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ダンジョンの受付嬢最強説  作者: 蜜柑缶


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93/133

93 合流

 私の顔を見た瞬間に怒りをあらわにするとライアンはジジイに向かって行った。

 

「あぁ、なんて酷い」

 

 レブが私の体を支えポーションを与えてくる。口に含むと寒気がした。

 

 やっぱり不味い……傷に滲みる。

 

 すぐに体中の痛みがひいていく。

 

「シーリを見てやって……」


「大丈夫、彼女には男がついてます」

 

 横目で見るとベトが半泣きでシーリを抱えポーションを飲ませていた。

 

「あの男と森の外で会ってここがすぐにわかりました」

 

 ベトはシーリが逃げて来ない事を憂いでウロウロしていたそうだ。

 離れた場所から戦う音が聞こえる。

 

「ライアン一人じゃ駄目だよ、危ない」


「大丈夫です、ケイがいます。彼は優秀な魔術師ですから」

 

 さっきの攻撃もケイの魔術らしい。魔術の基本的な攻撃は炎で、火を出すというのは魔術の初歩らしい。

 しょぼい魔術師の攻撃は炎しか使えないことが多く、優秀になれば多様な攻撃魔術が使える。ケイは複数の魔術が使え、さっきは氷の魔術で助けてくれたようだ。

 

「まぁ、すぐに逃げられるでしょう」

 

 ポーションで私の手当をしながらレブがライアンとケイの戦いをチラッと見た。

 

 ライアンはジジイに次々と攻撃を仕掛け相手は防戦一方だ。ケイからの攻撃もあり、土の魔術の(つぶて)で攻撃したり火球で牽制したりと上手く二人の攻撃をかわし、一瞬のすきに分厚い壁を作って姿が見えなくなり、すぐにライアンがそれを崩したがもうどこにもいなかった。

 

「ふぅ~、逃げたか。あれがイグナツィだな?」

 

 ライアンが雷鳴の剣を手に腕を押えながらこちらに戻って来た。ケイが頷きポーションを渡した。

 

「ライアン、怪我したの?」

 

 私がレブにポーションで顔を手当されながら聞くと呆れた顔した。自分で腕にポーションをかけながら近づき目の前にしゃがむ。

 

「お前が言うな。それ、イグナツィがやったのか?」

 

 眉間にシワでまだ治りきらない私の顔にそっと触れ頬を指でなぞる。

 

「殴ったのはそこで息を殺して死んだフリしてるジジイの奴隷よ」

 

 イグナツィに置いて行かれ恐らく助けに来てもらえなさそうな男がこちらを見た。

 

「ヒィィ、助けてくれ。何でも話す」

 

 私に折られた足をかかえ怯えている。ライアンがゆらりと立ち上がり剣を握り直したが、命乞いは見てられない。

 

 殴られた事はムカつくが私は生きてる。この奴隷にこれ以上何かするつもりは無かった。

 

「どうせなにも話せないでしょう。契約で縛られてるんですから」

 

 レブが鼻で笑う。

 

「主の事は無理だが他の事は話せる、だから頼む」

 

 それを聞いたライアンとケイが男を引きずり私達から離れた。

 

 何聞くんだろ?

 

 

 

 

「シーリを助けてくれてありがとう。オレじゃ戻っても足手まといだったから……」

 

 ベトはシーリを助け起こし嬉しそうに言った。

 

「あの男、やっぱりプラチナ国の勇者に準ずる者ね。あんたが一度ライアンて名を口にしたからもしかしたらって思ってたんだ」

 

 シーリはライアンが消えていった方を眩しそうに見ていた。

 

「こんな事ならもっと話を聞いておくんだった。せっかく次期勇者に一番近い男の側にいたのに」

 

 戦う冒険者のシーリにとってライアンは憧れの存在だったのかも。ベトはちょっとムッとした顔して彼女を引き寄せ、もう行こうと言った。

 

「なんだかあんた達には迷惑かけちゃったけど……怪我も酷いし」

 

 申し訳無さそうにシーリは言った。

 

「もういいよ、ライアンが戻って来たらややこしくなりそうだから行って」


「確かに、アレはどう見てもうるさそう。じゃあ行くよ」

 

 ベトと二人で馬に乗るとシーリが手を振った。

 

「いつかプラチナ国の最ダンに来て。私はユキ、受付けしてるから」


「受付け?どうりで、強いわけだ」

 

 二人は笑って去って行った。

 

「さぁ、そろそろ回復に集中して下さい。次はどこです?」

 

 レブが小うるさい姑のように見える。言う事聞かなきゃコイツもしつこそうだ。

 首を傾け傷を見せると舌打ちされた。

 

「首を締められたのですか……」

 

 恐らく鎖の跡がくっきり残っているんだろう。

 

「次は必ず殺す」

 

 低いドスの利いた声がして驚いたらライアンが戻って来ていた。

 レブと二人が並んで私の前にしゃがみあれやこれや文句を言いながら傷の手当をしてくれる。

 

「ああ、まだ動かないで下さい」


「ユキ、じっとしてろ。ほら手もみせろって……」

 

 彼らのやり取りを聞いていると鼻の奥がツンとして私は二人の首に腕を回しギュッと抱き寄せた。

 

「もう泣いていい?」

 

 二人に挟まれその温かさを感じたら我慢できなくなった。

 

 わんわん子供のように泣く自分を全く止めれる気がしないし止める気もない。

 

「そうだ、コイツけっこう泣き虫だった」


「出来れば私は離して欲しいです。ユキ様はともかくライアン様とこう距離が近いのは居心地が悪い」

 

 二人がなにか言ってるがかまうもんか、ずっとこうしててやる。私を置いていった罰だ。

 

 

 

 

 

「ユキ様、そろそろ顔が限界ですよ」

 

 戻って来たケイが私の鼻水を拭きながら笑って、腫れた目にポーションをかける。

 

 あれから時間をたっぷりとって二人を拘束中だ。涙もそろそろ枯れ果て泣きすぎた頭もボーッとして自分では抱きしめた腕を離せない。

 

「もういいですよね」

 

 大きくため息をついてレブは自ら私の腕を外した。もう引き止める気力は無いが口が尖ってしまうのは止められない。

 

「まだヤダ」

 

 離れたレブに文句を言うと彼は外した私の腕をライアンに巻き付けた。

 

「ライアン様はまだイケそうですのでお好きなだけどうぞ。私達は少し準備をしてきます」

 

 そう言ってケイとレブがさっきイグナツィの奴隷を連れて行った方へと消えて行き、二人切りで取り残された。

 

「オレはまだ開放してくれんのか?」


「まだ無理……」


「ちょっと体制を変えさせてくれ」

 

 私が抱きしめた状態ではライアンはずっと中途半端にかがんだ状態だったのがキツイようだ。

 一旦、抱き上げられ横向きにライアンの膝に座らされる。首に巻いていた手は彼の脇の下に回し私も体制を整え直し彼の胸に頭を預けた。

 

「なんでこんなとこまで来てあんな奴に会ったりしたんだ。どうせ自分で言い出したんだろ」

 

 思った通り怒ってるよ。

 

「置いてったやつが文句言うな」


「う……ホントにそれはすまん」


「すまんじゃ済まない」


「ぐっ……」

 

 ライアンの顔じっと見上げる。ヒゲモジャを見るのがこんなにホッとするなんて。

 

「誰が私達を狙っていたのか知りたかったの。誰のせいでライアンと……レブが……流されて……」

 

 説明を始めたらまたこみ上げて来る。

 

「あぁ、もういい、もういいから」

 

 またイチから泣きなおしになるかと思ったのかライアンが焦っている。ポロポロ溢れる涙を拭きもしないで彼を睨みつけた。

 

「うぅ、コレに懲りたら、グスッ。もう、勝手に死なないで!」

 

 ライアンは私を見下ろし目を瞬いた後、ため息をついた。

 

「わかった……お前の許可無く死なない。だからもう泣き止め」

 

 そう言って私を包み込むように優しく抱きしめた。

 

 仕方ない、許してやるか……

 

 

 

 

 

 

 

 

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