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魔王伝 - 不滅の魔人 -  作者: 竹取GG
第一章
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28話 ヴァンパイアと訓練(2)

  スペンサーが発動した転移魔法により、おれたちの体は眩い光に包まれる。

  そして、その光が拡散して視界が開けたとき、おれたちは一切草木がない荒野に立ち尽くしているのだった。


  「ほお、これが転移魔法か……」


  おれは転移魔法の想像以上のすごさに感嘆の声を漏らす。


  「はい、ヴェルデバラン殿も転移魔法で移動するのは初めてのことだと思われます。いかがでしたか」


  「悪くないな。特に転移の際に負うデメリットもなさそうだ」


  「はい、その通りでございます」


  この前、スペンサーが転移魔法を発動したのは戦闘の最中であり、転移した距離はせいぜい数十メートルといった所だった。

  だからこそ、おれは一度に転移できる距離はそれほど長くはないのだろうと予想していた。

  ただ、今回の転移に関してはかなりの距離を転移したと考えられる。


  おれたちは先ほどまで草木あふれる森林の付近にいた。

  周囲は牧草も豊かに生えている草原であり、今おれたちのいる荒野とはかなりの距離があるはずだ。


  スペンサーが転移魔法を発動する際に彼を注視していたが、転移に際してかなりの魔力を消費していた。

  だが、これまでの移動に対しての魔力消費と考えるのならばコストパフォーマンス的にはデメリットではない。

  おれの魔力保有量からしても十分に扱えるだろう。

  そこでおれは以前から気になっていた疑問を尋ねてみる。


  「ただ、おれには転移魔法が使えないようだ。なぜだかわかるか?」


  実はおれも転移魔法を何度か使ってみようと試みていた。

  それこそ、前回彼らと初めて会った時におれも真似してみようと思ったのだ。

  ただ、転移魔法は発動しなかった——。


  原因はわからない。

  スペンサーが転移魔法を扱うのをしっかりと見ていた。

  それこそ、おれの魔力感知によって、どのように魔力操作をするのか、そして魔力回路にはどう魔力が流れるのかを分析しておれなりに理解したはずだった。


  そして、おれはそれを再現しようとした。

  だが、おれは転移魔法を発動させることができなかったのだ。


  こんな事は初めてだ。

  今までは一度見た魔法ならば完成に使いこなすことができた。

  それこそ、レオンハルトの火砲(ファイヤーキャノン)も、スペンサーの次元魔法の亜空間を生成することも——。


  そこでおれは転移魔法を扱うスペンサーに直接問いかけてみるのだった。

  すると、彼はどうしておれには転移魔法が使えないのかということを説明してくれる。


  「それはですね。ヴェルデバラン殿が魔王クロード様の承認を受けてないからでございます」


  「魔王クロードの承認だと……?」


  この時、スペンサーとレオンハルトの2人の表情が曇ったのをおれは見逃さなかった。

  ここでおれはレイシアの言葉を思い出す。


  『以前も話しましたが、私たちはこの国において力なき存在です。ですから、力を持つ者たちの機嫌を損ねるような言動はしてはいけません。簡単に殺されてしまいます』


  そして、おれは急いで訂正する。


  「すまなかった。魔王クロード様だ」


  すると、スペンサーは一瞬の沈黙の後、再び説明を始めるのだった。


  「はい、転移魔法は戦闘において非常に有効な魔法です。ですので、誰もがむやみやたらに使えてしまうと色々と困るのです」


  「そこで魔王国全土に張り巡らされている結界の範囲内では、その国の魔王から承認された者しか転移魔法が使えないようになっているのです」


  なるほどな。

  そういうことか。


  おれはスペンサーの説明を聞き納得する。

  確かに、これほどの長距離を一種で移動できてしまう転移魔法は悪用しようと思えばいくらでもできるだろう。

  だからこそ、その魔王国を治める魔王に許可をもらう必要があるというのか。

  そして、おれたちの魔王国でいえば魔王クロードとやらがそれに当たるため、魔王クロードからの承認がないとおれは転移魔法を使うことができないというわけだ。


  ちなみに、魔王クロードというものの存在は知らなかった。

  この魔王国はヴァンパイアが治めているとレイシアから聞いてはいたが、魔王の名前は一度も口にすることはなかったからな。


  ただ、魔王クロードの存在を知らなかったとこの場で言ってしまえば、再びレオンハルトたちの機嫌を損ねることになってしまうたまろう。

  だからこそ、おれは魔王クロードの存在はあたかも知っていたかのように振る舞うことにする。


  「なるほどな。それでおれはどうやったら魔王クロード様からその承認とやらを得ることができるのだ?」


  おれはスペンサーに問いかける。

  すると、彼は申し訳なさそうにしながら語り出すのだった。


  「残念ながら、魔人であるヴェルデバラン殿は魔王クロード様から承認を得ることは非常に難しいかと……」


  「そうか、ならば仕方ないか」


  この国がヴァンパイア至上主義であり、魔人に厳しいことはわかっている。

  だからこそ、魔人であるおれがそう簡単に承認されることはないのだろう。


  「お役に立てず申し訳ないです」


  「いや、構わないぞ。スペンサーには本当に色々と世話になっているからな」


  これに関してスペンサーが悪いわけではない。

  それに魔王クロードに承認されなかったとしても、他の魔王国で他の魔王に承認されれば転移魔法は使えるということだ。

  完全に諦めたわけではない。


  すると、これまで黙っていたレオンハルトがおれに声をかける。


  「おい、さっさと準備しろ! お前を叩き潰すことだけを今日まで考えてきたんだ。こないだの雪辱を晴らさせてもらうぞ」


  彼のひと言でここに来た目的を思い出す。

  実はレオンハルトと戦うことはおれにとってもメリットはある。

  それは彼がレイシア以上の魔法使いということだ。


  先日は火砲(ファイヤーキャノン)を習得させてもらったが、今日はどんな魔法を覚えさせてもらうとするか……。

  ここでなら、ヴァンパイアと戦闘になったとしてもレイシアに悟られることはないだろう。


  「いいだろう。時間もないんだ。さっさと始めるとしようか——」


  さて、ヴァンパイアロード・レオンハルトよ。

  かかってこい。


  こうして、おれはレオンハルトと秘密の特訓を始めた。

  そして、短い時間ではあったが、おれたちは互いに実力を高め合うのだった。

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