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ダンジョンの受付嬢最強説  作者: 蜜柑缶


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41 国王と勇者1

ブクマありがとうございます!

 何もないガランとした部屋にベットだけが置かれマルコが用意してくれた寝具で寝る事だけは出来るようだ。ライアンにベットに寝かされると疲れも手伝いあっと言う間にぐっすりと眠ってしまい気がついた時は自分がどこにいるのか一瞬わからなかった。

 

「痛い……」

 

 体を起こすと全身軋むような気がした。ふと自分を見ると見覚えの無い楽な服に変えられている。体からミシミシ音がなりそうになりながらベットから立ち上がりフラフラしながら目についたドアを開けるとそこにライアンがいた。

 

 今日は服を着ているな……前は全裸だったのに。

 

「あぁ……おはよう?今いつ?」

 

 まだ頭が揺れてる気がするが顔を洗いたくてシャワールーム兼洗面所に入って行く。

 

「覚えてないのか、アレから二日目だ。大分顔色がマシだがまだ寝てろ」

 

 どうやら一日半ほど眠っていたようで、ライアンは今日から仕事らしく身支度を整えていた。私は洗面台に近づくと鏡に映った青白い自分の顔を見た。

 

「なかなか酷い。イタタ……」

 

 左腕がズキズキと痛み手でおさえた。袖をめくると毒を直接浴びた肘から下にどす黒く痣が出来ていた。

 

「あぁ、こっちのほうが酷いわ」


「見せてみろ」

 

 ライアンがそっと腕を取り痣の部分観察するように見て指で撫でた。

 

「ちょっと、くすぐったいんだけど」

 

 力なく笑うと手を引っこめた。

 

「笑う元気があるなら大丈夫か、だが少し気になるな、消せるか聞いてみる。寝てろ、後で何か食べる物持ってくる」

 

 そう言うと彼は仕事に向かった。

 私は体が辛いながらもシャワーを浴びたくて一度部屋に戻るといつの間にか置いてあった小さな棚の上の着替えを手にした。

 

 

 

 

 シャワーを浴びてスッキリしたせいか、ベットに寝転ぶとまた眠ってしまったようだ。

 目を覚ますとエリンがベットの横に椅子を置いて座っていて驚いた。

 

「アレ……いつからいるの?」


「もう!ユキ……心配させないで!」

 

 私の顔を見て一瞬喜んだがすぐに涙ぐむとエリンは可愛く怒っていた。

 

「ごめん、泣かないで。もう大丈夫だから……」

 

 実際はまだ体はキツイがそのうち回復するだろう。

 

「昨日ライアンが呼びに来て驚いたんだから。急にユキを頼むって言われて来てみればベットにビスチェとキュロットで転がされてて」

 

 いつの間に着替えさせられていたのかと思っていたらエリンだったのか、良かった。さすがにライアンも意識の無い私の服を脱がすのは気が引けたようだ。

 

「そうだったんだ、ありがとう。もう大変だったよ……」

 

 詳しくは話せないがエリンは私がスキルを持っていると知っているので大体のことは察しがつくだろう。

 

「あまり話せないんだ。……でも、ちょっと聞きたいんだけど……」


「何?少しだけよ、まだ無理しちゃ駄目なんだから」

 

 エリンは私をゆっくりと起こすと水を与え居心地良く座らせた。

 

「ライアンの事なんだけど。アイツ何者なの?」

 

 エリンはピクッと反応すると真剣な顔をした。

 

「そうねぇ……良くはわからないけど、いい人だよ。店によく来るけど私が酔っぱらいに絡まれても助けてくれるし、いつも大人しく一人で飲んでる。たまに女の人がしつこく絡んでるけど適当にあしらってる感じだし、多分アレは娼婦ね」


「ブッ!常連て事?」

 

 笑っちゃイケナイけど笑っちゃう。ま、男だし、仕方ないよね。

 

「そうじゃなくて好かれてるのよ、ライアンて優しいから。そりゃ行った事はあるだろうけど、男だし。でもそうじゃ無くて仕事抜きな感じ」


「優しい……か、そうかもね。でもどちらかと言うと鬼上司の印象が強いんだけど」


「それはユキが同僚で部下だからでしょう?私の父さんが、本当に強い人は優しいって言うからライアンは相当強いんだろうなってよく話してる。見てても余裕があるのよね」


「そこなんだけど、いつから最ダンで働いているの?」

 

 結構長い感じがする。今回の件にしてもカトリーヌは最初からライアンにヒュドラ討伐を頼むつもりだったんじゃないかと思う。たまたま私の事があって、スキルの確認のついでに絡ませたんだろう。大岩を動かすのだって人海戦術でなんとかなったはずだし、きっとライアンの戦いっぷりを他の人に見せたくなくて私を利用したんじゃないだろうか。

 

「三年前からかな、最初から上級にもちゃんと対応出来る受付が来たって評判になってたから。きっと給料もいいだろうからユキの借金だって返してもらえるよ」


「ふ〜ん、三年か…………へ?なんか言った?」


「いいと思うよ、お似合いだよ。きっとライアンもユキを好きになるよ」

 

 エリンが目を輝かせて身を乗り出してきた。

 

「な、なに!?なんの事?」


「隠さなくてもいいじゃない!ライアンを好きになったんでしょ?」


「違うわよ!そんなんじゃない!だいたいあのヒゲモジャを誰が好きになるって……」


「それを聞いてオレも安心したよ」

 

 突然シャワールームのドアからライアンが入って来ると紙袋を渡して来た。

 

「うわっ!急に入って来ないで、ってカギ忘れてたか。せめてノックぐらいしてよ、着替えてたらどうするのよ!」


「心配しなくてもオレの食指はお前には向かない」


「ハイハイわかってます。アウロラくらい凸凹してないと駄目なんでしょ」

 

 チッ、ムカつくな。

 

「アウロラって誰?」

 

 エリンがムッとしてライアンに聞く。

 

「お貴族様よ。めっちゃ迫られてるの、凄い美人でスタイル抜群なの」


「酷いライアン!いつの間にそんな人と!」

 

 何故かエリンが怒っている。

 

「別に何もないしエリンには関係ないだろ。それよりユキがもう少し回復しだい一度城に来るよう言われてるからそのつもりでな」

 

 ライアンはそう言いながら私の左腕の袖を捲ると痣を確認してきた。

 

「広がってきているな……」


「えぇ!?そうなの?」

 

 慌ててよく見ると少し大きく色も深くなってる気がする。

 

「ホントだ!昨日私が見た時より大きい」

 

 エリンも驚いて声を上げた。

 

「解毒できてたんじゃないの?」


「進行が遅れてるだけか、思っていたのと違う種類の毒だったか、とにかく一度城で見てもらわないと何も分からん」


「これが全身に広がるのかな?」


「広がる前に死ぬかもな。明日には無理してでも行くぞ」

 

 ライアンはそう言って部屋から出て行った。

 

 死ぬかもって言った?

 

 二人で顔を見合わせた。

 

「嘘……でもきっと大丈夫だよ、お城には優秀な回復が使える魔術師がいるし、色々な医術者もいるし、それに、それにきっとライアンが何とかしてくれるよ」

 

 エリンは私を元気づけようと根拠の無い事を言って無理して笑顔を作って見せた。

 

「そうだね、お城で見てもらえばなんとかなるよ、きっと」

 

 私も無理に笑い、もう疲れたから休むと言ってエリンに帰ってもらった。今ここに居てもお互い気を使うばかりだ。

 エリンが帰って一人でぐるぐると考え込んでいた。

 

 治ったと思っていたのにまだ終わってなかった。またあんな風に苦しむのだろうか?あの時は待てば治ると思っていたから耐えれたがそうじゃないなら死んだ方がマシなほど苦しかった。この先どうなるんだろう……

 

 しばらく何も考えられずただ頭の中でキーンと音がなっていた。脳が考える事を拒否してるんだろう……ふと横を見ると紙袋が目についた。

 

「やっぱりコレか」

 

 彼に買いに行かせるとカーティしか買って来ない。きっと何かの呪いにかかっているんだろう。カーティしか買えない病かも。

 クスっと笑い紙袋から取り出したそれをモグモグと食べ漠然とした不安を打ち消す。

 

 きっとライアンが何とかしてくれるだろう……

 

 

 

 

 次の日、まだ一人で立っているとゆらゆらと揺れてしまうがなんとか城ヘ向かう事となった。

 

「ホントにこの格好でいいの?」


「他に何があるんだよ。貴族でも無いのにドレスもないだろ」

 

 私は仕事用の服である黒いブラウスとキュロット、ライアンはマントを着た冒険者の格好だ。部屋から出て階段を下りようと手摺に掴まりながらゆっくりと足を動かす。何せ力が入らないから膝が震えてなかなか進まない。

 

「遅い……ちょっといいか」

 

 ライアンがそう言って私を肩に担いだ。

 

「うわぁ、もう少し違う運び方があるでしょ!これ嫌なんだけど」

 

 ちょっと、お尻が気になる。だって顔の横だよ。

 

「気にするな。ただの荷物だ」

 

 言葉に若干の笑いが含まれてる感じがするが拒否した所で下ろしてもらえない。すぐに階段を下りると地面におろされ路地を抜け通りに出ると一台の馬車が止まっていた。

 

「こっちだ」

 

 中からモーガンが顔を出し呼んでいる。言われるままに馬車に乗り込むと馬車は走り出した。このまま城へ向かうようだ。

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