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ダンジョンの受付嬢最強説  作者: 蜜柑缶


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57 二日酔い

ブクマありがとうございます!

 天井がぐるぐる回っている。頭も痛い……気持ち悪い……

 

 とにかく起き上がり置いてあったコップの水を飲んだ。回る天井を止めることも出来ずフラフラとシャワールーム兼洗面所へつながるドアを開けた。顔を洗い鏡を見たが酷いもんだ。

 

 あぁ、むくんでるな。疲れもあったし完全に飲み過ぎた……

 

「ゔぇ、気持ち悪い……」

 

 ベットに戻ろうとするとライアン側のドアが開いて彼が入って来た。

 

「今、帰ってきたの?」

 

 彼から外気の匂いがぷんとした。

 

 何だかホコリ臭いな。馬車じゃないの?

 

「あぁ、ちょっと野暮用。うわ、くっさい。何だお前、二日酔いか?」


「ん……エリンと飲んでた。なんか薬ない?」

 

 私の酒臭さに顔を歪ませながら洗面所の棚を開けるとポーションを取り出し渡された。

 

「ポーションって二日酔いにも効くの?」


「普通のはあまり効果無いがそれは特製だ。昔、師匠が作らせたもんだ。結構効くぞ、ただ……」

 

 とにかく気持ち悪かったので話が終わらぬ内に蓋をあけクイッと飲んだ。

 

「グハッ……ハ……ハ……」

 

 あまりの苦さに寒気が全身を走った。

 

「そうらしいな、相当苦いらしくて師匠も飲むのを躊躇してたよ。二日酔いか、薬か」


「うぅ……ライアン飲んだ事無いの?酷いよこれ……しかもエグさが取れない」


「オレは二日酔いにならないから、飲んだ事ない。早く行けよ、シャワー浴びさせろ」

 

 今度は薬の苦さに震えながら部屋へ押し戻された。

 なかなか取れない口の中の苦味に寒気が止まらない。

 

 なんて物を作るんだと思ったがしばらくすると頭痛と吐き気は収まり天井の回転も止まった。スッカリ抜け切るとは言い難いが耐えれる程度のダルさと口の中の不快さを除けば動ける程度まで回復した。

 

 なんとか助かった、あのままじゃ今日は潰れてたな。

 

 せっかくのお休みだ、部屋を掃除したり買い物に行ったりやらなきゃいけない事は沢山ある。これぞ普通の生活!

 

 耳をすませるとシャワールームから音は聞こえないのでもうライアンは部屋に戻ったようだ。着替えを手に一応ドアをノックして確かめ返事がないので入って行った。

 

 シャワーを終え、着替えをすませると何も無い部屋を見た。ベットとサイドテーブルだけだからせめて服を置ける棚が欲しい。物品倉庫にまた空いた木箱がないか見に行く事にした。職場にも着替えは置いておかないといけないから今使用中のは使えない。

 階段を下り路地から出るとイーサンがいた。

 

「おはようございます、今、お帰りですか?」

 

 結局一晩いたようだ。

 

「あぁ、いましがた自主的に脱出していったよ。レベル50、大したもんだ」

 

 三人パーティとはいえちゃんと自主的に脱出したんだから前回よりレベルアップのハズだ。しかも次回からはレベル50からの挑戦だ、ホントに凄い。

 

「お疲れ様です、マルコさんも帰りましたか?」


「いや、まだいる。それより……ライアンは帰って来たか?」


「えぇ、さっき帰ったみたいです。シャワー浴びてたんで」


「そうか、ではな」

 

 そう言うとイーサンは彼に会うのか路地へ入って行った。私はそのまま事務所へ向かい部屋に入るとマルコがいた。当直で疲れが出たのか顔色が悪い。

 

「おはようございます、マルコさん。お疲れ様です」


「あぁ、おはよう……言いにくいんじゃがな、カトリーヌに朝になったらお前を家に寄越すよう言われておる。行っておいで」

 

 マルコが可哀想な子を見る目で私を見た。

 

「師匠が?今日は最ダン(仕事)はお休みですよね」

 

 三日は休みだと聞いたはず。

 

「最ダンに休みがあっても師匠と弟子に休みは無い。頑張るんじゃぞ、挫けるなよ、気をしっかりな、それからポーションを持って行け、ハイポーションもな、あぁ、ダンジョンに行く時の格好がいいぞ、ダガーも忘れるな」


「えぇー!!怖い事言わないで下さい!魔物を相手にするみたいじゃないですか!」


「魔物は倒せるしとどめを刺すことも出来るがカトリーヌは倒せんぞ。

…………ただ永遠に向き合うだけだ」

 

 マルコが遠い目をして最後は囁くようにポツリと言った。

 私は震え上がると急いで部屋に引き返しドアを閉め鍵をかけた。

 

「イヤー!!なんで、弟子になっちゃったの!!怖い怖い怖い!!」

 

 泣き叫んでいると廊下側のドアがノックされビクリとした。

 

 まさか迎えに来たの?

 

「ユキ、大丈夫か?」

 

 イーサンの声だった。ドアを開けると困った心配そうな顔のイーサンと笑いが止まらない顔のライアンがそこにいた。

 

「もうカトリーヌに何か言われたか?」

 

 イーサンが優しく尋ねてくれた。

 

「呼び出された!お休みだと思ってたのに……」

 

 涙目でマルコが言った言葉を伝えた。

 

「さすがマルコさんだ、アドバイスが的確だな。グローブも忘れるな、クックックッ」

 

 ムカつくライアンはそれだけ言うと手を振りへ部屋へ戻って行った。

 

 キィー!私を笑う為にわざわざ出てきたんだ。

 

「とにかく弟子になったのだから早く行く方が良いぞ、場所はわかるか?」

 

 方向オンチの私は首を振った。

 

「連れて行ってやるから用意しなさい」

 

 イーサンが優しく私を部屋に押し戻し、仕方なく準備をした。待機室へ行ってベルトを取るとポーションとハイポーションを確認した。

 

 また何か生え替わっちゃうのかな……

 

 前回の腕の事を思い出し気分が悪くなる。イーサンに連れられ最ダンを出ると通りを左へ、しばらく行った角を曲がると見覚えのある住宅の一画に出た。前はキョロキョロし過ぎて無理だったがこれくらいなら道を覚えれるだろう。古びた数件建ち並んだ家の前でイーサンが立ち止まる、ここがカトリーヌの家だ。

 

「ありがとうございます。はぁ……」


「まぁ、命までは取られんだろう」

 

 ハイポーションまで持たされたのに?

 

 イーサンが心配そうにしながらも帰っていき私は意を決してドアをノックした。

 

「師匠、おはようございます。ユキです」

 

 そう言うと中から入れと声がした。

 

 ドアを開けると別世界だった。

 そこはまるで貴族の屋敷を思わせる豪華で趣味の良い部屋で外から見た感じとは全然違う広々とした空間が広がっている。

 古びた外観の数軒の家は中で全て繋がり一軒の豪華屋敷と化していた。

 

「遅かったね、グズは嫌いだよ。早くおいで」

 

 朝からバッチリメイクのカトリーヌが既にふわふわした着心地の良さそうなファー付きのコートに身を包み颯爽と部屋の奥へ向かった。

 呆気に取られながらも急いで付いていくと手入れが行き届いた明るい中庭を抜け長い廊下の先のドアを開けると荷物が積み上げられた倉庫の様な空間がありそこの隅に地下へ続く階段があった。貴族仕様なのか美しい手摺が螺旋を描きゆったりとしたステップを降りた先に魔法陣が描かれた床が現れた。

 

「これからどこかへ行くんですか?」

 

 頬が引きつるのを感じながらカトリーヌに尋ねた。

 

「言ってなかったかい?ミスリル鉱石が見つかったらしいから早速採掘に行くんだよ」


「ミスリル鉱石って希少なやつですよね」

 

 確か本で読んだ事ある。

 

「あぁそうだ、丈夫で軽いから重宝するんだよ。さっさと魔法陣にお乗り」

 

 急かされ魔法陣に立つとあっと言う間に雪がチラつく岩だらけの場所に送られた。

 

「寒い、師匠寒いです!!」

 

 私はダンジョンに行く時のブラウスとキュロット姿だ。ここは寒すぎる。

 

「なんでコート着ないんだい」


「持ってないです!前回のヒュドラの時のコートはとっくに捨てられたし」

 

 震えて足を踏み鳴らしているとスッと二人の黒いマントの人物が近寄って来た。

 

「お待ちしておりました、カトリーヌ様」

 

 それはヒュドラの時の二人だった。確か罪人で奴隷の優秀な魔術師。

 

「早速だけどこの娘に何でもいいからマントを、私の弟子だ」

 

 その言葉に二人は驚いたようだ。

 

『なんて奇特な……』

 

 奴隷の人に言われちゃ終わりだよね。

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