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ダンジョンの受付嬢最強説  作者: 蜜柑缶


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76 行方不明2

ブクマありがとうございます。

 日が照ってる間はまだ少し暖かかったがまた段々と気温が下がってくる。さっきから延々と歩いているがドマニはまだ目的地に着かないようだ。

 

「まだなの?もしかして迷った?」


「こんな簡単な道迷ったりしねーよ。もうすぐだ」

 

 ちゃんと方向がわかってるらしいドマニにちょっと感心してるとライアンがニヤついてる。

 

「何よ」


「いや、別に」

 

 どうせ私の方向音痴を笑ってるんだ。ムカつく。

 

 私達のやり取りを見ていたドマニがムッとしてる。

 

「お前ら恋人か?」


『違う!』

 

 二人の声が揃う。

 

「へぇ、じゃユキはオレに付いて来いよ。食いものあるぞ」

 

 そう言ってポケットから干し肉を出してきた。

 

「えぇ!?どうして?っていうかいつからここにいるの?」


「五日前、ちゃんと印つけてるんだ」


「食べ物はどうしたの?」


「アイツらが置いてった分と自分で馬車から落ちるように仕掛けしといて落とした分がある」

 

 罪悪感でもあったのか少し食料を置いてったようだ。

 

「ほら、ここだ」

 

 そこは森を抜けた平坦な所で切り立った崖の近くだった。遥か下はさっきの川と繋がっていて滝になり崖下に流れ落ちていた。足元には魔法陣が描かれていて、辺りを見回してもどこかへ続く道はなく、地面に馬車がつけた車輪の後も魔法陣で消えている。

 

「あぁ……嫌な予感がするんだけど」

 

 胃がキリキリと痛みだす。私ってこんなに胃弱だったんだ。

 

「オレはなんとなく察しがついてたよ。……ここが陸の孤島だってな」

 

 ライアンは木に登って周りを観察した時から予想していたらしくショックは受けていない。

 

「道理で魔物がいないはずね」

 

 陸の孤島なら餌になるものもないから魔物はいなくて当たり前。だけど森があるのなら鳥ぐらいいてもいいと思い空を見上げた。

 

 そこは薄雲がかかり晴天とはいえない空が広がる。

 鳥もいないなぁと首をくるりと回したら遠くに羽を広げた何かがこちらに向かって飛んでいた。

 

 やっぱり鳥ぐらいいるんだと見ているとライアンに腕を掴まれた。

 

「こっちに来い、奴に見つかる」

 

 そう言って森の中に入り木の陰に隠れた。隣にドマニも来ていたのでそっと肩を引き寄せる。

 

「何が来るの?」


「動くなよ、アレだよ」

 

 ライアンがそう言った時、森が一瞬にして暗くなった。顔をあげると巨大な翼を広げた信じられないくらい大きな鳥が森の上を通過して行った。

 

 それが通り過ぎた後、小さな竜巻のような物が起こり土を巻き上げ小石や木々があたりに撒き散らされる。

 私達は頭を低くして身を寄せ合い風が収まるのを待っていた。

 

「何アレ……アレでも鳥なの?」

 

 ホコリにまみれた体を払いもせず私は鳥が飛んで行った方向を見た。

 

「ルフだ。ここはルフの巣なんだろ」

 

 前言撤回、魔物はいた。ここは川に囲まれた大きな中洲で魔物の巣だった。

 

 私達が転移されたあたりがルフの巣に近いらしく、昨日は運良くルフが巣にいなかったらしい。どうにかこの中洲に魔術師を渡らせ魔法陣を作り行き来が出来るようにし、私達を送り込む準備をしたらしい。

 

「あなたひとりに随分手が混んでるわね」


「オレって優秀だからな。目立たないように始末するなら飛ばすしかないと思ったんだろう」


「はた迷惑よね」

 

 ライアンは肩をすくめる。まぁ、彼のせいでは無いしね。

 

 もうすぐ日暮れだ。

 私は自分のホコリを払った後、ドマニの髪をパタパタと払った。

 

「あなたの洞窟に連れて行ってよ」

 

 食べ物があるならそれを頂きたい。ドマニはニッコリ笑うと私の手を握った。

 

「いいぞ、こっちだ」

 

 張り切って手を引きながらどんどん歩くドマニが、振り返って顔をしかめた。

 

「アイツも来るのか?」

 

 私達の後ろをライアンが付いて歩いている。

 

「結構強いの、役に立つわよ」


「そうか、なら仕方ない。また悪い奴が来たらアイツに捕まえてもらおう」


「そんなに頻繁に誰か来るの?」


「いや、だけどさっきの話じゃそのライアンが邪魔でここに飛ばされたんだろ?ならまた来るだろ、死んだのを確認しに」

 

 私達の会話を聞いていたライアンが感心した様に頷いた。

 

「その通りだ、ガキのクセにわかってるな。奴等的にはルフに殺されるだろうと踏んでるんだろ」


「もしくは飢え死に狙いね」


「だとしたら時間がかかるな。そこまで待ってられない。明日には殺るか」

 

 ライアンの黒い笑顔には嫌な予感しかしない。

 

「殺るって、何?まさかとは思うけど」


「ここに殺る相手はアレしかいないだろ」

 

 彼は空を見上げた。

 

 

 

 ドマニの洞窟は思ったより広く、森の中の背の高い草に隠されてわかりにくい所にあった。

 

「よくこんないい所見つけたわね」


「だろう?」

 

 得意気なドマニが狭い入り口から中へ案内してくれた。奥は結構広くかなり寒さがしのげる感じだ。木箱に食料もあり水もあった。

 

「随分沢山置いていってくれたわね」


「あいつら間抜けだからオレが隠れてる間に荷物を落とすように仕掛けをしていたのに気づかなかった、馬鹿なんだ」

 

 ドマニはそう言うと私を座りやすい場所に案内してくれ食べ物を分けてくれた。

 

「ライアンにもあげていいでしょ?」

 

 一応これはドマニの食べ物なので聞いてみる。駄目だって言っても食べさせるけど。

 

「良いけど、これは護衛代だぞ。オレとユキを守れよ」

 

 そう言ってライアンに食料を手渡す。

 

 やだカワイイ……一人前な事言っちゃって。

 

 私が微笑ましくドマニを見ていると、ライアンは真面目な顔でそれを受け取った。

 

「承知した、これは依頼料だな」

 

 受け取った食料を手に私からマントを奪うと見回ってくると言い残し洞窟を出て行った。

 

「ライアン、真面目な顔してた」

 

 もっと軽い感じで受けるのかと思っていたので意外な反応に驚いた。

 

「当たり前だろ、命がかかってんだぞ。食料が尽きるかルフに食われるか、アイツを狙ってきた奴に殺されるか。どう転ぶかわからないからな、お前も油断するな」

 

 小さな子供だと思っていたドマニに真剣に注意され固まった。ここで状況がわかってないのは私の方?

 

「ドマニはここに置き去りにされて、私達が来なかったらどうするつもりだったの?」


「奴らがまた来るだろうとは思ってた。来た所をすきを見て馬車に忍び込もうと計画してた。ユキ達が来た時少し期待したんだ。もしかしたら魔術師かなって」

 

 最ダンにある魔法陣は魔石で仕組みを作って魔術の無い私でも使えるが他にある普通の魔法陣は魔術師でないと使えない。

 

「残念ね、ライアンは凄腕の冒険者で私はただの最ダンの受付よ」

 

 最ダンと聞いてドマニがパッと笑顔になった。

 

「最ダンか、いいな。最ダンと言えばプラチナ国が最大で最強だって言うだろ。オレ一度でいいからプラチナ国の最ダンに行ってみたいんだ。そこでレベルの認定取るんだ」


「へ〜、プラチナが最大って事は最ダンって色々な所にあるんだ。知らなかった」


「ユキはなんにもわかってねぇな。最終試験ダンジョンなんだから昔は勇者を育てる為に基本的に各国にあったんだ。

 だけど騎士同士で不正があったり、国営で予算がない所は力が入ってなくてほぼ使われてなかったりで、今も完全な形で運営されてるのはプラチナ国だけだって言われてるんだぜ。

 働いてるお前がそんなだからこの国の最ダンのレベル認定は当てにならないって言われるんだよ。しっかりしろよ」


「え?この国のって、ここどこ?」


「は?何いってんだよ。ここはデルソミア国に決まってんじゃないか」

 

 マジか……ここ外国か。また手続きでジェイクに睨まれそう。でも今回は完全に私のせいじゃ無いからね、しかも無事に帰ることができればって話だし。

 

「私達はプラチナ国の者よ。最ダンもプラチナ国の事」


「えぇ!?お前ら国境越えた来たのか?戦争でも始めるつもりか?」

 

 そんな恐ろしい事言わないで欲しい。

 

 

 

 

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