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ダンジョンの受付嬢最強説  作者: 蜜柑缶


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78 行方不明4

 ライアンを先に休ませ、私はマントを着るとドマニと警戒する為に外へ出た。チビは眠っててもいいと言ったのに二人して私だけじゃ不安だと言われた。

 

 見張りくらい出来るのに。

 

 数時間がたちライアンと交代すると洞窟の中でドマニと並んで横になった。

 ドマニは起きている時は生意気だったが眠ると私に引っ付いてきてその寝顔は年相応の幼さを見せていた。

 

 いくらしっかりした事を言ってもまだ子供だな。

 

 可愛くて髪を撫でながら眠りについた。

 

 

 

 すっかり熟睡してしまい朝、目が覚めると洞窟の中に誰もいなかった。

 寝ぼけ眼で二人を探すと外にいるのか話し声が聞こえる。

 

「それで、そいつは始末したのか」


「当然、生かしておくわけ無いだろ」


「だな、オレだったらその場でやっつけてやる」

 

 ドマニが怒っている。なんの話だ?

 

「貴族相手だからな、そういう訳にもいかん。他に類が及ぶとややこしくなる。お前もこれから色々な所で貴族と出会うかもしれんが出来るだけ逆らわずその場は耐えろ」


「わかってるさ、おじさんにもしつこく言われてた。生きのびて機会を待てってな」

 

 なんとなく物騒な話をしている気がする。生かしておかないって、ライアンは何を子供相手に言ってるの。

 

 私が洞窟を出ると並んで座っていた二人がピタリと話を止めた。

 

「おはよう、なんの話をしていたの?」

 

 私はちょっと顔がムッとしていると思う。昨日から二人だけ通じあって私は仲間外れな気がする。

 

「ユキって朝は機嫌が悪いのか。寝てる時は可愛かったのにな」

 

 ドマニがライアンに同意を求めて見上げる。

 

「酔ってる時はイビキがうるさいんだ」

 

 ちょっと顔をしかめて彼は言う。

 

「ちょっと、変な事言いふらさないで」

 

 私が文句を言うと「ホントの事だ」と言って立ち上がった。

 

「どこかに行くの?」


「手頃な石がないか探しに行く、お前も来い」

 

 そう言って自分が着ていたマントを渡してきた。一枚しかなく借りたマントはライアンの体温が移って温もりが残っている。羽織るとふわりと彼の匂いがした。

 

「機嫌がなおったのか?よっぽど寒かったんだな」

 

 ドマニに指摘され自分が笑んでいる事に気がついた。

 

 え……っと、何でもない、よね。

 

 先を歩くライアンについて行きながらひとりでに熱くなる頬を隠すようにフードを被った。

 

「石ってどれ位の大きさがいるんだ?それによっちゃ探す場所が違う」

 

 ドマニがライアンの後を追いかけ男二人で並んで歩く。チビはこの中洲をけっこう歩き回っていたようで詳しそうだ。

 

「そうだな、人の頭位なら数個はいるが、デカいのがあるなら一個でいい」

 

 ドマニは私を振り返る。

 

「デカいってユキはどれ位なら投げられる?」


「そうねぇ……前より力の使い方がわかってきてるから結構イケると思うんだけど」

 

 ドマニは自分を崖に吊り下げたから、私は女にしては力があるんだとわかっているようだ。

 

「デカい岩ならコッチだな」

 

 案内してくれた所はルフの巣からそんなに遠くない岩場だそうで、デコボコとした足元は歩きにくい。

 

「デカいのが欲しいなら砕かないと駄目かもな」

 

 両手で抱えられる程の大きさの石はゴロゴロ転がっているがそこまで大きな物はなかった。ドマニの言うとおり砕いた方が早そうだ。

 

 ライアンと二人で探した結果、ヒュドラの封印クラスの大岩になりそうな出っ張りがあったのでそこを割る事にした。

 私は岩によじ登り割る為にメイスを突き刺すいい隙間がないかと探した。

 

「無ければ作ればいい」

 

 なかなか決まらない私に苛ついたのか、ライアンがひょいと登ってくると剣を抜き岩にガンと突き刺した。

 

「ちょっと、刃こぼれしないの?」


「これくらいでするかよ。ほら、ここに撃ち込め。ドマニ、危ないから下がってろ」

 

 割れた岩の下敷きにならないようにドマニを避難させて、ライアンは私の腰を持って支える。岩が割れた時に私が巻き込まれて落ちないようにって事だがなんだかこそばゆい。

 

「早くしろ」


「わかってる、行くよ!」

 

 グローブをするとライアンが作った隙間にメイスを強めに突き刺した。

 メイスは鈍い金属音を立てグイっと半分くらい岩に入ったが割れる様子は無い。

 

「アレ?駄目かな?」

 

 刺さったままのメイスを押し込むようにしながら左右によじるとピシッっと音がし足元がグラリとした。

 

「わわわわ、落ちる!」

 

 岩がバックリと開きゆっくり倒れると土埃があがった。

 ライアンにグイッと引き寄せられ落下を免れると、ゴロリと転がる岩を見ていた。

 いい感じだ。

 土埃が落ち着き、もう大丈夫だと思ったのかドマニが近寄って割れた岩を見て首をひねる。

 

「いくらなんでもちょっとデカすぎなんじゃないか?」

 

 割れた岩は形は歪な長方形で尖っているもののヒュドラ封印の岩より少し小さい位だ。

 

「イケるでしょ」

 

 ドマニを見て頷いているとライアンが急に私を抱え、よじ登った所からポンと飛び降りた。

 

「キャー!飛び降りるなら先に言ってよ!怖い!」


「ああ、すまん。それより早く持て」

 

 チッ、人使い粗いなぁ。

 

 持っていたメイスをベルトの後ろに差し岩の前にかがむと持つ所を探した。

 

「無理すんなよ、そんなの持てるわけないだ……ろ?」

 

 やっと持つ場所が決まりクイッと頭の上まで持ち上げた。

 ドマニが口をあんぐり開けて固まっている。全長三メートル程のだ円で先が尖り気味の大きな岩を持ちながら振り返る。

 

「もうこのまま行く?」

 

 ライアンの方を向いて確かめる。

 

「そうだな、待ってても何もないからな。ドマニ、お前は洞窟に隠れてろ。失敗したら逃げる時に邪魔だ」

 

 ライアンはとても優秀だがそれでも逃げる時に気にする人数は少ない方がいい。

 

「えぇ!オレも行きたい!」


「駄々こねるな。お前が言ったんだろ、自分とユキを守れって。お前が現場にいたらユキを守れない。それでも良いのか」

 

 そう言われドマニはグッと言葉を飲み込んだ。

 

「……わかった、ユキの面倒見るって言ったのはオレだ。洞窟で待ってるからユキを頼む」


「任せろ。後で迎えに行く」


「絶対だぞ、オレを置いていくなよ」

 

 ドマニはそう言ってくるりと背を向け走って行った。

 

 泣いちゃったの?チビのクセにカワイイ……

 

 一人前な事を言うドマニにキュンとしてるとライアンが私を急かしてくる。

 

「早くしろ、こっちだ」

 

 ホントに人使い粗いなぁ。

 

 ムカつくが大岩を頭上に抱えながら私はライアンの後を付いていった。どこに巣があるかなんて知らないし。

 

 基本的にこの中洲は足場が悪い所がほとんどだ。大岩をかかえヨロヨロとしか進めない私に、ルフに見つからないように気をつけろと言ってくるライアンは無茶を言っていると思う。

 

 こんなの抱えて見つからないはず無いじゃない。

 

 パッと一時的に抱えるのは簡単だけどずっと持ちながらの移動は結構大変だ。上げっぱなしの腕がダルい。

 

「ねぇ、一度休憩させてよ。キツい」


「もう着く、あまり時間をかけたくない。急げ」

 

 ライアン的には他の魔物や敵が来る前にルフを殺っておきたいようだ。彼には私にわからない考えがあるのだろう。

 仕方なく腕のダルさを我慢し言われるままに緩やかな上り坂をふらふらと登って行った。

 

「そのまま静かに……ゆっくりこっちへ来い」

 

 坂の頂上付近でライアンが身を低くして私に手招きした。そうっと近づくと坂の向こうを覗き込んだ。

 それは緩やかな下りで底にはルフが羽の下に嘴を隠し寝息を立てグッスリと眠っていた。

 

 

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