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ダンジョンの受付嬢最強説  作者: 蜜柑缶


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80 脱出1

 振り返ったライアンが私がビスチェを脱いでいる事に気づいて嫌そうな顔をしている。

 

 別に真っ裸で歩いているわけじゃ無いのになによ。

 

 やっとさっぱりしてドマニの待つ洞窟へと帰って行った。

 

「ユキがルフを!?しかもひとりで……」

 

 ひとり大人しく待っていたチビに経過を話すと目を丸くしていた。

 

「あんまり実感は無いんだけどね」

 

 大げさに驚かれちょっと照れる。

 ただ必死で身を守ろうとした結果だよね。

 

 私はマントの隙間から手を出して水を飲んでいた。ビスチェは外に干してあるので午後には乾くだろう。

 

「それで何で裸なんだよ」


「汚れたから洗ったの。ブラウスは誰かに破られたし」

 

 チラッとライアンを見ると彼は顔をそらして食料が入った木箱をあさり何かモグモグ食べている。

 

「凄腕のわりに慌て過ぎだろ」

 

 ドマニが悪い顔で笑いそれを聞いてライアンが舌打ちしてる。

 何だか男二人は通じ合ってそうだ。

 

「それで、これからどうなるの?」

 

 ライアンに言われるままにルフを倒したがそれだけではプラチナ国には帰れない。

 

「多分奴らがここを見張っているだろうからルフが死んだ事はわかってるだろう。きっと向こうからやって来る。来なけりゃアレを川に投げ込めばいい」

 

 さっきの『金銀財宝』を流されれば慌ててやって来るか。

 アレ?何か引っかかる……

 

「奴らは私達を見張ってたの?」


「そうだ、きっと見てた」


「嘘でしょ……なんで言ってくれなかったの!私裸になっちゃった……」

 

 血で汚れた体を拭くために上半身は完全に脱いでいた。

 

「……あそこまで脱ぐと思ってなかったんだ。せいぜい体を拭くだけかと」

 

 ライアンが苦々しい顔をした。

 

 いやぁーー!信じられない!見たやつは絶対にぶっ飛ばす!!

 

 

 本来ならライアンも同罪にしてやりたいが今彼を負傷させる事は得策ではない。仕方なく見逃し、その分を奴らにぶつけてやるとしよう。

 

 ライアンは魔法陣を見張りに行くと言い残し出て行った。ルフを倒すはずが何も出来なかったので力は有り余っているだろう。私はちょっと疲れたよ。

 

 午後になり干していたビスチェが乾き、身につけるとホッとした。下着って偉大だ。

 

 ビスチェにマントなんて本来なら恥ずかしい所だがここではそうも言ってられない。

 日が傾きかけた頃ようやくライアンが帰って来た。

 

「ちょっと細工をして置いたから奴らが来ればわかる」

 

 何をしたのか知らないが三人で食事を取るとまた交代で眠る事になった。恐らく奴らは夜中に来るだろうと先にライアンが休んだ。

 

 

 

 交代で休んでいたがすぐに起こされた。

 

「来たぞ、森では念の為明かりの魔石は消しておけ」

 

 ライアンはそう言って私とドマニを連れ出した。

 洞窟の外は月明かりで美しく照らされ思ったよりも明るい。深夜の森はぐっと冷えこみ手がかじかむのでドマニと手を繋ぎ静かに歩きルフの巣の近くにある奴らの財宝の隠し場所へ来た。

 

 いつの間にかドアはライアンに直されていて、中に入り明かりの魔石を使って洞窟内が照らされるとその広さにドマニが言葉を無くしていた。

 

「何だよここ!一生困らねぇどころか街一個買えんじゃねぇか?」

 

 保管してある物を見て興奮している。

 

「もう人の物は盗らないって言ってたでしょ」


「ここに置き去りにした奴からは良いんだよ!」

 

 そう言って私が体を拭くために布が欲しくて中身をぶちまけた木箱を見て、拾い上げると急いでポケットにしまい込んでいた。

 

 ま、慰謝料だと思えばちょっとくらいいいか。

 

 そう思って私も箱の中を探った。宝石もこれだけざっくりと目の前に広げられるとあまり価値がわからない。私はふと自分の首にかかってる石を見た。

 大きな赤い契約の宝石はキレイにカットされ濃厚な赤は何故か血を思わせる。

 

「ユキのそれには敵わねぇな」

 

 ドマニが箱の中から似たような赤い宝石を取り出したが大きさも品質も桁違いに見えた。

 

「これは師匠から与えられた物だからね」

 

 複雑な心境でそれを見つめる。この石の美しさに心がえぐられるようだ、何故だろう……

 

「あぁ、これはユキに似合うんじゃ無いか?」

 

 ドマニはそう言って濃いブルーの石をくれた。

 

「わぁ……綺麗ね」

 

 手の中の美しい青玉(せいぎょく)を見ているとドマニがそこに手を乗せてきた。

 

「ユキ、オレと誓いをたてるか?」

 

 にこっとイタズラっ子ぽく笑う。

 

「は?誓いって?」


「結婚に決まってるだろ。こうやって誓いをたてて結婚するんだよ、知らねぇのか?」


「知らない、そうなの?」

 

 ライアンを振り返ると関心無さそうな顔で頷いた。

 

「あぁ、そんな事より明かりを消せ。そろそろ来る頃だ」

 

 明かりの魔石を消す寸前にピンクの石を一つ取るとポケットに入れた。

 

 エリンにお土産だ、いつもお世話になってるもんね。

 

 

 暗い中、静かにしているとドアの外で馬車が近づき停車する音がした。

 

「早くしろ、少しでも持ち出すんだ。アイツらに見つかる前に」

 

 誰かがそう言って洞窟倉庫のドアを開けた。

 その瞬間、明かりの魔石を使い洞窟内が照らされる。

 

「残念、もう見つけちゃった」

 

 剣を抜いたライアンの後で私は可愛く言った。

 

「うわぁ!ルフと戦って誰も死んでないのか!?」

 

 そこには三人の男がいて私達の誰も欠けてない事を驚いているようだ。

 

 普通なら近づくはずが無いルフの巣へ行き、そのうえ討伐するなんてありえないだろう。しかも犠牲者はいない。いや、そのせいで私はライアンに胸を見られ……その事は忘れよう。

 問題はコイツらだ。監視はしていたようだがそこまで細かい事はわからないようだ。もしかしたら私の裸も見てないかも!

 

「ちょっと聞きたいんだけど、誰が監視してたの?」


「馬鹿、もっと他に聞く事があるだろ。誰の仕業なのかとか」

 

 ライアンがガックリとして私を見た。

 

「そうだよユキ、どうやって帰るのかとか」

 

 隣でドマニが呆れてる。チビに注意されちゃった。

 

「クソッ、やるしかないか!」

 

 チビに注意されてる間に私の問はスルーされ、リーダーらしき男がそう言うと、後ろの二人が何やら唱え小さな火球が現れた。どうやら全員、魔術師らしい。

 

「ユキ!」


「わかってる!ドマニは私がみてるから」

 

 ライアンが叫ぶと、私はチビを小脇に抱えメイスを構えると火の魔術からの攻撃に備える。

 

 気のせいかな?カトリーヌに比べて火球が小さい気がするし、魔術を使おうとした動作から火球が出来るまでが遅い気がする。コイツらもしかしてザコ敵?

 

「気をつけろよ、お宝に傷をつけるわけにいかない!外へ追い出せ」

 

 リーダーらしき男がそう叫んだが後の二人は攻めあぐねているようだ。人質の財宝たちを背にライアンが斬り込んだ。

 

「うわぁーー!」

 

 魔術師たちはライアンに向かって攻撃したがアッサリかわされ一人は腕を落とされた。 

 今までライアンが魔物を倒すのを何度も見てきたが、相手が人間なのは初めて見た。

 

「うっぷ、気持ち悪い……」

 

 私が落ちた腕にゾワッとしているとドマニが抱えられながら「ユキはショボいな」とまた呆れた。こんな小さな子ですら刃傷沙汰に慣れてるってどうよ。

 

 吹き出す血に慌ててポーションをかけようとしてるやつを置き去りに、もう一人が外へ逃げ出した。リーダーが慌てる怪我人を引きずりそれに続く。早く行かなきゃまた置き去りにされてしまう。

 

 ライアンは素早く追いかけリーダーの男を捕まえた。

 

「暴れるな、でないと一人しか残せんぞ」

 

 その一言で男たちはピタリと動くのを止めた。私はドマニを離れた場所に移動させ、男たちが持ってきていたロープで一人ずつ縛り上げた。腕を落としていた男にポーションを与えるとニッコリ笑ってさっきの続きを始めた。

 

「それで、誰が私の裸を見たのかしら?」

 

 私はグローブをはめた手をギュッと握りしめた。

 

「見張ってたのはオレじゃない、アイツだ」


「何いってんだ、おまえだって女が脱いだって言ったらすぐに見に来たじゃないか!」


「オレは見てない!見た時はもうマントを着てたんだ!」

 

 とりあえず前の二人は殴っとくか。

 

 そう思った瞬間ムッとしたライアンが「うるさい!」と言って前の二人を蹴り飛ばし気絶させた。

 

「ちょっと!」

 

 先にやられて拍子抜けした。

 

「お前が殴ったら首が取れる。殺す気なら止めないが?」


「殺す気は無かったけど……」

 

 もちろん手加減するつもりだったのに。まぁ、痛い目には合わせたからいいか。

 

 離れた所でドマニが肩を震わせて笑っていた。

 

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