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一話『何て言ったって今日は、お嬢様の記念すべき十歳の誕生日なのですから』

これ以降はまだ書いてません、

少しご指摘や感想を見てから書こうかと……



天高く、空には大地に生きる全ての生命に恵みを与えんとする、

燦々と光り輝く一つ星がその対価と言わんばかりに、

その有り余る熱量を持って襲いかかる。


時期は丁度、夏真っ盛り、真夏と言えば日本では、

場所によっては四十度近くなるが、

それはこの異世界でも変わらず人々を苦しめる、

幸いなのは、日本の様な湿気を含んだ暑さでは無いことか。


そんな暑さの中、涼みに来たのか、

青々と茂る草原の中ほどに流れる小川、

その川沿いにポツンとひとつ茂る大木の影に、

二人の年若い少女の姿が有った。



『はぁー本当に暑いわねー、今年は異様に暑い気がするわ……』



そう言い、少女はその美しい顔を歪ませ、

吐き捨てる様に文句を言うと、

素人目に見ても高価な装飾の施されたサンダルを放り投げ川縁に腰を下ろし、素足を小川に浸す。


小川は、近くの山の雪解け水で、程よく冷えており少女の火照った身体をすぐさま冷やしてくれる。



『はぁ〜この為に屋敷から片道十五分も掛けて来たのよ〜』



少女はだらしなく口を開け、背を木に預けると『ぐだぁ…』と全身の力を抜く、

そんな少女の傍らに立つにもう一人の少女が声をかける。



『お嬢様、はしたないです、せめて脚を閉じて下さい』



その少女は黒髪を肩口で切り揃え、

前髪を月の形を模った、綺麗な髪飾りで分けている。


歳の頃は十代前半と言ったところか、

黒髪も相まって何処か日本人然とした印象で、

余り表情が読み取りにくい、正にクールビューティといった感じだ。


その少女は、侍女服…所謂メイド服に身を包んでおり、少女が脱いだ靴を綺麗に並べると隣に座る訳でも無く、

だらしなく寝転がる少女の横に控える。



『良いじゃない、クロエ、私達の他に誰か居る訳でもないし、それにパンツの一つや二つ幾ら見られても気にしないわ』



クロエと呼ばれた少女は『はぁー』と深いため息を吐くと腕にかけていたバスケットから薄いブランケットの様な物を取り出し、

寝転がる少女の膝に優しく掛けると諭す様に言う。



『お嬢様はご自身の容姿を考えてから仰っしゃって下さい、お嬢様は、帝国の貴族の中でも一番歴史があり、皇帝と並ぶ程の権力を持っているとされている、スチュアート家のご令嬢なのですよ?』



そう言い、更に付け足す様にこう続ける。



『それにお嬢様の容姿は良くも悪くも余りにも目立ちます、もしもこんな所を見られでもしたら、殿方が思わぬ劣情を抱くかも知れません』



そう言い、寝転がる少女に視線を向けると、

あからさまに剥れた顔をしており、

半目でクロエを睨んでいる。



『良いじゃない!こんな時くらい!ここには男どころか人っ子一人居ないわよ!それにここは家の敷地よ?居たとしても家の使用人、もし使用人が私をそんな目で見てきたら、クビよ!即クビよ!!』



そう言い、カバッと立ち上がり、ぷりぷりと怒りだす、

クロエは少女が立ち上がった事で、

膝から川に落ちそうになったブランケットをすぐ様回収する。


すんでの所でブランケットを掴み、幸い水には、浸かってない様だ。


内面『ホッ』としながらも綺麗にブランケットを折りたたみ、クロエが再び少女の方に目を向けると。


突然、何処からか強い風が吹いた、

木の葉が擦れる心地よい音と共に、

先程までぷりぷり怒っていた少女の長く美しい髪が掻き上げる。


その髪は金に白を足した様な、白金色と形容したくなる髪色。所謂プラチナブロンドと呼ばれている物だ。


腰あたりまで伸びており完全にリラックスする為、

髪は束ねておらず、その為か風で大きく揺れて、

陽の光を浴びキラキラと光を乱反射する。


その姿はどこか幻想的で、

物語に出てくる妖精や女神を彷彿とさせる。


その少女の歳の頃は十代前半、

瞳は母親譲りのサファイアの様な綺麗な蒼、

肌は陶器の様に白く美しい、

その肌はこの強い日差しの中でも日に焼けた様子は見られない。


瞳はくりっとし、少女らしさを残しているが、

どこか大人びた雰囲気があり、

可愛さを残しながらも神秘的な美しさがある。

その姿は、幼いながらも完成された美を体現していた。


まるで時間が遅く流れる様だった、

緩やかに髪は重量に逆らう事なく落ちていく。


そんなクロエは目の前の神秘的な程美しい少女に見惚れてしまっていた。


クロエは特に宗教などに興味が無かったが、

女神とはこの様な姿をしているのだろうかと思わずには居られなかった。


それならば、人々が神というものを崇拝する理由が分かる気さえした。



『…?どうしたの?クロエ?』


『……いえ、何でもありません…』



黒髪の少女は主人の言葉に我に帰る。


クロエは今年で彼女の専属となって五年目になるが、

未だに彼女が時折見せる、

この世の物とは思えない神秘的な美しさに慣れない。



『…あ!ちょ、クロエ!?』



クロエは気が抜けていたのか、

片手に持っていたブランケットをうっかり離してしまい、川に落としまった。



『…!申し訳ございません…』


本来なら、すぐさま回収しなけばならないが、

一瞬だけ反応が遅れてしまった、すぐさま動こうとするが。



『リーリヤお嬢様!!』


『うわわっ!』



クロエより早く動いた少女、リーリヤは流れるブランケットに勢い良く手を伸ばすが、

勢いが良すぎたのか、バランスを崩してしまう。



ドボンッッ!!



その音は、小川のせせらぎと鳥の唄う声しか聞こえないこの草原には良く響いた。


数秒の沈黙の後、今度はクロエが先に動いた、

靴を脱ぐ暇もなく小川の中に躊躇いなく入り、

リーリヤに駆け寄る。



『お嬢様!お怪我はないですか!?』



その問いかけに合わせ、リーリヤもぞもぞと動きゆっくりとした動作で起き上がる。


服のあちこちに泥が着いてはいたが、幸い怪我などは無いようだ、クロエは確認すると人知れず安堵のため息を吐いた。



『えぇ…大丈夫よ……取り敢えず上がりましょう…』



クロエはリーリヤの手を取りながら共に川岸に上がると、すぐ様バスケットからタオルを取り出し、

リーリヤの身体を拭こうとするが。



『………』



リーリヤの着ていた白いワンピースは水で濡れた為か肌に張り付き、酷く扇情的な光景をしていた。


神秘的な程に美しい彼女を前に思わず手を止めてしまう。



『クロエ…?どうしたの?』



リーリヤは視線など気づいた様子など無く、

不思議そうに首を傾げる。



『いえ、何でもないです』


『何でもない事ないでしょ、さっきから様子がおかしいわよ?』


『いえ、それは…』



クロエが何か悟られるのを気にして、

後ろに数歩下がると同時に、

リーリヤがクロエの肩に手を置きそのまま顔を近づる。


そしてそのまま、おでこにおでこを重ねるようにくっ付ける。



『リーリヤお嬢様…!?』



顔がとても近い、

蒼色の大きな瞳が真っ直ぐに見つめてくる、

唇は後、数センチで触れる距離。


リーリヤの吐く息が肌に当たり、

思わず唇を見るが、滴る水滴がとても蠱惑的に見えた。



『うーん……私の身体が冷えてるから、良く分かんないわね…でも顔は凄く赤いわ』



リーリヤがそう診断し、軽く頰に手を伸ばしそう告げる、

そうしている間もクロエの身体の熱は更に増していく。


するとリーリヤは腰に手を当て、クロエに説教する様に続けた。



『ダメよクロエ、貴女は優秀だけど、肩の抜き方と言うものがまだ分かってない様ね、偶にはゆっくり休暇を取るといいわ』


『……はい、そうですね、どうやら仕事の疲れが出てしまった様ですね』



このお嬢様は、何か勘違いをしているらしいが本当の理由など言う訳にもいかないので、

クロエは取り敢えず合わせて置こうと返事を返す。



『……お身体お拭き致します』



そこでようやく思い出したのか、

いそいそとリーリヤの身体をタオルで拭っていく。


その間もなるべく肌を見ない様に努めるが、

時折、透けた服から見える少女の柔肌が目に毒だ。


クロエはリーリヤの絹の様な手触りの髪をタオルで拭いながら問いかける。



『申し訳ございません、ブランケットを汚してしまいました』


『良いわよ、ブランケットくらい』


『いえ、あれは確か、帝国の中でも老舗の織物店からの献上品だったと記憶しています』


『あぁ…確か、そんなおじさんに貰ったわね…』



たかだかブランケットと言ってもそこは上級貴族が使う品、帝国の中でも選りすぐりの老舗。


創業二百年も越えるその老舗の引退した先代が、

少女の為だけに編み上げた、この世に一つしか無い、

そんなブランケット。


献上品として送られた物だが、

値段を付けるとするととんでもない値段になるだろう。



『大丈夫よ、お母様には私から言っとくわ』


『いえ、そういう訳には…』


『良いのよ!大体して弁償なんて出来ないでしょ?』


『それは……この身を売れば或いは』



クロエのその答えに、

手元で大人しく髪を拭かれていたリーリヤはクロエを見上げる様に半目で睨むと。



『…たくっ!そう言う事は冗談でも言わないで』



リーリヤは頰を膨らませながら、

不機嫌そうに言うとプイッと横に視線を逸らす。



『…申し訳ございません、私などの為に』


『か、勘違いしないでよね!貴女が昔言ったんでしょ、一生を掛けてでも恩を返すって!まだまだ全然返し貰って無いわ!大体、貴女は……!』



その後も、理由など聞いてもいないのに、

つらつらと誰が聞いても照れ隠しにしか聞こえない、

屁理屈を永延と続けるリーリヤを他所に、

クロエはこの自分の可愛いご主人様を思う。





(可愛い過ぎでしょ!!リーリヤ様!!)



ぷりぷり可愛いく怒るリーリヤの髪を拭きながら、

メイドは思わずにやけてしまう表情を必死に抑えていた…



♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢



その後、強い日差しのお陰で服は乾いたが、

少々、身体や服に泥などの汚れが付いてしまった。


その為、少し早いが屋敷に帰る為、帰路に着く事に、

今日はリーリヤにとっての大事な日なのだ、

その為綺麗にしとかなくてはならない。


その道すがら、クロエが少し焦りながら告げる。



『今から湯浴みとなると少々急がなくてはなりませんね…』


『え?まだ十時半くらいよね?』


『いえ、髪などにも泥が付いてしまったので、念入りに一時間程は入浴して頂きたいので』


『うげっ…』



嫌そうな表情のリーリヤを他所に、

クロエは侍女としての経験から湯浴みの準備などの時間を計算し、そう結論付ける。


元々、入浴はする予定だったがそれは一五分程度、長くても三十分程の予定であった。


しかし状況が変わった、泥汚れは中々落ちにくい、

しかもこの時代の石鹸では尚更だ、

更に髪に着いた泥汚れは余計に落ちづらい。


万が一でも、リーリヤのその美しい白金色の髪に汚れなどあってはいけない、

一時間は湯に浸かって貰いたい所だ、

その位には今日は特別な日なのだから。


そして、その原因の一端が自分に有るとなればクロエの焦りも納得出来るだろう。



『…はぁ、申し訳ございませんお嬢様、魔法を使って頂いても宜しいですか?』


『…!……良いの?』



リーリヤは珍しいものを見る目でクロエを見ながら遠慮がちに返す。


と言うのもクロエは大の魔法嫌いだ、

その理由の一端を知っているリーリヤはあまり彼女の前では魔法を使っていない。



『はい、元はと言えば私の責任なので、急げば間に合うかも知れませんが、万が一にもパーティーに間に合わなければ、物理的に私のクビが飛ぶかも知れません』


『そ、そう、…じゃあ行くわよ』



リーリヤがそう掛け声を掛けると、

左手はクロエと繋ぎ、右手は前に掲げる。


すると、右手を中心に時計を模した様な魔法陣が展開する、複雑な文字が書き込まれたその魔法陣は、

辺りを怪しい光で照らす。



『テレポート!!』



リーリヤが可愛くも、凛と通る声で叫ぶと、

同時に景色が歪む、目眩にも似たその光景も暫く続くと次第に収まる。


揺らぎ収まると、

彼女達は屋敷の裏に有る林の中に居た、

少し離れた所に大きな屋敷が見える。


この場所はリーリヤがテレポートする時のお約束の場所だ、すぐ近くにある大きな岩が目印になっている。


この魔法は余り人には見せられない、

この世界でもテレポートもとい、

時間制御魔法を使えるのはリーリヤくらいだろう。


こんなものおいそれと誰でも使えたら交通業が壊滅してしまう。



『では、直ぐに湯浴みの準備をしますので、お嬢様は奥様にお帰りの挨拶を』


『分かったわ』



もう慣れた事なのか、

二人とも端的に言葉を交わすと、

そのまま二人は軽く舗装された屋敷の裏庭に続く道に戻り、屋敷を目指す。


すると、クロエが立ち止まり、リーリヤに手を差し伸べるとこう続ける。



『遅れてはいけません、少し急ぎましょうか』



クロエはそう言葉を区切ると、強調する様に続ける。



『何て言ったって今日は、お嬢様の記念すべき十歳の誕生日なのですから』



そう言うクロエは、何処と無く嬉しそうな顔をしている様に思えた。



『…そうね、今日で十年ね』



リーリヤはそう返すと、木々の合間から見える、

雲ひとつない青空を見やり、瞳を閉じこれまでの十年間の思いを馳せる。





思ったより短くなった…

文の調整が苦手です…


追記_結構修正しましたが、まだまだあるかもです。

皆様にはご迷惑をお掛けします…

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