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ダンジョンの受付嬢最強説  作者: 蜜柑缶


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59 弟子と奴隷2

 レブが私に上に行くよう促し二人で階段を上ると、倉庫には朝ここを立った時には無かった場所にミスリル鉱石を入れた木箱があった。どうやら直接ここへ転送していたようだ。

 

「ユキ様、申し訳ありませんが少しお手伝い願えますか?」

 

 レブは木箱を開けると私にミスリル鉱石の大きな塊を砕くように言ってきた。このままの大きさじゃ扱いづらいようだ。

 木箱を一つ一つ開け中に入っている塊を拳で崩していく。

 

「ヒュドラの時も思ったんだけど、どうして直接現地に魔法陣を置かないの?」

 

 前回もヒュドラがいる場所じゃなく封じ込める場所から離れた所に魔法陣があったし、今回も洞窟から離れた場所にあった。

 

「安全の為ですね。人が移動できる魔法陣は複雑で描くのに多少の時間が必要です。描く時の安全も確保し、しかも待ち伏せ出来ない様に見つかりにくい場所に設置しなくてはいけない。カトリーヌ様の屋敷に直接繋がる物は当然最大限の危機管理が必要です。人の移動が可能な物は魔物の移動も可能です、色々な制限を施したりしますが、いっきに攻め込まれれば国王がいる王都シルバラが陥落してしまいますから気をつけております」

 

 そう言ってニンマリ笑った。

 

 そうだ、こいつ罪人だった。命令には逆らえないが心の中じゃ何考えてるかわからない。

 

 全ての箱を開け鉱石を砕き終わると私の仕事は終わったようだ。

 

「レブはまだ何かあるの?」

 

 ケイは現地に残ったままだ。話に答えながらレブはポーションを取り出すと私の腕や足の傷を確かめ治しだした。

 

「はい、これを指示通り手配した後ケイと合流して現地の魔法陣を消し陸路で国内へ戻ります」


「国内?え……あそこ外国なの?!」


「はい、あそこは東の隣国デヴィラド国です。ご存知ありませんでしたか」


「ご存知ないない!えぇ!ミスリルって希少な鉱物でしょ?取ってきてよかったの?」

 

 私は驚いてレブに尋ねた。彼はとぼけた顔をして木箱を持ち上げ片付けた。

 

「我々は奴隷です、指示に従っただけですから」

 

 そう言い残して去っていく。

 

 うそ、もしかしてこれって犯罪行為だったの?これからもこんなのに付き合わされるの?

 

「待って!ねぇ、弟子と奴隷って何が違うの?」

 

 ここまでは全く扱いが同じな気がする。レブは振り返ると真剣な顔をした。

 

「全く違います、私は死ぬまで奴隷ですがあなたは引き継ぎが行われるか(あるじ)が承諾すれば契約の解消が可能です」

 

 引き継ぎって最ダンの?でもそれは建前のはずだし、だったらやっぱり(あるじ)の承諾がいる。

 

「どうすれば契約の解消に承諾してくれると思う?」

 

 レブは数秒考えた。

 

「気に入らなければ頼みは聞いてもらえませんし、気に入れば手放さないでしょう」

 

 ガックリ膝から崩れ落ちた。

 

「それってもう無理って事じゃない!!」

 

 床に座り込む私を放置したままレブはサクサクすべき事を終え再び魔法陣へ向かった。

 私はショックから立ち直れないまま力無くカトリーヌの屋敷を出た。

 お昼を過ぎたばかりの街を歩き空腹を感じて買いに行ったのはカーティだった。

 

 もう何も考えたくない。

 

 

 

 

 カーティが入った紙袋を手に最ダンに戻った。ベルトを返す為に待機室へ行くとライアンがダンジョンに行く準備をしていた。

 

「何してんの?お客はいないでしょ?」


「あぁ、レベル15の点検だよ。修繕が終わったようだから」


「そう、朝帰ったばっかりなのに大変ね……あなたも師匠に言われてどこか遠くへ行ってたの?」

 

 今朝戻ったばかりの時は埃っぽかった。

 

「何だよ、オレもって。どこか遠くへ行ってきたのか?」

 

 ニヤニヤと笑うライアンにはムカつくがこいつも師匠であるエクトルにこき使われているんじゃないだろうか?

 

「ちょっと東の国へ」


「へぇ、その汚れようじゃどこぞのダンジョンでも行ってきたのか、何かを手に入れる為に」


「なんでわかるの?」


「そりゃカトリーヌだからな。彼女は色んな所に部下を向かわせていち早く情報を手に入れそれを有効利用する。王には国を守る為の行為だと何か不都合があった時は尻拭いをさせ、何でも魔術と財力で思い通りにしてきたんだよ」


「そんな酷い人が国の中枢に近いっておかしくない?」


「別ににおかしくないさ、力のある者が上に立つ世だ。人格は関係無い。むしろカトリーヌはまだいい方だろ、魔物を討伐して民を守ってる」


「お金取ってるんでしょう」


「もちろんそうさ、だれも行きたがらない所へも金を積めば行く。外国の依頼も受けてるから色々な所へ行けるぞ、良かったな経験を積めばすぐに腕があがるぞ。それよりまだここにいるなら地図を見ててくれ」

 

 いい笑顔で私の肩をポンと叩きライアンは待機室を出て行った。

 私は力無く地図をつけると『所在発信用魔石』をぐっと握り起動させた。大丈夫だとは思うがダンジョンへ行く彼を残して部屋に戻る気にはなれなかった。万が一があっては困る。

 給湯室へ行きお茶を用意し地図の前に座るとカーティを食べながらライアンがレベル15をサクサク進むのを眺めていた。

 地図上を一つの光が隅々まで移動して行く。ほとんどゴブリンとスライムしか出ないはずだ、問題はないだろう。

 

「ユキ、いるか?」

 

 急にライアンの声が頭の中に響いた。

 

「ん、地図見てるよ」

 

 カーティをモグモグ食べながらボーッと返事をした。

 

「なんか食ってんのか、地図上のオレが今いる位置にマーキングしといてくれ」

 

 地図の側に行くとやり方を聞きながら言われた作業をする。

 

「おかしなとこでもあるの?」


「まあな。もういいだろう、今から戻る」

 

 そう言って通信は終わりライアンは魔法陣に向かって行った。無事に転移した事を確認しソファに座っていると彼が待機室へ入って来た。

 

「何が変だったの?」

 

 私の質問にう〜んと唸りながらベルトを外す。

 

「何がって事じゃないんだが、気になる。使用再開に問題は無いとは思うが念の為マーキングはこのまま置いておく」

 

 地図上のなんの変哲もない場所にマーキングを残しレベル15は休み明けから使用可能となった。

 

 そもそもの原因不明の魔物の大量発生の事は解決していないが大丈夫なんだろうか。魔法陣が書き換えられていたって言うけど犯人は誰とか探らないのかな?

 

「魔法陣の事、誰がやったかわかってるの?」


「まぁ、問題なのは誰がやったかというより誰の指示だったか、ってとこだ」


「誰の企みかって事?」


「そうだ、直接やったのは金を積まれた魔術師だそいつを捕まえても何も変わらん。その後ろを探らないとな」


「誰か探ってるの?」


「あぁ、カトリーヌと師匠でやってる。いずれ話があるだろ」

 

 ライアンはそう言うと待機室を出て行った。

 

 カトリーヌが絡んでるって事は私も無関係じゃないって事だろう。

 

 再び重い気持ちになりながら物品倉庫に木箱を取りに行った。朝の予定は狂いまくりだが部屋をなんとかしたいので掃除道具も持ち自室へ戻った。

 六畳程の狭い部屋なので掃除にも時間はかからない。私は床をキレイに掃き雑巾で磨き上げると裸足で過ごせる様にした。

 

 ずっと靴履いてるのは疲れるよ。

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