プロローグ的な何か
はい、初投稿です、
まだまだ慣れなく話しが長くなり過ぎな事が多いです。
早速長いし……
テンプレ、プロローグ何でぶっちゃけ飛ばしても問題無いです。
書きだめとか無いのでまったりやってきます。
一応、飛ばした人用に後書きに簡単に重要をまとめときます。
拝啓、妹君達殿、
そちらではますます寒さが増し、
人肌が恋しくなる頃だと思いますがいかがお過ごしでしょうか、
やはり結奈はまだ自分の所為だと塞ぎこんで居るのでしょうか?
杞憂だと良いのですが、やはり真面目な性格の結奈の事です自分を責めているのでしょう。
そう思い、一筆認めた所です。
死人からの手紙など驚くと思いますが、
悪質なイタズラでも、宛先を間違えた手紙でもありません、あなた達の兄、本人です。
先ず、こういう形でお別れになるのは悲しいですが、
人はいつか死ぬものです、それが今日というだけで、
そして、例えそれが庇った事が原因でもです。
お兄ちゃんは夢など大それた事もなければ、
実現出来るような実力も持ち合わせておりません。
しかし、結奈は天才肌で何でも卒なくこなす事が出来ます、そして将来は医師になるのが目標でしたね、
そんな妹を助けてやりたいと思うのは兄として当然だと思います。
というのは後付けになってしまいますが、
気づいた時には体が動いていたというのが事実です。
遊佐は普段は抜けているところもありますが、
こういう時は案外頼りなると思います。
姉が妹に頼るのは複雑でしょうが、
二人はこの世に二つと無い姉妹です、
こういう時こそちゃんと支え合っていって下さい、
お兄ちゃんと約束です。
長々と成りましたが、最後に言いたい事は、
貴方方の兄は犠牲になったのでは無く、
妹を助けたいと思った結果です。
つまりは『気にするな!』と言う事です、
最後に別れを告げこの手紙を締めたいと思います。
生まれ変わってもまた兄妹じゃなくとも、近しい存在、友、何でも良いですが、また会えればと思います。
『……こんなものか』
『終わりましたか?』
『はい、手紙を書くのなんて初めてですが、まぁ、こんなもんでしょう、…すいません無理を言ってしまって』
『いえ、構いませんよ、妹君が大変悲しそうにしていらしたので…』
そう言い、青年は白い無地の便箋に手紙を入れる、
それと同時に周りの異常な景色を見やる、
東西南北どちらを見ても続くのは終わりの無い青空。
足元には有るのは雲の様に見えるがしっかりと地に足が着く事が出来る様だ。
また、時折雲の隙間から地上が見え、
先程まで居た、現代日本の街並みが観ることが出来る。
『それでは…改めて自己紹介しますね』
その言葉に青年は立ち上がり、声の主に視線を向ける。
真珠の様な純白の長髪、エメラルドの様な輝きを放つ大きな瞳、身体つきは全体的に細く、スレンダーな印象だ、歳は二十代前半だろうか。
まるで絵画や彫像の様な正に完璧の美を体現した女性。
『私の名はフレイア【美】【愛】【豊饒】【戦い】【魔法】【死】を司る神です』
(神か……まぁ、あらかた想像は付いたが、周りの状況考えれば妥当かな….)
『…てか、ちょっと…色々司りすぎじゃないですか?』
『まぁ、自分で言うのは、些か抵抗がありますが、私はこう見えてそこそこの上位の位に位置する神ですからね!』
彼女はそう言い、その慎ましやかな胸を張ると同時に叩く顔はどこか誇らしげだ。
『まぁ、そう言えば【フレイア】と言われると、良く聞く気がするなぁ…』
青年はなんとなしに、独り言を呟いただけなのだが、
その言葉を受け、一柱、興奮を隠せない者が居る様だ。
『そうですよね!私凄いですよねっ!私知ってますよ!現世では【ゲーム】やら【アニメ】やら【漫画】などで引っ張りだこですもんね!そしてどれも強キャラ扱いですよね!』
『まぁ、まぁそうですね…』
(自分で言うのはどうかと思うが…そして、いかんせん俗世に染まっている様にも見える……)
『はぁ…そんな神様が、こんなしがない高校生に何か御用なんですか?』
青年がそう聞くと『あっ』とした顔になり、
すぐさま『忘れていた』とシュンとした顔になる女神、
今までのテンションが嘘の様だ。
そうこうしているとおずおずと女神は問いかけてくる。
『その…貴方には人一倍のコンプレックスがありますよね…』
『いえ、一倍ではなく百倍くらいのコンプレックス
が顔面に集中しています』
青年はそう即答で返すが、その言葉にビクッと反応を見せたのは女神だ、
『そ、そうですか…』
『………』
その場に短い沈黙が続く。
ここまであからさまだと、青年も流石に何か勘付いた様だ。
『あの…もしかしてですけど…もーしかしてですけど!何か…女神様に原因があるとかじゃーないですよね??』
青年は顔に青筋を立てながら問うが、
女神は更にビクッと身体を震わせるのみで、
答えようとしない。
『…その沈黙は俺の予想であってる事でいいんですかね?』
青年は更に身体をひくつかせながら静かに問うが女神からの返答無い。
青年は顔を伏せており表情を伺い知る事が出来ない、
数分の間の後に女神は語り出す。
『私だって、悪気があってやった訳ではないんですよ!?』
『ダァー!!オラっしゃー!!』
次の瞬間、青年は顔を勢い良く上げると、
そう悲鳴にも似た奇声を発し、女神に殴り掛かるが、
当の女神はどこにしまっていたのか、即座に背中にある翼をはためかせ、空中に浮き青年が届かない場所で静止する。
『テメェ何浮いてんだゴラ!!今すぐ降りて来い!!顔面殴ってやる!!』
青年はそう言い醜い顔を更に歪ませ、烈火の如く叫ぶ。
『キャー!!唯でさえ怖い顔を更に怖くしないで下さい!!』
『テメェ!必ず殴ってやっかんな!!』
女神は唯、率直な感想を述べただけなのだが、
今の青年には火にガソリンをかける様なものだ。
『待って下さい!!理由を聞けば納得出来るはずですから!!怒るのは理由を聞いてからにして下さい!』
そう言い、地上に降り、勝手に理由を話し始める女神。
『まず、私って美の女神じゃないですか!』
『あ、おい!聞くなんて言ってねぇぞ!』
『それで気になってしまったんですよ!私と対極の存在と言える不細工!』
『……』
『そんな訳で美の女神たる私がどこまで不細工を創る事が出来るのか!!』
『はたまた、美の女神たる私は醜い者の創造など出来ないのか!?』
『気になってしまったら仕方ない!創ってしまおう!』
『……』
『それから私は自分の受け持った世界を飛び出し、平和で警備の緩そうなこの世界を見つけ、管理している神に一服盛り、人の創造権を使い貴方と言う人を生み出しました!!』
『成る程…それで終わりか……』
『はい!以上です!』
『ダァー!!オラっしゃー!!!』
『キャー!!』
『降りて来い!!その綺麗な顔をボコボコにしてやる!!』
『な、何で分からなんですか!!知的好奇心ですよ!知的好奇心は人類の特権ですよ!』
『お前は好奇心で人様の運命を変えるのか!!』
その後、青年が十分間程ありとあらゆる罵詈雑言を吐き続けるが、女神は一向に降りて来ない。
そうこうしている内に、青年は突然、糸が切れた様に地面にヘタリ込む。
『俺の…俺の十七年間は何だったのか…』
生まれてこの方、家族以外の異性と会話した事など無く、
道を歩けば通報され。
ならば顔を隠そうと、マスクや帽子を被れば通報され、
終いには『いっその事引きこもろう』と家で留守番していると、近隣には有名な美人姉妹の家に不審人物が居ると通報される始末。
何度も落ち込み、自分が嫌になったが、
それでも彼が平気でいられたのは、
ひとえに自慢の妹達の支えがあったからだ。
思い返すだけで涙が出てくる様な壮絶な日々、
その全ての原因が今、目の前に居るらしい。
『あ、あの…大丈夫ですか…?』
女神は地上に降り、心配そうに青年を覗き込む。
『あぁ、もう、どうでも良くなった…どうせ俺は死んだしな…』
『だが、お前を許した訳じゃ無いからな』
『ヒッッ!?』
青年は女神を鋭く睨みつけると、女神は慌ててまた空に逃げてしまう。
『で…結局お前は何で俺を呼んだ?…事と次第によっちゃ…』
『まっ、待って下さい、ちゃんとしたお話しです!貴方にとってもいい話の筈です!!』
『……』
青年は、胡散臭そうに女神に疑いの目を向ける、
『信用なら無いって目をしていますね…』
『ごほん!えっーまず、私の勝手な行動で大変なご迷惑をかけた事を、心より謝罪致します』
女神は地上に降り、真剣な表情で静かに謝罪した、
女神のその真剣な表情は先ほどの表情と打って変わり、
唯でさえ綺麗な顔を更に映えさせる。
青年はその顔に思わずドギマギしてしまう、
女神は抜けてはいるが、青年の人生の中で断トツで美人なのだ、
『お、おう、で、でもそれだけじゃ気が済まないかなぁー』
(あ、危ない、危うく、全てを許す所だった…)
『はい、存じ上げております』
『なので、私が管理している世界に、記憶を継承した転生、という形で謝罪をしたいと思います、』
女神はそう言葉を締めると、自信ありげな表情で青年の反応を伺いながら話を続ける。
『私の存じ上げているには貴方は一般的に言う【オタク】特に異世界ものが好きな傾向があるとか』
にやりと効果音が付きそうな表情を浮かべ、
青年の様子を伺う女神。
青年は肩を小刻みに震わせているが、
それは怒りの感情からでは無い事はその顔を見れば分かった、
顔は紅潮し、瞳は大きく開き、これから待ち受ける様々な体験、冒険に期待を膨らませている【少年】の瞳だ。
『クスリ』と言う可愛らしい声が少年を夢の世界から連れ戻す。
『やはり男の子は探検や冒険が好きなんですね』
その言葉に、今度は青年の顔が羞恥の紅に染まるが、
青年は、咳を一つし本題に戻し返答に戻る。
『た、確かに魅力的な話だが、その転生はこの地球では駄目なのか?』
『それは出来ません、本来、神の管理している世界に他の神が関与することはご法度です、他の神が大きく関わると、世界のバランスが崩れてしまいます』
『そして貴方は私が大きく関わった存在、本来、貴方はあの世界では異質な存在でした』
『つまりは、またあんたのせいか……』
『はい!言い訳のしようがありません!!』
『まぁ、自分で聞いた事だが、最初から決まってはいたが…』
『って事は転生って事でいいですか!?』
『まぁそうなるかな…』
青年のその返答を聞くと、今度は女神が糸が切れた様に地面にヘタリ込む、
『はぁ〜』と息を吐き、一安心という面持ちだ。
『良かった〜これでお父様に怒られずに済みます…』
そう、女神が小さな声で呟く様に声に出す。
『ん?何か言ったか?』
『いえ、別に何も、じゃあ、早速始めましょうか』
そう言い、すっと立ち上がり、
そそくさと呪文らしきものを唱える、女神。
すると足元の雲らしきものが蠢く様な感覚がし、
思わず雲の隙間から見える地上を見る。
そこには今まであった現代日本の街並みは無く、
代わりに何処まで続く草原と石壁で囲われた街並みが見えていた。
『ここは…?』
『ここが私の管理する世界【シェーンヴェルト】です』
『え…?あの一瞬で?』
『はい!私の力なら造作もないです!!』
『あ、そう…』
『うわー!露骨に興味無くすのやめて下さいよー!』
『はい!まぁ、そう言い訳で場所も移動したので、早速、転生の準備を進めましょう!』
パンと勢い良く手を叩き場を締めると、
女神は準備に取り掛かかる。
何処からともなく取り出した分厚く古めかしい本を片手に、魔法陣らしきものを描きながら青年に語りかける。
『それじゃあまず何か転生するに至って、希望などありませんか?元は私の所為ですからね、可能な限り…』『イケメンで』
『…え?』
思わず魔法陣を描く手を止め確認してしまう。
『イケメンで』
青年は無表情で答える、その顔は真剣そのものだ、
いや、その瞳はどこか血走っているようにも見える。
『いや…勿論、ある程度顔立ちは良くさせて頂きますよ、美の神の私が管理する世界ですからね、元々レベルは高いですよ、その他で何か…例えばスキルや…』
女神は言葉の途中で詰まってしまう、
何故なら青年が目頭を片手で摘み『やれやれ』と言った面持ちだからだ。
『あんた、俺の顔面コンプレックスを舐めるなよ?』
『…え?』
『小学生の頃のあだ名は暗黒物質、道を歩けば犬は吠え、子供は泣き叫び、通学路を歩くだけで通報され、だからと言って、顔を見られない様にフードを深く被ると余計通報され、碌に外にも出れない』
『……』
『十七年間で累計八十六回』
『…え?』
『通報された件数だ』
『……』
『ズビッ………そんな俺にちょっとイケメン位で満足しろと』
見ると、青年はいつの間にか目元を手で覆い隠していた。
『はい…その件は……はい…』
『その…具体的にはどの位を目安にすれば宜しいでしょうか…』
『お前だ』
『え?』
『目安はお前だ言っている』
『あの……紹介したと思いますが私は美の神ですよ…?』
『出来るのか!出来ないのかどっちなんだ!!』
『ひうっっ!が、頑張りますが私レベルってなると相当難しいかと…』
『ほう、貴様は人様の人生を無茶苦茶にした挙句、罪滅ぼしもまともに出来んと…』
『あ、あの!キャラおかしくなってますし、私でも出来ない事くらいは……』
そう言い、必死に手元の本を両手で猛スピードで捲り何かを探す女神、するとあるページで動きを止まる。
『あ…ありました…これで神の姿形を模した人間を転生出来るそうですが…』
『おう!そんなのがあるのか!!それで良いじゃないか!』
青年はコロっと表情を変え、今の今まで泣いていた様にはとても見えない、
彼の目と目元を見れば嘘泣きだという事が一目瞭然なのだが、生憎、女神は手元の本に視線を向けていた。
『でも…これ……酷く複雑な式ですし……なんかおかしい様な…』
『まさか、難しくて出来ないとか言わないよな?』
『な…なにおう!こ、こんなもの朝飯前ですよ!!』
『おう!じゃあ、やったれやったれ!!』
『えぇ!任せて下さい!!』
女神はそう言うと、裾を捲りチョークの様な物で複雑な模様を鼻歌混じりに描いていく。
(ふぅ…何とか口車に乗せられたな…これ以上の長いも面倒だし、早いとこ転生させてもらって異世界ライフを満喫したいぜ…)
(強いスキルなんて頼らず、実力で生きたいのが男ってもんだ!しかし顔はイケメンに限る!!)
(それに、雲の隙間から見るに文化形態は中世並み!やはり異世界物は中世ヨーロッパに限るよな!!)
『良し!出来ましたよ!』
女神は腰に手を当て『エヘン』とでも言いたそうな面持ちで無い胸を張っている。
『おぉ、流石早いな』
地面を見ると、そこには数分で描いたとは思えない様なぎっしりと書かれた文字と魔法陣。
魔法陣は幾つかに分かれて描かれているが、
中心にふた回り程大きい魔法陣が描かれており、
青白く怪しい光を放っている。
『当たり前じゃないですか!私を誰だと思ってるんですか?あの戦乙女とも呼ばれたフレイア様で『あっそう』
『あー!あー!またそうやって!!神にそんな態度とるとバチが当たりますよ!!』
そう言い、女神は両手をくるくると回しながら青年に飛びかかって来るが、女神も本気では無いのか、敢え無く青年に頭を抑えつけられて止まる。
『ああもう!分かったから!十分凄いのは分かったから!早く進めてくれ!』
その後も、女神はぶつくさと文句を垂れながら準備を進めて行き、いよいよ最終段階に移行した様だ。
『後は、姿形を模したい神の血が少しばかり必要らしいですね』
そう言いながら女神は何処からともなく、
いかにも儀式に使いそうな装飾が成された短剣を取り出す。
青年はその短剣の繊細な装飾に思わず目を奪われていたが、続く女神の行動で現実にひき戻された。
女神は短剣を逆手に持つと勢いよく左手首に刺したのだ、女神の手首は瞬く間に赤に染まり、勢いよく鮮血が噴き出す。
『うわー!?何やってんのお前!!』
『あ、ご心配なく、この位痛くも痒くも無いので』
『ちょ、ちょ、ちょっとの血って言ったじゃん!!』
『いや〜貴方様にはご迷惑をお掛けしましたので、ちょっとばかしのサービスですよ!』
『正に出血大サービスですね!!』
『……』
そうこうしている内に、
女神の血はまるで意思を持ったかの様に平面の地面を伝い魔法陣の方へ流れていく。
やがて魔法陣に着くと魔法陣を覆う様に青白く発光する魔法陣を紅く染めていく。
やがてその光は次第に強くなる。
『ささ、魔法陣の中心に立って下さい』
『…これ本当に大丈夫なのか?…ウェプッ…気持ち悪くなってきたぞ…』
現代育ちの青年にはいささかグロテスクな場面だったのか、吐き気を抑えながら、素直に女神の指示に従う。
『えぇ…術式に間違えは無いはずですが…』
女神がそう答えた瞬間だった、紅い閃光が走る。
『キャッ!?』
『何だ!?』
閃光が治ると、青年の前には幼い女の子がうつ伏せで倒れており、顔だけをこちらに向けていた、年の頃は精々小学生高学年、その髪は白くまるで絹の様な…
『って!お前!?もしかして!』
『はい…フレイアです……なんか、急激に力を失った気がします…』
『な、何で小っちゃくなったんだ!?』
『これはどう見てもその魔法陣が原因でしょうね…』
女神は腕を動かすにも精一杯と言う面持ちで、
青年の方を指差す。
その指につられ、地面の魔法陣の方へ視線を動かすと、
そこには真っ赤に染まった魔方陣が膝辺りまで浮き、
青年を覆っていた。
魔方陣からは時折、雷の様な閃光が走っており、青年を怯えさせるには充分であった 。
『うわー!これ本当に大丈夫なんだろうな!!』
『すいません…実は言うと、この魔法の説明をあまり読んで無くてですね…
私、説明書とか苦手なんですよね…何か、別に読まなくても出来そうだったので…』
『テメェ!!その良く考えずに行動する癖どうにかしろ!』
どうやら、この女神はまた何かやらかしたらしい、
面倒事に巻き込まれるのは主人公補正という奴なのだろう。
『おい!!なんか、体が光始めたぞ!大丈夫なのかこれ!!』
『あ、もう始まってしまったようですね、最後に言っておく事が有りますが』
『おい!!今度は体が消えて来たぞ!?怖いだけど!これ凄く怖いんだけど!!』
『今の私は殆ど力が無いので、この地を守護する事が出来ません、なので私が力を取り戻すまで代わりにこの地を守護して下さいね』
『はっ!?何言ってんの!?何言ってのお前?守護とか分かんないだけど!?』
『大丈夫です、理由は分かりませんが、どうやら貴方は私の力を半分以上受け継いだみたいです、魔力の流れを見るに今の私より大分強いようですよ?
取り敢えず【邪神】やら【魔王】やら【破壊神】やらが復活したら速やかに退治して下さいね?』
『要はテメェの尻拭いじゃねーか!!またか!またなのか!テメェは俺に迷惑かけんのか!!』
更に女神は青年を軽く無視すると、手元の本に目線を落としながら続ける。
『後、一番怒りそうなので最後にしたのですが…どうやら先程の魔法陣は神の使者を造る儀式な様で、女神は女の使者、男神は男の使者しか造れ無いそうです…』
『はぁ?それってつまり……』
『……貴方のこれからの人生に女神フレイアの祝福を』
『ダァー!!オラっしゃー!!』
青年が殴り掛かるより早く、
思いも虚しく彼は光の塵となって消えてしまったのだった。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
そこは狭く、一筋の光も無く、上下も分からない。
腕や足を動かす事は出来るが、まるで網の中のに居るように何かが邪魔をして腕を一杯に伸ばす事は出来ない。
しかし不思議とその圧迫感は不愉快に感じない、
まるで優しく母親に抱かれているかのような、
安心感さえ感じられる。
暗闇も、夜、瞼を閉じるような自然なものに感じた。
青年はふと、上に引かれるような感覚に襲われる、
自然と頭上を見上げると、そこには一筋の光が見える。
人は皆、自然と光に吸い寄せられる生物だ、
青年もまた例外では無く、光を手繰り寄せるように身をよじり光の方へ目指し進む。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
『ーー!ーーーーーー!ーーーーーー!!』
気付くと、彼の目の前には今時の丈の短いメイド服ではなく、昔ながらのクラシカルなメイド服姿の高齢の女性が彼の顔を覗き込んでいた。
白髪混じりだが髪の色は金髪で、しわは深く、
高齢ではあるが顔立ちはとても日本人には思えない程に整っている、彼はそんな高齢の女性に覆う様に抱えられていた。
高齢の女性は彼の顔や身体を確認すると頷き、
蔓面の笑みを浮かべタオルに包むと、ある女性に手渡す。
その女性はベットの上で寝転がっており、
額には大粒の汗が見受けられる。
彼女は手渡されるそれを愛おしそうに抱くと蔓面の笑みをその子に向ける。
青いというより蒼と形容したくなる様なサファイアブルーの瞳、黄昏時の空の様な色を写した黄金色と言えそうな金髪。
彼は、彼の人生の内で、二番目に美しいと思える女性に会った、彼の瞳はその女性の吸い込まれる様に澄んだ瞳から離せずにいた。
彼が暫く惚けていると、女性は急に悲しそうな顔をし、
周りのメイド服を着た人に何か言っている様だ。
メイド服を着た人達も彼女の言葉を聞き、慌てた様子だ、
しかしその言葉は青年には認識出来ない、
地球では聞かない全く別の言語だ。
彼はその視線の全部が自分に注がれている事を理解し、何か勘付いた様だ。
(あぁ……まぁ、そりゃ、産まれたばかりの子が泣きもせずに母親をじっと見つめてたら心配になるよね)
(はぁ……俺、一応、精神年齢は十七歳なんだけどなぁ…)
………
『オギャー………オギャー………』
その日、シュタルク帝国フォーマギア魔術学校、
学長エアリアル・アインスト・スチュアートの第一子が産まれた。
帝国の建国にも携わる由緒ある名家、
スチュアート家の出産に際し国中が祝福を上げたと言う。
妹、事故、身代わり、死、転生、……女の子