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台所哀歌

作者: こしあん子

みじん切りして飴色に炒めた

採れたて新鮮な愛想笑いと

「また明日ね」のあとの

咀嚼した後悔と小さじ一のため息

サクサクに揚げた自己嫌悪と

両手で割った双子の卵

それらを混ぜてごま油を敷いたフライパンで

よく炒めてください


「ごめんね」を言う度にのしかかったのは

ざっくりと混ぜた交わらない視線で

結局己が中心なのだと

わざと空焚きのコンロの火で

空虚な瞳に光を差した


ふと水に映る顔を見た時の

感情とどこかかみ合わない表情は

まるで凍りかけのお湯のようで

どこか滑稽にも思えた


相手を大切だと思うほど

相手をどうでもいいと思っても

ぐつぐつと己を煮込んだ


こんな自分が嫌なのだと

片手で卵をわろうとしても

やっぱり殻が入ってしまって

気づけば台所を掃除している


玉ねぎを

ピーマンを

ウィンナーを

秋刀魚の塩焼きを

刻んで刻んで刻んで

全部トースターでチンした


むしゃくしゃするこの熱情がかさましても

私のボウルは大きすぎた

自分には大きすぎた


私は弱すぎるのだ

私は結局自分を愛しすぎているのだ

背中を丸めて護っているのだ


今日も私はやはり台所を掃除している

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