笑顔のタネ。
はじめまして。さゆきちと言います。
よろしくお願いします。
笑顔は人が作る物。また、笑顔は幸せを作る。これは、永遠に受け継がれる。
一人が笑えば、一人も笑う。やがて、みな笑い、最後には涙を流す人はいなくなる。
なんと幸せなことか。みな、笑顔のタネを持っている。
この言葉はある隣町のおばあさんが言った言葉。
彼女は、花山或夢。
今日は彼女の話をしよう。
時は2003年。まだ彼女は中学3年生で恋というものもよくわからない歳だった。
*** 2003/5/20***
今日は、私の弟の運動会。
家からは少し遠いが元気にやってるそうだ。
「ねぇちゃん、お弁当できた?」
「まだ。ってか、歩のほうこそできてないじゃん。したくしなよ。」
「してるよ。ただ遅いだけ。」
「もぅ、いい加減しなっ!」
歩は私の弟。
小学5年の男。帰ってくるといつもゲームばっかりしてる、ぐぅーだら男子。
でも、どこかかわいいところがある。なんだこれ。
「はいはい!そこまでっ。時間ないんだから。」
母さんだ。
顔は笑ってるのにどこか怖い顔をしている。
自分の母親だけど不思議な人だ。
私たちは、自転車で学校へと向かった。
出発してから30分。着いたと同時に校庭を見渡した。
まだ始める前で来ている人はごくわずか。しばらくして人が集まり始め、校長の挨拶が始まった。
敷物を敷いた場所は、プールの見える木の陰に隠れるようなところ。
ここからは歩がよく見える。ここでよかった。
運動会が始まってから30分。
急にトイレに行きたくなって、急いでトイレに向かった。
「えっと..、あ、すいません。お手洗いってどこでしょうか。」
背の高い男性に聞いてみた。
「えっと....、あっちだと思います。」
「あ、ありがとうございます。」
私は急いでトイレへと向かった。
そして、間に合った。
無事、トイレに行くというミッションを達成した私は、外に出た。
「ふぅ~。」
これで一安心。
「あ、きた。っよ!」
「えっ!お、乙井先輩っ!」
「やっぱか。久しぶり。」
「な、なぜここに..?」
「なぜって..ひどいなぁ。さっき会ったばかりなのに。」
「えっ、私、会いましたっけ?」
「うん。ほら、トイレどこですかって聞いてきたじゃん。」
「あっ!!」
「ははっ!超ウケル。..でも、会えてよかったよ。」
「...?」
「あ、だから、花山と会うの久しぶりだからって意味。」
「あ、そういうことなら。私もです。」
彼は私の中学のときの先輩、名前は乙井真祐。高校2年生。
性格はとっても優しくて、付き合いやすい人だった。
先輩の水菜先輩とのうわさがあったが、そんなのウソ。
「今、面接練習とか?」
「あ、はい。頑張ってます。あ、先輩は彼女さんとかできました?」
何を聞いてんだ?!私は。
「ううん。今はフリー。結構、告って来ると子とかいるけど、おれ、好きな子いるし。」
「あっ、そうなんですね。」
「うん。花山は?彼氏できた?」
「えっ!?わたしはそんなぁ。何せ私なんか相手にしてくれる人なんていませんし。」
「ネガティブ志向はだめだぞ?花山は花山らしくしてればいいんだから。」
「ありがとうございます。」
「あ、あとさ。せっかくだし..メアド教えてよ。スマホ持ってる?」
「あ、はい。えっと..。」
私たちは連絡先を交換した。
「あ、花山、下の名前、なんていうの?」
「或に夢って書いて、或夢です。」
「或夢..。超かっこいいじゃん!いいなぁ、俺も或夢がいい。」
「えっ?!困ります。同じ名前。」
「ははっ、だよな。ごめん。んじゃ、メールすっから。」
「はい。では。」
私たちは別れた。
こんな風に会えるなんて。偶然にもほどがある。でも、とっても嬉しい。
そんなことを思いながら、スマホを握りしめ、敷物の場所へと戻った。
その日の夜。
早速、メールを送った。
『花山です。
今日は会えてよかったです。あと、話しかけてくれてありがとうございました。』
すると、すぐに返信が来た。
『俺も。
あのさ、敬語やめない?しゃべりずらいし。』
『いいんですか?
先輩なのに、敬語使わなくて。もし、先輩が嫌なんだったら、やめます。』
すると、一通の電話がかかってきた。
「もしもし。」
『あ、でた。あのさ、いやとかそういうことじゃなくて』
「じゃあ、どうしてですか?」
『...いやなんだ。お前だけには先輩って言われたくない。』
「えっ。答えになってません。」
『だから、俺..好きなんだ。お前が。』
「はっ!」
『ごめん。急に。でも、本気だから。電話越しだけど、俺と付き合ってほしい。』
「あっ、はぁ。..私でよければ..。」
『ありがとう。或夢』
それは、突然のことでした。
憧れの先輩から告白をされたのです。こんな私を受け入れてくれる人がこんな近くにいたなんて。
〔3日後〕
今日は初デート。
先週の振り返りで今日だけ休み。
先輩が進学した高校は『甲ヶ丘高校』。通称、甲校。
スマホok・金髪ok・ピアスokの学校だ。
でも、先輩は金髪もピアスもしない。えらいえらい!
「ここが..甲校。」
正門前で待ち合わせということだったので、私はスカートを直しながら待っていた。
「だよねー!あっ、乙井君って趣味何なの?あたしはねー」
「ごめん、時間ないから」
「えっ?なんでよー!あそぼうよー」
正門の向こうでは先輩が女子たちの囲まれていた。
「先輩..人気だなぁ。」
そして、正門のところまで来て、私に気付いたのか、こちらにやってきた。
「あ、或夢。ごめん、遅くなった。」
「だいじょぶです。それより相変わらず人気ですね。」
「あぁ、これね。」
「だれ?あんた。」
「あ、こんにちは。」
「こんにちは。じゃなくてっ」
「あ、じゃあ、ここで。じゃあな。」
「失礼します。」
私は先輩に連れられて歩き始めた。
「なにあれ。もしかして乙井君の彼女?」
「はっ、ダッサ。」
「しかも、チョーむかつくんですけど。」
〔歩き始めて…〕
「ごめんね。あれ、いっつも俺に絡んでくる奴らなんだ。」
「仲良くていいじゃん。仲いい友達がいていいなぁ。」
「或夢にもいい友達、一人くらいないの?」
「まぁ、そりゃあいますよ。でもけんかしてて。」
「そーなんだ。..じゃあ、仲直りできる方法教えてあげる。」
「えっ。でもどうやって。」
「とりあえず!アイスでも食おうぜ。」
「う、うん!」
着いたのは、行きつけのショッピングモール。
「ほら、かき氷。何味がいい?」
「じゃあ、イチゴで。」
「おけぃ!じゃ、待ってて。」
私は近くにあったベンチに座った。
「ふぅ~」
それから3分もしないうちに先輩が返ってきた。
「お待たせ。でかいの1つにした。」
「ありがとう。」
「おう。溶けちゃうから食べちゃおう。」
先輩は反対、私はこっち側。
ほほえみながら食べている先輩を見るとしあわせだなぁと改めて思う。
私も、おいしくてつい微笑んで食べてしまう。
「あぁ~!頭がキーンってする!」
「そういう時は、冷たいものをもっとたべれば治るんだって。」
「そうなんだぁ。じゃあ、おれ、もっと食べよう。」
先輩はかき氷半分を頬張っている。
「あ、先輩、これ持ってきたんです。」
「真祐でいいよ。あと敬語。」
「ごめん、真祐。」
「うん。で、なに?」
「リストバンド。」
リストバンド。
私が昨日、頑張って作った黒と灰色のペアバンド。
「えっ?!これ、或夢が作ったの?」
「うん。へんかな?」
「全然!ってことは、どっちか俺の?」
「うん!私、どっちでもいいから、選んで。」
「そっか。じゃあ、俺、黒で。」
そう言って真祐は黒色のリストバンドを取った。
「じゃあ、私はグレー。」
私たちはお互いリストバンドを腕にはめた。
「ありがとう。すげー嬉しい。」
「よかった。嫌われたらどうしようって思ってて。」
「ははっ、そんなことないじゃん!俺はそんな人間じゃない。」
そう言って私の手を取った。
「大事にするからね。これからよろしくね。」
「うん。よろしくね。」
へへっ♡と私たちは微笑んだ。
そのあと私たちは、手をつないで帰宅していた。
真祐とは家が真反対。私は北方向、真祐は南方向。
「じゃあ、ここで。」
「おう。..あっ!待って。」
ぎゅっ
「はっ」
「ごめん。どうしてもこうしたくて。」
「あ、うん。大丈夫だよ。」
「電話するね。」
「うん。待ってるね。真祐。」
すると真祐は「ばいばい」といって行ってしまった。
なんか今の、嬉しいっていうか、惚れるっていうか。
よかった..。
〔その日の夜〕
ピロリン♪
『或夢、今日はありがとう!また近いうちデートしよう。好きだよ(^^*) 真祐』
「真祐..、私も。」
『こちらこそ。今日はいろいろありがとう。ショッピングモールも、かき氷もすごくおいしかったし楽しかった。また行きたいね(^^)』
時刻は午後11時。
そろそろ寝なきゃ。
〔あの初デートから一年〕
私は念願の甲校に入ることができた。
高校生活、どんなになるかわからないけど、頑張ってみる。
「え~、新一年生のみなさん..」
校長の話が始まった。私はそんな話も聞かずに真祐のことを考えていた。
真祐、後ろで見てるってメール来てたけど、緊張するなぁ。
ようやく30分もの校長の根性のある話が終わった。
疲れるよ。30分も我慢していた私たちもすごいけど、ずっと唾を飛ばしながらしゃべっている校長もすごいと思うよ。
やっと、始業式も終わり、教室に戻った。
「ふぅ~。」
「疲れたね。」
「うん。もう、無理だよ~。って、初めまして。」
「初めまして。あたし、武海李子です!」
「あ、花山 或夢です。」
「あるむ?!すっごい、かっこいい名前だね!あ、『あーちゃん』ってよんでいい?」
「うん。いいよ。」
「じゃ、あーちゃん。よろしくね!」
彼女は隣の席のりこちゃん。
私は拍手をせがまれて、なんとなく手を出した。すると、大きく腕を振ってこの子は元気な子だなぁと思った。
そして、下校の時間。
今日は、始業式ということで、みんな自己紹介とか教科書配ったりとかいろいろ。
下校時刻はいつもより確実に早いという話。
コンコンッ
ノックをしたのは、学ランを着た真祐。
「よっ!」
「おう!」
「あーちゃん、知ってる先輩なの?」
「あ、実はね..私の彼氏なの。」
「えっ!?もう、彼氏できたの!?..さすがあーちゃん。」
「或夢、友達か?」
「うん!そうだよ!りこちゃん。」
「こんにちは。」
「李子ちゃんって言うんだ。よろしくね。」
「はいっ!おねがいします!」
「うん!じゃ、姫は連れ去らせてもらうよ。」
そういうと、真祐は私の手を取り、教室を出て、走り出した。
「速いよ~!」
李子ちゃんがつぶやいた。
「あーちゃん、幸せ者だな。」
その頃、私たちは正門までやってきていた。
「はぁはぁ、疲れるし速すぎ。」
「或夢が遅いんだろ?まぁ、小さいしな。」
「..すいません。」
「あ、ごめん!冗談だよぉ。」
「..すいません。」
「..さぁ、行こう。」
どうしてこうなったんだろう。
正門を通って、歩き始めた。
「或夢..ごめん。」
「いえ、だいじょぶだよ。」
「敬語とタメ口が一緒になってるよ。」
「あっ、ほんとだ。」
「ははっ、或夢はかわいいな。..おれが惚れたくらいだからな。」
「..恥ずかしいよ。」
「..おれも。まぁ、ほんとのことだからしょうがないけどさ。」
真祐は歩きながら手をぎゅっと、握ってくれた。強く強く
「走るか?」
「う、うん。」
握られた手を絶対離さない。そんな気持ちで走り出した。
〔それから、2か月〕
後から知ったのだが、真祐は、学校イケメンランキング一位だったらしく、あっという間に私たちの関係が噂になった。
真祐は気にすんなといってたがそんなわけにいかない。
唯一の親友、李子ちゃんはなんもないような顔をしているが、気にしていないようだ。
李子ちゃんまで、にらまれたら嫌だし。..でも、大丈夫かな。天然だし。
2時校目が終わった私は、真祐と約束していた場所へと向かっていた。
「はろー。」
廊下を歩いていた私に話しかけてきたのは先輩の..えっと..誰だっけ?
「こんにちは。」
「またそれ?はぁ、ちょっと来て。」
三人組の先輩たちが私を体育館の裏に連れてきた。
「な、何ですか?」
「はぁ、あんたさ、マジ何なの?」
「えっ..?」
「えっ?じゃなくてさぁ、乙井君と少しいい感じになってるからって調子の乗らないでよ。」
そして、右側にいた先輩が私の肩を押してきた。その衝撃で、倒れこんでしまった。
すると、端側にいた先輩二人が私を壁に押し付け、
「マジでさぁ、美々(みみ)が先に好きになったのに、横取りしないでよ。この、くそ女!!」
私のおなかを強く踏みつけた。
はっ!今思い出した。この先輩は、初デートの時に真祐にべたべたくっついていた先輩だ。
「やめてください!!」
「うっさい!あんたが...あんたが、美々の乙井君を奪ったんだから、当然の酬いよ。」
「きゃーー!!やめてーー!」
私は、精一杯の声で助けを求めたが誰にも届いてないのか。
「真祐ー!!」
「あんた、乙井君のこと、真祐なんて読んでんの?はっ、あんたなんかにそんな資格ないのに。」
「んーー!!」
「騒いだって無駄よ。今頃、乙井君なら別のところにいるから。」
「っえ!!」
「あんたなんか、探しになんて来ない。あんたは乙井君捨てられたのよ。」
ぐりっ
もっと強くおなかを押す。
「いだいー!!」
「はっ、いい眺め。あんた、ほんっとブスだね。」
「ブースブース!!」
私を抑えている二人が私の顔に向かってブスといってくる。
「最低ですっ..!」
「はぁ?!」
その時だった。
「或夢!!」
「..っ真祐~!」
「何してんだよ!お前ら!」
真祐が、汗を垂らしてやってきた。
「っ乙井君!?」
そして、私を抱きしめた。
「或夢、だいじょぶか?」
私についた泥をはらいながら言った。
「う..おなかが..。」
私のおなかは、泥だらけで、もう、なんて言ったらいいのか。
「っおまえら、何してくれてんだよ!!」
「だって..。乙井君!こんなブスのどこがいいの?!私のほうがよっぽどかわいいし、モテるのに!」
「そうよっ!乙井君、美々のほうがいい!」
「お前ら..」
すると、耳の腱膜が破れるくらいの大きな声で言った。
「おれは!或夢がいいんだ!!かわいいし、別にモテたいだなんて思ってない!」
「なんで!!っもういい!!」
すると、先輩は走り去った。
それに続いて、二人の先輩も走り去って行った。
「或夢..大丈夫か。」
「うん..。」
すると、真祐は私をお姫様抱っこして、保健室へと連れて行った。
〔保健室〕
私は真祐に連れてこられる途中で眠ってしまったのだろうか。
気づいたらそこはベットの上だった。
「..あ。」
「気づいたか。だいぶひどかったんだな。ごめん。」
「ううん。なんで真祐が謝るの?」
「..滝沢さ..あ、さっきのやつ、滝沢っていうんだけど、あいつ、俺らが付き合ってるの気に食わなかったらしいんだ。」
「..そっか。まあ、真祐が好きな子っていっぱいいるしね。仕方ないよ。私なんて、ほんとは。」
「ほら、またネガティブ志向。あと、さっきも言ったけど、或夢がいいんだ。お前じゃなきゃ俺..。」
「..真祐..。」
そのとき、ドアの開く音がした。
とことこ..
「開けるわねぇ。」
カーテンをあけたのは保健の先生だった。
「あら、起きたのね。調子はどう?どこか痛い?」
「だいぶよくなりました。」
「あらそう。でも、ひどいわね。あ、滝沢さんのことは担任の先生に話しておいたからね。」
「ありがとうございます。」
「あと、おなかが少し腫れていたからシップはっといたわ。」
「本当だ。ありがとうございます。」
そのあと私たちは保健室を後にして、私は早退することになった。
真祐は、助っ人ということで、強制早退となった。
「真祐、ここまでだよ。」
いつもの分かれ道。
「うん..。今日さ、うち来いよ。母さん、夜勤なんだろ。」
「うん。..でも、迷惑でしょ..?」
「そんなわけあるか。むしろ、今日はいっしょにいたい…!」
ぎゅっ
「真祐…。…私もだよ!でも…」
「だめ?」
「…しょうがないなぁ。」
「やったぁ。ずっと、一緒♡」
私は、真祐に手を取られ、歩き始めた。
行き先は、真祐のいえ。どこかもわからなくて、ただ真祐についていくだけ。
「おなか、どうだ?」
「うん…。」
「無理すんな。もうすぐだから、な?」
「ありがとう。真祐はほんと優しいね。」
「或夢じゃなかったらこんなことしてないよ。」
「いやぁ、そんなことない。だって真祐だもん」
畑の道が続く。
車も信号もない、ふるさとのようなところ。
こんなばしょがこの東京にあるなんて。
歩いて5分。
「ここがうちだ。」
真祐の指差す家は、屋根が焦げ茶色で壁がレンガになっている家だ。
どっちかというとお菓子のいえのシンプル系のいえだな。
「お邪魔しまーす…。」
家のなかは真っ暗。
電気一つついてなくて、すこし肉眼で家の中が見える感じ。
「今、電気つけるから。」
そういって、リビングの電気をつけた。
「予備の布団あるから、もし泊まってくんだったらいいよ。」
「..そっか。うん、考えとく。」
「うん..っていうかそんな状態じゃないもんな。ごめん。」
「大丈夫だよ..。あっ、真祐。」
「んっ?」
「私、おなかすいちゃった。」
「了解っ。じゃあ、そこらへん座ってて、ね。」
私はソファに座ろうとしたとき、きらりと光るなにか宝石のようなものが見えた。
(なんだろ、これ。)
私は、つい気になってしまい、真祐に気付かれないように近づいて行った。
「どうした?」
きらりと光るものを、覗いていたら、いつの間にか真祐が後ろにいた。
料理は、もう机に用意されていた。
「あぁ、真祐。早いね。」
「うん。まぁ、すぐにできちゃうからね。」
「へ、へぇー...」
「あ、さっきから見てるそれ、きれいだけど道端にたまたま落ちてた石だよ。」
「えっ!そーなの..!」
試しに、触ってみた。
ちょんっちょんっ
当然、無反応。
「俺もやってみたけど、やっぱただの石だな。」
「う、うん。そうだね..。」
真祐はそう言ってるけど、どう見てもただの石には見えない。
あと、コーティング。節分でよく使う枡にふわふわが入って真ん中にきれいな石。
真祐は、ただの石といっているけれど、ほんとはどこかですごいものだと思っているに違いない!
「これ、光に当てたらどーなるのかな?」
「わかんない。やってみるか。」
そう言って、光に当ててみた。
その姿は宝石のようにきらりと光っている。
すると、真祐が何か思い出したような顔をして、どこかに行ってしまった。
しばらくして、戻ってきたと思ったら、手には顕微鏡を持っていた。
「これで見れば、なんだかわかるかもっ。」
台において、よく見てみる。
よく見ると、小さい金のような、いやエメラルドか..?
「何か見えたか?」
「う~ん..なんか、小さい何か..」
「そうか。まぁ、とりあえず、ご飯食べよっ。冷めちゃうし」
「そうだね。はぁー、真祐の料理~。」
そして、ともに食事をし、お風呂に入り、ベットに入った。
「お泊り許可おりた♪」
「なぁ、或夢。」
「ん?」
「ううん。」
そして、私たちは、口づけを交わした。
次の日
私たちは、おはよーと朝の挨拶をして、リビングへと向かった。
「今日の朝は、コンソメスープとバターパン。」
「いいねぇ。おいしそう。」
「あれっ」
気づくと、おなかの痛みは、引いていた。
皮膚はあざになってしまっているが、昨日の痛みよりはマシだ。
(昨日みた、きれいな石は..?)
少し気になったので、のぞいてみた。
「えっ!ちょ、真祐!!」
私は、驚くほどの光景を見てしまった。
「どうした?」
「真祐、見てこれ!」
そこにはなんと、宝石の赤ちゃんみたいのがいっぱいあった。
全部で、一つ、二つ..五つだ。
「なにこれっ。怪奇現象?」
「それはないだろ。っでも、なんか変だな。」
「うん..。ん..?なにこれ」
私はあるものを見つけた。
それは、石の下に敷いてあって..。
『毎日、幸せなお二人へ。
私の大切な石を拾ってくれてありがとう。
私は今、その石を無我夢中で探しています。どうか、その石を私が訪ね出るまで持っていてください。
このメッセージが届くときには、その石に何か変化が起きているのでしょう。
でも、決して害のあるものではありません。
なぜなら、この石は『笑顔のタネ』を生み出す、とても特別な石なのですから。
もし、その笑顔のタネが出てきたら、不幸な人、人生を終わらせようとしている人、寂しがり屋な人。
そんな人たちに、一人一粒まで渡して、育てるよう言ってください。
そして、『笑顔のハナ』という花が咲いたとき、その人に笑顔になる良いことが五つ起こります。
それで、少しでもその人が良い印象になってたとか、良いこのなったとか、
そういうことになるとそれは成功と言えます。
ただし、ここから忠告です。
中には、一度いい気分になって調子に乗って、もう一粒ほしいといってくる人もいます。
普通、笑顔のタネというものは、一人一粒と決まっています。
それ以上飲んでしまうと、大変なことになってしまうので、
もしそういわれた場合は、きっぱりと断ってください。
まったく、薬というものと似ているので、このタネの誘惑にまけてしまってはいけません。
長々とすいませんでした。またご連絡します。
*pepe*』
〔登校〕
行くとき、私たちはさっきの手紙の内容について考えていた。
行きは、真祐と二人、手をつないで来た。
さて、ここからが本番だ。
あの、滝沢先輩にこの『笑顔のタネ』をあげる。
きょうは、そのために来たのだ。(勉強のためだけど)
一時間前..
「笑顔のタネ..?」
「なんか、すっごい石なんだね。」
「う..ん..。なんていうか、信じらんねぇよ。」
「確かにね。..でも、ペペさんも言ってるんだし。なにせ、ここに実物があるんだし。」
「言えてるけど..。でも、なんで見えてもないのに俺らがふたりとか拾った事わかるんだよ。」
「んー..きっと、魔法だよ!!」
「魔法かぁ、ありそうでないんだよなぁ。」
「もぅ~、真祐は夢がないなー。まぁ、とにかく、これをどうやって使うかだ。」
「そうだな。急に言われても..」
頭を抱えている真祐を見ていたら、急にあの人の顔が浮かんだ。
「先輩..」
「えっ?」
「っ真祐!先輩だよ!滝沢?先輩!」
「或夢っ!お前、昨日あんなひどいことされたってのに、渡すのかよ!」
「それはしょうがないよ。先輩だって、真祐のことがずっと好きで、振り向いてくれないのずっと我慢したんだから、かわいそうだよ。」
「或夢..。」
「とにかく!ご飯食べちゃって、学校行くよ!!」
そして今
「ほんとに、いいのか?」
「うん!ほんとは良い子かもしれないし!」
目的地:滝沢先輩
真祐の話によると、先輩は同じクラスの3-4らしい。
私は、とりあえず、真祐と別れ、自分の教室へと入った。
「あ、あーちゃん、今日早いね。」
教室には、李子ちゃん一人が窓から校庭を眺めていた。
「おはよ。今日は、大事なミッションがあるからね。」
「ミッション?何それ、面白そー!」
「あ、李子ちゃん。李子ちゃんって、人生終わってるって思う?」
「どうしたの急に。」
「良いから。どう?」
「う~ん。それはないわ。毎日充実してる。」
「そっか。じゃあ、李子ちゃんは正常っと。」
私は、いつもカバンの中に入れてあるメモ帳に『李子ちゃん-正常』と記入した。
「何してんの?」
「ん?こっちの話しー。」
そう言って、カバンにしまった。
そして、昼食の時間
ここは学校の食堂。
「で、手がかりどう?」
「どう?って言われても。昨日からスゲーしょげてんだよ。おまけに授業中にはにらまれて無視だし。」
「なんだー。真祐ならだいじょぶだと思ってんだけどなぁ。」
「それ、どういう意味だよ。てか、昨日のこと思い出せよ。お前、滝沢に最初から嫌われてんだぞ?なのに、なんでそう或夢は優しいんだよ。」
「えー、だって..。私もかわいそうだけど、先輩の方がよっぱどかわいそうだと思うからさ。」
「はぁ、そんなこと言われちゃ、俺もお手上げだ。いいよ、俺も本気で手伝う。」
「うん。って、今まで本気じゃなかったの?」
「んっ?..まぁ..?」
「もぅ、何よそれ。真祐、なんかあったら、メールして。」
「了解っ!」
そして、ともに食事を楽しんだ。
その日の昼休み
「なぁ、滝沢。」
ここは、3-4。
「ん」
「今日、時間ある?」
「..何っ。」
「話したいことがあって..」
「..二人で..?」
「えっ..と..。うん、そう。」
「わかった。じゃあ、どこで?」
「っ調理室。」
「了解ですっ。」
そして、放課後
ガラガラ
「待った..?」
「ううん。来てくれてありがとう。」
ガタンッ
「えっ!」
「どうも、先輩!」
「花山さん?!」
「えっ。覚えてくれたんですか~!」
「はっ、花山さん!昨日はごめんなさい..!私、どうかしてたわ..あぁ、許してもらえないだろうけど。」
「先輩..。誤ってくれてありがとうございます。昨日の敵は今日の友、ですよ!」
「は、花山さーん!!」
先輩は私に駆け寄り泣いていた。
ごめんっごめんっとなんども。これで、この人の人柄がよくわかった。
先輩は、やきもち焼きのかわいい人なんだと。(つい、ひどいことをしてしまうけど)
そして、私と真祐は、『笑顔のタネ』のことについて話した。
「っということなんですけど..」
「つまり、その『笑顔のタネ』を私にくれると..?」
「そうです。先輩には、真祐なんかよりもっと素敵な人がきっといます!」
「おい、なんかってなんだよ。」
「別にいいじゃん?っもう、ごめん。」
「やっぱり、お似合いね。」
「えっ?」
真祐と言葉が被った。
「だって、喧嘩もできて、仲良しで。やっぱり、私は花山さんには勝てないわ。」
「先輩..」
「ごめんね。あとっ、私、これではっきりした!乙井君のことは、あきらめる!」
「滝沢..」
「私、気づかされた。もう、恨んだり、絶対しない!」
「先輩..!よしっ!これで、安心して、渡せます。」
と、あらかじめ、袋に入れておいた笑顔のタネを一粒だけ出した。
「これが..?」
「はい。笑顔のタネです。さっきも言った通り、一人一粒までなので、慎重に扱ってください。」
そして、先輩の手の中に包んだ。
「ありがとう..。きれいね。」
「でしょう?私も思いました。」
「うん、本当にありがとう。あ、あと..」
「はい?」
「もしよかったら..と、友達になってくれませんか。」
先輩は恥ずかしそうに話した。
「ええ。もちろん、良いですよ。」
「ありがとう。」
「その代わり!」
「えっ?」
「このタネで、必ず幸せになると誓ってください。」
すると、少し黙ってから、言った。
「..ええ!絶対、幸せになるわ!」
〔それから、2年〕
真祐は20歳になった。
今日は、成人式。
「はーい、チーズ!」
パシャリッ
「ありがとな、南谷。」
「ううん!お互い、いい大人になりましょう!」
写真を撮ったのは、高校の時の先輩、南谷先輩。
私もあと2年で二十歳かぁ。
「或夢、お前もありがとう。来てくれて。」
「当然!だって、真祐の二十歳姿なんて今日しか見られないんだから。」
「そうか。ありがとう。」
ちゅっ
頬に真祐の唇が当たった。
「ちょっ」
「良いだろ?」
周りはフーフー!と大騒ぎ。
そんな時、一人の美女が現れた。
「どうも~。」
立派なお着物を着た、滝沢先輩だった。
その隣には、イケメンの..って!!
「よっ!或夢!」
「ちょ!おまえぇ!!??」
「よっ!滝沢!っと、お知り合い?」
「ええ。花山さんのおかげで良い人が見つかったの。」
先輩が、連れてきた彼は..
「どうもっ!花山雹后っす。」
「そう!実はね、雹后は..」
「花山...ってことは..!」
「あっ、いつも俺のかわいい妹がお世話になってます~!」
「お前..ちょくちょく電話してたのって..。」
「うん。美々とだよ。」
「はい♡」
目の前が真っ白になった。
こんな美人な先輩と、その隣にいる、イケメンな兄ちゃん。
こんなカップル、勝てやしない。
でも、なんだ。お似合いじゃん。
「雹后、良い女捕まえたな。へっへっ」
「キモイよ。ばか」
「なんだよ。褒めてんだから、喜べよ。」
「じゃあ、そんなきもくすんなよ。」
「もともとですー」
「はぁ?やるのか、こらぁ。」
「二人とも!」
「あ、乙井君。だいじょぶだよ。」
「えっ?」
「この二人、いつもこうだから。」
「そうなのか。」
「うん、いつも電話越しに口げんかしてるのが聞こえるの。うふふ」
「そうか。おれ、或夢に兄ちゃんがいたなんて知らなかった。」
「私だって最初は、花山さんが妹さんだなんて知らなかった。でも、すぐになれたわ。」
「そうか。滝沢、あの後はどうなったんだ?」
「あぁ、あのあとね、家に帰ってさっそく育て始めてみたの。で、次の朝見てみたら、頭の上に紙が置いてあって..」
〔2年前〕
「ん~?」
そこには、
『滝沢美々さん。
あなたが望むことを五つかなえてあげます。』と書いてあった。
「五つ..。」
美々はひとまず考えてみた。
「まずは..彼氏がほしい..あと..。」
その紙の裏には五つの枠があって..
「1.彼氏がほしい、2.痩せたい、3.友達を増やしたい、4.ネイル道具がほしい、5.優しくなりたい」
と書いた。
しばらくしてから、部屋の中でゴロゴロしていたらまた頭の上に紙が..
そこには、
『かしこまりました。
美々さんの事を観察させて見させてもらいました。その結果、1.彼氏がほしいというのを最初にかなえさせてもらいます。イエスなら、葉にありがとうとお話しください。ノーなら、だめとお話しください。』
美々は、もちろん、ありがとうと言ったの。
そしたら、葉っぱがエメラルド色に光って。
そして今
「それで、今のように?」
「そう。だから、まだ一つ目なの。これからあと四つの願いをかなえてもらわないと!そのためには、いっぱいお世話して、仲良くしていく必要がある。」
「そうだな。ったく、滝沢は変わんないな。」
「えっへへっ。」
「しっかり者だな。もう、お前には付きまとわれないで済む。」
「..そうねっ。私には、雹后がいるし。」
「おう、じゃ、ケンカ止めるか。って、もう終わってたのかよ。」
「先輩っ、よかった。一つ目の願いがかなって。」
「花山さん..。」
「これからもその調子で頑張ってください!あと、こんな美男美女カップルはこの世にはあなたたちだけです!」
「或夢..」
ぎゅ~
「ちょっ、やめろ。」
「良いだろ~?あと、ありがとー!!」
雹后が抱きしめて来た。
「うわぁー、真祐ー!」
「ははっ。」
「笑ってないで、助けてよー!」
「良いじゃん!兄弟愛がよくわかる。」
「もぅー!真祐までそんなことー!」
「或夢ー♡」
「やめろー!」
今年の、成人式は大盛り上がりだった。うえ~い!
〔それから54年〕
すっかりおばあちゃんになった私は、おじいさんになった真祐と、こんな話をした。
「おじいさん、昔のこと、覚えてる?」
「あぁ、覚えてるよ。確か..『笑顔のタネ』のことだろう。」
「ええ。あの頃は楽しかったのう。」
「そうじゃな。成人式の後、わしゃたちはたくさんの人にあの種を配った。そうして、今、こうして笑顔の人が増えた。」
「ええ。私たちは、小さな人助けをしたんですね。おかげで、今もこうして私たちも笑顔でいられる。」
「あぁ、今頃、息子から孫へ、孫からひ孫へ。いろんなところで、受け継がれていくんじゃな。」
「..そうだ。おじいさん。」
「ん?」
「こんな言葉を考えたのじゃが、聞いてくれんかのう。」
「ええぞ。なんじゃ。」
「笑顔は人が作る物。また、笑顔は幸せを作る。これは、永遠に受け継がれる。
一人が笑えば、一人も笑う。やがて、みな笑い、最後には涙を流す人はいなくなる。
なんと幸せなことか。みな、笑顔のタネを持っている。」
「なんと、良い言葉じゃ。」
「一つにまとめると、こういうことじゃ。」
「さて、今日はとてもいい日じゃ。」
「ほんとね。じゃあ、お散歩いこ!」
「いけねぇよ。腰いてぇし。」
「そうね。あ、桜!」
「もう、四月か。」
「花見っていいね!」
「そうじゃな。」
「ずっと、一緒ですよ。」
「あぁ、ずっとな。」
私たちの目の前には大きな花がある。
これは、私たちの持っていた最後のタネ。
そして、もうすぐ私たちの最後の願いが叶う。
その願いとは
『ずっと一緒』
さて、今日もまた、水をあげよう。
お読みいただきありがとうございました。