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調停官と補佐官の燕  作者: ユキ
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第一章 一話

調停官の東花と補佐官の燕



 長閑な田園風景が広がる一本の道、舗装がまったく成されていないその道を、一台の馬車がゆっくりと走っていた。

しかし、舗装されていない道は大きく馬車を揺らし、

 「お客さん、今からそんな状態じゃあ先が思いやられるねぇ」

 「うっぷ・・・・私はあなた達と違ってデリケートに出来ているんだ」

 それはお客として乗っていた女性の三半規管をも揺らし続けた結果、荷台から青ざめた顔を出す羽目になった女性は、吐き気を抑えようとハンカチで口元を押さえていた。

 「はっはっは、デリケートなんて言葉はここじゃあなんの意味もないよ」

 そんな女性とは対照的に、つばが広い紺色の帽子を被り、同じく紺色のポンチョを羽織って馬車の舵を取る運転手は、女性の言葉を快活に笑い飛ばすが、 運転手のその笑い声は女性の神経を逆撫でしたのか、

「あなた達はデリケートとデリカシーの違いもわからないでしょうね」

 女性は低い口調で言葉を返すも、

 「そんな青ざめた表情で言われてもねぇ」

 自分が言った言葉を笑いながら受け取る運転手を見て、女性は早くもこんな辺境な地に来てしまった自分を呪った。

 「最悪だぁ、私みたいな都会育ちがなんでこんなど田舎にぃ」

 弱音を吐きながら、吐き気とも戦う女性に対し、運転手はいまだに笑みを携え、女性がこの地に来た理由、それを代弁するように言う。

 「それは、お客さんが生態系調停官だからしょうがないんじゃないかな」

 すると、運転手の言葉に、さっきまで青ざめさせていた顔を女性は一転させ、真剣な面持ちで遠くを眺める。

 現代の世界は人間の革命的な進歩によって、人間がこの世界の頂点に立ち、他の生物達は人間の手によって自然を減らされ、徐々に数も減らされていった。

 しかし、人間の中にも減っていく他の生物達に危機感を覚える者もいる。

 その危機感は次第に人間の間で広がっていき、段々と無視ができない状態になっていった。

日に日に強まる危機感、動物を保護しろという民衆の大合唱、それら多くの声が世界政府の重い腰を上げさせ、ある機関を作らせる。

それこそが運転手も言った生態系調停官という、人間と他の生物間との間を取り持つために作られた行政機関・・・・・・・・・・・だったが、人間と他の生物との間で意思疎通を図るには色々な障害と困難が邪魔をし、時間だけが食われる始末で、作られた当初は行政機関としての呈を成していなかった。

至る所で調停官である人間と動物達が衝突し、人間と生物の間を取り持つはずの調停官が、襲ってくる生物達に対し一方的な武力で対抗してしまい、調停官が作られる前より酷い状態になっていき、完璧に失策と言うべきものを作り出してしまった世界政府は、なんとか自分達の威厳と立場を守るため、もう一つの政策を打ち出す。

その政策は、人間と生物間のコミュニケーションを円滑に進められるものでもあり、人間のエゴとも言うべきもの・・・・・・・生物達の〝人間化〟という、他の生物を冒涜的に扱ったような政策だった。

しかし、世界の科学力を駆使した結果、生物達を人間化するという実験は見事に成功し、生物とのコミュニケーションが出来るようになった今、再び調停官という行政機関が機能し始め、世界政府の手によって、もう一つ新たな政策が打ち出された。

それは、聞こえの良い言い方をすれば、生物達の観察と成長を見守るためのもの、悪い言い方をするとしたら、研究を効率良く進めるためのもの、世界政府は秘密裏にいくつもの架空の街を作り出し、そこに多種多様の生物を押し込めると、その作られた架空の街を、自分達の監視下に置くという政策を打ち出した。

当初の目的を完全に見失われたその政策は、人間の身勝手な決定により、人間にされたいろいろな生物を、街という鳥籠の中に閉じ込めるという、非人道的な政策へと変貌していき、そして現在、青ざめた顔で馬車に乗っている女性こそ、世界政府から調停官という称号を与えられ、生物達の間を取り持つために派遣された、生態系調停官なのだが、

〝北風東花〟これは彼女の本名ではない。

 先代の調停官から与えられ、代々受け継がれてきた名前。

彼女はその十五代目にあたる人物であり、世界政府の辞令という名の異動によって、新しい生物達が住む街、通称〝生物街〟へと向かっていた。

 ただし、生物街には普通の人間が入ってくることは滅多になく、入り込んだとしてもすぐに追い返される。

もし生物街の存在が公に出されたらなにが起こるか分からない。

 そのため、街は世界政府の手によって存在を隠されており、その存在を認識しているのは、人間の中でも一握りしかいない。

人間にとって珍しいものは、人間自身がほっといてくれない・・・・・

 調停官である東花は、同じ人間が愚かだということをよく知っている。

そんな愚かな存在と同じだということに、東花は辟易しながら遠くを見ていると、

 「いやー、今度の調停官さんは面白い人だねぇ」

運転手は先ほどと変わらない笑顔で東花へ話しかけると、

 「私を凡庸な調停官と一緒にしてもらわないでくれるかな?」

東花は酔いが回ってへとへとになりながらも、自信過剰とも思える言葉を返す。

すると、東花の自意識過剰とも言える言葉に運転手はまた笑うが、次に話しを始める時には、少し困った顔を浮かべ、

 「うーん、こう言うのはあれだがね、前の調停官さんは少し行き過ぎた性格でね、この村の奴らはそのせいで調停官どころか人間すら毛嫌いするようになったんだよ」

 困った顔と困った口調で言う運転手の言葉、それを聞いた東花は、酔ってまともに回らない頭を回転させ、一つの結論を出す。

 「つまりは、この村の全員がこちらに不信感を抱いていると?」

 「簡単に言えばそうなるね」

 東花が出した結論に運転手は軽い口調で言うが、調停官である東花からしたら、それはまさに死活問題、間を取り持つどころか、まずは人間への警戒心を取り除かなければいけないという、余計な仕事が増えたことに落胆し、

 「・・・・まったく、厄介なことをしてくれた」

 東花は前の調停官に対し、恨みがこもったような言葉を口にすると、運転手はまたもや気軽な口調で声をかける。

 「調停官さんの最初の仕事は、火消しから始まるってことかな?」

 「火消し・・・・ねぇ」

 吐き気を誤魔化すためなのか、それとも自分がこれからやることの大変さに憂いを感じたのか、遠くを見つめていた自分の目に、少しの哀愁を漂わせ、東花は広大な田園風景を見つめるが、その東花の様子とは正反対に、運転手はへらへらした口調そのままで、能天気な言葉を投げかける。

 「ふふっ、最初から前途多難だねぇ」

 「他人事みたいに言ってくれる」

 「だって他人だからねぇ、それに僕は人間じゃないからねぇ」

 「そう言えば、そうだったわ」

 まるで自分が人間ではないと言う運転手だったが、これは冗談でも、ましてや間違っているわけでもない。

ごく単純に、運転手が人間ではなく、人間化した生物であるということであり、馬車が向かっている街にも人はいるが、人間はいない。

村に住む者達は皆、人間の形をした生物だけ・・・・・

東花は生物達を監禁しているようなこのやり方を、あまり好んではいなかった。

自然とともに成長していくはずだった生物まで人の手が加わり、本来の生物が持つ役割までも壊す・・・・・・政府が行ったこの一大事業は東花からしたら愚の骨頂であり、本末転倒と言うべきものだった。

そんな世界政府に東花が忌まわしげな表情を浮かべ、不満を募らせていると、

 「もうすぐ街に着くよ」

 運転手の声が耳に入り、東花はその声が指し示す方向へと視線を移す。

 そこには、良く言えば情緒が溢れ、詫び寂びが感じられる街並み、悪く言ってしまえば時代に取り残されてしまい、寂びれた雰囲気が否めない風景が広がり、現代日本ではもはや珍しいとされる街並みがそこにはあったが、少し遠くに見えるその街並みを見ながら、

 「他のところに比べると、やはり栄えているね」

 東花は街の光景とは正反対の言葉を口にすると、運転手もここが都会だと言うかのような口調で切り出す。

 「ああ、そう言えば君は地方からここに来たんだっけ?」

 「ええ」

「まあ、ここは人間で言うところの都市みたいなもんだからね」

 「確かに、他のところとは生活レベルが違うようね」

 東花と運転手の会話を普通の人間が聞けば、この街は決して都会などと呼べるところではない。

しかし、この会話も決して間違いではなく、本来自然の中で暮らしていた生物達にとって、この街並みは人間で言うところの大都会に匹敵し、この街だけではなく、世界各地には政府によって管理され、生物達が住み着く生物街がいくつも点在するが、別の街から派遣されてきた東花にも、この街は比較的、人間と近い水準で暮らしているように思えた。

 すると、街に近づくにつれ、道もしっかりと舗装されてきたのか、馬車の揺れが収まるのに合わせ、東花の吐き気も治ってくると、乗っていた馬車が急に止まり、

 「歓迎するよ、ここが十二支街だよ」

 手綱を握りながら運転手が振り向くと、東花に街の名前を伝える。

 「とにし街?」

 「十二支と書いてとにし街」

 名前について引っ掛かった東花が疑問形で聞き返すと、名前の由来をしたり顔の運転手から聞かされるが、

 「生物が住んでいるからって、安直な・・・・・」

 安易な名前の付け方に東花は呆れ、再び十二支街という街並みに目を向けるが、

 「それは名前を付けた人間に言って欲しいかな」

 揚げ足を取るような運転手からの言葉に、

 「そう言えばそうね」

 東花もこの街を命名した世界政府が持つ発想力のなさに、思わず肩を竦めてしまう。

 さっきまで遠くに見えていた街並みが大きく広がり、その中に溢れている活気や賑わいが、東花の視線に映り込む。

馬車が止まった場所は、賑やかな街から一歩外に出たこの街の入り口にあたる場所、東花はまだ少し残る吐き気を抱えながら、ゆっくりと馬車から降りると、

 「乗り心地は最悪だったけど、おかげで目的地に着いたよ」

 自分の胃袋から出そうになったものの代わりに、東花は毒を吐き、

 「こりゃ、手厳しいねぇ」

 運転手は東花の言葉に苦笑しながらも、東花が差し出した賃金を受け取るが、苦笑いを浮かべていても、あまり気にしていない様子が見え隠れし、そんな運転手に東花は呆れつつ、改めて街の様子を自分の目で確かめる。

 すると、入り口の近くにいた者達が東花の存在に気付き、さっきまで楽しそうに話していた様子を一転させ、軽蔑と殺気を孕ませた視線を東花へと向け始めた。

 「あまり気にしないほうがいいよ」

 その光景に運転手は気を遣うように声をかけ、

「前の調停官の件もあって、ここの住人は人間や調停官に不信感を抱いているけど、今の調停官は君なんだから、君の出来ることをすればいいさ」

視線を向ける他の生物達とは違い、運転手は励ますような言葉を投げかけてくれたのだが、東花はそれを鼻で笑い、顔に貼り付けた不敵な笑みを運転手に向けると、

 「はっ、他の奴の目など気にしていたら、出来ることも出来なくなる。そんなつまらないことで立ち止まるほど私は落ちぶれていないんでね」

 強気な口調と強気な態度で言い放ち、

 「ふふっ、杞憂だったみたいだね」

 東花の絶対的な自信を見た運転手も笑い、その一言だけを残すと、来た方向へと馬車を戻し、そのまま走り去っていく。

 東花は馬車が去っていく姿を見送り、そして改めて前を向くと、軽蔑と殺気が入り混じった街の中へと足を踏み入れる。



 格式ばった建物に、格調が高い図書の数々、この街の雰囲気にはまったく似合わないこの部屋で、一人の女性が掃除をしていた。

 黒いポンチョを羽織り、下には膝下まで伸びる白のワンピースと、そこから見える白い肌、さらりとしている長い黒髪には可愛らしいリボンが付けられ、一見、可愛らしい女性が事務仕事の一環で掃除をしているように見えるが、この村には人間が一人もいない。

 彼女は人間化した生物であり、この村へ来た当初は名前が無く、彼女と同じ種族であるこの村の長が不憫に思ったのか、彼女の品種から「燕」という名前を与え、さらには燕が立派に成長するよう、彼女に調停補佐官という役職を与えた。

 しかし、この街では最も重要視される反面、最も他の生物から嫌われている調停補佐官という役職は、文字通り調停官を補佐する役職ではあるが、現在この街には調停官がいなく、前の調停官とのいざこざで補佐官はさらに立場を悪くしていた。

 それは、今の彼女の心境にも反映し、箒を一つ持ち、健気にこの広い部屋を綺麗に掃いてはいるものの、掃除をしていた手を止めると、

 「はぁ・・・・・・」

 燕はこの広い部屋で大きく溜息をついた。

 前までは、この部屋に複数の生物が燕と同じように働いていたのだが、前の調停官の問題行動によって徐々に補佐官の数が減っていき、今ではこのただ広いだけの部屋には、燕だけしか残らなかった。

 憂鬱な気分に浸りながら、燕がもう一度掃除をしようと、箒を握り直そうとしたまさにその瞬間、部屋の扉が大きな音とともに開けられ、その音に驚き急いで振り向くと、そこから緑色の物体が投げ込まれ、滑るように燕の前まで転がってきた。

 「えっ‼えっ?」

 あまりに唐突な出来事の連続に、燕の頭が情報を整理しきれず、驚きを通り越して唖然としていると、

 「もう二度と来るんじゃねえぞッ‼」

 緑の物体が飛び込んできた扉のほうから、今度は怒鳴るような声と一緒に複数の人間がぞろぞろと部屋へ入って来た。

 しかし、その人間達は燕のよく知った顔ばかりで、

 「み、みなさん‼一旦落ち着いてください‼いったいなにがあったんですか?」

 凄い形相をしながら入って来た者達を慌てて燕が止めに入ると、

 「どうもこうも、この人間が食い逃げしようとしたんだよ」

 代表者として声を荒らげてきたのは、女将のような貫禄を持った女性だったが、もちろん彼女は人間ではなく、その周りですごい形相をする者達も人間ではない。

人間の形をした生物達は、ぞろぞろと調停官室に入り、

「食い逃げ?」

燕は混乱しながら知り合いである女将の言葉に反応した直後、目の前まで転がってきた緑の物体へと視線を移す。

 だが、人間が羽織る緑のコートを見た燕は、見覚えのある物を見つけ、

 「これって・・・・」

 ゆっくりと燕は近付き、緑のコートに付いていたバッジを見たと同時に、

 「この人、調停官です」

 「えっ‼」

 燕の一言はその場にいた全員の顔を強張らせ、倒れている緑の物体へと一斉に視線が集まる。

 すると、緑の物体である人間は、うつ伏せの状態になりながらも、

 「ふっふっふっふ、君達は重大な過ちを犯したことに気付いていないようだ」

 偉そうな口調で女将達を笑い始め、

 「も、元をたどればあんたが食い逃げしようとしたのが―――」

 「なぜ私が食い逃げをするって決めつけるんですか?」

 反論をしようとした女将に、うつ伏せになった状態から一気に立ち上がった人間は、その声をかき消すように尋ねる。

 その緑の物体の正体は紛れもなく、数分前にこの街へ足を踏み入れた東花本人だったが、燕の視界からは、この街に初めて来た時の状態とは大きくかけ離れ、ぼろぼろになった東花の姿が映し出された。

 しかし、どう見ても満身創痍な姿にも関わらず、東花の言動と表情、そして調停官という肩書きは、意気込んでこの部屋に入ってきた者達をたじろがせ、さきほどまで見せていた勢いを完全に殺していたが、代表者である女将だけは、かき消された反論をもう一度東花に向ける。

 「そ、そりゃあ、きょろきょろして不審な行動を取っていたし、なにより金を払わず店から出ようとしていたじゃないか‼」 

 自分の店で東花が取った行動、それを女将が事細かく説明するが、

 「それだけで私を食い逃げ犯にするんですか?」

 どこまでも強気な態度を取る東花に、女将も気圧され始める。

 「それだけって、げ、現に金を払わず店から出ようとしたじゃないか‼」

「それはお手洗いを探していたからであり、挙動不審な行動も催していたからに過ぎません」

 「そ、そんなの後付けじゃないか‼」

 恥ずかしげもなく自分の行動や衝動を説明する東花に、女将は戸惑うが、

「後付け?私の記憶だと、あなた方が理由を聞く前に私を取り押さえたんじゃないですか?」

冤罪を主張する東花に、

 「そうなんですか?」

 燕が代わって女将へ尋ねると、

 「そ、それは・・・・・・」

 女将はばつが悪そうに燕から目を背けると、そんな女将や他の生物達を見ながら、

 「私が人間ということで理由を聞くこともなく、あなた方は私を悪者にして吊し上げ、自分達の鬱憤を晴らしているに過ぎない。これは立派な冤罪であり、悪質な差別と言える」

 水を得た魚のように、東花は自分の主張を突き通し、

 「反論があるならどうぞ」

 一通り文句を言ってすっきりしたのか、東花は女将達に満面な笑みを向け聞き返すと、誰もがそれに反論できず黙り込んでしまい、

 「無いようなので、今この場で私への謝罪を要求します」

 東花が自分に対する無礼に謝罪を求めると、女将達は気まずそうにお互いの目を見合わせ、

 「くっ‼・・・・・すいませんでした」

 最初の勢いと、それに伴った展開が嘘のように、女将達は渋々ながら東花へ頭を下げ、

 「まあ、今回は大目に見ますが、今後同じように私を吊し上げようものなら、厳しい罰則を受けてもらいます」

 自分の寛大さをアピールする東花は、女将達の行いを許しながらも、同じようなことを繰り返さないよう釘を刺し、女将達も、ひとまずはなにもお咎めがないことに安堵しつつ、もう一度決まりの悪そうな顔をした女将が一歩前へ出て、

 「その、今さらこう言うのもあれだが・・・・とりあえずかけ蕎麦代の五百六十円を払ってもらっていいかい?」

 調停官・・・・・というより、人間にお願いをするのは嫌だったが、生物街でも人間と同じようにお金のやり取りが流通し、たったかけ蕎麦一杯分のお金でも、女将にとっては生活費に変わりない。

背に腹を変えられない女将は、言いにくそうにはしていたが、しっかりと東花から貰えなかったお金を請求する。

しかし、東花の頭の中にはお金を請求されるなんてことは想定されていなかったのか、

 「・・・・・うん?なんの請求ですか?」

とぼけた様子で聞き返すと、

 「いや、だからかけ蕎麦代の―――」

 「はっはっはっは、私はそんなはした金を持ったことはない」

 「はあ?」

 催促しようとした女将の言葉を、東花は自分の笑い声で吹き飛ばし、

「第一、私はここへ調停官として来たんですよ?だからこの村の実情を知るためにまずは食について調べたかった。謂わば、これは必要経費と言っても過言ではない」

あくまで自分は悪くないと言い張り、自分を擁護する東花の言葉に、燕は初対面で、しかも、上司に当たる存在だったのだが、軽蔑という感情を東花に覚え、女将もさっき謝った自分が馬鹿みたいで、

 「なに自分の都合の良いように言ってんだい‼結局は金が無いからやっぱり食い逃げをしようとしたんじゃないか‼」

 余計に腹立たしく感じ、さっきよりも強く東花へ詰め寄るが、

 「その考えが愚かな考えだとなぜわかないのか私は問いかけたい」

 東花はより強い口調で対抗すると、そのまま持論を持ち出し、まさかの責任転換を始める。

「あなた方のところの蕎麦はコシどころか出された時点で麺が伸びきっており、そんな粗悪品にお金を払うこと自体が、この村を底辺な商業地帯へと変えている。その事実を知るべきなのですよ」

 「なんだと‼」

 全ては女将達の不備だと言い切る東花に、その場にいた全員が怒りを露わにするが、東花の自分を正当化するような言葉は留まることを知らず、

 「それが分かったなら、あなた方は私にお金を請求するなど馬鹿げた真似はせずに、自分達が作ったコシがない蕎麦に少しでもコシを出すよう努力したまえ」

 挙句の果てには、暴言に近い言葉を女将達へ言い放つと、さすがに我慢の限界を越えたのか、女将達は東花が調停官だということを忘れ、無言のまま東花に詰め寄り始めると、

 「な、なんだ、なんだ、暴力かぁ?」

 無言の圧力は、さっきまで饒舌に語っていた東花の顔をすぐに引き吊らせ、一旦落ち着くように説得を試みるも、次の瞬間、大勢の生物達が東花を取り囲み、数秒後には、またもや緑の物体が床に転がる光景が映し出された。

すると、さっきよりぼろぼろの姿になった東花に変わり、

 「大変申し訳ありませんでした‼費用のほうはこちらで負担させてもらいます」

 補佐官である燕が必死に女将達へ謝罪をするも、

 「まったく、今度の調停官もろくな人間じゃねぇな‼」

「二度と私達の前に姿を見せるんじゃないよ」

唾を吐き捨てるように、転がる東花へ向けて次々と文句を言い、他の生物達は地団駄を踏みながら出ていく中、

 「燕ちゃんもこんなところで働いているとみんなから見放されるよ」

 顔見知りである女将だけは、燕を心配するように声をかけるが、

 「は、はあ・・・・」

 燕はどう答えたらいいのか分からず、曖昧な反応を見せながらも、出ていく女将達に頭を下げて送り出す。

 そんな嵐のような出来事が一転し、調停官室には再び静寂が訪れ、

 「・・・・・はあ」

 大きく、そして深い溜息をつく燕だったが、

 「なーんて野蛮な連中なんだ‼こんな未開の地にわざわざ来てアドバイスまでしてやったのに、暴力でしか対抗できないとはなぁッ‼だから田舎は嫌いなんだ‼」

 すでにいなくなった女将達へ向け、負け犬の遠吠えとも思える文句を喚き散らす東花は、ぼろぼろになった体を引き起こす。

 「あなたには反省という文字がないんですか?」

 「反省?」

 蔑んだ燕の目にも気付かず、東花は反省という言葉を笑っていたが、

 「調停官が食い逃げをするなんて前代未聞の出来事ですよ‼しかも初日からここの生物達と揉め事を起こすなんて」

 頭を抱えながら燕が東花に苦言を呈す。

 しかし、燕の思いとは反対に、東花は唐突な質問を燕に問いかける。

 「君はあそこの蕎麦を食べたことはあるのかい?」

 「急になんですか?」

 「食べたかどうかを聞いているんだよ」

 急になにを言い出すんだと言わんばかりの顔をする燕だったが、東花の言わんとすることがなんとなく分かってしまった燕は、少し言い淀みながらもそれに答える。

 「・・・・・・ありますが」

 「美味しかった?」

 「だからなんでそんなことを聞くんですか?」

 「美味しかったのか不味かったのかだけを答えなさい」

 選択肢があるようでないその東花の質問に、燕は困惑しながらも、

 「・・・・・・・・・独特の感性で作られたものだと思います」

 なるべく当たり障りのない感想を述べた次には、

 「はっはっはっは、そんな遠回しの言い方をしなくても不味いなら不味いと言えばいいだろう」

 廊下の外まで聞こえるような東花の笑い声は、室内に響き渡り、

 「誰も不味いなんて言ってないじゃないですか‼」

 せっかく当たり障りのない言葉で言ったのに、勝手な解釈で自分の意見が曲げられたことに燕は反論するが、

 「はっきりと言えない時点でその料理は不味いということになるんだよ」

 完全に否定が出来ない東花の言葉に、燕は言葉を詰まらせ、

 「そ、そうだとしても、あなたがお金を持たずに食事をして逃げようとしたことには変わりがないじゃないですか‼」

 苦しいながらも料理が不味いことを認めてしまい、燕はそれから逃れようとしたのか、お金を持っていないのに食事をしたという事実を東花に突き付けるのだが、

 「お金が無いなんて誰が言ったのかな?」

 「はあ?」

 東花は小銭がぎっしりと詰まった袋を取り出し、それを机の上に置く。

 「も、持っているんじゃないですか‼しかもこんなにも大金を」

 さっきは持っていないと言っていたのに、東花はここに住む生物達の、生活費約一ヶ月分はあるんじゃないかと思わせるぐらいの大金を持っていた。

だったら、このお金を最初から出せば、自分が傷付くこともなかったし、女将達の怒りも買うことはなかったのに、なぜすぐにでも女将達に出さなかったのか、燕はその疑問について問いただすも、東花は屁理屈を捏ね、

 「私ははした金を持っていないと言ったんだ。いくら私がお金を持った超セレブでも、あの料理にこのお金を支払う気は毛頭ない」

反省の色もまったく見せない。

そんな東花に燕は呆れ果てながら、

 「それでも一生懸命働いた方への対価として支払うべきで、さっきの方たちの言い分は正当なものだと思います」

 女将達の正当性を訴えたが、

 「対価?君はなにを寝ぼけたことを言っている?対価というのはそれ相応の物を提供した時に支払われるものであり、あの店の蕎麦はそれに相応しなかっただけの話。つまりはあの蕎麦に対する価値は0円ってことだよ」

 開き直るように言う東花、しかし、明らかに自分のほうが正しいことを言っているはずなのに、燕はそれを強く否定できなかった。

 コシのない麺に、味が薄い出汁、 燕は女将の店の常連ではあったが、あの店で食べたものに対し、燕も美味しいと思ったことがなく、

 「し、しかしですね―――」

 「あんなものにお金を払い、お店側はこれでいいと満足し、お客側は不満を残すが、こんなものかと思いこみ文句は言わない。こんな成長性がまったく感じられないことがここでは日常茶飯事で起きている。だからこの村は発展をしていないんじゃないのかい?」

 捲し立てるような東花の言葉の数々に、燕は上手く反論が出来ない。

 「そ、それは・・・・」

 「反論ができない時点でこの話はこれで終わり」

 勝手に言い終え、勝手に話しを終わらせようとする東花に燕は待ったをかけようとするが、

 「ま、待ってください‼まだ話が―――」

 「君みたいに権力を持たない調停補佐官にこんなことを言っても私の時間が無駄になるだけだ。それとも君は私が納得し、あの不味い蕎麦に対し喜んでお金を出すほどの説得ができるのかい?」

 いつの間に、燕が調停補佐官だということを知ったのか、今度は補佐官である燕を貶すような言葉を使い、東花は意見を促すが、

 「・・・・・・ありません」

 東花に言い返せる言葉が見つからない燕は、悔しそうに東花の言い分を認めてしまい、東花はそれだけでは飽き足らず、

 「ははっ、最初から素直に自分の無能さを認めなさい」

 「くっ・・・・・‼」

 付け加えるように燕に暴言を吐き、燕は東花の言葉に唇を噛み締めることしかできなかった。

 補佐官である燕にとって調停官は上司であり、逆らえる存在ではなかったが、今まで見てきたどの調停官よりも最悪な性格をした東花に、燕は殺意すら覚えるが、

「しかし、こんな田舎にしては中々いい部屋だ。私から溢れ出る気品と相まって、もともとあった格調の高さが一層増したようじゃないか。そうは思わないか助手よ」

 「誰が助手ですか‼」

 東花は調停官室の装いが気に入ったのか、満面の笑みを浮かべ、

 「補佐官も助手もそう違わないでしょ?結局は調停官である私に尽くすための存在なんだから」

 独裁的な言葉をさらに足し、東花が燕に言うと、

 「あなたはそれでも調停官なんですか‼」

 逆らえない存在ではあるが、あまりにも傍若無人な東花の振る舞いに、燕は大きな声で激昂する。

しかし、燕は頭に血が上り過ぎたせいなのか、

「あなたみたいな人がいるから人間と私達動物の溝が―――」

「おっと、私個人への反論は許すが、調停官でもない君が人間と動物のことについて反論をするのは厳罰にあたるんじゃないのかな?」

思わず補佐官の禁則事項を破ろうとしてしまい、こちらが注意をしようとしたのに、逆に東花から注意を受けてしまう燕。

補佐官は調停官のように人間と生物について語る資格はなく、あくまで調停官の補佐をするだけの役職、これは生態系調停官が作られた当初、世界政府によって同時に作り上げられた生物界の階級社会であり、

「くっ‼・・・・・・・だ、だけど―――」

「これ以上の討論を望みたいのなら、君も調停官となり権力をつけなさい。権力がない者が喚いたところで、耳を貸す者は少ないよ」

「・・・・・・っ‼」

なんとか振り絞って出そうとした燕の言葉も、東花の真っ当な意見には抵抗できない。

ただ、調停官は決して人間だけしかなれないわけではない。

生物達を人間化した際、優れた能力や頭脳を持って人間になった生物も少なくはなく、そういった生物達の反乱などを恐れた世界政府は、事前に生物達の不平不満を減らし、生物達の反乱を防ごうと、生態系調停官という役職や、それに関する組織全体に、能力があるどんな生物でも上に行けるよう、完全なる実力主義という体制を整えた。

現に、何匹、何頭、何羽かの生物は、東花の言った通り、調停官になったり、いくつもの人間を従えることができる権力を持ったりと、実力があれば人間の上にも立つことができている。

しかし、補佐官として働く燕には、調停官である東花に言い返すほどの権力や、人間を脅かすような能力は持っておらず、ただただ東花の言葉を聞き入れるしかなく、

「自分の無能さが分かったなら、私のために最高級の紅茶を用意してくれたまえ助手よ」

言い返せない相手に対し、どこまでも馬鹿にする口調と言葉を並べ立て、東花は紅茶を入れるよう燕に催促すると、

「自分で勝手に淹れてくださいっ‼」

燕はなにかが爆発したように怒鳴り声を上げ、そのまま調停官室から出て行く。

そして、壊れそうなほどの勢いで閉められた扉は、バタンと大きな音を立て、取り残された東花は燕の行動を見ながら、

「まったく、ヒステリックな女だな」

気にした様子を一切見せず、燕が怒って出て行ったのも自分のせいではなく、燕の性格に問題があるかのように呟くと、やれやれといった表情で肩を竦めた。



ずんずんずんっと、地響きが起きているのかと思えるほど、燕が起こす足音は大きな音を立て、静かな廊下に鳴り響く。

燕は調停官室から勢いよく出てきたが、どこかへ行く当てもないその足取りは、廊下に足音を響かせるだけ、それでも東花に言われたことが脳内を駆け巡り、無意識で燕の足音を大きくしていると、

「あらあら、象部族が来たと思ったら違ったみたい」

大きく鳴り響く足音を止める声が燕へとかけられたが、この悪意のある言い方や、嘲笑を含んだその笑い声は、燕の機嫌をさらに損ね、

「悪かったですね、足癖が良くないもんですから」

眉間に皺を寄せた顔を隠そうとせず、燕は声をかけてきた相手に低い声で返すと、その視線の先には、ピンクのカーディガンと金色の髪の毛が目を引く女性、環の姿が映し出され、十二支街の役所として機能するこの建物の受付カウンターに座っていた。

「ご機嫌斜めね」

「べつに・・・・・」

環からの言葉をすぐに否定する燕だが、明らかに機嫌の悪い表情をし、そんな燕をさらに逆撫でするように、

「私の予想では調停官となにかあったと予想しているんだけど、違うかな?」

東花との会話を思い出させるような環からの意地悪い質問、それは燕のストレスを溜め、

「その分かったような口ぶりで聞かないでくれますか」

燕は環を睨みつけるような視線を送るが、環はそれを意に介さず、

「ふふっ、見るからにあなたとは相性が悪そうだったもんねー」

「会ったんですか?」

「だって、私は受付け係よ?会わないほうがおかしいんじゃない?」

人を食ったような口調で、環は面白がりながら燕へ言い、

「分かっているなら、わざわざ私を呼び止めなくてもよかったんじゃないですか?」

性格の悪さなら東花に引けを取らない環、燕はそんな環をもう一度睨みながら言葉を返すも、

 「えー、だって、呼び止めないとあなたの苦悶する表情が見れないじゃない」

 環は楽しそうに顔を覗き込んでくる。

その行動は、再び燕の怒りを頂点まで駆け登らせ、本日二回目となる燕の怒鳴り声が役所内に轟き渡る。

 「もうその表情を見て堪能されたようなので私は行きます‼」

 怒鳴り終えると同時に、燕は再び大きな足音を鳴らし、その場から立ち去ろうとしたが、

 「どこに行くかは知らないけど、仕事を放棄するならあの調停官さんの圧勝ってとこかしらねー」

 「ぐっ‼・・・・・」

 燕の性格を知っているからこそ出てきた環の一言は、燕の足を止め、

 「べつに仕事を放棄したわけじゃありません。こっちに用があっただけです‼」

基本的に負けず嫌いで、中途半端なことが嫌いな燕にとって、環からの挑発とも取れるようなその言葉は効果覿面だったようで、燕は苦しい言い訳を放ちながらも、自分の行き先を百八十度変え、

 「あら?そうだったの?そのわりにはあっさり引き返すようだけど?」

 「もう用事が終わったんです‼」

 再び調停官室に戻ろうとした燕の背中に、環が悪戯っぽい笑みと言葉を向け、

 「ならいいけど、真面目だけが取り柄のあなたが、そんな調子じゃあお姉さん困っちゃう」

 「わかってますよっ‼」

 燕は東花に言い返すことができなかった鬱憤と、まるでおもちゃで遊ぶように言ってくる環の言葉が相まって、今日一番の怒鳴り声で返事をすると、そのまま大きな足音を立てて調停官室へと戻っていった。

 しかし、肩を震わせ、怒りを露わにする燕の後ろ姿は、誰もが声をかけづらい状況だったにも関わらず、

 「がんばってねぇ」

 環は軽い口調と、嬉々とした表情を崩すことなく手を振り、燕の後ろ姿を見送った。

 


 ・・・・・・・・調停官室へ再び戻った燕は、自分の目を疑った。

 「どうしてこうなったんですか?」

 「どうしてって、私が優雅に過ごそうとした結果だが?」

 平然と言ってのける東花だったが、燕の目の前にはさっきまで見ていた調停官室の姿はなく、整理されていたはずの本が散乱し、服が脱ぎ捨てられ、ゴミもそこら中に転がる調停官室に、燕は目眩を起こしてしまいそうだった。

 「結果だが?っじゃないですよ‼なぜものの数分でこんな部屋が散らかるんですか‼」

 「なにを言っているんだ。君には散らかっているように見えるかもしれんが、私にとって実に効率のいい配置になっているんだよ」

 自分の都合が良いように解釈をする東花に、燕は再び怒りを覚えたが、一度大きく深呼吸をし、

 「・・・・・とりあえずこれでは私の仕事にも支障をきたしますので片付けてください。私も手伝いますから」

 怒りを抑えつつ、燕は落ち着いて東花へ掃除をするように言う。

 だが、東花には片付けるという概念がないのか、

 「うーん、先も言ったようにこれは私にとって効率的な配置だから、やってもいいけど私がやったって状況は変わらないんじゃないかなー」

 あくまで自分の主張を貫こうとする東花に、せっかく抑えていた怒りが一気に爆発しそうになる燕、しかし、ここで怒ればまた不毛な言い争いに発展すると感じ、燕はもう一度大きな深呼吸をし、感情をなんとか押し殺す。

 「それじゃあ、部屋は私が片付けますので・・・・・」

 これ以上東花と口論をしていても自分のストレスが溜まるだけ、そう思った燕は、部屋の片付けは自分がやると言い始め、代わりに本棚から分厚いファイルを取り出し、東花の目の前にそのファイルを置いた。

 「なんだ、これは?」

 「調停官には別の仕事をしてもらいます」

 「それはいいが、この膨大な資料の束はなんだ?」

 不審がりながらファイルを捲る東花を後目に、燕はファイルに書かれた内容を説明する。

 「これは歴代の調停官達がここの種族達に関するデーターを記したもので、この街に就任した調停官は、代々これを読んでから、ここに住む者と接するというのが規則で―――」

 だが、燕が説明を言い終える前に、東花は目の前に置かれたファイルをゴミ箱に捨て、

 「って、ちょ、ちょっと‼なにをしているんですか‼」

 「私の前にゴミを出さないでくれ」

 十二支街に来た調停官が記した記録を、東花はゴミと言い切り捨て、そんな東花に対し、抑えきれなくなった感情が一気に膨れ上り、燕はコントロールの効かない怒りを爆発させようとしたが、

 「ゴミって・・・・これは歴代の調停官が長い期間を経て作成した―――」

 「性格やものの捉え方、また感情の違う者が書いたものを読んでもそこには必ず自分の考え方が入る。そんなものを読んだら先入観が先行してしまい調停官の意味を成さない。よってこれは私にとってゴミでもあり目を曇らせるものだ」

 もっともらしい言葉を連ね、捲し立てようとする東花に、燕は怒りを通り越して呆れる始末、

 「・・・・・じゃあ、あなたは一体なにをしてくれるんですか?」

 呆れと怒りが混在しながらも、燕は調停官として東花がどういう仕事をしてくれるのか尋ねると、それを待ってましたと言わんばかりの笑みを東花は浮かべ、

 「まずは調停官・・・・いや、人間を一番嫌っている種族のもとに案内したまえ」

 「えっ・・・・?」

 この街で人間がやるには最も恐ろしく、最も危険な仕事を東花は口にした。

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