子供っぽい
カクランは公園で腕を抱え震えていた。
「クシュンッ!」
「どうしたの?」
「いや、寒くて寒くて」
美来は無言でカクランの服装を見て本の方に目を戻した。カクランは何故かいつもの黒い服の半袖板を着て上着だけ着ていなかったのだ。
「春開けなのに、そんな服着てるカクランが悪い」
「だ、だって、持ってくる服間違えたんだよ。上着は洗濯して干してあるし……」
「制服着ればいいのに……」
カクランは突然何かを思いついたように立ち上がった。美来が見ると閃きに目を輝かせ遊具の方へ走っていき、子供のように遊ぶ大人が見えた。
「美来! 滑り台って楽しいね、もっと長いの無いの?」
「…………」
うつ伏せで頭から滑ったり満喫している様子が伺える。ジャングルジムに上がり飛び降り、雲梯に手をかけた途端動きが止まった。
普通に足を着き腕を曲げた状態で手が普通にかかってしまっている。
「美来……これってぶら下がるやつだよな?」
「カクランの身長じゃその高さは無理だよ」
カクランは少し考えるとそのまま雲梯の上で逆立ちをした。
「これなら行けるよ!?」
緩いシャツは捲れ胸のあたりまで見えた。それでも楽しそうに遊ぶカクランを見た美来は立ち上がり、他人のふりをしすれ違った人に挨拶をしながら家に帰って行った。
「美来!?」
「え、雲梯で逆立ちしただけで廊下立たされるの?」
遅刻してきた美来は廊下に立っていたカクランを見て固まる。
「何でそれ覚えてるの。違うよ、拘束に厳しいうるさい先生が授業来てるからここでフリしてサボってるんだ」
美来が来たことに気がついた教師が教室の扉を開け注意をしに来た。
「逆井! そんな所に……」
「先生! 何してるんですか!?」
そこに偶然通りかかった別の教師が両手にバケツを持ち、膝と足の上と頭にバケツをのせトーテムポールの様になったカクランを見て注意に入った。
「生徒を廊下に立たせるのは今は問題になるんですよ!!」
授業をやっていた教師を連れ職員室へと向かっていき、その時間は自習になった。
カクランは見送るとバケツを廊下に並べ軽いストレッチをする。
「やったな、美来」
「……カクラン、教師だよね」
「んー? 大丈夫、後で僕が弁解しておくから、解雇処分にはならないよ」
「教師らしからぬ行為だよ。非常だよ」




