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ダンジョンの受付嬢最強説  作者: 蜜柑缶


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50/133

50 予想外

 思った通りライアンはしばらくアウロラに捕まっていたようだが、何とか脱出すると戻って来た。

 私とマルコは救助要請があった中級へモーガンが向かっているのを地図で見ている所だった。

 

「お疲れ様〜」

 

 何故かちょっと冷めた目で見てしまいライアンも目をそらした。

 

「中級か……」

 

 チラッと地図を見るとソファに寝転んだ。

 

 ホント、お疲れのようで。

 

 私は遅めの昼食を取る為カウンターの方へ行った。

 一人になるとホッとした。朝から忙し過ぎだよ。ポーションを飲んだせいかあまりお腹は空いてなくて少し口に入れると食べるのをやめた。

 軽く目を閉じ休んでいると待機室からライアンが出て行く音が聞こえたので戻ると中級へ行ったようだった。

 

「また中級ですか?」


「あぁ、明日で終わりじゃからな。上級に新規の者はもうこんじゃろ。中級の者は最後のあがきで焦ってしくじりやすいからの。見誤って救助を要請するわけじゃ」


「なるほど。今朝入った冒険者三人は順調そうですね」

 

 名前を探して見るとレベル33、じっくり確実にこなしているようだ。他の騎士ともかち合わずこのまま順調に進んでくれればいい。

 先に救助に行っていたモーガンが戻って来た。私が手続きをしているとライアンも戻って来たので続けてそちらも手伝い。使用済の魔石を待機室へ持っていき書類を片付けた。

 忙しい日ではあったが入場する騎士が少なくなってきた為今夜はマシな夜になるだろう。

 

 

 

 

 いつもより早くに目が覚めた。というよりあまり熟睡出来なかった。

 昨日の事のせいだろうか?もうそこまで気にしているつもりは無いがやっぱりちょっとショックだったのかな。ため息をつき、起き上がるとシャワーを浴び着替えた。

 まだ早いが部屋を出ると事務所へ向かった。誰もいなくて訓練場へ行ったがそこも無人で待機室へ入った。

 

「おはようございます。誰もいないんですね」

 

 ライアンだけがソファに座っていてマルコもいない。

 

「あぁ、昇段試験は切り上げられた。今潜ってる九人で終わりだ」

 

 ジッと私を見る目が気になる。

 

「まさか私のせいじゃないですよね」


「お前のせいじゃない、お前を襲った奴のせいだ」


「そこまでやります?そいつだけ責任取れば良くないですか?」

 

 私の言葉を聞いて彼はため息をついた。

 

「お前はたぶん今日城へ呼び出される」


「何故ですか?調査は済みましたよね」


「相手がお前が誘って来たと言っている」

 

 思わず絶句した。

 

「あの騎士は王の側近の息子だ。経理の主任で家柄もいい。アチラ的には借金があるお前が息子を誘惑してきたという話だ」


「そんな事しませんよ」


「わかってる、だが相手は貴族だ」

 

 私の話なんて聞いて貰えないって事か。

 

「どうなるんですか?」


「ここまで来ると後はややこしくなるだけだ。ほぼ言い分は通らん可能性が高い」


「言い分が通らないとして何が起きますか?私は別に何も要求してないのに」


「偽証で訴えられ、捕まるか金か、とにかくややこしい事が起きるかもしれん。貴族と関わるとこういう事が起きる」


「何も無かった事に出来ないんですか?」

 

 最初から別にどうこうするつもりはなかった。ファウロスが奴を捕まえてモーガンが調査するって言ったからこうなった。

 

「既に調査され報告が上がっちまったからな」


「こんな事ならさっさとポーション飲んでおけばよかった。だから飲ませようとしたの?」

 

 最初にライアンが言った時にすぐポーションでアザを消していれば証拠が無く問題にならなかったのかも知れない。

 

「あれは……お前が、あれだけの事をされてるとは思っていなかった。胸のアザも、ちょっとぶつけただけかと思ってたんだ。だから(おおやけ)にせずに後で処理しようと思ってたんだ。だがお前の動揺ぶりを考えてもすぐに話を聞いて置くべきだった。すまない、有耶無耶にするつもりは無かったんだが」

 

 そう言われライアンに優しく抱きしめられた時の事を思い出し顔が熱くなる。

 

「いや、別にそれで良かった。私もややこしくなる事は望んでなかったし」


「だがこうなったからには使える手を最大限に使ってでもコチラの言い分を通す必要がある。このまま流されたらいい結果にはならんからな」

 

 幸いモーガンがこちら側なのがまだ救いがあったらしい。彼の父親ことライアンの父親は騎士団長らしいし味方をしてくれそうらしい。

 

「いいの?父親と関わって何か言われない?」

 

 貴族になるよう言われてるのを断り続けてると言っていた。この件のせいでそれを絡ませて何か要求されるんじゃないかと心配した。

 

「そんな人じゃない、大丈夫だ」


「でも私のせいで貸しを作ることにならない?」


「そもそもモーガンがかなり頭にキテるようだから、オレというよりモーガンの為に動くだろ」


「モーガン様が私の為に?どうして?」


「気にいってるんだろ。お前の事面白がってたしな」

 

 何か面白い事したっけ?

 

 身に覚えがなく考えを巡らせていると突然ドアが開きイーサンが駆け込んで来た。

 

「ユキ!無事なのか!?」


「うわっ!脅かさないで下さい。イーサン、大丈夫です。何ともないですから……」

 

 あまりの勢いに驚いた。イーサンはよっぽど心配してくれていたのか近寄るとギュッと抱きしめられた。

 

「イ、イーサン!どうしたんですか!?大丈夫ですよ、落ち着いて下さい」

 

 私が慌ててそう言うと彼はパッと離れ赤い顔をして今度は謝ってきた。

 

「すまない、ユキが、あの、襲われたって、さっき聞いたばかりで、それでつい」

 

 あたふたとするイーサンを見ていると嬉しくなってしまった。こんなになるほど心配してくれるなんて、良い人だよ。

 

「ありがとうございます、でも大丈夫です。ご心配おかけしました」


「いや、無事ならいい」


「無事でもないぞ、イーサン」

 

 不機嫌な顔のライアンが私の肩を掴みスッとイーサンから遠ざけた。

 

「ユキが訴えられる可能性が出て来てる。騎士達の中でユキに優位な証言をしてくれる奴がいないか調べてくれないか」

 

 ライアンが私の置かれた状況を説明するとイーサンは怒り心頭で了解すると早速出て行った。

 イーサンが去った後を見送りながらライアンがため息をつく。

 

「今回は仕方ないがあまりイーサンに近づくな。もしお前が覚悟の上だって言うならもう何も言わんが、あいつは確実にお前に好意を持ってる」

 

 そうだよね……このままじゃいい事無い。

 

 こっくり頷き「そんな気は無い」とだけ言うと何だか気まずくて給湯室へ行きお湯を沸かした。お茶の準備をしているとマルコもやって来た。三人分のカップを盆に乗せ待機室へ行った。

 

「おはようございます、マルコさん」

 

 お茶をそれぞれの前に並べる。

 イスに座って温かい湯気の香りをかいで一口お茶を味わうとホッとした。

 

「おはよう、ライアンから大体は聞いておるだろ。今から城へ行ってもらう。一応まだ非公式という事なので裏から入ってエクトルの部屋に行くといい」


「エクトルのとこですか?」

 

 自然と苦い顔をする。

 

 あのセクハラじじい。

 

「アレでもこの国の勇者だ。味方に付けておいて損はない」

 

 触られてる分、損してる気分ですけど。

 

 言われた通り城へ向かう為外へ出ると迎えらしき馬車が待っていて御者が私を確認するとドアを開け乗るよう促された。

 中には誰もいなくてドアが閉められるとすぐに動き出した。

 外を眺めていると馬車は賑やかな通りから貴族街を抜け、前に城に行った帰りに馬車へ乗り込んだ裏の通りに着くと下ろされた。

 脇道に入り魔術具の登録した者にしか見えないドアを開き城の敷地に入った。アプローチの隅を抜けまたドアをくぐると建物の中へと入って行った。人気の無い廊下を静かに通りエクトルの部屋の前にたどり着くとドアをノックした。

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