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ダンジョンの受付嬢最強説  作者: 蜜柑缶


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101 イグナツィの魔法陣2

ブクマ、評価、ありがとうございます。

 機嫌の悪いライアンが出ていった事でアチラの防衛システムが動き出したのか、ゾロゾロとアレが……アレが……

 

「いやぁ!気持ち悪い!!」

 

 岩陰に隠れていたはずの私がブルッと震えると同時に悲鳴を上げるとアレ達は一斉にこちらに向かって来た。

 

「馬鹿やろう!呼び込んでどうする!」

 

 ほぼ自分を無視して私に向うアレ達を叩き斬りながら、彼が急いで戻って来る。私はその場から動けずただ泣き叫んでいた。

 

 最初の一体が飛びかかってくる寸前にライアンが叫んだ。

 

「ここで戦えないならこれから絶対に連れて行かないからな!」

 

 って事は戦えば連れて行くって事?

 

 私は咄嗟に持っていたミスリル製のメイスで大蜘蛛を振り払った。

 

 すぐに次が来る。

 

 立ち上がると泣きながら大蜘蛛を次々と叩き飛ばす。うっかり突き刺したら間近にうねうね動くのを見てしまうから気絶しそうだ。

 

「こっち来ないで!いやぁー!!」

 

 とにかくここを凌がないと進めないし、帰れない。戦う事は出来るが他の事まで気が回らず、ただその場で次々と大蜘蛛をぶっ飛ばしていた。奴らは次から次へと穴から這い出てきて切りが無い。

 何とか戦うが全く動こうとしない私をライアンが建物の方へ引っ張って行くと壁を指した。

 

「ここを蹴れ」

 

 言われるままに壁を蹴って穴を開けると背中を押され中へと入った。大蜘蛛は建物内へは入ってはイケナイと躾けられているのか追ってこなかった。

 

「助かった……」


「鼻をかめ」

 

 涙と鼻水でグショグショの私に嫌そうな顔をしながらハンカチで拭いてくれる。ズビーっと鼻をかむとそれは捨てられた。

 

「ちゃんと戦ったんだから約束守ってよ」

 

 さっきの言葉を確認するとライアンは鼻で笑う。

 

「戦わないと連れて行かないと言ったが、戦ったら連れて行くとは言ってない」


「そんなのおかしいじゃない。絶対に付いて行ってやるから」

 

 睨みながら言うとライアンは笑いながら廊下を走って行く。

 

「早く来い、でないと迷子になるぞ」

 

 ムカつくが置いて行かれたら大変だ。

 

 廊下を進むと途中で数人の魔術師らしき男達とすれ違ったがほとんど皆、私達を見るなり逃げて行った。どうやらここにはあまり戦える者はいないようだ。

 いくら魔術師でも訓練をしなければ戦う事は出来ない。怪力スキルの私が最初は全く使えなかったのがいい例だ。

 

 それでも段々と攻撃出来る魔術師や冒険者らしき輩も出てくると戦闘になった。

 数も少なくもちろんライアンの敵では無い、軽く倒すとカトリーヌ達と合流する場所へ急いだ。

 

 ライアンは迷う事なく地下への入口にたどり着き慎重に暗い階段を下りていく。こちらは陽動に出ていたのだがカトリーヌ達の姿が見えない。

 

 地階は倉庫の様で、木箱を沢山積み重ねた物を置いてある広い場所を男達が忙しそうに動き回っている。私達が来た事には気づいていないのか、怒鳴り声が聞こえ倉庫の隅にある小さな魔法陣へ木箱を運んでは転送している。

 

「早くしろ、実験が失敗したらここも終わりだ。荷物は残らず運び出せ!」

 

 ライアンと顔を見合わせる。

 

「実験ってなに?」


「どうやら間の悪いところへ来たのかもな」

 

 倉庫の奥には大きな扉が見え、更によく見ると扉横にカトリーヌ達が潜んでいるのがわかった。目的は扉の向こうのようだ。

 

 彼らと合流しようと忙しく動き回る男達を避け、木箱の陰から素早く移動し扉に近づく。

 たどり着くとレブが説明しだした。

 

「どうやら今から実験体が転送されてくるようです。急がなくてはいけません」


「何が送られてくるの?」

 

 私が見たのはケルベロスが三体だった。ここの魔法陣の方が規模が大きそうだ。

 

「まだハッキリはしていませんが……」

 

 レブが歯切れ悪く話すのをライアンがイラつきながら急かす。

 

「何でもいいから言え」


「恐らく魔王候補だろうね」

 

 カトリーヌが小さくため息をつきながら言った。

 

「魔王候補ってどういう事ですか?」

 

 確か魔王候補と認定されるには五千人の犠牲者が出てからのはず。でもそんな奴がいれば各国で監視しあってるから周辺の国に警告が来るはず。

 

「魔物が操れるなら魔王を故意に誕生させる可能性が出てくる。要するに素質がある魔物って事だ。操られた魔王は他国にとっては脅威だが所持した国にとっては優秀な戦士だ。だから魔王となりうる魔物を操り知恵を与えて取り込む」


「知ってたんですか?」


「遠縁だって言ったろ?」


「元婚約者の、ですよね」

 

 カトリーヌは舌打ちして私を睨んだ。

 

「うちは昔から優秀な魔術師の家系で、奴のところは違った。女系だったうちに婿に入る形になっていたが平凡な魔術師の自分の方が下だと感じたんだろうね。色々な方法で自分の優秀さを誇示しよういつも必死だったよ」


「その一環で魔物を操る方法を見つけたと言う事?」

 

 カトリーヌに捨てられてうん十年、しつこすぎるし、恐ろしすぎる。今だって充分優秀な魔術師だと思うがそれでも諦めず研究を続けていたのか。

 

「とにかく転送を防ごう。操れるよう施されれば周辺の国がたちまち危険だ。今回だけでも防げば少しは時間が稼げるだろう」

 

 やり方がわかっているならここの魔法陣を破壊した所でイグナツィが生きてる限りまたどこかで作り出す可能性がある。

 

 カトリーヌもウザそうにうなずくと指示を出す。

 

「急ぐよ、レブは私に。ケイはライアンとユキに付いて行け。魔法陣を破壊したらすぐに地上へ引き上げな、逃げ遅れた奴は置いていく。大勢の命がかかってるから失敗は許されない、事が済んだら来た時の魔法陣で集合、行け!」

 

 私とライアンはケイが向かった大扉の真ん前に付いて行った。

 

「ユキ様、お願いします」


 ニッコリとしながらケイがペコリとお辞儀した。


「は〜い」

 

 機嫌良く返事をして大扉を蹴破った。

 

「緊張感にかける返事だな。大体お前は……」

 

 ライアンの文句は扉が倒れる音にかき消される。

 

「こちらから行きましょう」

 

 ケイの後について行くとすぐにケルベロス二体と出くわした。ケイが放った火球が一体にぶち当たり吹っ飛ぶ、もう一体に私がメイスで攻撃する。一つ目の首を叩き折るとライアンが後ろから来てケルベロスの胴を真っ二つに斬り裂いた。

 

「気持ち悪い」


「うるさいぞ、次だ」

 

 火だるまになった方のケルベロスの心臓辺りを突き刺し倒すと顔をあげ、部屋の全貌を見た。

 

 この前室の倉庫よりも何倍も広く天井も高いホールのような場所だ。奥には複雑そうな魔法陣が綺麗に磨かれた大理石のような床に描かれており円に沿って十数人の魔術師たちが並んでいた。魔法陣は既に起動しているのか仄かに光っている。

 

「間にあうのか?!」

 

 ライアンの叫びと同時にとてつもない火球が魔法陣めがけて飛んで行った。

 

「師匠!?」

 

 カトリーヌが放ったそれは広いホール全体の温度を急激にあげながら魔法陣を破壊した、かに見えた。

 物凄い衝撃と熱さとともに吹き飛ばされ気がつくとライアンに庇われ地面に倒れていた。二人共素早く立ち上がり魔法陣があった方を見るとそこにはまだ数人の魔術師が何とか踏ん張り作業を続けていて、魔法陣を背に一人の老人がニヤつきながら立っていた

 

「イグナツィね」

 

 ライアンがケイを助け起こしながら指示を出す。

 

「ケイはカトリーヌとタイミングを合わせて奴を攻撃、ユキはオレと魔法陣だ。行くぞ!」

 

 急がなきゃ大変な事になる。

 

 

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