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俺には才能がない。  作者: 玉兎望
1/5

出会いはふとした瞬間に

初投稿です。

批評などいただけると幸いです。


1 出会いはふとした瞬間にー




「ほら!悠太(ゆうた)、早く行かないと発表遅れるぞ!」

「わりぃ、今そっち行く」

チェーンが錆びて、カシャカシャと音の鳴る自転車にまたがり、立ち漕ぎで急いで学校へと向かう。


今日は、俺が受験した高校、

私立旅路ヶ丘高校の合格発表日。

その日は、風の強い日で、強く咲き誇っていた桜が、次々に舞い、散っていた。


「ま、正直言ってお前が受かってるのは知ってるけどな」

「俺だけが受かってても意味がないじゃん、

ちゃんと受かってろよ?」

「おう、任せとけ!中学の成績は学年三位の俺様だ!」

中学一年来の友である人徳(じんと)は、髪は焦げ茶色で、ツン!と尖った毛先が特徴だ。


「しっかしいいよな、神童とまで呼ばれた悠太さんは、受けた時点でほぼ合格だもんな」


「そんなわけあるか。今だってかなり緊張してるからな。主席を狙っているのは事実だけど」


この学校の制度として、主席待遇というものがある。

通常であれば多額の授業料が必要なのだが、受験時の成績が1番良かったものには、学費免除、金銭手当などが貰えるのだ。

俺の家は貧乏だからこそ、主席をとらなければならない。


さもなければ、自分の存在意義が無くなる。…




そうして現地に着き、発表の時刻になった。


掲示板に個々の受験番号が張り出され、大勢の人が押し寄せる。


「はぁ、はぁ……。人やばいな。俺人混み苦手なんだけどなー」

そう言って人混みの中をかき分けていった。


俺は身長が168と、決して高い訳ではない。

でも、その少女は、何人もの人をすり抜けて視界に入って来た。

幼気だが、静かで整った容姿に長くすっ、と伸びた銀色の髪が強風に揺られ、まるで天使の羽根のように見えた。

そして、次の瞬間。あることに気づく。


「?」

白銀の長い髪を垂らした少女は、泣いていた。

無表情のまま、瞳から頬を伝い、一粒、二粒

と雫が流れて行く。


もしかして、落ちたのか……。それもそうだ。高校にしてはかなりの倍率だったのだから、落ちる人がいるのもまた必然。

運がなかった、ということだ。


「そういえば、仁徳は大丈夫か?」


「おーい!悠太、受かってたぞ!もちろんお前も」


「おお、やったな!」

俺が出した手を思いっきり引っ叩いて来やがった。

痛い。


「はっはっは!今夜はパーティーだ!」


「よし帰るか」


「もうちょい感傷に浸ろうよ!?」









・・・俺は、俺が嫌いだ。


俺は、勉強しかできない。

それは、才能がないのと同じだ。


勉強なんてものは将来、全くもって役に立たない。



でも、あの時泣いていた彼女は、自分には無い特別な才能を持っていると感じ、少し悔しくなった。

   



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