないのかな。

 

「そうだ、ギリギリでこいつがズルして助けに行ったんだ。自分が置いてきたクセに」

 

 ライアンはドマニにビシッとデコピンを入れた。痛がるチビとそれを排除したがるファウロスと、皆がワイワイと心配してくれるのが嬉しくて笑った。無事に戻ってこれて本当に良かった。

 

 騒がしくなりカトリーヌが面倒くさそうな顔をした。

 

「うるさい奴は帰りな、ユキはこちらへ、話がある。ライアンも来い」

 

 カトリーヌに呼ばれ仕方なくドマニを開放して、すきをついて抱きしめようとするファウロスを避けると彼女の部屋へ向かった。

 

「これって師匠が用意してくれたって聞いたんですけど」

 

 ライアンが持っていてくれた美しいメイスを受け取りカトリーヌを見た。

 

「そうさ、お前がメイスを使いだしたとマルコから聞いて、丁度ミスリルが手に入ったからね。どうだい?」


「とっても綺麗です。まだ使ってないんですけど。ありがとうございます」

 

 カトリーヌがニッコリ美しい笑顔を見せた。

 

「月々給料から引いておくよ」

 

 膝からガックリと崩れ落ちた。

 

 そうだよね、カトリーヌだもんね。

 

 

 

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