出会いはふとした瞬間に
初投稿です。
批評などいただけると幸いです。
1 出会いはふとした瞬間にー
「ほら!悠太、早く行かないと発表遅れるぞ!」
「わりぃ、今そっち行く」
チェーンが錆びて、カシャカシャと音の鳴る自転車にまたがり、立ち漕ぎで急いで学校へと向かう。
今日は、俺が受験した高校、
私立旅路ヶ丘高校の合格発表日。
その日は、風の強い日で、強く咲き誇っていた桜が、次々に舞い、散っていた。
「ま、正直言ってお前が受かってるのは知ってるけどな」
「俺だけが受かってても意味がないじゃん、
ちゃんと受かってろよ?」
「おう、任せとけ!中学の成績は学年三位の俺様だ!」
中学一年来の友である人徳は、髪は焦げ茶色で、ツン!と尖った毛先が特徴だ。
「しっかしいいよな、神童とまで呼ばれた悠太さんは、受けた時点でほぼ合格だもんな」
「そんなわけあるか。今だってかなり緊張してるからな。主席を狙っているのは事実だけど」
この学校の制度として、主席待遇というものがある。
通常であれば多額の授業料が必要なのだが、受験時の成績が1番良かったものには、学費免除、金銭手当などが貰えるのだ。
俺の家は貧乏だからこそ、主席をとらなければならない。
さもなければ、自分の存在意義が無くなる。…
そうして現地に着き、発表の時刻になった。
掲示板に個々の受験番号が張り出され、大勢の人が押し寄せる。
「はぁ、はぁ……。人やばいな。俺人混み苦手なんだけどなー」
そう言って人混みの中をかき分けていった。
俺は身長が168と、決して高い訳ではない。
でも、その少女は、何人もの人をすり抜けて視界に入って来た。
幼気だが、静かで整った容姿に長くすっ、と伸びた銀色の髪が強風に揺られ、まるで天使の羽根のように見えた。
そして、次の瞬間。あることに気づく。
「?」
白銀の長い髪を垂らした少女は、泣いていた。
無表情のまま、瞳から頬を伝い、一粒、二粒
と雫が流れて行く。
もしかして、落ちたのか……。それもそうだ。高校にしてはかなりの倍率だったのだから、落ちる人がいるのもまた必然。
運がなかった、ということだ。
「そういえば、仁徳は大丈夫か?」
「おーい!悠太、受かってたぞ!もちろんお前も」
「おお、やったな!」
俺が出した手を思いっきり引っ叩いて来やがった。
痛い。
「はっはっは!今夜はパーティーだ!」
「よし帰るか」
「もうちょい感傷に浸ろうよ!?」
・・・俺は、俺が嫌いだ。
俺は、勉強しかできない。
それは、才能がないのと同じだ。
勉強なんてものは将来、全くもって役に立たない。
でも、あの時泣いていた彼女は、自分には無い特別な才能を持っていると感じ、少し悔しくなった。