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ダンジョンの受付嬢最強説  作者: 蜜柑缶


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77 行方不明3

 プラチナ国の北に位置するデルソミア国。

 

 確かヒュドラ討伐の時に国境が近いって言ってた。

 

「ユキは最ダンで働いてるのか、いいなぁ。オレもそうしようかな」

 

 ドマニは私が憧れの場所で働いてると知って目を輝かせている。

 

「私はまだ新人よ、ライアンの部下ってとこね」


「アイツも最ダンで働いてるのか!」


「そう、馬鹿みたい強いわよ」


「馬鹿って言うな」

 

 ライアンが外の冷気をまといながら見回りから帰ってきた。

 

「ルフはどんな感じ?」

 

 マントを脱ぎながら私の側に座り、まだお腹が空いてたのか私に手の中の干し肉を一つ取って口に入れた。体がデカい分食料も沢山いるよね。

 

「ここからは少し離れてるが巣にいそうだな。ドマニ、ルフの巣から何か聞こえなかったか?」


「いや、別に何も。巣はカラだよ、卵もない。オレが見たのは一羽だけだと思う」


「なら大丈夫だな」

 

 もう、なんだか話についていけない。

 

「ドマニはひとりでルフの巣を見に行ったの?」


「自分がどこに置き去りにされたのか、周りに危険がないか確認するのは当たり前だろ、オレは冒険者だぞ」

 

 ドマニの言葉にライアンも頷いている。

 

「そう……なんだ。父親が冒険者だったの?」

 

 まだ小さいのに一人前すぎでしょ。

 

「いや、父さんは農家だ。母さんの弟、おじさんが冒険者で色々教わった。おじさんは国中旅してるんだ、オレもそうして生きる。母さんは反対してたけどもう死んじまったしな」

 

 最後にポツリと淋しそうに言った顔が切なくて思わずギュッと抱きしめた。

 ドマニは驚いてちょっと抵抗したがすぐに力を抜き私の胸に顔をうずめた。

 

「ユキ、面倒は見てやると言ったけど結婚はしないぞ。オレは冒険者だから一つの所に留まる訳にはいかねぇんだ」

 

 その言葉に驚いて思わずライアンと顔を見合わせて笑った。

 

「ふふっ、生意気ね。好きな人が出来たらどうするのよ、放って置いたら誰かに取られちゃうわよ」

 

 ドマニは私の顔を見上げて真面目に言った。

 

「その時はそいつをぶっ飛ばす。オレの物はオレの物だ」


「女の子は物じゃない。ちゃんと大事にしなきゃ他の人を好きになるわ」


「そうなのか……それはちょっと考えないとな……」

 

 ドマニが可愛くて頭を撫でた。

 

「ユキがもう少しこれが大きければバッチリオレ好みなんだけどな。まぁ許容範囲だけどな」

 

 そう言って両手でふにふに私の胸を触ってきた。

 

「あぁ?」

 

 私がドマニを睨みつけると見上げるチビが笑った。頬でもつねってやろうとしたら急にドマニが私から引き剥がされ宙に浮いた。

 眉間にシワのライアンがドマニをぶら下げたまま無言で外へ出て行った。

 

 えーっと、なんだ?まさか何かしないよね。

 

 ひとりで残され仕方なく食事していると二人が帰って来た。ドマニが若干笑みを浮かべ、ライアンが苦々しい顔で帰って来た。

 

「何があったの?」

 

 ドマニに聞くと、

 

「男同士の話に口出しするな。それよりさっきは悪かったな、勝手に触って」


「へ?」

 

 なんだか変なイケメンな発言にちょっと混乱する。

 

 ライアンは何を言ったんだ?

 

「今度からは許可を取るよ、触る前に」

 

 ちょっとズレてるが子供だからいいか、いや良くないか。

 

 とりあえずデコピンをビシッと入れといた。

 

 

 

 ドマニは赤いオデコをさすっている。

 

「先ずは飛べる奴に攻撃する方法を探さないとな、それとも巣にいる所を攻撃するか?」

 

 一人前の冒険者気取りでチビが真剣にライアンに言う。

 

「オレに考えがある、ユキにやらせる為にまずデカい石を探す。それで羽が折れればいいが攻撃した時点でコッチに向かって来るだろ。そこをユキがメイスで打ち込め」


「えぇ!?どっちもハズレたらどうするの?刺さってもメイスが持って行かれそう」


「外すな、ああいうのは羽を傷つけて飛べなくしてからの攻撃だ。メイスを投げたらすぐに下がれよ」


「外すなって言われても……」

 

 シューティングは得意な方だけど、命をかける自信はないなぁ。デカい岩を巣にいるルフに投げ込む方が確率が高いかな?巣にいるならメイスを撃ち込んだ方が確実かな?

 

 ライアンに言われたもののどうするのが一番良いのか悩んでいた。ドマニの持ってる木箱から水を飲もうと水筒を取り出すと、その下になんだかゴツゴツした物が入った袋を見つけた。

 

「何コレ?」

 

 それを取り出し中身を確かめようとしたらドマニが慌てて叫んだ。

 

「触んな!それはオレのだ!」

 

 こちらに駆け寄ろうとしてライアンに腕を掴まれ暴れている。そのスキに袋を開くと中身は銀色に光る鉱石だった。

 

「これ知ってる。ミスリル鉱石でしょ、何故あなたが持ってるの?まさかこれも取ったの?」

 

 ドマニの目の前に袋の中身を突きつける。

 

「だから言ったろ。アイツら馬鹿だって」

 

 そう言ってニッカリ笑った。十才やそこらでひとりで生きていく為とはいえ手癖が悪くない?

 

「これだけ持ってたのか?他は?」

 

 私が呆れて何も言えずにいるのにライアンは気にするでもなくドマニに質問する。

 

「いや、他にも色々大量に持ってた。これが一番キレイだったからちょっともらったんだ。ミスリル鉱石だったのか、話には聞いた事あるけど初めて本物を見た。これだけあれば当分暮らせるな」

 

 自分が選んで盗んだものが価値が高い物だとわかってドマニは喜んでいた。

 

「物を盗んじゃ駄目でしょ」

 

 メッと叱るがドマニは平気な顔だ。

 

「オレを置き去りにして殺そうとした奴からこれくらい盗んで何が悪いんだ。ユキ達が来なけりゃひとりで死ぬとこだったんだぞ」


「まぁ……確かに。でも二度としちゃ駄目よ」


「わかってるよ、オレは冒険者で泥棒じゃない」

 

 私とドマニが話している間、ライアンは考えこんでいた。

 

「この中洲はもしかして奴らの密輸品の隠し場所なのかもしれんな」


「そんな大事な物を隠してる場所に私達を転移させたの?本当に馬鹿なのね」


「いや、こんなルフが住み着いた周りが激流の陸の孤島のに、絶対的に誰も近寄らない自信があったんだろ。だから隠し場所に選んで、ついでにオレたちを始末しても誰にも見つからんと思った。他にも飛ばされた奴がいたのかもな」

 

 優秀な奴を仕留めるのは大変だけどここなら放っておけばいずれ死ぬ。その方法で何人も消してきたのかも知れない。

 ライアンから開放されたドマニは急いで私の手から袋を奪い返すとまた木箱に大事にしまいこんだ。

 

「ねぇ、ちょっとだけ……嫌な予感がするけど気の所為よね」

 

 頭のすみにニヤリと笑う真っ赤なくちびるが思い浮かぶ。

 

「お前もたまには勘が働くんだな。オレは助かる可能性が上がったと思った。カトリーヌがこんなの見逃すはず無い」


「ちょっと名前を言わないでよ。鳥肌立っちゃう」

 

 弟子になって以来、呼び出されては何も良い事が無かった。もしここに来てくれても死ぬまでの時間が少し伸びたとしか感じないかも。いや、死なないか。だって彼女は無駄が嫌いだ、キッチリ使い倒すまで死なせないだろう。だとしたら今頃必死に探してくれているはず。

 

「でもそうね、私も助かる可能性が上がった気がする」

 

 胸元の赤い魔石をそっと押さえた。

 

「逃さないよ」と言われた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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