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ダンジョンの受付嬢最強説  作者: 蜜柑缶


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25 昇段試験8

ブクマありがとうございます!

 部屋の隅の誰もいない所へレイモンドを連れて来た。

 

「お話しとはなんでしょう?」

 

 騎士のプライドってやつで詳しい事は口外しないはず、それとも気が変わったの?

 

「いや、そんなに警戒しないでくれ。別に悪い様にはしない。ただ、確認したかったのだ」


「何をですか?」

 

 レイモンドは私に顔を寄せると小声で言った。

 

「ライアンと付き合っているのか?」


「はぁ?いえ、とんでもない」


「では他に付き合いのある者は?」


「いません。私はこの街に来たばかりでそれどころでは無いので」

 

 なんだよ、ナンパの続きか。驚かせないでよ、忙しいんだから。

 

「もういいですか?」

 

 スパンと話を打ち切って掃除に戻ろうとすると、

 

「では改めて食事に行かないか?君が気に入ったんだ」


「………………お断りします」

 

 物件的には悪くない感じがするが、残念ながら騎士だ。イーサンの様に貧乏貴族ならまだ良かったかもしれないがレイモンドは金持ちの匂いがする。きっと良いとこの坊っちゃんだろう。って事は飽きたらすぐに捨てられる。割り切って付き合えばいいのかもしれないが今はそんな気になれない。

 

「失礼します」

 

 その場を離れまた床の掃除を始めると今度はアウロラが絡んできた。

 

 もういいって、忙しいって。

 

「ねぇ、レイモンドと何話してたの?」


「個人的な事ですので」


「ふ〜ん、彼は家柄のいい裕福な家の跡取り息子だから結構オススメよ」


「そうですか」

 

 なんだよ、何が言いたいんだよ。

 

「愛人になったって不自由なく暮らせるわよ、ここで働かなくても」

 

 不敵な笑みでそう言って去っていった。

 

 えぇっとぉ……面倒くさいな。ライアンに近寄るなって事で良いんだよね。オッケーで〜す。

 

 掃除を終えモップを片付けようと事務所に行くと丁度ライアンが戻って来ていた。

 

「お帰り。ねぇ、アウロラに絡まれたんだけど」

 

 ライアンはソファに座り布でグルグル巻に包まれた長い棒状の物を手に持ちそれを慎重に少しだけ解くと両手で左右に引いた。

 

「なんて言ってきたんだ?」

 

 それはどうやら剣でいつも彼が使っていた物とは違い少し幅広く長めでひと回り大きかった。その刃はギラリと鈍く光り良く手入れがされている感じで使い込まれているのか(つば)にはいくつか傷がある。

 

「簡単に言えばあなたに近寄るなって事かな」

 

 その剣を片手でかざすと刃を確かめる様に目を細めて見ている。

 

「気にしなくていい」


「別に気にしないけど面倒くさい」

 

 確認が終わったのか剣を鞘に戻しふと私を見た。

 

「マルコさんが戻ったのか」

 

 今は待機室を留守にするわけにはいかない。私がここに居るという事はそういう事だ。

 

「そう、イーサンともう一人騎士が増えてる」


「騎士?」

 

 ライアンは少し考えた後舌打ちして私にも来るように言うと並んで歩きながら訓練場を通り待機室に入った。ドアを閉めようと振り返るとアウロラとレイモンドが話しながらこちらを見ていた。

 

「ライアン、久しぶりだな。なんだその格好は?手入れをしてないのか?」

 

 部屋に入るなり先程紹介されたモーガンが少し困った様な顔でライアンを見て言った。確かに彼は誰が見ても呆れるようなボサボサ男だ。

 

「久しぶりですね、モーガン」

 

 やや不審な感じで返事を返す。

 

「どうしてここへ?この部屋の中へ入ったらひと月はダンジョンへ潜れませんよ」

 

 ここにはダンジョン中の詳しい地図が常に広げられている。よって騎士はもちろん冒険者でもこの部屋へ入る事は許されていない。イーサンはここで働く為に口外しないという契約を交し月が変わった後に特別な計らいで昇段試験に挑むのだ。

 

「今回は見送る、それより最ダンが大変なんだろ。許可が出たから少し手伝う」

 

 不機嫌なライアンとは対照的なモーガンがニコリと微笑む。

 

 イケメンの笑顔はいいですね。

 

 私が満足気にモーガンを見ているのをライアンが睨んできた。

 

 別に見てるだけなんだからいいでしょ?

 

 私も睨み返し側を離れて地図を見ていたイーサンの横に行った。

 

「あの二人は前からの知り合いだったんですね」

 

 あまりのライアンの嫌がりように興味津々になり尋ねてみた。

 

「まぁ、そうだな。隠してはいないだろうが、あまり公表もされていない事だが二人は兄弟だ」


「えぇ!?兄弟?」

 

 あまりの驚きに思わず大きな声が出てしまう。慌てて二人を振り返るとモーガンは何ともない風でライアンはあからさまに機嫌の悪い顔で睨んできた。

 

「イーサン、余計な事を言うな」


「これは失礼をした」

 

 イーサンは少し笑った感じでチラッとライアンを見た。

 

 ちょっと待って、って事は……

 

「ライアンは貴族なんですか?!」

 

 もう一度小声でイーサンに尋ねた。アレで貴族とか衝撃デカすぎ。

 

「詳しくは本人に聞いてくれ、また睨まれそうだ」

 

 困った顔でそう言われこれ以上は聞き出せないようだ。

 

 まさかの貴族。しかもイケメンのお兄様がいるなんて。

 

 むっつりとしたライアンのせいで待機室内は変な雰囲気になっていた。

 

「今からは私がここに詰めよう。ライアンは徹夜明けなんだろ、帰りなさい」

 

 モーガンがそう言って彼に帰宅を促す。

 

「そうだな、私もいるしライアンは休め」

 

 イーサンにもそう言われ流石に疲れていたのかライアンはさっき持って来た布で巻かれた剣を掴むと黙って出て行った。

 

 感じワル。

 

 私はマルコの近くに行きこそっと尋ねてみた。

 

「あの二人って仲が良くないの?」

 

 マルコがちょっと困った顔をしてモーガンに視線を送ると彼が近づいて来た。

 

 やば、怒られる?

 

「どうした?」


「あぁいえ、あのご兄弟って知らなかったもので……」

 

 私が笑ってごまかそうとしするとモーガンは優しく微笑んだ。

 

「アレとは母親が違うのだ。私の父が平民との間に外に作った子でね」

 

 おっといきなりディープなお話し、聞くんじゃなかった。

 

「そうでしたか、すみません不躾でした」

 

 慌てて謝ると彼は首を横に振った。

 

「いや、構わない。隠している訳ではない。アレが子供の頃には既に分かっていた事だし父も引き取ろうと母親に申し出ていたくらいだ。だが母親が嫌がってね」


「そうですね、子供は渡せないでしょうね」

 

 私がそう言うとモーガンは少し驚いた。

 

「そう思うか?だが我が家で育った方が教育も行き届くし生活にも困らない。母子二人では大変であろうに。子供の為にもそうする者もいると聞くがな」

 

 はは〜ん、ここって貴族様やりたい放題なのかな。やっぱりレイモンドの誘いは断っといて正解だったよ。

 

「平民はどこまで行っても愛人なんですよね?」


「フム、露骨な言い方ではあるがそうだな」


「結婚も出来ないのに子供は渡さないですよ。貴族様にはお金がある幸せ、平民にはお金が無い幸せもあります。うちも母子家庭でお金が無かったですけどそこそこ幸せでしたよ」

 

 私がそう言うとモーガンは一瞬驚いて、ククッと笑った。

 

「君と同じ様な事を言われ断られたと父が言っていたよ」


「そうでしょうね」

 

 私も何不自由なくとはいかなくても母親と一緒にいられればそれで良かった。父親がいるという家庭に対する憧れもあったけどそこは自分で家庭を持って作っていけばいいと思っていた。けど……フラれたんだよね……思い出しちゃったよ。平民にも二股という不幸が訪れていたよ。また落ち込んじゃうな。

 

 変な事から嫌な事を思い出しどんよりしていると待機室にまたも救助要請の合図が来た。中級のレベル15、なんとファウロスだった。

 

 アイツなんでこんな浅いトコでつまずいてるの?騎士は最低レベル20のハズでしょ?朝行ったばかりなのにもう救助要請とか何かあったのかな?

 

「様子がおかしいな、誰が行く?」

 

 マルコが地図を見て眉間にシワを寄せた。

 

「私が行こう。低いレベルであろ?」


「じゃが油断せんようにな、あぁ、ユキも行くといい。さっきのレベルよりはマシじゃろ。モーガンについていって勉強してきなさい。ユキはまだ見習いだからよろしく」


「わかった、急ごう」

 

 モーガンに『所在発信用魔石』を渡し、自分もベルトを着けると急ぎ救助に向かった。


 でもコレって断っても良かったよね。なんでついて来ちゃったんだろう。男前だから?

 

 

 

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