表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンの受付嬢最強説  作者: 蜜柑缶


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/133

70 ひとり救助

ブクマありがとうございます。

 結局休み明け初日はひとりも客は来なかったが二日目は朝から開店と同時に数人の冒険者がやって来た。

 

「こちらで手続きをどうぞ」

 

 すっかり慣れてきた私は中級に向かう三人パーティの男達の手続き進めた。

 

「女性の受付がいるって本当だったんですね」

 

 三人の内一番若い男が珍しそうに私を見て言った。彼は名前を書いた書類を渡しながらニッコリ笑う。

 

「オレ、ジャック、よろしく」

 

 ジャックはまだ十代後半というところか、少年ぽさが残っている。

 

「おい、早くしろよ。今回で中級後半狙ってんだから」

 

 一緒に来た二十代の男がジャックを急かす。

 

「大丈夫だよマーク、オレすげー頑張るから」

 

 三人の中で一番若いレベル10のジャックはどうやら今回で中級に初めて行くようだ。リーダーのマークともうひとりのロキは既に行った事があるらしく、レベル17。

 

「前回はあんまり上手くいかなかったから今回こそレベル20を目指すぞ。その為にポーションも余分に持って来たんだからな」

 

 ダンジョンの階数で言えば中級が一番多い。それだけの体力と気力、そして魔物を倒す腕が必要だ。それをこなさなくては何でもありの上級なんて行けるわけがない。中級は中途半端な者をふるい落とす為のものだ。

 

 彼らが一番最初の客だったのですぐにダンジョンに案内する。魔法陣の上に立つ三人に今回の注意事項を説明する。

 

「お聞き及びかと思いますが今回は魔物がいつもより強くなっているようです。無理をなさらず危険を感じた時点ですぐに救援要請をして下さい」

 

 しっかりと『救助要請用魔石』を持ってダンジョンへ向かう彼らを見送った。

 

 その後も数人の冒険者が受付を済ませ順番通り送り込んで行った。初級に一組、中級に三組、上級に一組送り込んだ所で受付けは終了し、あとは潜った彼らの帰りを待つばかりだ。

 

 今回の冒険者達は経験豊富な者達ばかりらしく皆が『救助要請用魔石』を持って挑んで行った。

 

 

 初級の三人組がレベル10をクリアし自力で脱出してきた。

 

「レベル10仲間が帰ってきたぞ」

 

 待機室に軽快な音がなった時ライアンがダルそうに私に手続きに向かうように言った。

 

「言われなくても行きますよ」

 

 いちいちムカつくな。

 

 レベル10をクリアして来たのは親子三人で父親が息子二人を連れて戻って来ていた。子供達はどちらが沢山魔物を倒したかを私に自慢してきてとても微笑ましかった。

 

「いい父親でしたね」

 

 終始笑いが絶えず楽しそうな三人だった。

 

「ユキは父親がいないのだったな」

 

 イーサンが遠慮がちに話しかけてきた。

 

「えぇ、だからってそれが不幸とか思った事無いですけどね。いないのが私にとって普通の事だったので。まぁ、興味はありましたけど。父親がいる家庭に」

 

 片親だからと不幸と決めつける人達もいたけど私にとってはいなくて当たり前。これはいる人にはわからない感覚だ。私にも父親がいる生活はわからないし。

 

 そこからはしばらく静かなものだったが夕方頃、上級から救助要請が来てライアンが向かいその後すぐに中級からも要請があった。

 

「ユキ、マルコに知らせてくれ。後は頼んだぞ」

 

 イーサンもすぐに救助に向かい待機室には私一人となった。

 すぐに『所在発信用魔石』をぐっと握りマルコに知らせた。

 

「そうか、今日も客は少ないかと思ったんじゃが、今、城におるからすぐに向かうが少しかかるぞ」


「わかりました」

 

 この会話はライアンとイーサンにも聞こえているので二人も出来るだけ早く戻ってくるだろう。そうでないとここには私がひとりだ。

 

 だけど来る時はいつも急で、マルコとの会話が終わってすぐにまた待機室の明かりがチカチカと光った。ドキッとしながらも私は魔石をぐっと握る。

 

「要請が来ました。中級レベル16です……ふぅ、私が行きます」

 

 他には誰もいないのだ、呼んでいるのは三人パーティのジャック達だった。

 

「待て、オレが行く!」

 

 ライアンがすぐに答えたが彼はまだ上級にいて救助している最中だ。イーサンは行ったばかりだ。

 

「間に合わないと大変なことになるでしょ」

 

 私は待機室から急いで出た。

 

「中級は前にもひとりで行ったし、あれから少しは魔物にも慣れたし」

 

 救助専用の魔法陣の上に立ちながらパネルを操作し現場に誘導してくれるようセットする。

 

「はぁ……確かにな。仕方ない無理するな、こちらが終わり次第すぐに行く」


「ユキ、くれぐれも気をつけて」

 

 ライアンもイーサンも心配してくれているようだ。怖さはあるが二度目のひとり救助要請にちょっぴり自信があった。だってケルベロスだって殺ったんだから。

 

 緊張しながらも転移してすぐ暗闇から明かりの魔石で見えるようになる。近くに魔物の気配が無いのを確かめ、慎重に先をゆく赤い光を追いながら走った。

 角を曲がるとグールが二体のいたので走り込みながら一体に蹴りを入れ始末するともう一体に一撃し倒した。

 再び赤い光を追って走り出すとすぐにゴブリンが現れそれもアッサリ倒せた。

 

 結構やるよね、私。

 

 そのまま救助に向かいやっと遠くにジャック達がオークとグールに囲まれている所まで来た。ジャックはひとり離れた所で必死に戦っているが、リーダーのマークは負傷しロキがそれを庇いながら戦っている。

 

「今行きます!頑張って!」

 

 三人に声をかけるとちょうどライアンの声が頭に響いてきた。

 

「こっちは終わった!今から行く」


「もう現場につきました。このまま戦います」

 

 ジャックがこちら近かったのでまず彼を襲っているオークに向かった。豚の頭部を持つ巨体を後ろから足を払い倒すとジャックがすかさず首に剣を突き立てた。

 

「早くマーク達を!」

 

 まだジャックの側にはグールがいたが一体くらい大丈夫だろう。言われるままにマークとロキの所へ向かいそこにもいたグールとオークに攻撃した。グールはあっさりと片付いたがオークはさっきのようにいかなかった。

 

 なんだか変だ、さっきのより動きも素早いし力も強い。

 

「気をつけろ!そいつはハイオークだ!」

 

 ロキが叫んだ。

 

「ハイオーク?そんなのいるの?」

 

 私はハッキリ言ってそこまで魔物に詳しくない。いきなりハイオークとか言われてもよくわからない。オークと違うのか?

 

「ハイオークはオークの上位種だ。より強力だから気をつけろ」

 

 私の声を聞いたライアンが答えてくれた。少し息遣いが荒くこららへ急いで駆けつけてくれているのがわかった。

 ハイオークは棍棒を持ちそれを振り回しながら力強く攻撃してくる。

 

「とにかくこれを!」

 

 二人に向かってポーションを投げた。それを受け取りすぐさまマークが傷にかける。

 その間もハイオークは攻撃の手を絶やさず私も攻めあぐねていた。そこへグールを倒したジャックが駆けつけた。

 

「オレが引き付ける!そのスキをついてくれ!」

 

 ジャックはハイオークに斬りつけ、そこへ傷が治ったマークとロキも加わり一斉に攻撃を開始した。彼らに一瞬気を取られたハイオークの脇腹に蹴りを入れるとそいつは片膝をついた。すかさずジャック達も攻め込み私も頭部に拳をねじ込むとハイオークはドッと倒れた。

 

「殺った!」

 

 ジャックが喜んで攻撃の手を止めたときロキが素早く魔物の首に剣を突き立て斬り落とそうと力を込める。

 

「バカ!油断するな!」

 

 ハイオークは倒れながらもまだ棍棒を振り回し、それはジャックの足に当たり彼はよろけると倒れた。

 

「ぐあっ!イッテー!」

 

 分厚い筋肉が邪魔をしマークが剣を突き立てるがなかなか仕留めることが出来なかった。私はハイオークの首に腕を回して力一杯ねじ切った。ゴリッと鈍い音がして体を震わせるとハイオークは動かなくなった。

 

 ふぅ……なんとか片付けたよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ