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ダンジョンの受付嬢最強説  作者: 蜜柑缶


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60 弟子と奴隷3

昨日、投稿出来なかったのでもう一つ。

年末は忙しいですよね。

 仕事休み二日目。

 

 昨日は完全にカトリーヌのせいで時間と気力を奪われたが後二日あるから今日こそ買い物に行こう。

 

 エリンを誘ってみようと思い服を着替え部屋のドアを開けると、レブがちょうど手をノックする形にして立っていた。黙ってドアを閉めようとして笑顔で押さえられた。

 

「おはようございます、ユキ様。カトリーヌ様がお呼びです。すぐに昨日と同じ支度でお願いいたします」

 

 私の為か黒いマントとダンジョン用のベルトを手渡され着替えを促される。

 嫌で嫌でしかたないが逆らう選択肢は無く準備をして再びドアを開けるとレブとライアンが話をしていた。

 

「……じゃあまだ詳細はわからないのか」


「はい、おおよその予測の元、探ってはいたのですがアチラも何かと手が込んでおりますゆえもう少しお待ちいただければと」

 

 期待した情報が手に入らなかったのか二人の雰囲気が暗い。

 

「お待たせレブ、何の話?」

 

 二人よりさらに暗い私の声にライアンが振り返る。

 

「今日はどちらへ?」

 

 問には答えないそのニヤけた顔にパンチしてやりたい。

 

「本日は西の隣国エストートへ、魔物の討伐依頼です」

 

 何も知らない私の代わりにレブが答える。

 

「討伐?なんだ?」


「ケルベロスの巣の撤去です」


「何体いるんだ?」


「確認できただけでニ体、恐らく多くとも三体かとうかがっております」

 

 ライアンは首を傾げた。

 

「それくらいでカトリーヌに依頼とはどうも納得できないな」


「はい、カトリーヌ様も申しておりました。(あるじ)に直接依頼があったので詳しい事は行ってみないとわかりません」


「何かありそうだな。ユキ、十分気をつけろ。エストートには勇者に準ずる者としてレジナルドという男がいる。悪い奴じゃない、何かあればオレの名を出してそいつを頼れ。だが遊び人だ、なにかあったらスキルで殴れ。レブ、ユキを死なすな」

 

 そう言って笑いながら部屋に帰って行った。

 

 スキルで殴っていいって事は相当強いって事か。

 

 レブに連れられカトリーヌの屋敷に行くとまた中庭を突っ切り倉庫下の魔法陣へ向かった。

 魔法陣の前でカトリーヌとケイが待っていた。

 

「遅いよ、早くおし」

 

 昨日から急かされる事ばかりだ。

 

「誰からの依頼なんですか?」

 

 答えてはくれず、一瞬で魔法陣は私達をエストート国内へ転移させる。そこは洞窟の中のようで薄暗い。すぐに隣にある魔法陣でまた転移した。

 

「隣国ですので直接は行けません」

 

 レブがわざわざ説明してくれた。安全策の為何度か魔法陣を経由するらしい。

 

 やっとたどり着いた場所は何もない小綺麗な部屋の中だった。

 ケイが素早くドアを開け外を確認してカトリーヌを通した。後について出るとスーツ姿の男がいて慇懃に礼をすると彼女を案内する。

 

「遠路遥々ようこそ、希代の魔術師カトリーヌ様」

 

 丁寧な挨拶の後、男は先に立ってふかふかの絨毯の上を静かに進む。いつの間にかケイとレブは私の後ろに気配を消して歩いていた。

 

「ジャービスはいるだろうね」


「勿論でございます、カトリーヌ様をお待ちしております」

 

 嫌味なほど高級感漂う廊下を進み、通されたのは趣味の悪い部屋で、金キラの壺や触ったら怪我でもしそうなほど宝石が埋め込まれた家具に迎えられた。とてもここでは寛げない。

 

「お待ちしておりました、希代の魔術師カトリーヌ様。相変わらずお美しい」

 

 でっぷり太った中年の男がいて、これまた趣味の悪いスーツに身を包みネッチョリとした視線でカトリーヌを見ると近づき手の甲にキスしようとして払われた。おそらくコイツがジャービスだろう。

 

「詳しい説明をしな」

 

 手を払われた男は気にする風でもなくズッシリした巨体を自分専用なのか、大きめの椅子に身をしずめ彼女を眺める。

 カトリーヌは趣味も心臓にも悪いほど宝石が散りばめられた椅子にいつもの様に優雅に腰掛けるとピッと指を動かしお茶を要求する。

 室内にいたお仕着せを着た女性が素早く静かにお茶を運ぶ中先程ここまで案内してくれた男が説明を始めた。

 

「ここから北の国境付近にケルベロスがいつの間にか巣を作っており現在荷物の輸送が滞っております。そこで是非カトリーヌ様のお力をお貸し願いたいのです」

 

 そこまで言ってジャラリと皮袋を出した。

 

 私の時よりずっと重そう。

 

 丸めてやった金貨を思い出しながらそれを見ていた。カトリーヌは大体の見当がつくのか中身を確かめもせず黙ってカップを口に運ぶ。一口飲んだあとジャービスを見た。

 

「この娘は私の弟子だ。ユキ!」


「はい!」

 

 急に名を呼ばれ思わず大きな声で返事をしてしまう。一歩前に出るとジャービスに軽く会釈した。彼は私を上から下まで舐めるように見た。ネッチョリした視線にザワッと寒気がする。

 

「趣味の良いコート、毒消し、甘いお菓子を、今回はこのユキに行かせる。ユキ、ケルベロスを討伐しといで」


「へ……」

 

 開いた口が塞がらないでいると後ろから腕を捕まれ引き戻された。おそらくレブだろう、そのまま部屋の外へ出されドアが閉まるとケイとレブが案内もないままどこかへ私を連れて行く。

 

「どこ行くの……私、なんだか気分が……」

 

 知識がないなりに怖さだけが胃から突き上げてくる。


 まさか討伐を任されるなんて……

 

「ケルベロスは甘い物に目が無いのでそれを使って気をそらしてる間に殺ります」


「甘い物……そんな事出来るの?」

 

 呆然としたまま聞いている。

 

 ケルベロスって首が三つある地獄の番犬とかって奴よね。三つって事はヒュドラより少ないけど三頭以上いればケルベロスの方が頭が多いでしょ?

 

 訳のわからない計算をしながら背を押されるので足を進める。

 

「戦闘を開始する時だけはそれで気をそらせます。そのすきに攻め込むのです。私共が巣を焼き払いますが逃れたケルベロスが出てきた所をお願いします。一体でも逃すとまたすぐに巣を作るのでお気をつけください」

 

 サラッと言われて泣きそうになった。

 

「外は私が一人で殺るの?」

 

 ケイはコクリと頷く。

 

「調べによるとかなり大きな巣になりつつあるようで、我々が中で出来るだけ焼き払いますがどうしても逃れるモノがおりますゆえ、お願い致します」

 

 頭数を減らす為に二人で挑むようだがそれを聞いても全く安心感は無い。無意識にベルトのハイポーションを確認するように探っている。

 

 きっと何かがちぎれちゃう気がする……

 

 三人でふかふかの絨毯の廊下を進みドアをくぐると外へ出た。ここでも雪がチラつき寒くて震えているのか怖くて震えているのかわからなくなる。

 一台の質素な馬車の前に行くとお仕着せの女性がコートと恐らく毒消しの入った箱と、甘味が入った箱をくれた。

 

 甘い物で気をそらすって想像出来ないんだけど。

 

 頭の中で獰猛なケルベロスが美味しそうに甘味を食べる所を想像しても現実味が無い。

 ケイが手渡された物を積み込んでいる間レブがお仕着せの女性と馬車の陰にスッと隠れた。

 

 何してんだ?

 

 その行動が気になりチラッと覗くとそこでは抱き合う二人の濃厚なキスシーンが行われていた。

 

 なんて大胆、そしてエロい!レブ、おじさんだけどちょっとダンディ感があるかと思っていたらそんな事になっていたのね。

 

 見つからぬようにそっと戻り馬車へ乗り込むとケイと目があった。

 

「レブはやり手で、しかし仕事の為ですからご容赦を」


「仕事の為?」


「はい、情報を仕入れたり便宜を計ってもらう為です。私には無理でして」

 

 弱冠残念そうに苦笑いするケイによるとレブは各地にその手のお知り合いが多い様で、そこから仕入れる情報は馬鹿にならないと言う。城付きの女中や豪商の使用人など外にはもれない秘密を金と引き換えにもらす者もいれば男女の関係でもらす者もいる。

 

「レブは詐欺で捕まったんです」


「結婚詐欺でしょ?」


「はい、貴族のお嬢様を騙し極刑になる所をカトリーヌ様に拾われてしまいました」

 

 語尾に気持ちがあらわれてるよ。

 

「ケイはなんの罪?」


「私は大量虐殺です。村を一つ消してしまいました」

 

 恥ずかしそうに頬を染めケイは微笑む。

 

「彼女に振られて我を失いまして、お恥ずかしい」

 

 怖い怖い怖い!なんだよこいつらマジの犯罪者でサイコじゃない!

 

 

 

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